【解決事例】 賃料を滞納する借主に退去を求めた事例
【相談内容】
Tさんは、札幌市内にアパートをいくつも所有し、賃料収入を得ていました。
その入居者の1人であるSさんが、1年くらい前から家賃の支払いが遅れがちになり、請求をすれば少しずつ支払う程度となりました。
そして、3ヶ月ほど前からは全く支払いがなくなり、合計で家賃半年分も滞納が生じていました。
そこで、Tさんは、Sさんとの契約を解除して、退去を求めたいと思い、弁護士に相談に来たのでした。
【解決方法】
借主にとって、家を出て行かなければならないというのは生活の基盤を失うことであるため、法律では、借り主の権利は強く保護されてます。
そのため、家賃を1,2ヶ月滞納しただけでは、一方的に契約を解除することは認められていません。
重大な契約違反行為が何度もあったり、あるいは家賃滞納が半年程度あるような場合でないと、退去を求めることは認められないことが多いでしょう。
Sさんの場合は、半年分も家賃を滞納しているとのことですので、解除が認められる可能性が高いと弁護士は判断しました。
そこで、弁護士からsさんに対し、2週間以内に滞納家賃を支払うこと、支払いがないときは契約解除とし、訴訟提起すること、を内容証明郵便で通告しました。
弁護士もTさんも、Sさんから連絡が来れば、話し合いで解決したいと考えていましたが、2週間以内に連絡はありませんでした。
このまま時間が経てば、滞納家賃は増え続け、Tさんの損害は大きくなる一方です。そのため、損害拡大を防ぐため、弁護士は直ちに札幌地方裁判所へ裁判を起こしたのです。
第1回目の裁判が約1ヶ月後に行われ、その場にSさんは姿を現しました。
Sさんは、今後はなんとか家賃を払うので、このまま住まわせてほしいと希望しましたが、支払いのあてはないとのことで、今後も滞納が続く可能性が高いことは明らかでした。
そこで、弁護士は、事前にTさんと協議したとおり、早めに退去してくれるのであれば、滞納家賃は免除しても構わないので、早期に引っ越ししてほしいと申し入れたのです。
裁判所もその案に賛同してくれ、結局、Sさんは2ヶ月以内に引っ越すこと、2ヶ月間の賃料は支払うこと、期限までに引っ越した場合にはSさんの滞納家賃を免除すること、を合意し、裁判所で和解調書を作成しました。
その後、Sさんは予定通り退去したため、事件は解決となりました。
そして、Tさんはさっそく新たな入居者を募集し始めたとのことです。
【コメント】
借り主が賃料を滞納してしまう場合は、そもそも生活に困っていることが多く、何ヶ月もの滞納家賃を全額回収することは非常に困難です。
そのようなリスクを避けるには、滞納が始まった時点から細かく連絡をとり、支払いが難しければ退去を促すなどの方法が必要です。
しかし、一部の悪徳業者に見られるように、勝手にカギを変更したり、室内に立ち入って荷物を放り出したりすれば、違法行為となってしまい、損害賠償の対象となります。
そのため、賃貸借に関する法律関係をよく把握して対応しなければ、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあるのです。
賃料滞納が数ヶ月続いたような場合には、一度弁護士と相談し、少しでも損失を抑える方法を協議することが適切でしょう。
なお、今回の事例では、借り主が早期に退去する代わりに、滞納家賃を免除することにしました。
滞納家賃を免除する、というのは苦渋の選択ですが、免除をしなくとも相手が支払いに応じるだけの経済力があるとは思えない事案でしたし、借り主が退去するまでは他人に貸すこともできない状態でした。
そのため、弁護士が貸し主と打合せをし、一刻も早く借り主に退去してもらい、新たな入居者を確保する方が、損失を最小限に抑えられると判断したのです。それによって、裁判は早期に解決し、退去もスムーズに進んだといえます。
なお、滞納賃料を回収する方法としては、経済力のある保証人をつけておくことが重要です。しかし、実際には経済力のない家族や、名義貸し程度の保証人をつけているケースもあり、保証人からの回収がうまくいかないことが多いようです。
契約時に保証人をしっかり選定してもらうことや、滞納が発生したらすぐに保証人にも連絡することが、リスクを軽減する方法になると思います。
賃貸問題や家賃滞納、退去問題などでお悩みの方は、当弁護士事務所にご相談ください。札幌市内を中心に、北海道内各地からのご相談を受け付けております。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。