武富士との裁判で、最高裁判所で逆転勝訴の決定を得ました
当事務所では、個人・企業の債務整理、倒産案件などを多く手がけていますが、今回、武富士の会社更生手続きに関して、最高裁判所で逆転勝訴の決定を得ましたので、ご報告いたします。
この事件は、もともとは武富士に対する過払金請求の裁判から始まりました。札幌地方裁判所小樽支部で過払金約900万円の支払いを命じる全面勝訴判決を得て、武富士から控訴された後も、札幌高等裁判所でも当方の請求を全て認める判決が出されました。
ところが、実際に過払金を回収するまえに、武富士が倒産(会社更生)をしてしまいました。
武富士が倒産してしまった以上、過払金を請求できる権利があっても、その3.3%(第1回配当)しか受け取れず、大部分の回収は不能となりました。
ところが、この案件では、武富士が一審判決に対して控訴した際に、当方が強制執行を行えないように裁判所の許可を得て、700万円の「担保」を法務局に供託していました。
その後、武富士が会社更生をしてしまったため、この700万円の担保金がどうなってしまうのかが問題となりました。
これについて、武富士の管財人は、この担保金は武富士のものであるとして札幌地方裁判所小樽支部に担保の取り戻しを求める裁判を起こしました。
裁判所は、武富士側の言い分を認め、会社更生によって当方の権利は失われたため、担保も武富士のものであると判断してしまいました。
そこで、当方から即時抗告(異議申立)を行いましたが、札幌高等裁判所も武富士側の言い分を認めてしまいました。
一審、二審とも当方が敗訴した形となりますが、ここで問題となったのは、「会社更生手続きをされてしまうと、供託された担保についても権利が失われてしまうのか」というものです。
通常の過払金の請求権は、会社更生により大部分が請求できなくなることは法律上当然とされていますが、今回のようにわざわざ当方のために担保が供託されている場合にも、それが無意味なものとされてしまうのかが問題となったのです。
実は、この点に対する判断がなされた裁判は、当事務所で調べた限りでは、これまで一例もありませんでした。破産手続きや民事再生手続きの場合の裁判例はいくつかありましたが、会社更生の場合にどうなるかというのは未知の問題であり、文献でもほとんど触れられていませんでした。
しかし、いろいろと検討した結果、やはり武富士側の言い分や裁判所の判断はおかしいと考えましたので、依頼者の了承を得たうえで、最高裁判所に許可抗告(異議申立)を行いました。
許可抗告の申し立てから約1年間判断を待っていましたが、4月26日に、最高裁判所は、一審、二審の判断を覆し、当方の言い分を全面的に認める決定を行いました。
裁判所のウェブサイトでも、早速その決定書が掲載されています(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130430153142.pdf)。
内容は非常に難しいものですが、当方の主張を全面的に認める形で、最高裁としての初判断がなされています。
この件についてはまだ全て終了したわけではありませんが、裁判所のウェブサイトでも上記の決定が掲載されましたので、これを機にご報告致しました。
【解決事例】 個人再生で450万円の債務が100万円に減額された事例
【相談内容】
田中さん(仮名)は、47歳の男性で札幌市内にある建設関係の会社に勤めていました。
しかし、一時、病気のため休職したり、同時期に母親が亡くなり、その葬儀代などで資金が足りなくなり、持っていたクレジットカードのキャッシングを利用し始めました。
その後、返済を継続していましたが、臨時の出費が相次ぎ、少しずつ借入金額を増やさざるを得ませんでした。その時点での負債は200万円程度となり、毎月の返済額も5万円を超えていました。
ただ、田中さんは復職し、なんとか返済を続けていましたが、あるとき、会社の業績不振で少し収入が下げられてしまいました。
そのため、返済資金が足りず、毎月、返済のために借り入れを繰り返す状況になってしまいました。
だんだんと利息の負担も増えていき、気が付けば借金も400万円を超えました。
そのころに会社も持ち直し、収入ももとの水準に戻りましたが、負債は450万円となり、毎月の返済額も約10万円に及んでいます。
しかも、毎月返済額10万円のうち、利息の返済が約4万円にもなっており、いくら返しても元本がなかなか減っていきません。
そこで、田中さんはこれ以上の返済は難しいと思い、少しでも返済の負担を減らせないかと思い、弁護士に相談したのです。
【解決方法】
田中さんの負債は450万円となっており、多額にのぼっています。
解決の方法として、任意整理、個人再生、破産という3つの方法が考えられましたが、負債額が大きく、任意整理での解決は少し難しい状況でした。
他方、田中さんには一定の収入があり、毎月4,5万円程度なら無理なく返済できそうでしたので、破産手続きしか選べないという状況でもありませんでした。
しかも、田中さんは自宅と会社間の交通の便が悪く、5年前に購入した車が通勤に不可欠でした。この車のローンは少し前に完済していましたが、いま売りに出せば50万円程度にはなるため、破産手続きではこの車を売却しなければなりません。
そこで、弁護士は、借金を減額し、自動車も手元に残すために、個人再生を選択することが適切とアドバイスをしました。
田中さんもその説明を受けて、個人再生による解決を希望しました。
弁護士は、より詳しい事情の聞き取りや、必要資料の提供を受け、札幌地方裁判所へ個人再生の申し立てを行いました。
その際の返済計画案は、次のようなものです。
「450万円の負債を、100万円まで減額する。この100万円を3年間(36カ月)で返済するため、毎月2万8000円程度を返済する。この返済を3年間で予定通り終えたときは、残りの350万円をすべて免除する。」
裁判所は、弁護士の申し立て内容を審査し、この返済計画案が適切なものと判断し、債権者からも反対意見がなかったため、この返済計画案を認可しました。
これで、あとは3年間返済を続ければ計画通りの効力が生じることになります。
その後、田中さんは、弁護士が指示したとおり、毎月2万8000円ずつを返済し続け、一度も滞納することなく3年間が経過し、無事に借金がすべて免除となりました。
本来であれば、450万円に高い利息をつけた金額を長い期間払い続けなければならないのに、わずか3年間、100万円の支払いで借金が免除になったことで、田中さんは本当に安心したようです。
今後は、借金をしなくてすむよう生活費を見直すなどしながら老後の資金をためていきたいとのことでした。
【コメント】
田中さんは、いろいろな事情で借金を増やしてしまい、自分の収入で払える範囲を超える負債を抱えてしまいました。
このような場合に、本当は支払いが不可能な状態になっているのに、無理に返済を続けてしまうと、身の回りの財産を処分して返済にあてたり、親族に援助を繰り返し頼んだりして、正常な生活を失ってしまうことがあります。
田中さんは、そうなる前に、これ以上の返済は無理だと判断し、弁護士に債務整理を依頼したのです。
その判断が良い結果につながったといえ、田中さんは、3年間、無理のない範囲で返済を続けたことで借金を清算できたうえ、車も残すことができました。
もう少し相談が遅ければ、債権者から裁判を起こされて給料を差し押さえされたり、自動車を処分して返済にあてざるを得なかったことでしょう。
田中さんが行った個人再生では、債務総額500万円以内の方は、債務を100万円まで減額することができます。そして、それを3年から5年間かけて返済を実行することで、残りの負債をすべて免除してもらえるのです。
債務をすべて払うのは無理だけど、破産は避けたい、という方に最適の方法です。
田中さんは、予定通りに返済を実行し、無事に債務をすべて清算することができました。
個人再生手続きには複雑なルールやノウハウが必要となります。借金問題でお悩みの方は、当事務所までお早めにご相談ください。札幌市だけでなく、北海道内各地からのご相談に対応いたします。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。
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【債務整理】 個人再生では自宅を残すことができるって本当?(後)
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第15回です。
今回は、前回(個人再生では自宅を残すことができるって本当?(前)) に引き続き、個人再生手続きの場合の住宅の取扱いを説明します。
前回も説明しましたが、個人再生手続きでは、破産手続きの場合とは違って、住宅を残したまま債務の整理をできる場合があります。
どういった場合に住宅を残せるかは、「住宅ローンの残高」と「自宅の現在の価値(売却価格)」のどちらが大きいかによって異なります。
前回は、「住宅ローンの残高」が、「自宅の現在の価値」よりも大きい場合、いわゆるオーバーローンの場合を説明しました。
今回は、「自宅の現在の価値」が、「住宅ローンの残高」よりも大きい場合を見ていきます。
たとえば、自宅の土地・建物をいま売却すると、1500万円の値段がつくとします。
その土地・建物の住宅ローンが、1200万円残っている場合を考えましょう。
この場合、自宅を売却してローンを払っても、300万円が手元に残ることになりますので、この300万円分の価値ある資産ということになります。
このような住宅ローンを差し引いても資産価値が残る場合は、実は、住宅を残したまま個人再生手続きを利用することは難しい場合が多いのです。
これは、価値のある財産を保有したまま、破産や個人再生を申し立てるのは難しいためです。
破産や個人再生では、負債の方が多く、現在の財産を債権者に分配することで、足りない部分の負債をすべて免除してもらう手続きです。
そのため、手元にある価値ある財産は、処分して債権者に分配するのが原則になりのです。
もっとも、破産の場合にはおおむね20万円以内の財産は手元に残せますので、すべてを処分するわけではありません。
そして、個人再生の場合にはもっと多くの財産を手元に残すことが認められており、基本的には100万円以内の財産は手元に残すことができます。
しかし、100万円を超える財産を残す場合には、厳しい条件があります。
この問題は、「個人再生手続きで手元に残せる財産は?」で説明したのとまったく同じ問題ですので、そちらも参照いただければと思います。
簡単に説明すると、
- 個人再生では、返済額以内の財産は処分しないで手元に残すことができる
- 個人再生では、手元に残す財産の金額以上の金額を返済しなければならない
というルールがあります。
個人再生の返済額は、100万円となるケースが多いので、100万円以内の財産はそのまま残せることがほとんどです。
では、さきほどの300万円の差額が残る場合はどうなるのでしょうか。
この場合、個人再生を利用しても、「300万円」以上の金額を返済しなければならないことになります。
具体例を見てみましょう。
Aさんには、通常の債務が700万円、住宅ローンが1200万円あり、住宅の価値は1500万円ありました。
この場合、住宅を処分すると300万円(1500万-1200万)が残りますので、Aさんには300万円の財産があることになります。
ここで、個人再生手続きを使いますと、住宅ローン以外の負債が700万円の場合、これを5分の1まで減額することができます。
ですので、本来は、700万円→140万円となり、この140万円と住宅ローン1200万円を返済していけば、残りは免除になります。560万円も負債が免除されますので、相当な効果があるはずです。
しかし、ここでAさんには300万円の財産がありますので、住宅ローン以外の負債について、最低でも300万円以上返済しなければなりません。「手元に残す財産以上の金額を返済しなければならない」からです。
したがって、実際には、700万円→300万円と減額し、この300万円と住宅ローン1200万円を返済していくことになります。
この場合にも400万円の免除になりますので、効果は大きいですが、さきほどの例よりも返済額は相当大きくなってしまい、返済プランは厳しいものとなってきます。
さらに、住宅の価値が高くなり、たとえば住宅ローンが1000万円、住宅の価値が1500万円の場合は、500万円分の財産を保有することになりますので、返済額は最低500万円になります。
ですので、さきほどの例では、700万円→500万円へと200万円の減額はできますが、それでも500万円の負債が残ってしまうのです。
さらに住宅の価値が高く、住宅ローンが1000万円、住宅の価値が2000万円となった場合は、財産の価値が1000万円残ることになりますので、負債である700万円よりも財産の価値が高いため、個人再生を利用することはできなくなってしまいます。
これまでの話は、住宅ローンを完済しているにも同じようにあてはまりますので、そのような場合にも保有財産の価格が高くなってしまい、個人再生を使うことは難しいでしょう。
以上が、個人再生で自宅を残す場合についての解説です。
住宅ローンありの個人再生は条件が複雑ですので、少しわかりにくい説明だったかもしれません。
簡単に結論を整理すると、住宅ローンの残高と住宅の価値が近い場合には個人再生を利用しやすいですが、住宅の価値の方があまり高くなってしまうと、個人再生を利用して住宅を残すことは非常に難しくなってきます。
そのような場合には、たとえば不動産を担保に追加融資を受けて債務の返済にあてるなど、任意整理による返済を行っていくことを検討しなければならないでしょう。
前回と今回で、個人再生の場合に自宅を残せる条件を詳しく見てきました。繰り返し述べますが、この条件は非常に複雑で、専門的な知識や経験がないと、確実な判断はできません。
また、個人再生手続きは弁護士などに依頼しないで行うことは困難ですので、特に住宅をお持ちで債務整理を検討している方は、お早めに弁護士にご相談ください。
当事務所でも債務整理は相談料無料で対応していますので、お悩みの方は、お問い合わせのページをご覧のうえ、ご連絡ください。
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【債務整理】 個人再生では自宅を残すことができるって本当?(前)
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第14回です。
前回は、「個人再生手続きを行う場合の返済方法・返済額は?」というテーマで、個人再生の具体的な返済プランについて解説しました。
今回は、債務整理を考える方に特に関心の高いテーマとして、個人再生とマイホームの問題を取り上げます。
さて、今回のコラムのタイトルでは、「個人再生では自宅を残すことができるって本当?」という質問を投げかけています。
この答えはというと、「ローンが大きく残っている場合には、一定の条件を満たせば残すことができます!」というものです。
破産の場合にも同じ問題を、「破産すると住宅はどうなる?すぐに出ていかないとならないの?」と題して取り上げましたが、このときの結論は、「破産手続きの場合には、住宅を残すことはできない」というものでした。
破産手続きの場合には、
①住宅ローンよりも現在の自宅の価値(売却代金)が高い場合には、住宅を売却してローンを返済し、残ったお金を債権者へ分配する
②住宅ローン残額が現在の自宅の価値より高い場合にも、破産手続きではローン返済は禁止されるため、結局、競売にかけられてしまう
という2つの理由で住宅は残せませんでした。
しかし、個人再生の場合には、一定の条件をクリアすれば住宅を残してもよい、と法律で特別に認められているのです。
これが、破産手続きと比べた場合の、個人再生の最大のメリットといえます。
ですので、約束通りの返済はできないけれども、住宅はどうしても残したい、という方は、破産ではなく個人再生を検討することになります。
ただし、さきほどの①と②の場合では、住宅を残せるかどうかの条件も変わってきます。
今回は、②の場合、つまり、住宅ローンの残額が、現在の自宅の価値より高い場合を取り上げます。
これは、たとえば住宅ローンが1200万円残っているけれども、自宅をいま売却しても1000万円にしかならない場合のように、住宅を売却してもまだローンが残るような場合です。
反対の①の場合、つまり、住宅ローンよりも現在の自宅の価値が高い場合や、住宅ローンを完済している場合については次回に取り上げます(個人再生では自宅を残すことができるって本当?(後)をご覧ください)。
では、②の場合の、個人再生で住宅を残せる「一定の条件」とはどのようなものでしょうか。
実は、この条件は非常に複雑で、難しい法律問題が含まれているため、ここで説明すると長くなりますし、おそらく説明しても理解は難しいと思います。
ですので、住宅を残したまま個人再生をしたい、という方は、弁護士にご相談いただき、条件をクリアするかを判定してもらうことをお勧めしています。
ただ、それでは不安もあるでしょうから、条件のうち基本的なものを説明したいと思います。これらの条件をクリアすれば、8~9割方、住宅を残せるでしょう。
基本的な条件を5つ紹介します。
条件1 住宅ローン以外について、個人再生手続きの条件をクリアしていること
条件2 住宅ローン以外の債務の返済に加え、住宅ローンを今後も返済していく経済力のあること
条件3 ローン債務者が実際に居住している不動産であること
条件4 自宅に、住宅ローンかリフォームローンの抵当権がついており、それ以外の抵当権がついていないこと
条件5 住宅ローンの滞納が一定期間以内であること
条件が多いと思ったかもしれませんが、簡単に説明していきます。
条件1は、そもそも個人再生手続きを利用できない場合にはどうにもなりませんので、まず住宅ローン以外の債務について、個人再生手続きを使えば返済していける、ということが必要です。その場合の返済条件や返済額は前回まで説明してきましたね。
条件2は、よく問題になるところです。
個人再生を使った場合、実は、住宅ローン以外の債務は大幅にカットされますが、住宅ローンはカットされません。
たとえば、住宅ローン以外の負債が300万円、住宅ローンが1000万円残っていたとします。
このとき、個人再生を使えば、住宅ローン以外の負債は300万円から100万円まで圧縮できます。これを3年間で返済するとすれば、月3万円程度の返済になります(詳しくは「個人再生手続きを行う場合の返済方法・返済額は?」を参照)。
しかし、住宅ローンの1000万円は、そのまま残ります。もともと住宅ローンを月8万円返済していたとすれば、個人再生を使ったあとは、住宅ローン以外の債務月3万円+住宅ローン月8万円=月11万円の返済が必要になります。
ですので、住宅ローン以外の部分の負担は相当軽くなりますが、住宅ローン自体の負担は通常は変わりません。
この条件で返済を続けていけないのであれば、個人再生手続きを使っても住宅を残すことはできないのです。
条件3は、この制度で残せるのは、実際に本人が住んでいる自宅であるということです。別荘とか、事業用の建物などは残せません。
また、自宅が2つあっても、残せるのは、主に生活に利用している1つだけです。
条件4は、自宅を購入したときやリフォームをしたときに、自宅に抵当権が設定されていることです。通常の住宅ローンでは問題ありません。ただし、その抵当権以外に、別の借金のために抵当権がついていたり、税金の滞納で差し押さえをされている場合には、この制度は使えません。
条件5は、住宅ローンを滞納しすぎると、もはやこの制度でも住宅を残せなくなってしまいます。半年以内なら大丈夫ですが、1年になるとほぼ不可能でしょう。その期間内でも、住宅ローンの滞納が増えると、返済条件が厳しくなっていきますので、住宅を残すことは難しくなってきます。
個人再生で住宅を残す場合の条件をざっと見てきましたが、いかがでしょうか。
さきほども説明したとおり、この制度の条件は非常に複雑です。しかも、今回説明していない条件もいくつかあります。
どちらにしても、個人再生を申し立てる場合には弁護士に依頼する必要がありますので、住宅を残したまま手続きをとりたい、という方は、早いうちに弁護士に相談してください。
条件5で説明したとおり、住宅ローンの滞納が続いてしまうと手遅れになってしまいますから。
当弁護士事務所では債務整理は数多く扱っており、住宅ローンありの個人再生手続きの経験も豊富です。
債務整理のご相談は無料ですので、お悩みの方は、お問い合わせのページをご覧のうえ、ご連絡ください。
次回は、住宅ローンの残額よりも、住宅の価値が大きい場合を説明します。
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【債務整理】 個人再生手続きを行う場合の返済方法・返済額は?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第13回です。
前回(個人再生手続きで手元に残せる財産は?)は個人再生手続きの場合に、一定の財産が残せることを見てきました。
具体的には、個人再生手続きでは、「返済する金額までの価値の財産」を手元に残せるということを具体的に説明してきました。
今回は、個人再生手続きで負債を減額してもらった後、実際にはどうやって返済していくのかを取り上げていきます。
さて、個人再生は、負債を大幅に減額して、その金額を予定通り支払えば、残りは全額免除になるという制度です。
返済額の基本的な計算は、「個人再生手続きとは ~債務は払えないけど破産を避けるには」で説明しましたが、たとえば負債が500万円以内の方は、合計100万円を返済すればよいことになります。
では、その場合、その100万円をどのように返済していけばいいのでしょうか。
個人再生手続きの場合、実は、返済期間は3年間とするのが基本となります。ただし、3年ではどうしても厳しい場合などには、最大5年までのばすこともできます。
3年から5年ですから、36ケ月から60か月の期間内で返済するということです。
そして、基本的には毎月均等額の返済をしていくことになります。
では、実例を少し見てみましょう。
Aさんは、消費者金融3社から次のような借金がありました。
- X社 60万円
- Y社 90万円
- Z社 150万円
これで合計300万円です。この場合、負債が500万円以内ですので、この300万円の負債を100万円に減額します。要するに、3分の1だけ支払えば、残りが免除されることになります。
そこで、借金全体が3分の1になりますので、3社に対する借金も3分に1ずつになります。
- X社 60万円 → 20万円
- Y社 90万円 → 30万円
- Z社 150万円 → 50万円
ここで、こうして減額した借金を、3年間=36ケ月かけて返済することにします。そうすると、3社に対して、36ケ月間、毎月一定額を支払っていくことになりますので、それぞれの返済額を36ケ月で割ります。
- X社 20万円 → 5555円 → 5600円
- Y社 30万円 → 8333円 → 8400円
- Z社 50万円 → 1万3888円 → 1万4000円
端数が出る部分は、少し切り上げてわかりやすい金額にしました。これで返済プランが出来上がります。
3社にそれぞれ、5600円、8400円、1万4000円ずつ支払いますので、これを合計し、毎月2万8000円が返済額になります。
これを36カ月間支払い続け、無事に100万円を支払いきった時点で、借金はすべてゼロになり、債務整理が終了となります。
なお、返済額が合計100万円だと、3年間で返済する場合にはだいたい毎月2万8000円程度、4年間で返済する場合は毎月2万1000円程度、5年間で返済する場合には毎月1万7000円程度を返済する計算になります。
しかも、個人再生の場合には、利息もかかりませんので、5年間まで期間をのばせば、返済は相当に楽になります。
しかし、その反面、期間が長くなればなるほど、失業や病気などの不測の事態が生じる危険も増すため、可能な限り、短い期間で済ませる方が問題が少ないといえるでしょう。
個人再生の場合の具体的な返済プランを見てきましたが、いかがでしょうか。個人再生にはかなりのメリットがあることがおわかりいただいたのではないかと思います。
個人再生を利用するほとんどのケースは、借金額が500万円以内で、圧縮した100万円を3年間で返済するパターンです。
この場合、毎月3万円程度の返済額を用意できれば、個人再生によって借金をすべて清算することができるのです。
借金全額を返すのは難しいけど、破産は避けたい・・・そういう方には個人再生が適切といえるでしょう。
個人再生にはいろいろな条件がありますが、これを使って借金を清算したい、と思った方はぜひ一度ご相談ください。
個人再生が利用できるかどうかや、おおまかな返済プランをご説明いたします。
ご相談の申し込みは、こちらのお問い合わせページからお願いします(債務整理は相談料無料です)。
今回はここまでになります。
次回以降も、個人再生について取り上げていきますね。
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【債務整理】 個人再生手続きで手元に残せる財産は?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第12回です。
前回(個人再生手続きとは ~債務は払えないけど破産を避けるには)は、個人再生の基本的なポイントを説明しました。
個人再生は、現在の債務を大幅に圧縮し、それを3~5年間で支払っていくという手続きです。
負債が400万円なら100万円を返済すればよく、負債が700万円なら140万円を返済すれば残りは免除になるんでしたね。
今回は、個人再生の場合には、手元にある財産・資産を残せるのか、処分しなければならないのかを説明します。
破産手続きの場合には、「破産手続きの流れを見てみよう」で取り上げましたが、基本的には、1個あたり20万円以内の財産は残せますが、20万円を超える財産を残すことはできません。
たとえば、解約金が20万円を超える生命保険や、時価20万円を超えた自動車なども処分を求められます。
それでは、個人再生の場合はどうなるのでしょうか。
実は、個人再生の場合、破産よりも多くの財産を保有することが認められています。これは個人再生の大きなメリットの1つです。
個人再生は、破産とは異なり、債務の一部は返済するため、破産よりも有利に扱われる部分もいくつかあるのです。
では、個人再生ではどの程度の資産を持っていてもよいのでしょうか。
その答えは、「個人再生手続きによる返済額までの財産」は、手元に残すことができます。
具体的に見てみましょう。
前回も取り上げましたが、総債務額が500万円以内の場合、個人再生手続きを利用すれば、債務のうち100万円を返済すれば、残りは免除されます。
この場合の「返済額」は100万円となります。そうすると、このときに手元に残せるのは、この返済額100万円以内の財産ということになります。
ですので、解約金が40万円の生命保険と、時価が50万円の自動車(ローン完済)があったとしても、合計が90万円ですから、両方とも残したまま手続きを行うことができるのです。
もし、債務が700万円の場合は、返済額が140万円となりますので、合計140万円までの価値の財産を手元に残すことができるのです。
破産の場合には1個あたり20万円までの財産しか残せませんから、個人再生の方が非常に広く認められていますよね。
では、債務が400万円なのに、手元に130万円分の財産がある場合、どうしたらいいでしょうか。
返済額は100万円まで圧縮できますが、財産額の方が多くなってしまいます。
この場合、方法は2つあります。
1つは、返済額100万円であるため、130万円ある財産のうち、30万円以上を処分して返済にあてるなどし、手元に残す財産を合計100万円以内にする方法です。ただ、この方法には多少問題があり、使いづらい方法です。
もう1つは、130万円の財産を残すために、返済額を130万円にする方法です。
本来、400万円の債務がある場合には、個人再生では100万円まで圧縮できますが、これより多い金額を返すことは自由なのです。そのため、100万円ではなく、130万円を返済することにすれば、130万円の財産を残すことも可能なのです。
これを簡単に整理すると、以下のようにまとめることができます。
- 個人再生では、返済額以内の財産は処分しないで手元に残すことができる
- 個人再生では、手元に残す財産の金額以上の金額を返済しなければならない
これは、どちらも結局同じ意味ですが、ある程度資産のある方の場合には非常に重要となります。
特に、破産手続きを行うか、個人再生手続きを行うかを判断する際には、このルールを検討する必要があります。
なお、自動車について、一点だけ重要な注意点があります。
それは、ローンの残っている自動車は、価値にかかわらず、残すことはできないという点です。
ローンが残っている自動車の場合、破産や個人再生を行うと、ローン会社が自動車を引き上げてしまいます。
これはローン会社との契約で決められていますので、基本的には従うしかありません。
ですので、ローンが残っている自動車の場合には、破産でも個人再生でも、自動車は取り上げられてしまうのです。
今回は個人再生手続きと手持ち資産についてみてきました。
次回は、個人再生の場合の返済方法を取り上げます。
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【債務整理】 個人再生手続きとは ~債務は払えないけど破産を避けるには
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第11回です。
前回(借金問題を弁護士に頼むタイミングと報酬は?)は、弁護士に債務整理を依頼する場合について見てきました。
その中で、債務整理には3種類の方法があることにも触れています。
これまでは、主に破産手続きについて取り上げてきましたが、今回からは個人再生、民事再生手続きについて見て行きたいと思います。
民事再生という言葉は、ニュースなどでもよく取り上げられています。特に、札幌では、老舗百貨店である丸井今井が2009年に民事再生手続きを行ったことが大きな話題となりました。
民事再生というのは、一般にはこのようなある程度の規模の会社などについて行う事業再生の手法で、倒産はするものの、会社は存続していくという会社再建手続きです。
そのような手続きは自分には関係ない、と思われるかもしれません。
しかし、この民事再生を個人向けにアレンジした制度が認められているのです。その制度として、「小規模個人再生」という手続きが用意されてます。一般的には、個人再生と呼ぶことが多いですね。
個人再生制度は、破産と任意整理(話し合いにょる債務や毎月返済額の減額)との間をとったような制度です。
破産手続きは、ほとんどの財産を債権者への配当にあてるかわりに、債務がすべて免除になります。
しかし、個人再生では、相当の財産を残すことができる代わりに、債務が全部免除されるわけではなく、債務の一部を返済し続けていくことになります。
具体的に見ていきましょう。
札幌市の会社員であるAさんには、およそ300万円の負債がありました。毎月返済額は13万円程度で、とても返済できる金額ではありません。
Aさんは、時価70万円の車を所有しており、この車のローンは完済していました。
この場合、破産と個人再生とでどのような違いがあるでしょうか。
破産手続きの場合、借金300万円はすべて免除となり、全く返済しなくてよいことになります。そのかわり、時価70万円の車を取り上げられ、これを売却して債権者への配当に回さなければならない可能性が高いといえます。
これに対し、個人再生の場合、借金300万円のうち、200万円が免除されますが、100万円の債務を3年間で返済する必要があります。毎月約3万円の返済を36回行うと100万円を完済できます。その時点で、債務はすべてゼロになります。そして、時価70万円の車は、手元に残すことができ、処分する必要はありません。
同じようなケースでも、どちらの手続きをとるかで大きく結果が異なります。
このような比較をすると、たとえば、毎月3万円の返済を3年間続ける余裕のない場合には、個人再生でなく破産を選ぶことになるとわかるでしょう。
また、どうしても今の車を残したい場合には、破産よりも個人再生を選ぶべきといえます。
破産しか選べない事件、個人再生しか選べない事件もありますが、どちらも一応可能だけども、どちらを選択するかという事案もあります。
そのような際には、それぞれの手続きのメリットとデメリットをよく考える必要があるのです。
さて、ここで個人再生を行う際の返済条件を確認しておきます。
重要なのは、①返済総額と、②返済期間です。
①返済総額については、さきほどの事例では、300万円のうち、100万円を返済すれば残りは払わなくてよいことになっていました。
この返済すべき金額はどのように決まるかというと、以下のような基準で計算しています。
- 総負債額が100万円以下のとき → 全額返済
- 総負債額が100~500万円のとき → 100万円返済すれば残りは免除
- 総債務額が500~1500万円のとき → 総債務額の5分の1を返済すれば残りは免除
- 総債務額が1500~3000万円のとき → 300万円を返済すれば残りは免除
- 総債務額が3000~5000万円のとき → 総債務額の10分の1を返済すれば残りは免除
少しややこしいですが、債務の合計額によって、返済総額が変化します。
なお、総債務額が5000万円を超えてしまうと、個人再生は利用できません。
②返済期間についても見てみます。
①で見た返済総額をどのくらいの期間で返済するかですが、これは、3年から5年以内で毎月支払う、というルールがあります。
3年でも4年でも5年でもかまいませんが、基本的に後から変更することはできず、個人再生を申し立てる際にあらかじめ決めておきます。
なお、①の返済総額に対して、個人再生では利息はつきません。利息もすべて免除になります。
たとえば、債務額が400万円、返済期間3年の場合は、総債務額が500万円以下なので、①返済総額100万円です。②返済期間3年(36ヶ月)なので、毎月返済額は2万7777円程度です。
また、総債務額が800万円、返済期間5年の場合は、総債務額が500~1500万円ですので、①返済総額は5分の1にして160万円です。②返済期間5年(60回)なので、毎月返済額は2万6666円です。
毎月返済額は、2つ目の例の方が安くなっていますが、その分期間は長いので、返済総額は高くなっています。
どちらの場合も、毎月3万円程度を3~5年間返済する余裕があるのでしたら、破産ではなく個人再生を行うことが可能といえます。
ここまで見たことを踏まえて、個人再生利用のもっとも基本的なポイントを整理すると、次のとおりです。
・現在の債務額から返済総額を算定すること。
・返済期間を決めて、毎月返済額を計算すること。
・その毎月返済額を、返済期間の間、ずっと返していけるかの確認をすること。
この3ステップを検討し、個人再生が利用可能かの判断を行い、適切な債務整理方法を選択することになります。
個人再生には、これ以外にも複雑なルールやポイントがたくさんありますが、とりあえずはここを押さえておきましょう。
細かいルールについては、次回以降、順番に解説していきたいと思います。
では、今回はここまでにします。
札幌の弁護士が債務整理を解説 【債務整理に関する実践的情報一覧はこちら】
【解決事例】 自己破産により、借金200万円の免除を受けた主婦の事例
【相談内容】
Aさんは、40歳手前の女性でした。Aさんには会社員のご主人と高校生の息子さんが1人いました。
家族3人で、ご主人の名義で取得したマンションに住んでおり、35年の住宅ローンを支払っています。
Aさんは、ご主人から家計を任されていましたが、一時、子どもの学費や、友人に勧められて通ったエステのローンの支払いのため、家計が苦しい時期が続いていました。
ご主人に相談しても、十分な生活費を渡しているはずだと言われましたし、ご主人もボーナスをカットされるなど、収入に余裕はありませんでした。
そのため、Aさんはご主人に内緒でクレジットカードを頻繁に使い、キャッシングなども行うようになりました。
最初は少額の利用でしたが、だんだん利用額が増え、利息の負担も大きくなっていき、ついに借金は200万円に達してしまいました。
しかも、どのカードも限度額まで使用してしまい、これ以上の借入れはできなくなってしまいました。
そこで、ご主人に知られないままなんとか解決できないかと思い、当事務所に相談に来ました。
【解決方法】
Aさんの生活状況からは、200万円の借金を返済することは不可能と思われました。ご主人の収入状況をみても、お子さんの学費の関係もあり、ご主人に協力してもらっても返済することは難しい状況でした。
そこで、Aさんと協議の結果、破産手続きによって債務の免除をしてもらうという方針に決まりました。
破産手続きを行うには、保有する財産の状態と、現在の生活状況を裁判所に説明しなければなりません。
Aさん自身には特にこれといった財産はなく、預貯金や生命保険もほとんどありませんでした。
ローンで購入したマンションはありますが、これはご主人の名義ということですので、Aさん自身の財産には当たりません。ですので、Aさんが破産手続きを行っても、このマンションを手放す必要はありません。
ただ、Aさんはご主人の収入で生活していますので、Aさんの生活状況を説明するためには、ご主人の財産状況や収入の状況を説明する必要があります。
Aさんはご主人には借金や破産のことは話していないとのことで、その点が最大の問題となりました。
Aさんの場合、債務が膨らんだのは生活費不足などによるもので、家族全体の問題であり、ご主人にも無関係ではありません。また、今後の家計のことも考えると、ご主人にも事情をよく把握してもらった方が良いのではないかと弁護士は考えました。
Aさんにもそれを伝えましたが、Aさんは、ご主人との関係などから、どうしても知られるわけにはいかないということで、ご主人に伝えるくらいなら破産もあきらめるという覚悟を持っていました。
そこで、弁護士もAさんの意思を尊重し、ご主人に知らせないまま、破産手続きを行うことにしました。
ただ、それでもご主人の財産や収入に関する資料が必要になりますので、その収集はAさんにお願いし、裁判所にはそのあたりの事情を説明して理解を求めることとしました。
半年程度で準備が整い、札幌地方裁判所にAさんの破産申し立てを行いました。
裁判所からは、何点か質問などもありましたが、大きな問題はなく、破産手続きは申し立てから数か月後に終了し、Aさんの債務はすべて免除されました。
【コメント】
破産手続きを行う際には、本当に支払いができないのか、というチェックが行われます。
そのため、現在保有する財産や、家計の収支状況を詳しく説明する必要があります。
その際、財産や収支状況というのは、破産をする人だけでなく、同居の家族全体をチェックするのが基本となります。ですので、同居の家族の預金通帳や給与明細などの資料が要求されるのです。
そのため、破産を行う場合には、家族に理解や協力を得ることが必要です。
しかし、さまざまな事情により、家族には借金や破産のことをどうしても話せない、という方もいるでしょう。そのような場合、家族の収入や財産に関する資料を集めることができれば、家族に知らせないままで、手続きを進めることも一応認められています。
Aさんの場合も、最後までご主人に知られることなく、無事に破産手続きを終えることができました。
なお、少し紛らわしいですが、家族の資料を提出する場合であっても、破産の効果や影響は、申し立てをした本人にしか及びません。家族の資料は、あくまでも本人の破産を認めるかの判断材料として使うだけですので、家族も一緒に破産するとか、家族の財産が取り上げられる、ということはありません。
Aさんの場合も、ご主人の名義となっているマンションには何も影響がないまま、破産が認められています。
破産手続きには複雑なルールやノウハウが必要となります。破産問題、借金問題でお悩みの方は、当事務所までお早めにご相談ください。札幌市だけでなく、北海道内各地からのご相談に対応いたします。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。
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【債務整理】 借金問題を弁護士に頼むタイミングと報酬は?
札幌の弁護士による債務整理解説コラムです。今回で第10回目となりました。
これからも借金問題でお悩みの方のために、情報提供を続けていきますので、よろしくお願いいたします。
前回(破産をしたら退職しなければならないの?)まで、破産の手続きや注意点について説明してきました。
では、破産や債務整理を行う場合には、実際にどうしたらいいのでしょうか。
破産申し立ては、弁護士がいなくとも自分で行うことは不可能ではありません。
しかし、実際に弁護士に依頼せずに手続きを行おうとすると、準備も非常に大変で、時間も労力も必要です。
また、申し立ての準備が不十分であると、裁判所が調査のために破産管財人を選任する可能性が高くなり、そのために20万円以上の費用を納めなければならなくなります。
そのような負担を軽減するため、破産手続きをする場合には弁護士に依頼すべきでしょう。
しかも、弁護士に依頼した場合には、非常に大きなメリットがあります。
それは、弁護士から債権者(貸し手)に対し、弁護士が破産準備を行うことを手紙で通知すると、それ以降、直接ご本人に対して連絡や請求をすることが禁止されるのです。そのうえ、弁護士が依頼を受けた時点で返済をストップしても問題ありませんので、弁護士に依頼をした段階でもう返済を続ける必要はなくなるのです。
ですので、債権者からの請求をとめたい場合や、次の支払いがどうしてもできそうにない場合には、弁護士から債権者に手紙を出せば、請求を受けなくてすむことになります。
もちろん、弁護士は、借金問題を解決するために依頼を受けますので、ただ請求をとめてくれ、という依頼をお受けすることはできません。
ただ、破産手続きや個人再生、あるいは任意整理などで借金問題を解決したい場合、方針が決まっていない状態でも、依頼を受けて請求をストップすることはできます。
そのため、借金問題で困っている場合には、すぐに弁護士に相談すべきです。
借金が増えて返済が行き詰ってくると、親族から多少でもお金を借りたり、身の回りのものを売ったり、さらにはヤミ金に手を出したりして、目先の返済資金を手に入れようとする方がいます。
しかし、そこまでして多少の金額をかき集めても、それでは利息分の支払いくらいしかできません。借金を返済し切ることは難しいでしょう。
目先の支払いだけでなく、この先、借金全額を返していけるあてがない、と思った時点で、すぐに根本的な解決を検討する必要があります。
時間が経つほど、利息がふくらんで借入額は増えていきますし、返済も難しくなっていきます。
解決するには、早ければ早い方がいいのです。
毎月の返済ができなくなったときや、このままいけばあと数か月で行き詰ってしまう、と思ったとき、まずは弁護士に相談だけでもしてみてください。
かならず良い解決策が見つかりますよ。
でも、そうはいっても、弁護士に依頼するとお金がいくらかかるかわからない、と心配される方もいるでしょう。
当事務所の場合、弁護士報酬は弁護士費用のページに掲載しています。
基本的な事案では、
- 任意整理の場合 1社3万1500円
- 自己破産の場合 26万2500円
- 個人再生の場合 31万5000円
となっています。なお、自己破産と個人再生では、裁判所に納める手数料として1万円あまりが別途必要です。
ただ、借金返済に行き詰っている状態で、弁護士費用をすぐには用意できない方も多いでしょう。
そのような場合、半年程度の分割払いでも対応しています。
弁護士に依頼した時点で、債権者への返済はすべてストップしますので、これまで返済にまわしていた分だけ余裕ができるでしょう。
そこから、分割で弁護士費用を用意いただくことが多いですね。
また、失業などが原因で、分割でも用意が難しい方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合には、法テラスという機関の弁護士費用の援助制度を利用できる場合があります。
利用には条件がありますが、条件をクリアすると、弁護士費用の立替を受けることができ、あとから毎月3000円~10000円ずつの返済をしていけば良いことになります(返済は無利息です)。
当事務所では、このように、弁護士費用の用意が難しい方にも柔軟な対応をしておりますので、弁護士費用の心配はされずにまずご相談ください。
債務整理の相談料は無料ですし、ご相談のみで終了しても結構です。
ご相談の際には、解決方法と、依頼をお受けした場合の弁護士費用の金額もご説明していますので、お気軽にお越しください。
ご相談の流れのページで、個人再生の場合の相談から依頼までの実例を掲載していますので、あわせてご確認ください。
なお、当事務所では札幌市内の方はもちろん、札幌市外の方のご相談・ご依頼にも応じています。
ご相談は札幌市中央区にある当事務所にお越しいただく必要がありますが、それでもよろしければお気軽にご相談ください。
ご相談はお電話かメールフォームによるご予約が必要ですので、詳しくはお問い合わせのページをご覧ください。
「 個人再生手続きとは ~債務は払えないけど破産を避けるには」へ
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【債務整理】 破産をしたら退職しなければならないの?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第9回です。
前回は、破産をしても免除されない債権があることを説明しました(破産をしても返済しなければならない負債とは)。
今回は、話題を少し変えて、破産と仕事の関係について見て行きたいと思います。
「破産をしたら仕事を辞めないとならないのですか」
「破産申し立てをすると、解雇されてしまうのでは」
こういった、破産を行ったことで、仕事や就職に問題がでることを心配されている方は少なくないようです。
仕事がなくなってしまったら生活に困る方がほとんどでしょうから、不安に思うのも当然のことです。
では、実際はどうかといえば、ほとんどの方の場合、「問題ありませんよ」とお答えしています。
破産したことが、仕事や就職に影響することは基本的にないといえます。
ただ、一部、例外的に影響を受ける場合があります。それは、一部の特殊な職業に就いている場合です。
その職業の説明の前に、さきに一般的な場合を見て行きます。
普通の会社員の方や主婦の場合など、大半の場合は、破産が仕事に影響を与えることはまずありません。
理由として、1つは、そもそも破産したことが他人に知られる可能性は相当低いからです。
前に、「破産をすると、家族や職場に迷惑がかかる?」でも触れましたが、破産をしたことは、自分から言い出さなければ、職場にわかることはまずありません。
ですので、破産したことで職場から不利な扱いを受けたり、問題とされたりする可能性はそもそもほとんどないのです。
ただ、そうはいっても、会社に申告したり、なんらかの事情で知られてしまう可能性はあります。
しかし、そのような場合でも、破産したことを理由に不利な処分を受ける心配は不要といえるでしょう。
債務を抱えたり、破産したということは個人的なことがらであり、それがすぐ仕事に悪影響を与えるわけではありません。
また、破産手続きをとった場合、すでにその債務問題は解決したことになりますから、それで不利な扱いを受ける理由はありません。
会社としても特段問題にはしないことが多いですし、解雇などに踏み切っても、それは違法解雇となりますので、通常はそのような対応を取ることはないでしょう。
もちろん、債務の穴埋めのために会社の金品を横領していた場合などには当然解雇の対象となりますが……
ちなみに、よく問題になるのが公務員の場合です。国家公務員でも地方公務員でも、普通の公務員の方は、破産をしても、そのまま仕事を続けることができます。
当事務所でこれまで取り扱ってきた公務員の方々は、特に問題もなく、破産後もそのまま職務を続けています。
なかには上司の指示で破産手続きをとりに来られた方もいたほどです。
(なお、後述していますが、公務員の中でもごく一部の特殊な公務員は破産による制限があります)
ただ、公務員の方の場合には、共済から貸し付けを受けていることが多いように感じます。
その場合、共済は債権者となり、破産の通知をし、返済金の免除をしてもらうことになりますので、その関係で、多少居心地が悪い思いをするかもしれません。
しかし、破産が終わるころには精算も終わりますので、それほど心配される必要はありません。
ここまで、破産手続きをしても仕事には影響がでないことを確認してきました。
ところが、一部の職業は、破産を行ったことで、退職・廃業を余儀なくされることになってしまいます。
数が多いので、すべては挙げられませんが、主なものを以下に掲げます。
- 国家資格に基づく専門職
弁護士、司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士、不動産鑑定士など - 特殊な公務員(一般の公務員は影響ありません)
人事院、公安委員会、公正取引委員会、教育委員会など - 一部の民間職
警備員、生命保険募集人や保険代理店など(事業者以外の方で問題となるのはこの程度です) - 会社の役員
取締役や監査役など
これらの職業のうち1.2.3.は、破産手続き中の者が職務を行うことが法律で禁止されています。
ですので、破産手続きの開始決定を受けた時点で、退職しなければならないこととされています。
また、弁護士や司法書士などの国家資格に基づいた職務に就いている場合は、破産手続き開始決定と同時に資格を失いますし、2.の特殊な公務員も失職ということになります。
3.の警備員や保険外交員の場合は、自主的に退職しなければ解雇されることになるでしょう。
そうすると、たとえば警備員や保険外交員の方は、破産をしてしまうと今後の生活に困ってしまいます。
ただ、多額の債務を負って、現在のままではどちらにしても通常の生活も遅れないということであれば、一度退職を覚悟し、次の仕事をすぐに探すしかない場合も多いでしょう。
もっとも、どうしても退職を避け、借金も解決するということであれば、個人再生という方法があります。
個人再生は、職業への制限がありませんので、警備員などの場合にも在職したまま行うことができますが、そのかわり、破産よりも条件が厳しいことが多いです(詳しくは別の機会に取り上げます)。
ところで、そのような破産による制限がいつまで続くかという点ですが、実は、免責(債務免除)の決定を受け、免責が確定するまでに限られます。
破産の開始決定を受けてから、免責決定が確定するまでは、通常の事案(破産管財人がつかない事案)では3か月前後、破産管財人がつく事案では半年から1年程度(管財業務の量によって大幅に変わりますが)でしょう。
さきほどの1.2.3.による職業の制限は、その期間のみとなりますので、免責が確定したあとは、問題なく就職することができます。
ただし、実際には会社によっては破産の有無などを厳しくチェックするところもあるようで、そのような場合には就職が難しいと思われます。
さて、残った4.ですが、会社の取締役・監査役などの役員も破産により影響を受けます。
しかし、この制限はほかの制限とは少し異なっています。
会社の役員の場合には、破産開始決定がなされると、その時点で役員の資格を失いますが、すぐにまた役員となることが認められています。
ほかの職業の制限は、免責決定が確定するまで続くのですが、会社役員は、破産開始決定の時点だけの制限とされているのです。
とはいっても、会社の役員は株主総会決議で決定する必要がありますから、破産開始決定によって役員を降りた者を、新たに株主総会で選任しないとなりません。しかし、その手続きは、破産開始決定を受けたすぐ次の日に行っても良いことになります。
(ちなみに、このような制限がある理由は、会社の役員というのは株主が会社の経営を委任した相手ですので、破産などの事情が生じたときは、一度役員からはずし、新たに株主がその者を役員として良いかとチェックする必要があるためでしょう)
破産により現在の仕事やこれから就く職業に影響が出るのは、これまで見てきた程度に限られています。
当事務所でも多数の破産事件を取り扱ってきましたが、特に会社員や公務員の方は、ほとんどがそのまま仕事を続けています(事業者の方や、破産を機に自主退職した方もいましたが、それは別の問題によるものです)。
ですので、仕事への影響を心配して破産をあきらめる必要はありません。
今回のテーマは以上となります。
これまで破産手続きの流れや、免責の手続き、破産をした場合の問題点などを取り上げ、破産手続きについては一通り見てきたように思います。
次回からは自己破産を弁護士に依頼する場合の手続きなどを見て行きたいと思います。
札幌の弁護士が債務整理を解説 【債務整理に関する実践的情報一覧はこちら】