【債務整理】 個人再生手続きで手元に残せる財産は?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第12回です。
前回(個人再生手続きとは ~債務は払えないけど破産を避けるには)は、個人再生の基本的なポイントを説明しました。
個人再生は、現在の債務を大幅に圧縮し、それを3~5年間で支払っていくという手続きです。
負債が400万円なら100万円を返済すればよく、負債が700万円なら140万円を返済すれば残りは免除になるんでしたね。
今回は、個人再生の場合には、手元にある財産・資産を残せるのか、処分しなければならないのかを説明します。
破産手続きの場合には、「破産手続きの流れを見てみよう」で取り上げましたが、基本的には、1個あたり20万円以内の財産は残せますが、20万円を超える財産を残すことはできません。
たとえば、解約金が20万円を超える生命保険や、時価20万円を超えた自動車なども処分を求められます。
それでは、個人再生の場合はどうなるのでしょうか。
実は、個人再生の場合、破産よりも多くの財産を保有することが認められています。これは個人再生の大きなメリットの1つです。
個人再生は、破産とは異なり、債務の一部は返済するため、破産よりも有利に扱われる部分もいくつかあるのです。
では、個人再生ではどの程度の資産を持っていてもよいのでしょうか。
その答えは、「個人再生手続きによる返済額までの財産」は、手元に残すことができます。
具体的に見てみましょう。
前回も取り上げましたが、総債務額が500万円以内の場合、個人再生手続きを利用すれば、債務のうち100万円を返済すれば、残りは免除されます。
この場合の「返済額」は100万円となります。そうすると、このときに手元に残せるのは、この返済額100万円以内の財産ということになります。
ですので、解約金が40万円の生命保険と、時価が50万円の自動車(ローン完済)があったとしても、合計が90万円ですから、両方とも残したまま手続きを行うことができるのです。
もし、債務が700万円の場合は、返済額が140万円となりますので、合計140万円までの価値の財産を手元に残すことができるのです。
破産の場合には1個あたり20万円までの財産しか残せませんから、個人再生の方が非常に広く認められていますよね。
では、債務が400万円なのに、手元に130万円分の財産がある場合、どうしたらいいでしょうか。
返済額は100万円まで圧縮できますが、財産額の方が多くなってしまいます。
この場合、方法は2つあります。
1つは、返済額100万円であるため、130万円ある財産のうち、30万円以上を処分して返済にあてるなどし、手元に残す財産を合計100万円以内にする方法です。ただ、この方法には多少問題があり、使いづらい方法です。
もう1つは、130万円の財産を残すために、返済額を130万円にする方法です。
本来、400万円の債務がある場合には、個人再生では100万円まで圧縮できますが、これより多い金額を返すことは自由なのです。そのため、100万円ではなく、130万円を返済することにすれば、130万円の財産を残すことも可能なのです。
これを簡単に整理すると、以下のようにまとめることができます。
- 個人再生では、返済額以内の財産は処分しないで手元に残すことができる
- 個人再生では、手元に残す財産の金額以上の金額を返済しなければならない
これは、どちらも結局同じ意味ですが、ある程度資産のある方の場合には非常に重要となります。
特に、破産手続きを行うか、個人再生手続きを行うかを判断する際には、このルールを検討する必要があります。
なお、自動車について、一点だけ重要な注意点があります。
それは、ローンの残っている自動車は、価値にかかわらず、残すことはできないという点です。
ローンが残っている自動車の場合、破産や個人再生を行うと、ローン会社が自動車を引き上げてしまいます。
これはローン会社との契約で決められていますので、基本的には従うしかありません。
ですので、ローンが残っている自動車の場合には、破産でも個人再生でも、自動車は取り上げられてしまうのです。
今回は個人再生手続きと手持ち資産についてみてきました。
次回は、個人再生の場合の返済方法を取り上げます。
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【離婚】 面会交流の具体的な方法は?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第14回です。
前回(親権のない親が子どもに会う権利はある? ~面会交流とは~)は、養育していない親が子どもと会うという面会交流の概要を説明しました。
今回は、実際に面会交流はどういった方法で行うのか、について見て行きたいと思います。
養育していない親が面会交流を認められた場合、どういった場所でどういう方法で面会交流を行うか、といった点が問題となります。
この「面会交流」という言葉には、実は2つの意味が込められています。
1つは「面会」、つまり親と子どもが会うことです。もう1つは「交流」、つまり面会以外の方法で親子がふれ合うことです。
面会交流は、実際に会うことだけを含んでいる言葉ではありません。
では、実際に、どういった内容の面会交流が認められるのでしょうか。
ある事件で裁判所が実際に認めた面会交流の方法を見てみましょう。
この事件は、父親が子どもの親権を得て、子どもを養育していましたが、それに対して、母親が面会交流を求めたというものでした。
父親は、母親との面会交流を禁止すべきと主張しましたが、裁判所は、次のような内容の面会交流を認めました。
「1 面会回数、日時
(1)回数 毎月1回
(2)日時 第4日曜日の午前11時から同日午後4時の間(時間厳守)
2 子どもの引渡方法
父親は、上記面接開始時に、○○市△△所在の「口口」駐車場において、母親に子どもを引き渡し、母親は、上記面会終了時に、同所において、子どもを父親に引き渡す。
3 子どもに対するプレゼント
父親は、母親が、子どもと面会交流するに際し、誕生日クリスマス、正月のプレゼントを渡すことを認めなければならない。
この場合におけるプレゼントの価格は、子どもの年齢等に照らし、社会通念上相当な限度に留めるものとする。
4 面会日等の変更
当事者は、その協議により、面会実施の日時、子どもの引渡場所、面会の方法など必要な事項を変更することができる。
5 学校行事等への参加
母親は、未成年者らに関する保育園や学校の行事に参加してはならない。
父親は、未成年者らが上記行事に参加した場合において、その状況を撮影したビデオ、写真等があるときは、適宜、母親に提供するものとする。」
面会交流の具体的なやり方は、個々の事案ごとに違いますので、この件は1つの参考と考えて下さい。
この裁判では上の1~5の内容が定められています。
「1 面会回数、日時」では、月に1回、第4日曜日の午前11時から午後4時までの面会を母親に認めています。
そして、「2 子どもの引渡方法」で、実際に面会を行う際の待ち合わせ場所などを具体的に決めています。
「4 面会日等の変更」では、お互いの都合があわないときなどに、話し合いで面会交流の方法を変更できるとされています。
母親と子どもの面会は、この範囲で認められるということです。
それ以外に、「3 子どもに対するプレゼント」では、母親が誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントを子どもに渡してよいとされています。
これは、母親がプレゼントしたいと希望する場合に、父親が邪魔してはならないという意味です。
また、この規定を反対に読むと、これ以外のプレゼントや手紙のやり取りについては、父親が拒否してもよいということになります。
そして、「5 学校行事等への参加」では、入学式、卒業式、運動会などの学校行事へ母親が参加することは禁止していますが、父親が撮った写真やビデオを母親に見せてあげなければならないと定められています。
裁判以外での離婚の場合に、面会交流の方法をここまで厳密に決めることはまずないでしょうが、調停や審判で決定する際には、このような内容を具体的に定めることになります。
この事例では認められていませんが、たとえば、毎月夏休みと冬休みには、母親のもとで1泊2日での外泊を認める、という宿泊付き面会が認められることもあります。
どこまで認められるかはケースバイケースですので、先ほどの事例よりも広く認められることもあれば、狭く制限されることもあります。
このように、面会交流というのは、実際に会う面会だけでなく、電話や手紙でのやり取り、写真や映像を見せてもらうこと、プレゼントを贈ることなど、親と子どもの交流全般に関するものです。
直接会うことは認められない場合でも、手紙やプレゼントは認めるとか、いろいろなバリエーションはありますが、子どもにとってもっとも良い方法を決めていくことになります。
次回は、このような面会交流の方法をどうやって決めるのかを見て行きたいと思います。
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【債務整理】 個人再生手続きとは ~債務は払えないけど破産を避けるには
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第11回です。
前回(借金問題を弁護士に頼むタイミングと報酬は?)は、弁護士に債務整理を依頼する場合について見てきました。
その中で、債務整理には3種類の方法があることにも触れています。
これまでは、主に破産手続きについて取り上げてきましたが、今回からは個人再生、民事再生手続きについて見て行きたいと思います。
民事再生という言葉は、ニュースなどでもよく取り上げられています。特に、札幌では、老舗百貨店である丸井今井が2009年に民事再生手続きを行ったことが大きな話題となりました。
民事再生というのは、一般にはこのようなある程度の規模の会社などについて行う事業再生の手法で、倒産はするものの、会社は存続していくという会社再建手続きです。
そのような手続きは自分には関係ない、と思われるかもしれません。
しかし、この民事再生を個人向けにアレンジした制度が認められているのです。その制度として、「小規模個人再生」という手続きが用意されてます。一般的には、個人再生と呼ぶことが多いですね。
個人再生制度は、破産と任意整理(話し合いにょる債務や毎月返済額の減額)との間をとったような制度です。
破産手続きは、ほとんどの財産を債権者への配当にあてるかわりに、債務がすべて免除になります。
しかし、個人再生では、相当の財産を残すことができる代わりに、債務が全部免除されるわけではなく、債務の一部を返済し続けていくことになります。
具体的に見ていきましょう。
札幌市の会社員であるAさんには、およそ300万円の負債がありました。毎月返済額は13万円程度で、とても返済できる金額ではありません。
Aさんは、時価70万円の車を所有しており、この車のローンは完済していました。
この場合、破産と個人再生とでどのような違いがあるでしょうか。
破産手続きの場合、借金300万円はすべて免除となり、全く返済しなくてよいことになります。そのかわり、時価70万円の車を取り上げられ、これを売却して債権者への配当に回さなければならない可能性が高いといえます。
これに対し、個人再生の場合、借金300万円のうち、200万円が免除されますが、100万円の債務を3年間で返済する必要があります。毎月約3万円の返済を36回行うと100万円を完済できます。その時点で、債務はすべてゼロになります。そして、時価70万円の車は、手元に残すことができ、処分する必要はありません。
同じようなケースでも、どちらの手続きをとるかで大きく結果が異なります。
このような比較をすると、たとえば、毎月3万円の返済を3年間続ける余裕のない場合には、個人再生でなく破産を選ぶことになるとわかるでしょう。
また、どうしても今の車を残したい場合には、破産よりも個人再生を選ぶべきといえます。
破産しか選べない事件、個人再生しか選べない事件もありますが、どちらも一応可能だけども、どちらを選択するかという事案もあります。
そのような際には、それぞれの手続きのメリットとデメリットをよく考える必要があるのです。
さて、ここで個人再生を行う際の返済条件を確認しておきます。
重要なのは、①返済総額と、②返済期間です。
①返済総額については、さきほどの事例では、300万円のうち、100万円を返済すれば残りは払わなくてよいことになっていました。
この返済すべき金額はどのように決まるかというと、以下のような基準で計算しています。
- 総負債額が100万円以下のとき → 全額返済
- 総負債額が100~500万円のとき → 100万円返済すれば残りは免除
- 総債務額が500~1500万円のとき → 総債務額の5分の1を返済すれば残りは免除
- 総債務額が1500~3000万円のとき → 300万円を返済すれば残りは免除
- 総債務額が3000~5000万円のとき → 総債務額の10分の1を返済すれば残りは免除
少しややこしいですが、債務の合計額によって、返済総額が変化します。
なお、総債務額が5000万円を超えてしまうと、個人再生は利用できません。
②返済期間についても見てみます。
①で見た返済総額をどのくらいの期間で返済するかですが、これは、3年から5年以内で毎月支払う、というルールがあります。
3年でも4年でも5年でもかまいませんが、基本的に後から変更することはできず、個人再生を申し立てる際にあらかじめ決めておきます。
なお、①の返済総額に対して、個人再生では利息はつきません。利息もすべて免除になります。
たとえば、債務額が400万円、返済期間3年の場合は、総債務額が500万円以下なので、①返済総額100万円です。②返済期間3年(36ヶ月)なので、毎月返済額は2万7777円程度です。
また、総債務額が800万円、返済期間5年の場合は、総債務額が500~1500万円ですので、①返済総額は5分の1にして160万円です。②返済期間5年(60回)なので、毎月返済額は2万6666円です。
毎月返済額は、2つ目の例の方が安くなっていますが、その分期間は長いので、返済総額は高くなっています。
どちらの場合も、毎月3万円程度を3~5年間返済する余裕があるのでしたら、破産ではなく個人再生を行うことが可能といえます。
ここまで見たことを踏まえて、個人再生利用のもっとも基本的なポイントを整理すると、次のとおりです。
・現在の債務額から返済総額を算定すること。
・返済期間を決めて、毎月返済額を計算すること。
・その毎月返済額を、返済期間の間、ずっと返していけるかの確認をすること。
この3ステップを検討し、個人再生が利用可能かの判断を行い、適切な債務整理方法を選択することになります。
個人再生には、これ以外にも複雑なルールやポイントがたくさんありますが、とりあえずはここを押さえておきましょう。
細かいルールについては、次回以降、順番に解説していきたいと思います。
では、今回はここまでにします。
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【離婚】 親権のない親が子どもに会う権利はある? ~面会交流とは~
札幌の弁護士による離婚解説コラム第13回です。
前回(一度決めた親権者をあとから変更できる?)まで、親権者の決め方などを見てきました。
今回からは、親権者を決めて離婚したあと、親権者ではない方の親と子どもは会うことができるのか、会わせなければならないのか、といった問題を取り上げます。
同居していない親と子どもとが会ったり、連絡をとりあったりすることを、「面会交流」と呼びます。以前は、これを「面接交渉」と呼んでいました。
面接交渉という言葉はなんとも堅苦しいこともあって、最近は面会交流という言葉が使われることが多くました。
そして、今年の4月の民法改正では、「子との面会及びその他の交流」という表現が採用されましたので、今後は「面会交流」というのが正式な用語といえるでしょう。
さて、この別居の親が子どもと会うという面会交流について、法律ではどう規定されているのでしょうか。
実は、法律では、民法766条で「父母が協議上の離婚をするときは、・・・父又は母と子との面会及びその他の交流・・・について必要な事項は、その協議で定める」としか規定されておらず、具体的な内容は決められていません。
そして、決め方の基準については、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と定められているだけです。
子どもの利益を優先して考慮して、協議で決めてください、ということしか法律には書かれていないのです。
では、この面会交流は、必ず認められるものなのでしょうか。
結論からいうと、面会交流は基本的に認められるべきものです。例外的な場合には認められないこともありますが、多くの事案では、面会の機会は認められるべきといえます。
ただ、離婚トラブルの中では、夫婦間の対立が深まっていることも多く、別居している親には子どもは会わせない、という主張がされることもめずらしくありません。
しかし、そのような主張が調停や審判で行われた場合でも、多くの事案では、裁判所も面会交流を認め、子どもに会わせることを命じています。
では、なぜ面会交流が認められるのでしょうか。
面会交流が争いになる事案では、自分も親だから子どもに会う権利があるとか、浮気をして離婚の原因を作った親には会う権利はないとか、そういった意見が当事者から出ることがあります。
しかし、面会交流というのは、親の権利とは考えられていません。
実は、面会交流というのは、子どもが自分の親と会う権利のことで、親は、子どもの面会交流を行わせる義務を負う、というのが正しい理解なのです。
さきほど見た民法766条では、面会交流は、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と規定されており、子どもための親の義務を定めています。
また、日本も批准する子どもの権利条約9条3項では、「締約国は、・・・児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」と規定されており、子どもには親と関係や接触を維持する権利があると定めています。
ですので、子どもを養育している親も、別居している親も、子どもが自分の親と触れあえるよう協力する義務があるといえます。
子どもにとっては、離婚をしていたとしても、自分の本当の父親も母親も一人しかいません。
親同士が仲が悪いからといって、子どもと相手親との関係を断たせてしまえば、子どもにとっては両方の親とふれあうという機会が失われてしまい、子どものためになりません。
民法で「子の利益を最も優先して考慮」するというのは、親の利益を優先してはならない、ということを意味しています。
これまで見てきたような理由から、面会交流というのは基本的に認められることになっており、両親が協力して、面会の機会を子どもに与えてあげなければなりません。
しかし、それでも面会交流が認められない場合もあるのは事実です。
たとえば相手親が子どもに暴力を振るっていたなど、面会を認めることが子どもにとって強い悪影響を与える場合、子どもとの面会交流を認めない方が子どもの利益になる、という結論になるでしょう。
このように見てくると、相手親の面会交流が認められるかといった点自体が強く争われるべき事案は、決して多くはありません。
仮に離婚する場合であっても、子どもの問題を考える際には、両親が協力して対応するというスタンスが重要です。
夫婦間の問題を考える際と、子どもの問題を考える際とでは、視点や考え方を変えて対応する必要があるでしょう。
なお、参考までに、法務省が作成している面会交流に関するリーフレットをぜひご覧ください。
面会交流の考え方などが、わかりやすく整理されています。
今回は面会交流とはなにか、を中心に見てきました。
次回からは、面会交流の決め方や具体的は面会方法などを取り上げたいと思います。
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【解決事例】 無銭飲食で逮捕されたが、嫌疑不十分で不起訴となった事例
【事件の内容】
Aさんは、ある日の深夜、飲み屋をはしごし、だいぶ酔いがまわった状態で、札幌市内にある居酒屋に行きました。
Aさんはこのお店に初めて来ましたが、お酒をだいぶ飲みすぎてしまい、正常な行動がとれないような状態になってしまいました。
そうすると、居酒屋の店員から、もう帰ってほしいと言われ、かっとなり、それなら金は払わないと怒鳴ってしまいました。
そこで、店員は無銭飲食だと思い、警察を呼びました。
現場を訪れた警察は、Aさんにお金を払うよう言いましたが、Aさんは、居酒屋の店員の態度に腹を立て、いきなり警察を呼ばれた動揺もあってか、こんなお店に払うお金はない、と言ってしまいました。
警察官は、Aさんがお金を持っていないのだと判断し、Aさんを無銭飲食(詐欺)の容疑で逮捕しました。Aさんは札幌市内の警察署に拘束されてしまいました。
逮捕の3日目に勾留(捜査のために10日程度、身柄拘束をすること)され、その時点で秋山弁護士が接見し、弁護人になりました。
【弁護活動】
まず、弁護士がAさんから詳しく事情を聴いたところ、実は、Aさんは当時、支払いをするのに十分なお金を持っていることがわかりました。
お金を持っていたのに、酔っぱらっていたためか、ついかっとなってお金を払わない、と強く言ってしまったとのことでした。
ところが、警察はAさんがお金を持っていたのを後から知って驚いたものの、Aさんに、「お金を持っていたことを本当は忘れていて、最初から踏み倒すつもりだったんだろう」という無茶な追及を続けていたのです。
警察の取調べは相当厳しいようでしたが、弁護人からはAさんに対応方法を丁寧に教え、警察署にも抗議を入れることとしました。
Aさんには取調べの際にどういったことを話したらよいかなどの対策を協議しました。
Aさんはお金を払うのを拒否してしまいましたが、これは単なる金銭トラブルです。刑事事件に問うようなものではありません。
無銭飲食になるには、最初からお金を踏み倒すつもりであったこと、つまり最初からだますつもりであったことが必要です。
Aさんは、売り言葉に買い言葉でこんな店にお金を払いたくない、と言ってしまっただけで、本当に払わないつもりはなかったのです。ところが、すぐに警察を呼ばれ、動揺しているうちに逮捕されてしまったのでした。
弁護人は、Aさんに取調べ対策を教えると同時に、迷惑をかけてしまった居酒屋へ謝罪と弁償に訪れました。
居酒屋のオーナーには、事件の真相や本人の反省の様子を伝えると、オーナーは飲食代金を払ってもらえればそれで良いと言ってくれましたので、本人から預かったお金で弁償し、示談が成立しました。
犯罪が成立するかどうかとは別に、払うべきものをしっかり払うのは当然のことですので、早い段階で示談を行ったのです。
その後、当初の勾留期限(逮捕から約10日ほどです)が来ました。Aさんは、代金を踏み倒すつもりなんてなかったとの言い分をがんばってつらぬいていました。
事件の内容は単純で、関係者も店員とAさんくらいしかいませんので、10日あれば処分が決まるだろうと予測していました。
ところが、検察官は、Aさんの処分を決めるにはまだ捜査が足りないと話し、さらに10日間、勾留を続ける許可を裁判所に求めました。
弁護人は、これ以上の捜査は不要であることを書面に記載して提出し、裁判官とも面談して理解を求めました。しかし、裁判官は検察官の請求通り、10日間の延長を認めてしまいました。
しかし、これほどシンプルな事件でこれ以上Aさんを身柄拘束する必要はないことに加え、Aさんが十分なお金を持っていたことや、この居酒屋の前に行ったお店ではどこもお金を払っていることなどから、Aさんが無銭飲食をするつもりはなかったことは明らかでした。
ところが、これ以上身柄拘束を続けられ、自白を求められ続ければ、Aさんは警察がいうような無茶な言い分を認めてしまいかねません。
そこで、勾留の延長を認めた裁判所の判断に対し、翌日、すぐに異議申し立て(「準抗告」といいます)を行いました。
お昼過ぎに出した準抗告は、夜の8時ごろに結論が出ました。
裁判所の判断は、準抗告を認め、Aさんをすぐに釈放するというものでした。事件が単純であること、すでに十分捜査をしていることなどを理由に、これ以上の勾留は必要ないとの判断でした。
Aさんは、夜9時ごろに無事に釈放されました。
その後、結局は一度も取調べに呼ばれることもなく、後日、Aさんの容疑は嫌疑不十分(犯罪したという確証がない)という理由で、不起訴になりました。
Aさんは、これからはお酒を控えることを弁護士と約束し、もとの生活に戻っていきました。
この事件では、Aさんが弁護士のアドバイスに従い、厳しい取調べにも負けなかったことと、早期の釈放を求めた弁護士の活動がうまくいったことが、良い結果につながったといえるでしょう。
刑事事件は、このように早い段階からの対応が良い結果につながることが多いといえます。犯罪の捜査を受けている方や、家族が逮捕されてしまった方は、すぐにご相談ください。当事務所では、札幌市だけでなく、近隣市町村の方からのご依頼も受け付けております。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。
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【解決事例】 自己破産により、借金200万円の免除を受けた主婦の事例
【相談内容】
Aさんは、40歳手前の女性でした。Aさんには会社員のご主人と高校生の息子さんが1人いました。
家族3人で、ご主人の名義で取得したマンションに住んでおり、35年の住宅ローンを支払っています。
Aさんは、ご主人から家計を任されていましたが、一時、子どもの学費や、友人に勧められて通ったエステのローンの支払いのため、家計が苦しい時期が続いていました。
ご主人に相談しても、十分な生活費を渡しているはずだと言われましたし、ご主人もボーナスをカットされるなど、収入に余裕はありませんでした。
そのため、Aさんはご主人に内緒でクレジットカードを頻繁に使い、キャッシングなども行うようになりました。
最初は少額の利用でしたが、だんだん利用額が増え、利息の負担も大きくなっていき、ついに借金は200万円に達してしまいました。
しかも、どのカードも限度額まで使用してしまい、これ以上の借入れはできなくなってしまいました。
そこで、ご主人に知られないままなんとか解決できないかと思い、当事務所に相談に来ました。
【解決方法】
Aさんの生活状況からは、200万円の借金を返済することは不可能と思われました。ご主人の収入状況をみても、お子さんの学費の関係もあり、ご主人に協力してもらっても返済することは難しい状況でした。
そこで、Aさんと協議の結果、破産手続きによって債務の免除をしてもらうという方針に決まりました。
破産手続きを行うには、保有する財産の状態と、現在の生活状況を裁判所に説明しなければなりません。
Aさん自身には特にこれといった財産はなく、預貯金や生命保険もほとんどありませんでした。
ローンで購入したマンションはありますが、これはご主人の名義ということですので、Aさん自身の財産には当たりません。ですので、Aさんが破産手続きを行っても、このマンションを手放す必要はありません。
ただ、Aさんはご主人の収入で生活していますので、Aさんの生活状況を説明するためには、ご主人の財産状況や収入の状況を説明する必要があります。
Aさんはご主人には借金や破産のことは話していないとのことで、その点が最大の問題となりました。
Aさんの場合、債務が膨らんだのは生活費不足などによるもので、家族全体の問題であり、ご主人にも無関係ではありません。また、今後の家計のことも考えると、ご主人にも事情をよく把握してもらった方が良いのではないかと弁護士は考えました。
Aさんにもそれを伝えましたが、Aさんは、ご主人との関係などから、どうしても知られるわけにはいかないということで、ご主人に伝えるくらいなら破産もあきらめるという覚悟を持っていました。
そこで、弁護士もAさんの意思を尊重し、ご主人に知らせないまま、破産手続きを行うことにしました。
ただ、それでもご主人の財産や収入に関する資料が必要になりますので、その収集はAさんにお願いし、裁判所にはそのあたりの事情を説明して理解を求めることとしました。
半年程度で準備が整い、札幌地方裁判所にAさんの破産申し立てを行いました。
裁判所からは、何点か質問などもありましたが、大きな問題はなく、破産手続きは申し立てから数か月後に終了し、Aさんの債務はすべて免除されました。
【コメント】
破産手続きを行う際には、本当に支払いができないのか、というチェックが行われます。
そのため、現在保有する財産や、家計の収支状況を詳しく説明する必要があります。
その際、財産や収支状況というのは、破産をする人だけでなく、同居の家族全体をチェックするのが基本となります。ですので、同居の家族の預金通帳や給与明細などの資料が要求されるのです。
そのため、破産を行う場合には、家族に理解や協力を得ることが必要です。
しかし、さまざまな事情により、家族には借金や破産のことをどうしても話せない、という方もいるでしょう。そのような場合、家族の収入や財産に関する資料を集めることができれば、家族に知らせないままで、手続きを進めることも一応認められています。
Aさんの場合も、最後までご主人に知られることなく、無事に破産手続きを終えることができました。
なお、少し紛らわしいですが、家族の資料を提出する場合であっても、破産の効果や影響は、申し立てをした本人にしか及びません。家族の資料は、あくまでも本人の破産を認めるかの判断材料として使うだけですので、家族も一緒に破産するとか、家族の財産が取り上げられる、ということはありません。
Aさんの場合も、ご主人の名義となっているマンションには何も影響がないまま、破産が認められています。
破産手続きには複雑なルールやノウハウが必要となります。破産問題、借金問題でお悩みの方は、当事務所までお早めにご相談ください。札幌市だけでなく、北海道内各地からのご相談に対応いたします。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。
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【離婚】 一度決めた親権者をあとから変更できる?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第12回です。
前回(決めた養育費を支払えなくなってしまった場合)は、子どもの養育費をあとから変更する方法を見てきました。
今回は、親権について、あとから変更する方法について取り上げます。
離婚の際に未成年の子どもがいる場合、必ず親権者を決めなければなりません。
親権者の決め方については、「必ず母親が親権を得る? ― 親権者の決め方は」で詳しく取り上げましたが、離婚時の当事者の協議で決めるか、話し合いがつかなければ調停・審判で決定してもらうことになります。
では、そのように親権者を一度決めたけれども、あとから変更したい、という場合はどうしたらいいのでしょうか。
実は、離婚の際に親権者を決めるときとは違い、あとから親権者を変更する場合には、当事者の協議だけでは認められません。
必ず、家庭裁判所で調停・審判という手続きを行わなければならないことになっています。
一度決まった親権者がすぐに変わってしまっては、子どもも周囲の人も混乱しますので、変更するには裁判所の関与が必要ということです。
ですので、あとから親権者を変更するには、裁判所の関与・判断を受け、変更を認めてもらわなければならないのです。
では、どのような場合に変更が認められるのでしょうか。
親権者変更には、大きく2つのパターンがあります。
1つは、親権者は健在だけども、親権者や子どもの生活状況が変わり、親権者を変更したい場合です。もう1つは、これまでの親権者が亡くなってしまうなど、親権者がいなくなってしまった場合です。
1つ目のケースについては、これまでの親権者が引き続き健在ですから、現在の親権者のもとでの生活には問題があることが必要となるでしょう。
親権者の判断基準は、子どもにとって、誰が親権者となるのがもっとも適切なのかという、子どもの利益という視点から検討します。
たとえば、現在の親権者が病気などにより養育困難となった場合や、現在の親権者が子どもに暴力をふるうなど適切な養育をしていない場合には、変更の必要性が高いといえます。
しかし、現在の生活に問題がなければ、あえて親権者を変更して混乱を生じさせるべきではないため、なかなか変更が認められないのが実情でしょう。
もちろん、変更を求める場合には、変更した方が子どものためになる、という主張立証を行う必要がありますので、親権者になりたい方の生活状況や子どもとの関係も重要な考慮要素になります。
2つめの、現在の親権者が亡くなってしまった場合、親権者はどうなるのでしょうか。
たとえば、親権者であった母親が亡くなってしまった場合、自動的に、父親が親権者になるのでしょうか。
実は、現在の親権者が亡くなったとしても、自動的に親権者が移ることはありません。
このような場合であっても、家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行わなければならないのです。
そして、裁判の場で、親権者として適切かどうかを判断されることになります。
ちなみに、父母とも亡くなってしまった場合のように、親権者がいない場合には、未成年後見人という立場の監督者を家庭裁判所が選任します。
通常、これは祖父母などの親戚を後見人として、その後の養育や財産管理を行うことになります。
これまで見てきたように、前回の養育費や今回の親権は、どちらも、離婚時に決定するのが本来ですが、あとから変更する制度も用意されています。
ただし、どちらも、離婚後、生活の状況などのお互いの事情が大きく変わったことが必要になります。
特に事情が変わったところはないのに、気持ちが変わったとか、やっぱり変えてほしい、というだけではまず認められません。
そのため、離婚時に慎重に検討することが重要となってくるのです。
子どもに関する問題をしばらく見てきましたが、次回は、子どもと一緒に暮らしていない親と子どもとの面会交流をテーマとする予定です。
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【刑事事件】 弁護士・弁護人は何をするの?
札幌の弁護士による刑事事件解説コラム第8回です。
前回(保釈の際に守らなければならない条件とは)まで保釈について説明をしてきました。
今回からは、刑事事件の際の弁護士の役割などについて取り上げていきます。
刑事事件では、弁護士のことを「弁護人」と呼びます。
国選弁護人や私選弁護人、という言葉は聞いたことがあると思います。
では、弁護人は実際、どういった役割を果たしているのでしょうか。今回は、4つに分けて簡単に見ていきます。
1 被疑者・被告人との打ち合わせや面会
弁護士は、事件の相談や依頼を受けた段階では、その事件のことを何も知りません。
また、事件について一番詳しいのは当事者となっている被疑者、被告人である依頼者です。
そのため、弁護人にとってもっとも重要な仕事は、被疑者・被告人との打ち合わせです。
特に、被疑者・被告人が身柄拘束をされている場合には、弁護人が面会に行くことが重要な意味を持ちます。
たとえば、警察の留置場に身柄拘束をされている場合、基本的には家族や友人もご本人と面会することができます。
しかし、一回の面会時間は15分程度に限定されており、時間帯も平日の日中のみとされています。
これでは、突然身柄拘束され、多くの不安を抱える被疑者や家族にとっては十分とはいえないでしょう。
これに対し、弁護人は、留置場では時間制限なく、いつでも本人を面会することが認められています。
私自身、警察の留置場に夜中前に面会に出かけ、2,3時間打ち合わせをし続けたこともありました。
拘束されている被疑者にとって、弁護人との面会は、警察の捜査や今後の処分に関する情報を得たり、今後の対策を打ち合わせるだけでなく、警察官以外の人と話をして気分転換をするという意味も持っています。
いずれにしても、弁護人にとって、被疑者・被告人との打ち合わせがもっとも重要な仕事です。
2 身柄拘束からの解放
身柄拘束をされた被疑者・被告人にとっては、一刻も早く釈放してもらいたいというのが切実な思いでしょう。
もちろん、身柄拘束を避けられない事件も少なくありませんが、弁護人の熱意と活動次第で、身柄拘束から解放してもらえる事件も確かにあります。
たとえば、逮捕された直後であれば、勾留をしないで釈放するよう求めることがあります。
また、勾留が認められてしまっても、それに対して異議申し立てを行い、直ちに釈放するよう要求することもあります。
起訴され、裁判にかけられることが決まった場合であっても、保釈の申請をして、自宅から裁判所に出席することを認めてもらえる場合もあります。
このような、不必要な身柄拘束から、少しでも早く解放されるよう尽力することも弁護士の重要な役割といえます。
3 裁判の準備、関係者との打ち合わせ、示談交渉
起訴されて裁判にかけられてしまった場合、裁判の準備を行うことは弁護人として基本的な職務の1つです。
その活動のなかで、関係者と打ち合わせを行うことがあります。
たとえば、重要な証人に事情を聴いたり、被告人を今後監督してくれる家族や職場の上司と打ち合わせをしたります。
また、他人を死傷させたり、損害を負わせた事件で非常に重要な活動として、被害者との示談交渉を行います。
もちろん、弁償するだけの資力がなければ難しいこともありますが、被害者へ事件の動機や反省の状況を説明したり、弁償の打診を行ったりします。
このような被害者との協議は、加害者本人や家族が行うと感情的になり、かえってこじれてしまうことも珍しくありません。
事件によって他人に与えた迷惑・損害を穴埋めすることは、事件の責任をとるために欠かせない行為ですし、もちろん、刑や処分の重さにも影響してきます。
ですので、被害者との協議・示談は弁護活動の中でも重要度の高い活動です。
4 公判活動
弁護人は、公判に向けて、1~3のような活動を行ってきます。
その集大成となるのが、公判期日での弁護活動です。
自白事件では、事件後、被告人がどのように反省を深め、どのように責任を取ろうとしてきたのか、被告人に本当にふさわしい刑はどういったものなのかを、必要な証拠や尋問などにより明らかにし、裁判所を説得します。
否認事件では、検察官の主張立証を打ち崩し、被告人の言い分が正しいことを明らかにしていきます。
どちらの場合も、十分な事前準備や打ち合わせが必要となりますし、公判の場での臨機応変な対応も要求されます。
そのような弁護活動を踏まえて、判決が言い渡されます。
弁護人が行う活動はこのほかにも多くありますが、弁護人としての基本的な活動はこのようなものです。
前にも見てきましたが、逮捕から起訴・不起訴の決定までは長くても二十数日、自白事件であれば起訴から公判が終わるまで1か月程度しかないことも多いでしょう。
そのような短期間で十分な弁護活動を行っていく必要がありますので、弁護人には、十分な経験と迅速さが要求されるといえます。
いかがでしたでしょうか。
刑事事件には、警察や検察官、裁判所といった専門的・組織的な知識を持った相手に、対等な立場で言い分を主張立証していく必要があります。
そのため、専門的な知識・経験のない被疑者や被告人のみではほとんど対抗できないおそれが高いでしょう。
適正な裁判を受けるには、今回取り上げたような活動を弁護人が行うことが不可欠ですので、少しでも早い段階で弁護士に依頼するべきです。
当事務所では、逮捕前から起訴後までのどの段階からでも相談・依頼を受け付けていますので、お悩みの方はすぐにご相談ください。
次回も弁護人に関するテーマを取り上げる予定です。
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【刑事事件】 保釈の際に守らなければならない条件とは
前回は、保釈金を立て替えてくれる制度を取り上げました。
保釈については、今回で一応終わりの予定ですが、最後に、保釈の際に守る条件について触れておきます。
保釈が認められる場合には、必ず、保釈の際に守らなければならない条件を裁判所から指示されます。
その条件は、事件によって多少変わることがありますが、だいたい、次のようなものです。
- 保釈請求の際に届け出た住所に住むこと。引っ越す場合には事前に許可を得ること。
- 海外旅行や、3日以上の旅行に行く際には事前に裁判所の許可を得ること。
- 裁判所から呼び出された日時に、必ず出席すること。
- 証拠隠滅や逃亡行為と疑われるような行動を行わないこと。
- 共犯者がいる事件では、共犯者と一切連絡をとらないこと。
これを見て、いかがでしょうか。
簡単な条件だと思ったのではないでしょうか。
実際、保釈の際の条件は、普通に生活していれば違反することはまずありません。
ただ、共犯者がいる事件では、共犯者と連絡をとらないという点に注意が必要です。
共犯者が親しい友人などの場合、事件に関することとは無関係でも、連絡をとりあうことが禁止されますので、注意しないとうっかり違反するおそれがあります。
そして、保釈中はこれらの条件に違反しなければ、まったく自由に生活してよいということです。
仕事をしたり、遊びにいったりというのも自由ですし、1泊2日の旅行は許可なくでき、長い旅行も裁判所の許可を受けておけば問題ありません。
裁判の準備のために弁護士事務所に来てもらったり、裁判に必ず出席することさえ守れば、生活はもとどおり行うことができます。
ですので、保釈が認められると認められないとでは、まったく負担が違ってしまうのです。
では、保釈の条件を破った場合はどうなるのでしょうか。
これには、重大なペナルティがあります。
1つは、保釈の取り消しです。条件違反により、保釈はなかったことになり、再び身柄拘束されてしまいます。
それから、保釈金の没収です。保釈の際に裁判所に納めた保釈金が、没収されてしまい、もう戻ってこなくなります。
前回紹介した保釈金立替業者を利用していた場合には、申込をしてくれた家族が全額の返済義務を負わされることになります。
そして、違反の直接のペナルティではありませんが、裁判所との約束を破ってしまった以上、裁判で言い渡される刑が重くなる危険があります。
このように、保釈の条件に違反したときには、重い制裁がありますので、絶対に条件を守るように心掛けなければなりません。
実際は、保釈の条件に違反して保釈金が取り消される人はごく一部にすぎませんから、大半の方は守っていますが、一部であっても違反する人もいますので、注意は必要です。
これまで、刑事事件の流れや保釈について詳しく取り上げてきました。
次回からは、刑事事件における弁護士の役割について説明したいと思います。
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【債務整理】 借金問題を弁護士に頼むタイミングと報酬は?
札幌の弁護士による債務整理解説コラムです。今回で第10回目となりました。
これからも借金問題でお悩みの方のために、情報提供を続けていきますので、よろしくお願いいたします。
前回(破産をしたら退職しなければならないの?)まで、破産の手続きや注意点について説明してきました。
では、破産や債務整理を行う場合には、実際にどうしたらいいのでしょうか。
破産申し立ては、弁護士がいなくとも自分で行うことは不可能ではありません。
しかし、実際に弁護士に依頼せずに手続きを行おうとすると、準備も非常に大変で、時間も労力も必要です。
また、申し立ての準備が不十分であると、裁判所が調査のために破産管財人を選任する可能性が高くなり、そのために20万円以上の費用を納めなければならなくなります。
そのような負担を軽減するため、破産手続きをする場合には弁護士に依頼すべきでしょう。
しかも、弁護士に依頼した場合には、非常に大きなメリットがあります。
それは、弁護士から債権者(貸し手)に対し、弁護士が破産準備を行うことを手紙で通知すると、それ以降、直接ご本人に対して連絡や請求をすることが禁止されるのです。そのうえ、弁護士が依頼を受けた時点で返済をストップしても問題ありませんので、弁護士に依頼をした段階でもう返済を続ける必要はなくなるのです。
ですので、債権者からの請求をとめたい場合や、次の支払いがどうしてもできそうにない場合には、弁護士から債権者に手紙を出せば、請求を受けなくてすむことになります。
もちろん、弁護士は、借金問題を解決するために依頼を受けますので、ただ請求をとめてくれ、という依頼をお受けすることはできません。
ただ、破産手続きや個人再生、あるいは任意整理などで借金問題を解決したい場合、方針が決まっていない状態でも、依頼を受けて請求をストップすることはできます。
そのため、借金問題で困っている場合には、すぐに弁護士に相談すべきです。
借金が増えて返済が行き詰ってくると、親族から多少でもお金を借りたり、身の回りのものを売ったり、さらにはヤミ金に手を出したりして、目先の返済資金を手に入れようとする方がいます。
しかし、そこまでして多少の金額をかき集めても、それでは利息分の支払いくらいしかできません。借金を返済し切ることは難しいでしょう。
目先の支払いだけでなく、この先、借金全額を返していけるあてがない、と思った時点で、すぐに根本的な解決を検討する必要があります。
時間が経つほど、利息がふくらんで借入額は増えていきますし、返済も難しくなっていきます。
解決するには、早ければ早い方がいいのです。
毎月の返済ができなくなったときや、このままいけばあと数か月で行き詰ってしまう、と思ったとき、まずは弁護士に相談だけでもしてみてください。
かならず良い解決策が見つかりますよ。
でも、そうはいっても、弁護士に依頼するとお金がいくらかかるかわからない、と心配される方もいるでしょう。
当事務所の場合、弁護士報酬は弁護士費用のページに掲載しています。
基本的な事案では、
- 任意整理の場合 1社3万1500円
- 自己破産の場合 26万2500円
- 個人再生の場合 31万5000円
となっています。なお、自己破産と個人再生では、裁判所に納める手数料として1万円あまりが別途必要です。
ただ、借金返済に行き詰っている状態で、弁護士費用をすぐには用意できない方も多いでしょう。
そのような場合、半年程度の分割払いでも対応しています。
弁護士に依頼した時点で、債権者への返済はすべてストップしますので、これまで返済にまわしていた分だけ余裕ができるでしょう。
そこから、分割で弁護士費用を用意いただくことが多いですね。
また、失業などが原因で、分割でも用意が難しい方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合には、法テラスという機関の弁護士費用の援助制度を利用できる場合があります。
利用には条件がありますが、条件をクリアすると、弁護士費用の立替を受けることができ、あとから毎月3000円~10000円ずつの返済をしていけば良いことになります(返済は無利息です)。
当事務所では、このように、弁護士費用の用意が難しい方にも柔軟な対応をしておりますので、弁護士費用の心配はされずにまずご相談ください。
債務整理の相談料は無料ですし、ご相談のみで終了しても結構です。
ご相談の際には、解決方法と、依頼をお受けした場合の弁護士費用の金額もご説明していますので、お気軽にお越しください。
ご相談の流れのページで、個人再生の場合の相談から依頼までの実例を掲載していますので、あわせてご確認ください。
なお、当事務所では札幌市内の方はもちろん、札幌市外の方のご相談・ご依頼にも応じています。
ご相談は札幌市中央区にある当事務所にお越しいただく必要がありますが、それでもよろしければお気軽にご相談ください。
ご相談はお電話かメールフォームによるご予約が必要ですので、詳しくはお問い合わせのページをご覧ください。
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