保証人にはいつ請求したらいいの? 弁護士による家賃回収2
不動産に強い札幌の弁護士による【賃貸借解説コラム】第2回です。
前回(家賃を滞納されてしまったら・・・ 弁護士による家賃回収)は滞納された家賃の回収について説明しました。
そのなかで、家賃の滞納された場合、入居者からの回収は難しいことも多いと説明しました。
このような場合に重要となるのが、賃貸借契約時の連帯保証人の存在です。
1 連帯保証人にはどういう責任があるか
単なる「保証人」と「連帯保証人」は法律上大きく異なりますが、一般の契約書等では「連帯保証人」とされていることが大半です。
連帯保証人は、一言でいえば、賃貸借契約に関して、借り主本人と全く同じ義務を負います。
借り主が家賃を滞納したり、建物を壊してしまって賠償しなければならなかったりした場合、連帯保証人も全額について責任を負うことになります。
ここで、よく勘違いされていることがあります。それは、連帯保証人は、「本人がどうしても支払わなかったときに初めて責任が生じる」という誤解です。
実は、法律上、連帯保証人は、本人と全く同じ責任を負いますので、極端なことをいえば、本人に請求するより先に連帯保証人へ請求を行ってもかまわないことになっているのです。
ですので、「まだ滞納が1回だし、本人が来月は払うといっているから連帯保証人へは請求できない」というのは勘違いとなります。
もっとも、常識的には、まず借り主自身が自分で支払うべきですので、借り主より先に連帯保証人へ請求することはあまりないでしょう。
2 連帯保証人へは早めに請求を!
今回のタイトルは「保証人にはいつ請求したらいいの?」というものでした。
答えは、借り主本人が家賃を滞納し始めたり、滞納を繰り返すようになったりしたときは、すぐに連帯保証人へ請求するべきです。
何ヶ月も滞納がたまったり、本人が必ず支払うと約束した期限を待つ必要はありません。
このようにすぐに請求することには、2つの効果があります。
1つは、連帯保証人への請求を行うことで、借り主本人へ責任を強く自覚させることができます。通常、連帯保証人は両親など身近な人ですので、滞納時に連帯保証人へしっかり請求しておけば、借り主も保証人に迷惑をかけないよう、可能な限り支払いの努力をすることが期待できます。
なお、弁護士が依頼を受けて家賃を請求する際には、借り主だけでなく、連帯保証人にもあわせて請求することが通常です。そうすることで、早期に回収できる可能性が高まります。
もう1つは、最終的に連帯保証人から支払いを受けやすくすることができます。
連帯保証人は、借り主自身ではありませんので、通常、本人が滞納していることをなかなか把握できません。そのため、たとえば家主が半年滞納された時点で初めて保証人に請求したりすると、保証人としては、突然、半年分もの家賃を請求されて困惑してしまうでしょう。
法律上は、いつ保証人へ連絡するかは自由であると考えられますので、半年分をいきなり請求しても問題はありません。
しかし、保証人としては、滞納が少ないうちに連絡してもらえれば対策をしたり、支払いをできたかもしれないのに、半年も放っておいて、いきなり大金を請求されても素直に支払えない、という気持ちになってしまいます。弁護士としての経験上、こういった反応をする保証人は非常に多いです。
このような無駄な争いを避ける意味でも、滞納が始まった段階から保証人へそれを伝えておき、滞納額が増えることを回避できる機会を与えてあげることが、大家にとっても、保証人にとっても効果的なのです。
ただし、借り主としては連帯保証人への請求は避けてほしいと考えるでしょう。そのため、連帯保証人に通知する前に、借り主に対して、「○○までに支払わなかったり、次に滞納したときは、すぐに連帯保証人に請求する」と事前に通告しておく方がトラブルは少ないでしょう。
3 保証人の責任はいつまで続く?
なお、最後に、保証人の責任がいつまで続くかについても触れておきます。
賃貸借契約には通常、契約期間が決められており、期間満了時に解約の申し出がなければ、そのまま更新されます。
では、そうやって更新が繰り返された場合、保証人の責任も継続し続けるのでしょうか。
実はこれについては、最高裁判所の判例があり、契約が更新されると保証人の責任も継続し続けると判断されています。
つまり、賃貸借契約が完全に終了するまで、連帯保証人は責任を負い続けることになるのです。
もっとも、借り主の家賃滞納が続いていたのに、家主が特に対応もしないまま、あとから突然連帯保証人へ多額の賃料を請求したようなケースでは、保証人の責任は制限される可能性はあります。
その意味でも、滞納時には早めに保証人に通知・請求をすることが重要なのです。
連帯保証人は、いざというときに非常に重要となりますので、賃貸借契約を結ぶ際にも連帯保証人の立場や支払能力などについてはしっかりと確認する必要がありますね。
連帯保証人に関するルールは意外と理解されてませんので、トラブルになることも少なくありません。お困りの際は、弁護士までご相談下さい。
家賃を滞納されてしまったら・・・ 弁護士による家賃回収
不動産に強い札幌の弁護士による【賃貸借解説コラム】第1回です。
当事務所では不動産会社の顧問も複数あることから、賃貸不動産に関するご相談・ご依頼を多数受けています。
今回から、不動産賃貸に関して生じる法律問題について解説します。
今回は、賃貸不動産オーナーにとってもっとも身近な家賃滞納についてです。
入居者が家賃を滞納するようになった場合、オーナーとしては物件からの収入が入ってこないにもかかわらず、固定資産税等の諸費用は発生し続けることになり、大きな負担が生じてしまいます。
その反面、入居者としても、家賃を滞納するほどの経済状態となれば、金銭的に厳しい状況に陥っているため、多少支払いを請求しても簡単に支払ってくれるとは限りません。
そのため、仮に一度であっても、または一部であっても家賃の滞納が生じた場合には、迅速な対応を取らなければ、大きな損失をかぶってしまう危険があります。
では、入居者が家賃を滞納した場合、どのような対応をとればいいでしょうか。
1 頻繁に督促する
当たり前のことですが、滞納が生じたら、すぐに督促を行う必要があります。滞納が生じても、一度くらいと思って対応を先延ばししていると、入居者も支払いに対する意識が薄くなってしまいます。
ですので、すぐに督促し、滞納が遅れた理由といつ支払うのかを確認する必要があります。
すぐに支払いの見込みがないような場合には、保証人に対して通知することも重要です。
2 内容証明郵便で警告する
ただ督促しても支払いを行わない場合や、遅れが常態化しているような場合、内容証明郵便などで強い請求意思を示すことが効果的です。
内容証明郵便については、債権回収のコラム「内容証明郵便の特徴・使い方」「内容証明郵便の送り方・具体例」で詳しく説明していますので、こちらをご覧ください。
内容証明郵便は、オーナーが直接送付しても一定の効果がありますが、弁護士から送付する方がインパクトは相当大きくなります。
3 裁判・訴訟を起こす
ここまでの方法でも回収ができない場合、最後には裁判を起こすしかありません。
家賃滞納の裁判は、裁判のなかでは、賃貸借契約書と家賃の入金記録があれば、それほど難しくはないかもしれません。
ただ、一般の方は、裁判自体になじみがなく、専門的な用語なども多いため、手間や労力は小さくないと思います。
弁護士に依頼をすれば、裁判の手続きをすべて任せることができ、裁判所への出席も不要となりますので、時間的な負担は省けます。
そのかわり、弁護士費用がかかってしまうのが難点でしょう。
なお、裁判を行って勝訴判決を得ても、相手に支払能力がなければ回収できないままとなってしまい、裁判にかけた費用や労力も無駄になってしまう危険もあります。
当事務所の弁護士が相談を受ける場合、そういったリスクも踏まえて、最善の方法をご提案しています。
4 賃料回収よりも立ち退きを優先する
これまで説明したように、賃料回収は最終的には裁判になります。また、家賃を滞納するような方の場合、経済的にぎりぎりのことも多く、裁判を行っても回収できないことは珍しくありません。
そうすると、可能性の低い賃料回収に労力・費用をかけるよりも、家賃はあきらめて、入居者に一刻も早く退去してもらうことを優先した方が、結果的に損失を小さくできる場合もあります。その場合、一ヶ月でも早く退去してもらい、新しい入居者を探すことになります。
そのため、場合によっては、「滞納した家賃はいらないから、来月末までに退去してくれ」と申し入れることが適切なケースもあります。
(自発的に退去しない入居者に出て行ってもらうことは非常に困難です。詳細は次回以降に述べます)
このあたりの事情も踏まえて、もっとも適切な方法を選択する必要があります。
当事務所は、不動産トラブルや債権回収を得意としていますので、滞納された家賃回収の経験も豊富です。
そのため、入居者が家賃を滞納した場合にはお早めに相談いただければ、弁護士から見た適切な対処法をアドバイスいたします。
お困りの方は、「法律相談のご予約・お問い合わせ」のページから相談のご予約をお願いいたします。
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