【解決事例】 自己破産により、借金200万円の免除を受けた主婦の事例
【相談内容】
Aさんは、40歳手前の女性でした。Aさんには会社員のご主人と高校生の息子さんが1人いました。
家族3人で、ご主人の名義で取得したマンションに住んでおり、35年の住宅ローンを支払っています。
Aさんは、ご主人から家計を任されていましたが、一時、子どもの学費や、友人に勧められて通ったエステのローンの支払いのため、家計が苦しい時期が続いていました。
ご主人に相談しても、十分な生活費を渡しているはずだと言われましたし、ご主人もボーナスをカットされるなど、収入に余裕はありませんでした。
そのため、Aさんはご主人に内緒でクレジットカードを頻繁に使い、キャッシングなども行うようになりました。
最初は少額の利用でしたが、だんだん利用額が増え、利息の負担も大きくなっていき、ついに借金は200万円に達してしまいました。
しかも、どのカードも限度額まで使用してしまい、これ以上の借入れはできなくなってしまいました。
そこで、ご主人に知られないままなんとか解決できないかと思い、当事務所に相談に来ました。
【解決方法】
Aさんの生活状況からは、200万円の借金を返済することは不可能と思われました。ご主人の収入状況をみても、お子さんの学費の関係もあり、ご主人に協力してもらっても返済することは難しい状況でした。
そこで、Aさんと協議の結果、破産手続きによって債務の免除をしてもらうという方針に決まりました。
破産手続きを行うには、保有する財産の状態と、現在の生活状況を裁判所に説明しなければなりません。
Aさん自身には特にこれといった財産はなく、預貯金や生命保険もほとんどありませんでした。
ローンで購入したマンションはありますが、これはご主人の名義ということですので、Aさん自身の財産には当たりません。ですので、Aさんが破産手続きを行っても、このマンションを手放す必要はありません。
ただ、Aさんはご主人の収入で生活していますので、Aさんの生活状況を説明するためには、ご主人の財産状況や収入の状況を説明する必要があります。
Aさんはご主人には借金や破産のことは話していないとのことで、その点が最大の問題となりました。
Aさんの場合、債務が膨らんだのは生活費不足などによるもので、家族全体の問題であり、ご主人にも無関係ではありません。また、今後の家計のことも考えると、ご主人にも事情をよく把握してもらった方が良いのではないかと弁護士は考えました。
Aさんにもそれを伝えましたが、Aさんは、ご主人との関係などから、どうしても知られるわけにはいかないということで、ご主人に伝えるくらいなら破産もあきらめるという覚悟を持っていました。
そこで、弁護士もAさんの意思を尊重し、ご主人に知らせないまま、破産手続きを行うことにしました。
ただ、それでもご主人の財産や収入に関する資料が必要になりますので、その収集はAさんにお願いし、裁判所にはそのあたりの事情を説明して理解を求めることとしました。
半年程度で準備が整い、札幌地方裁判所にAさんの破産申し立てを行いました。
裁判所からは、何点か質問などもありましたが、大きな問題はなく、破産手続きは申し立てから数か月後に終了し、Aさんの債務はすべて免除されました。
【コメント】
破産手続きを行う際には、本当に支払いができないのか、というチェックが行われます。
そのため、現在保有する財産や、家計の収支状況を詳しく説明する必要があります。
その際、財産や収支状況というのは、破産をする人だけでなく、同居の家族全体をチェックするのが基本となります。ですので、同居の家族の預金通帳や給与明細などの資料が要求されるのです。
そのため、破産を行う場合には、家族に理解や協力を得ることが必要です。
しかし、さまざまな事情により、家族には借金や破産のことをどうしても話せない、という方もいるでしょう。そのような場合、家族の収入や財産に関する資料を集めることができれば、家族に知らせないままで、手続きを進めることも一応認められています。
Aさんの場合も、最後までご主人に知られることなく、無事に破産手続きを終えることができました。
なお、少し紛らわしいですが、家族の資料を提出する場合であっても、破産の効果や影響は、申し立てをした本人にしか及びません。家族の資料は、あくまでも本人の破産を認めるかの判断材料として使うだけですので、家族も一緒に破産するとか、家族の財産が取り上げられる、ということはありません。
Aさんの場合も、ご主人の名義となっているマンションには何も影響がないまま、破産が認められています。
破産手続きには複雑なルールやノウハウが必要となります。破産問題、借金問題でお悩みの方は、当事務所までお早めにご相談ください。札幌市だけでなく、北海道内各地からのご相談に対応いたします。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。
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【債務整理】 借金問題を弁護士に頼むタイミングと報酬は?
札幌の弁護士による債務整理解説コラムです。今回で第10回目となりました。
これからも借金問題でお悩みの方のために、情報提供を続けていきますので、よろしくお願いいたします。
前回(破産をしたら退職しなければならないの?)まで、破産の手続きや注意点について説明してきました。
では、破産や債務整理を行う場合には、実際にどうしたらいいのでしょうか。
破産申し立ては、弁護士がいなくとも自分で行うことは不可能ではありません。
しかし、実際に弁護士に依頼せずに手続きを行おうとすると、準備も非常に大変で、時間も労力も必要です。
また、申し立ての準備が不十分であると、裁判所が調査のために破産管財人を選任する可能性が高くなり、そのために20万円以上の費用を納めなければならなくなります。
そのような負担を軽減するため、破産手続きをする場合には弁護士に依頼すべきでしょう。
しかも、弁護士に依頼した場合には、非常に大きなメリットがあります。
それは、弁護士から債権者(貸し手)に対し、弁護士が破産準備を行うことを手紙で通知すると、それ以降、直接ご本人に対して連絡や請求をすることが禁止されるのです。そのうえ、弁護士が依頼を受けた時点で返済をストップしても問題ありませんので、弁護士に依頼をした段階でもう返済を続ける必要はなくなるのです。
ですので、債権者からの請求をとめたい場合や、次の支払いがどうしてもできそうにない場合には、弁護士から債権者に手紙を出せば、請求を受けなくてすむことになります。
もちろん、弁護士は、借金問題を解決するために依頼を受けますので、ただ請求をとめてくれ、という依頼をお受けすることはできません。
ただ、破産手続きや個人再生、あるいは任意整理などで借金問題を解決したい場合、方針が決まっていない状態でも、依頼を受けて請求をストップすることはできます。
そのため、借金問題で困っている場合には、すぐに弁護士に相談すべきです。
借金が増えて返済が行き詰ってくると、親族から多少でもお金を借りたり、身の回りのものを売ったり、さらにはヤミ金に手を出したりして、目先の返済資金を手に入れようとする方がいます。
しかし、そこまでして多少の金額をかき集めても、それでは利息分の支払いくらいしかできません。借金を返済し切ることは難しいでしょう。
目先の支払いだけでなく、この先、借金全額を返していけるあてがない、と思った時点で、すぐに根本的な解決を検討する必要があります。
時間が経つほど、利息がふくらんで借入額は増えていきますし、返済も難しくなっていきます。
解決するには、早ければ早い方がいいのです。
毎月の返済ができなくなったときや、このままいけばあと数か月で行き詰ってしまう、と思ったとき、まずは弁護士に相談だけでもしてみてください。
かならず良い解決策が見つかりますよ。
でも、そうはいっても、弁護士に依頼するとお金がいくらかかるかわからない、と心配される方もいるでしょう。
当事務所の場合、弁護士報酬は弁護士費用のページに掲載しています。
基本的な事案では、
- 任意整理の場合 1社3万1500円
- 自己破産の場合 26万2500円
- 個人再生の場合 31万5000円
となっています。なお、自己破産と個人再生では、裁判所に納める手数料として1万円あまりが別途必要です。
ただ、借金返済に行き詰っている状態で、弁護士費用をすぐには用意できない方も多いでしょう。
そのような場合、半年程度の分割払いでも対応しています。
弁護士に依頼した時点で、債権者への返済はすべてストップしますので、これまで返済にまわしていた分だけ余裕ができるでしょう。
そこから、分割で弁護士費用を用意いただくことが多いですね。
また、失業などが原因で、分割でも用意が難しい方もいらっしゃるでしょう。
そのような場合には、法テラスという機関の弁護士費用の援助制度を利用できる場合があります。
利用には条件がありますが、条件をクリアすると、弁護士費用の立替を受けることができ、あとから毎月3000円~10000円ずつの返済をしていけば良いことになります(返済は無利息です)。
当事務所では、このように、弁護士費用の用意が難しい方にも柔軟な対応をしておりますので、弁護士費用の心配はされずにまずご相談ください。
債務整理の相談料は無料ですし、ご相談のみで終了しても結構です。
ご相談の際には、解決方法と、依頼をお受けした場合の弁護士費用の金額もご説明していますので、お気軽にお越しください。
ご相談の流れのページで、個人再生の場合の相談から依頼までの実例を掲載していますので、あわせてご確認ください。
なお、当事務所では札幌市内の方はもちろん、札幌市外の方のご相談・ご依頼にも応じています。
ご相談は札幌市中央区にある当事務所にお越しいただく必要がありますが、それでもよろしければお気軽にご相談ください。
ご相談はお電話かメールフォームによるご予約が必要ですので、詳しくはお問い合わせのページをご覧ください。
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【債務整理】 破産をしたら退職しなければならないの?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第9回です。
前回は、破産をしても免除されない債権があることを説明しました(破産をしても返済しなければならない負債とは)。
今回は、話題を少し変えて、破産と仕事の関係について見て行きたいと思います。
「破産をしたら仕事を辞めないとならないのですか」
「破産申し立てをすると、解雇されてしまうのでは」
こういった、破産を行ったことで、仕事や就職に問題がでることを心配されている方は少なくないようです。
仕事がなくなってしまったら生活に困る方がほとんどでしょうから、不安に思うのも当然のことです。
では、実際はどうかといえば、ほとんどの方の場合、「問題ありませんよ」とお答えしています。
破産したことが、仕事や就職に影響することは基本的にないといえます。
ただ、一部、例外的に影響を受ける場合があります。それは、一部の特殊な職業に就いている場合です。
その職業の説明の前に、さきに一般的な場合を見て行きます。
普通の会社員の方や主婦の場合など、大半の場合は、破産が仕事に影響を与えることはまずありません。
理由として、1つは、そもそも破産したことが他人に知られる可能性は相当低いからです。
前に、「破産をすると、家族や職場に迷惑がかかる?」でも触れましたが、破産をしたことは、自分から言い出さなければ、職場にわかることはまずありません。
ですので、破産したことで職場から不利な扱いを受けたり、問題とされたりする可能性はそもそもほとんどないのです。
ただ、そうはいっても、会社に申告したり、なんらかの事情で知られてしまう可能性はあります。
しかし、そのような場合でも、破産したことを理由に不利な処分を受ける心配は不要といえるでしょう。
債務を抱えたり、破産したということは個人的なことがらであり、それがすぐ仕事に悪影響を与えるわけではありません。
また、破産手続きをとった場合、すでにその債務問題は解決したことになりますから、それで不利な扱いを受ける理由はありません。
会社としても特段問題にはしないことが多いですし、解雇などに踏み切っても、それは違法解雇となりますので、通常はそのような対応を取ることはないでしょう。
もちろん、債務の穴埋めのために会社の金品を横領していた場合などには当然解雇の対象となりますが……
ちなみに、よく問題になるのが公務員の場合です。国家公務員でも地方公務員でも、普通の公務員の方は、破産をしても、そのまま仕事を続けることができます。
当事務所でこれまで取り扱ってきた公務員の方々は、特に問題もなく、破産後もそのまま職務を続けています。
なかには上司の指示で破産手続きをとりに来られた方もいたほどです。
(なお、後述していますが、公務員の中でもごく一部の特殊な公務員は破産による制限があります)
ただ、公務員の方の場合には、共済から貸し付けを受けていることが多いように感じます。
その場合、共済は債権者となり、破産の通知をし、返済金の免除をしてもらうことになりますので、その関係で、多少居心地が悪い思いをするかもしれません。
しかし、破産が終わるころには精算も終わりますので、それほど心配される必要はありません。
ここまで、破産手続きをしても仕事には影響がでないことを確認してきました。
ところが、一部の職業は、破産を行ったことで、退職・廃業を余儀なくされることになってしまいます。
数が多いので、すべては挙げられませんが、主なものを以下に掲げます。
- 国家資格に基づく専門職
弁護士、司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士、不動産鑑定士など - 特殊な公務員(一般の公務員は影響ありません)
人事院、公安委員会、公正取引委員会、教育委員会など - 一部の民間職
警備員、生命保険募集人や保険代理店など(事業者以外の方で問題となるのはこの程度です) - 会社の役員
取締役や監査役など
これらの職業のうち1.2.3.は、破産手続き中の者が職務を行うことが法律で禁止されています。
ですので、破産手続きの開始決定を受けた時点で、退職しなければならないこととされています。
また、弁護士や司法書士などの国家資格に基づいた職務に就いている場合は、破産手続き開始決定と同時に資格を失いますし、2.の特殊な公務員も失職ということになります。
3.の警備員や保険外交員の場合は、自主的に退職しなければ解雇されることになるでしょう。
そうすると、たとえば警備員や保険外交員の方は、破産をしてしまうと今後の生活に困ってしまいます。
ただ、多額の債務を負って、現在のままではどちらにしても通常の生活も遅れないということであれば、一度退職を覚悟し、次の仕事をすぐに探すしかない場合も多いでしょう。
もっとも、どうしても退職を避け、借金も解決するということであれば、個人再生という方法があります。
個人再生は、職業への制限がありませんので、警備員などの場合にも在職したまま行うことができますが、そのかわり、破産よりも条件が厳しいことが多いです(詳しくは別の機会に取り上げます)。
ところで、そのような破産による制限がいつまで続くかという点ですが、実は、免責(債務免除)の決定を受け、免責が確定するまでに限られます。
破産の開始決定を受けてから、免責決定が確定するまでは、通常の事案(破産管財人がつかない事案)では3か月前後、破産管財人がつく事案では半年から1年程度(管財業務の量によって大幅に変わりますが)でしょう。
さきほどの1.2.3.による職業の制限は、その期間のみとなりますので、免責が確定したあとは、問題なく就職することができます。
ただし、実際には会社によっては破産の有無などを厳しくチェックするところもあるようで、そのような場合には就職が難しいと思われます。
さて、残った4.ですが、会社の取締役・監査役などの役員も破産により影響を受けます。
しかし、この制限はほかの制限とは少し異なっています。
会社の役員の場合には、破産開始決定がなされると、その時点で役員の資格を失いますが、すぐにまた役員となることが認められています。
ほかの職業の制限は、免責決定が確定するまで続くのですが、会社役員は、破産開始決定の時点だけの制限とされているのです。
とはいっても、会社の役員は株主総会決議で決定する必要がありますから、破産開始決定によって役員を降りた者を、新たに株主総会で選任しないとなりません。しかし、その手続きは、破産開始決定を受けたすぐ次の日に行っても良いことになります。
(ちなみに、このような制限がある理由は、会社の役員というのは株主が会社の経営を委任した相手ですので、破産などの事情が生じたときは、一度役員からはずし、新たに株主がその者を役員として良いかとチェックする必要があるためでしょう)
破産により現在の仕事やこれから就く職業に影響が出るのは、これまで見てきた程度に限られています。
当事務所でも多数の破産事件を取り扱ってきましたが、特に会社員や公務員の方は、ほとんどがそのまま仕事を続けています(事業者の方や、破産を機に自主退職した方もいましたが、それは別の問題によるものです)。
ですので、仕事への影響を心配して破産をあきらめる必要はありません。
今回のテーマは以上となります。
これまで破産手続きの流れや、免責の手続き、破産をした場合の問題点などを取り上げ、破産手続きについては一通り見てきたように思います。
次回からは自己破産を弁護士に依頼する場合の手続きなどを見て行きたいと思います。
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【債務整理】 破産をしても返済しなければならない負債とは
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第8回です。
前回(破産が認められない場合とは -免責不許可について)は、破産をしても債務の免除がされない場合を見てきました。
今回は、破産をして債務免除(免責)が認められても、免除されない負債について説明します。
破産を行って、免責が認められた場合、基本的にすべての債務が免除となり、一切返済する義務がないということをこれまで説明してきました。
しかし、特別に、破産を行っても免除されないもの、つまり、破産をしても返済をしなければならないものもあるのです。
このような、破産をしても返済義務が残る請求権を、非免責債権と呼んでいます。
非免責債権は、破産法253条に規定されており、以下のようなものがこれにあたります。
① 税金の支払い
滞納している税金や、今後請求が来る税金は、破産をしても免除されません。
免除されない税金には、所得税、住民税、固定資産税などのほか、健康保険や国民年金なども含まれます。
破産をしてもこれらの支払いは行わないとずっと義務が残ります。ただ、収入が少ない場合は、納税相談をすれば分割払いや一部免除が認められることもありますので、放置し続けないことが重要です。
② 悪意があって行った不法行為による損害賠償義務
悪質な違法行為で他人に損害を与えた場合、これを破産したからといって免除を認めては、あまりにも不公平となります。
そのため、悪質な場合に限り、破産をしても免除を認めないとしています。
③ 故意があるか、重大な過失によって、他人を死傷させた場合の損害賠償義務
たとえば、飲酒運転のために人をはねて怪我させたり死亡させたりしてしまった場合、その賠償義務は、破産をしても免除されません。
破産法では、被害者を保護するため、故意がある場合(わざと怪我させた場合)や重大な不注意によって他人を死傷させた場合には、破産をしても賠償をさせることとしています。
さきほどの②との違いが少しわかりづらいですが、たとえば、交通事故で他人を怪我させてしまった場合、普通は悪意があって事故を起こすのではなく、うっかり不注意によるものです。このような場合には②の「悪意がある」とはいえません。
他人に怪我をさせたり、死亡させてしまった場合に限って、被害者が賠償を受けられるように、悪意ある場合だけでなく、重大な不注意がある事故の場合などにも債務免除を認めないこととしているのです。
④ 婚姻費用(結婚中の生活費)や子どもの養育費
結婚中の生活費や子どもの養育費は、相手の生活を保障するためにも強く支払いが求められるため、特別に、破産による免除を認めないこととされています。
離婚の際の慰謝料はここでは保障されませんので、相手が破産した場合には免除の可能性があります(暴力や不倫の慰謝料は、②や③で保護される場合があります)。
⑤ 破産手続きの際に隠していた負債
破産手続きの場合には、一方的に債務免除を認めてもらう制度であるため、債権者(貸し手)には大きな影響を与えます。
そのため、債権者を必ず平等に扱い、一部だけを支払ったりすることは認められないとされています。
ところが、たとえば、自動車を残すためにローンを隠したり、クレジットカードを残すために1枚だけ隠していたりということがあります。
このように債務を隠していたまま破産を行った場合には、あとからやはり支払いができなくなったとしても、破産での免除が認められませんので、支払いを続けなければならなくなります。
破産手続きのルールに違反した以上、不利益を受けてもやむを得ないためです。
⑥ 罰金の支払い義務
事件を起こし、罰金の支払いを命じられた場合などは、破産をしても免除はされません。
ここに挙げたような負債は、破産を行っても免除が認められませんので、相手から支払いを請求された場合には、支払いを行わなければなりません。
ただ、税金や罰金以外の場合は、破産を行えば、実際には引き続き請求が来る例は多くありません。
免責が認められなくとも、破産申し立てを行うような状態では、支払いをするだけの財産がないことになりますので、相手もあきらめることが多いでしょう。
また、免除されない債務であることは、請求者側で証明しなければなりませんが、②や③の立証は実はそれほど簡単ではないからです。
ただし、免除されない以上、消滅時効が成立しない限り、一生負債が残ることになりますので、何年も請求され続ける可能性もあります。
いずれにしても、このような非免責債権があるかどうかは破産手続き上重要な問題ですので、早い段階で弁護士に説明する必要があるでしょう。
前回と今回は、免責がされない場合や免責がされない債務についてみてきました。
次回は、破産をした場合に退職をしなければならないのかという問題を取り上げます。
この点はよく依頼者の方から質問を受ける点で、関心が高いようですので、少し詳しく説明したいと思います。
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【債務整理】 破産が認められない場合とは -免責不許可について
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第7回です。
前回(破産すると住宅はどうなる?すぐに出ていかないとならないの?)は、破産した際の住宅の取扱いについて取り上げました。
今回は、破産の申立てをしても、債務の免除が認められない場合についてです。
破産状態であったとしても、必ず破産手続きをとれば債務がなくなるというわけではありません。
債務の免除を受けるには、裁判所から「免責」(支払責任を免除すること)の許可を得なければならないのです。
破産は、債権者の同意もなく、一方的に債務をすべてゼロにしてしまう手続きであり、非常に強力です。
そのため、あまりにも不誠実な理由で借金を作ったり、破産を行おうとする人にまで免責を認めるべきではないと考えられています。
破産法では、そのような不誠実な事情のある一定の場合には、免責を認めないと規定しています。
それでは、どのような場合が免責不許可になるのでしょうか。破産法252条では、11項目の事情が挙げられていますが、主に問題となるものを見て行きます。
① 財産隠し
破産手続きを行う場合には、一定以上の価値のある財産を売却・処分し、代金を債権者への配当にまわさなければなりません。
しかし、中には、債務の免除は受けたいけれども、財産は手元に残したいと考えて、預貯金を親族に口座に移したり、車を隠し持ったりする場合があります。
このような財産隠しは、破産法の基本的なルールに違反し、極めて不誠実といえるため、これが発覚したときは免責を認めないとされています。
② 一部の債権者のみにあえて支払いをすること
破産手続きでは、債務がすべて免除になるかわりに、一部の債務のみの支払いを行うことも認められていません。
一部だけ支払い、それ以外は一切支払いをしなくてよいとすると、債権者にとって不公平となってしまうからです。
たとえば、車を残すためにローンだけ払う場合や、保証人がついた負債だけを支払うということも認められていません。
このようなルール違反は、ほかの債権者への裏切り行為になるため、免責不許可の事情とされています。
③ 浪費、賭博
浪費やギャンブルによって、多額の借金をした場合です。
多少の無駄遣いやギャンブルは問題にはなりませんが、度が過ぎており、正常な生活をおびやかすようなものであれば、免責不許可の事情になります。
たとえば、支払いができないことがわかっていながら、自動車や高級化粧品を買い続ける行為や、借金が返せないのに月に5万円もパチンコにつぎこんだような場合です。
借金の事情事態が不誠実で、破産を認めて救済すべきでないと判断されると、免責不許可となります。
④ 破産することをわかっていながら借金をした場合
破産をして免責が認められれば、負債を返済する必要はなくなります。
これを悪用して、破産直前にカードなどをできるだけ使い、最後に借金をする人も残念ながら見かけます。
しかし、破産をして免除してもらうつもりなのに、借入れを行うことは、立派な詐欺行為になり、逮捕されてもおかしくない行為です。
当然、そのような違法行為をあえて行った者を免責により救済すべきではないため、免責不許可となります。
⑤ 裁判所や破産管財人の調査を拒否したり、嘘をつくこと
裁判所や破産管財人は、破産手続きを適切に行うために、さまざまな調査をします。その中で、破産を申し立てた方に事情を聞く機会もあります。
その際に、嘘をついて財産を隠したり、都合の悪いことをごまかす人や、めんどくさいという理由で一切調査に応じない方もまれにいます。
しかし、自分で破産を希望しておきながら、裁判所の調査にまじめに応じないというのでは、破産免責を認める必要はありません。
そのため、このような場合も免責が認められません。
⑥ 免責から7年以内に新たに破産を申し立てる場合
実は、破産は人生に一度切り、というわけではなく、何度でも破産を認めてもらうことは可能とされています。破産に回数制限はないのです。
しかし、短期間に何度も破産を繰り返されては、債権者も納得できませんし、本人もどうせ破産すれば良いと不誠実な対応をしかねません。
そこで、一度破産をしてから7年以内に限り、破産免責を認めないとされています。
特に、前回の破産時の反省を活かせないで、同じような理由で借金を重ねた場合には、認められない可能性が非常に高くなります。
よく問題となる免責不許可の事情はこのようなものです。
しかし、注意が必要なのは、これらの事情があるからといって、必ず免責が認められないわけではないということです。
これらにあたる場合でも、その程度が軽い場合とか、やむを得ない事情がある場合、またはよく反省している場合などには、裁判所が特別に免責を許可してくれることもあります。
実際上は、免責不許可の事情はあるけれども、さまざまな事情を考慮して免責を認めます、という決定は非常に多く見かけます。
もちろん、これらの事情はない方がスムーズに免責が認められますが、そのような事情があったとしても、適切な対処を行っていけば免責が認められる可能性は決して低くはないのです。
破産の最終的な目標は免責を得ることですので、免責にならなければ、破産を申し立てた意味はほとんどなくなってしまいます。
免責は必ず認められるわけではありませんので、免責不許可の事情がないかを検討し、もしあてはまる場合にはしっかりと対処をすることが必要です。
破産の依頼を受ける場合に、弁護士がもっとも注意する点の1つですね。
今回は免責が全く認められない場合がある、という点を見てきました。
しかし、実は、免責は認められたのに、一部の債務が残ってしまうという場合があるのです。
次回は、そのような免責の対象とならない債務について取り上げます。
札幌の弁護士が債務整理を解説 【債務整理に関する実践的情報一覧はこちら】
【債務整理】 破産すると住宅はどうなる?すぐに出ていかないとならないの?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第6回です。
前回は「破産をすると、家族や職場に迷惑がかかる?」という問題を見てきましたが、今回は、住宅ローンがある場合の破産についてです。
住宅ローンは、債務整理を検討するうえでもっとも重要な問題となります。
ご相談に来る方も、やはり自宅がどうなるかといった点に関心が高い場合が多く、住宅をなんとか残したいと希望される方は非常に多いといえます。
そこで、破産をする場合の住宅がどうなるか、出ていかなければならないかという点を取り上げていきます。
まず、結論からいえば、破産を行う場合には住宅を手放すしかありません。住宅を維持したまま、破産を行うことは認められないのです。
これには、2つの理由があります。
1つは、これまでも見てきたように、破産を行う場合、財産を処分しなければならないからです。一定以上の価値のある財産は、売却するなどしてお金に替え、債権者に分配しなければなりません。
不動産は、売却したときの金額よりも、住宅ローンの残額が少ない場合、その差額が資産とみなされます。たとえば、売却すれば2000万円、住宅ローンが現在1500万円残っている不動産は、差額の500万円分の価値があるとみなされますので、これを売却して500万円を債権者に分配するのです。
ですので、住宅ローンをある程度返済し、ローン残額が少ない場合は、処分しなければならないのです。
では、住宅ローンの残額が多く、売却してもローンが残ってしまう場合はどうでしょうか。たとえば、住宅を売却しても1000万円にしかならないのに、ローンが1300万円残っている場合です。
この場合、この住宅を売却してもすべてローンにあてられますので、実際には価値のない財産とみなされます。
ですので、これを売却して売却代金を分配することはできません。
ところが、この場合もやはり住宅を残すことはできないのです。
その理由が、破産を行う場合には、一部の債権者への返済を続けることが許されない、というものです。
破産は、すべての債務を一気に免除してもらうという非常に強力な制度ですが、そのかわり、すべての債権者を平等に扱う必要があります。ですので、一部の債務のみを返済することは禁止されています。
そのため、住宅ローンのみを返済してくことも認められないのです。
ローンが返済できない以上、住宅は競売にかけられることになり、結局、追い出されてしまうのです。
この2つの理由で住宅を手放さなければなりませんが、この2つのどちらにあたるかで、実際の処理は少し変わってきます。
住宅を売却しても代金が残り、債権者へ分配する場合は、住宅の売却や債権者への分配を破産手続きの中で行う必要があります。そのため、裁判所は破産管財人を選任し、時間と費用をかけて破産手続きを行います。
この場合は、住宅も早めに処分することが求められますので、比較的早い段階で自宅からの退去をしなければならないといえます。
そして、その売却が終わるまで破産手続きも続いていくことになります。
これと異なり、住宅を売却してもローンが残ってしまう場合は、この住宅は破産手続きの中では取り扱われることはありません。住宅が財産とはみなされないため、これだけで管財人が選任されることもなく、住宅が売却できなくても破産手続きは先に終了することもあります。
ですので、このような住宅があっても破産手続きが複雑化したり、長期化したりすることはありません。
また、破産手続きとは無関係に進むため、それほど急いで住宅を売却しなくてもよい場合もあり、退去まではある程度、時間の余裕があることが多いといえます。
このように、住宅ローンと破産手続きの関係は少し複雑ですが、どちらにしても退去を求められることになります。
この場合、いつごろまでに退去しなければならないのでしょうか。
実は、住宅を処分する方法は2通りあります。1つは任意売却といい、不動産業者などに買い手を探してもらい、買い手と契約して売却する方法です。
もう1つは、競売といい、住宅ローンの抵当権者が裁判所の許可を得て、裁判所での競売により買い手が決定される方法です。
任意売却での処分を行う場合は、新しい買い手に売却するころまでに退去すればよく、ある程度、柔軟に対応してもらえる場合もあります。
これに対し、競売は、裁判所がスケジュールを厳格に定めていきますので、決められた期日までに退去しなければ、強制的に追い出されてしまうこともあります。
また、任意売却を目指していても、なかなか買い手がつかないなどの事情があれば、いずれは競売にかけられてしまいます。
このように競売となった場合、競売の申し立てから、おおむね半年程度で手続きが終了しますので、それまでに退去を終える必要があります。
その期間内に、新しい引っ越し先を決めて、荷物なども運び出さなければならないということです。
なお、どうしても住宅は残したい、という方もいると思います。
その場合は、破産以外の方法で債務整理を行うしかありません。
任意整理や個人再生手続きを行えば、住宅を残すことができる可能性があります。
しかし、どちらの場合も、十分な返済余力がなければなりませんので、それも難しければやはり破産手続きを行い、住宅を処分するしかありません。
結局、破産手続きをした場合には住宅を手放すことにはなりますが、そのための手続きはこのように複雑です。
また、破産以外の手続きをとり、住宅を残す場合にも、いろいろな条件と手続きが必要となってきます。
ですので、住宅ローンの支払いができなくなった場合には、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談した方が良いでしょう。
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【債務整理】 破産をすると、家族や職場に迷惑がかかる?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第5回です。
前回(破産の実際の流れを体験しよう!)までで、破産手続きのおおまかな流れをご理解いただけたかと思います。
今回からは、破産手続きを行ううえで問題となる点、弁護士がよく質問を受ける点について取り上げていきたいと思います。
債務整理のご相談を受ける際にかなりの方が不安に思う点として、破産をしたことで、家族や職場などに迷惑がかかるのでないか、というものがあります。
なかには、自分が破産をすると奥さんも破産しないとならないとか、自分が破産する前に離婚しておかないと妻に迷惑がかかる、という心配をお持ちの方もいます。
ごくまれにですが、破産を決意したのでまず離婚してきました、という相談者の方もいらっしゃいます。
このような心配はよくわかりますが、実際にはほとんどの場合、不要な心配なのです。
借金を抱え、支払いができなくなったとき、借りた本人には債権者から当然請求が来ます。
そのときに、本人が払えないなら家族が払わなければならない、家族の財産を処分してでも返済しないとならない、と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、これは大きな誤解です。
借金は、あくまで借りた本人のものであり、家族であっても、何も契約をしていない人が責任を負うことはないのです。
ですので、ご主人や奥さんが個人的に作った多額の借金があったとしても、家族が支払う義務はありませんし、債権者は家族に請求することすらできないことになっているのです。
もちろん、家族の問題ですので、奥さんやご主人が代わりに払ってあげるということは問題ありませんが、自分から払う義務はありません。
これと同じように、たとえばご主人が破産状態となり、破産手続きをすることになっても、家族には何も影響がありません。
家族が借金を肩代わりすることもありませんし、家族も一緒に破産したことになるわけでもありません。
借金を払う義務があるのも、破産をするのも、基本的にはご本人だけの問題なのです。
奥さんや子どもに影響が出るということもないのです。
実際には家族に内緒のまま破産を申し立てすることもちらほらありますが、それで問題となることもありません。
それでも職場とか、親族とか、子どもの学校とかに破産したことが知られて、肩身の狭い思いをするのではないか、と思う方もいるでしょう。
けれども、このような心配もほとんど不要です。
破産したことは、「官報」という役所の新聞のようなものに記載されてしまいますが、この官報を見ている人はほとんどいません。それどころか、官報というものの存在も知らず、どこに行けば買えるかもわからない人が大半だと思います。
これまで弁護士として多くの方の破産手続きを行ってきましたが、官報を見られて周りの人に破産を知られた、という人に会ったことは一度もありません。
それ以外に、戸籍や新聞に載ることもありませんし、選挙権などに影響が出ることもありません。
自分から言わなければ、職場も、親戚も、子どもの学校も、破産に気づく可能性はほぼゼロといってよいでしょう。
(ただし、警備員など一定の特殊な職業は、破産者が就けないことになっており、そのような職にある場合には退職せざるを得ません。この点は次回以降にまた触れます)
もちろん、自分で事業をされている方や、会社を経営されている方は、会社が倒産となれば取引先や家族も知るでしょうから、その場合には周りに隠すことは難しいでしょう。
しかし、普通の会社員や主婦の方は、周囲に知られる心配も、家族に迷惑をかける心配もほとんどありません。
もっとも、このような方でも、絶対に周囲に迷惑をかけないわけではないのです。実は周囲に影響が出てしまう場合がいくつかあります。
1つは、家族などが自分の借金の保証人になっている場合です。住宅ローンや銀行からの借り入れの際など、保証人を立てていることがあります。
このような場合、借りた本人が破産しても、保証人の責任は消えません。
本人が払えなくなってしまった以上、保証人には残りの負債を払う義務があるのです。そうすると、その保証人には本人が破産したことによって、大きな負担が生じることになります(なお、たとえばその後離婚をしたりしても、その義務は変わりません)。
しかも、破産する方が、この保証人がついている債務だけ支払う、ということは禁止されています。破産手続きでは、すべての債務を免除してもらえる代わりに、一部だけ支払うことも禁止されているからです。一部だけ払ってしまえば、払ってもらえない債権者にとって不公平となるのがその理由です。
そのため、保証人としては、自分で支払いをしていくか、保証人自身も破産などの手続きをするしかなくなってしまうのです。
また、自分以外の人が責任を負う場合としては、相続の場合があります。
借金を抱えた方が亡くなってしまった場合、実は借金も相続の対象となります。
この場合には自分自身が借金をしていなくても、借金を抱えていた家族の負債を引き継ぐことになり、返済の義務が発生してしまいます。
もっとも、この場合は、死亡時から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行えば、負債も引き継がずにすみます。
本人以外が義務を負う場合というのは、このような場合にほとんど限られています。
もちろん、本人が破産をしたことで、ブラックリストにのってしまい、家族のためにローンを組んだり、他人の保証人になれなかったりするなどの支障は生じてしまいます。
しかし、破産をしなくとも、約束通りの支払いができなくなればやはりブラックリストになりますので、これは破産だけのデメリットでもありません。
今回みてきたように、破産をすることで家族や職場など、周囲に迷惑をかけることはほとんどありません。
むしろ、債務を精算し、正常な生活を取り戻すことで、家族も安心し、仕事にも専念できるのではないのでしょうか。
こういう場合は周りに迷惑とならないか、こういう点は問題でないか、など、不安な点がありましたら債務整理の経験豊富な弁護士へ相談ください。
今回のように、意外と悩むような問題ではないかもしれませんよ。
次回は、破産の際の住宅問題について見て行きます。
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【債務整理】 破産の実際の流れを体験しよう!
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第4回です。
前回(破産手続きの流れを見てみよう)、破産手続きの概要を見ましたので、今回、実際の例をもとに、破産手続きを一通り体験していきたいと思います。
~弁護士への相談、依頼~
破産手続きの第一歩は、まず弁護士への相談、依頼から始まります。
依頼者「生活に困り、300万円も借金してしまいました。今の給料では、毎月2万円くらいを返すのが精いっぱいなんですが…」
弁護士「そうすると、返済していくのは難しいですね。破産手続きを検討せざるを得ないでしょう」
依頼者「破産手続きというのはどういった手続きなんですか」
弁護士「破産というのは、・・・・・・(説明中)・・・・・・というものです」
依頼者「そうすると、私の場合はやっぱり破産しかないようですね。では、破産手続きをお願いできますか」
弁護士「わかりました」
実際にはもっと時間をかけてやり取りすることになりますが、おおむね、こういった形で、まずは弁護士が相談を受け、状況に応じ、破産手続きによる解決を選択することになります。
~破産申し立ての準備~
破産手続きをとると決めた後、破産申し立てに必要な準備を行っていきます。
弁護士「まず、破産手続きを行うことを、債権者(貸し手)に弁護士から書面で通知しますね。通知を行うと、債権者はご本人に支払いの請求や連絡をしてはいけないことになっていますので、今後は請求が来ることはなくなります。支払いもしなくて結構です」
依頼者「支払いもしないくて大丈夫なんですか。助かります」
弁護士「また、あわせて、債権者に請求額の詳細や請求内容についても問い合わせます。その返答が来るまで、1,2か月かかりますので、少し待つ必要がありますね」
依頼者「わかりました」
弁護士「その期間がありますので、1か月後にもう一度打ち合わせをしたいと思います。その際に、破産申し立てに必要な資料をお持ちいただけますか」
依頼者「どういった資料が必要になりますか」
弁護士「必要資料としては、人によって違いますが、あなたの場合には次のようなものが必要です。まず、一緒に住んでいる家族分の戸籍、住民票は必ず必要です。ご住所は札幌でしたね。そうすると、札幌地方裁判所に破産の申し立てをすることになりますね。
次に、今の収入・支出の状態を報告するために、あなたや家族が得ている収入に関する資料が必要になります。具体的には、給与明細、前年度の源泉徴収票、各種手当・年金の受給証などですね。どれもコピーで構いませんが、あなたの分だけでなく、同居の家族の分もお持ちください」
依頼者「わかりました。妻も仕事をしていますので、2人分の給与明細と源泉徴収票を用意します。そのほかはありますか」
弁護士「現在保有している資産に関する資料も必要です。同居家族分の預金通帳のコピーを提出しないとなりませんね。いまお金の入出金や引き落としなどがある通帳がすべて必要になってきます。お子さん名義の通帳があれば、それも用意していただけますか」
依頼者「通帳ですね。銀行や郵便局がありますので、家族分用意しないとならないんですね」
弁護士「そうです。お願いします。それから、家族で契約している生命保険、医療保険、自動車保険などの保険がありませんか。保険がある場合、契約内容がわかる保険証券と、解約した場合に返還される金額がわかる書類を出す必要があります」
依頼者「私と妻は生命保険、医療保険をかけていて、私の車には自動車保険をかけています。ただ、どれも掛け捨ての保険だったはずですが」
弁護士「それでしたら、掛け捨てだとわかる書類があると助かりますね。どちらにしても保険証券は必要です」
依頼者「あの、破産をすると保険は解約しないとならないんでしょうか。知り合いに頼まれて入っているので、解約はしづらいのですが」
弁護士「解約しても戻ってくるお金がないのなら、解約する必要はありませんよ。ただ、保険料が少し高いので、安くしてもらえると今後の生活が少し楽になると思いますけど、保険自体は残しても問題ありません」
依頼者「そうですか、安心しました」
弁護士「あとは、自動車があるということですので、車検証のコピーが必要です。車の年式はわかりますか」
依頼者「12,3年乗っている古い車です。車も処分しないとならないでしょうか」
弁護士「10年以上経過しているなら、大丈夫かもしれません。価値がだいたい20万円以内であれば残すこともできますので、一応、ディーラーなどで買い取ってもらう場合の査定を受けていただいた方がいいですね」
依頼者「わかりました。すぐにみてもらいます」
弁護士「あなたの場合ですと、必要資料はそのくらいだと思います。1か月後の打ち合わせ時にご持参ください」
依頼者「わかりました。用意する際にわからないことがあったら、お電話してもよいでしょうか」
弁護士「もちろんです。いつでもご連絡ください」
~1か月後の打ち合わせ~
依頼者「指示された資料を用意してきました」
弁護士「ありがとうございます。一通りそろっていますね。では、これをもとに少し確認させてください。まず・・・(打ち合わせ中)・・・」
弁護士「あと、借金が増えてしまった事情も前回お聞きしましたが、この通帳によると・・・(打ち合わせ中)・・・」
弁護士「そういう事情でしたら、負債を抱えてしまったのはやむを得ないといえるでしょう。特に破産手続きに支障が出るところはないようですね。では、これから準備をして、1か月後をめどに裁判所に申し立てをしたいと思います」
依頼者「そうですか、ありがとうございます。今は支払いの請求も来ていないですが、やっぱり早めに解決したいですね」
弁護士「少しお時間をいただきますが、早めに準備を進めておきます。また足りない点があったらご連絡しますね」
~破産申し立て~
弁護士が必要な資料を整理し、必要事項を記入した破産免責申立書を作成して、札幌地方裁判所へ提出しました。
弁護士「お電話で失礼します。本日、準備が整いましたので、裁判所に破産の申し立てを行いました」
依頼者「そうですか、ありがとうございます。このあとはどうなるんでしたか」
弁護士「裁判所が書類を審査し、不足しているところがあれば問い合わせが来ることになります。今回の内容を考えると、書面審査で終わると思いますので、裁判所に出席する必要はないと思います」
依頼者「そうなんですね。では、しばらく待っていればよいということですか」
弁護士「そうなります。おそらく、1,2週間程度で連絡が来ると思いますので、動きがあればご連絡します」
~破産手続き開始決定~
申し立てから2週間ほど経過した日、札幌地裁から破産手続き開始決定が出たとの連絡がきました。
弁護士から依頼者へそのことをご連絡します。
弁護士「いまお時間よろしいですか。裁判所から、破産を認めるという決定書が届きました。破産管財人などをつけないで、書面審査だけで破産を認めてもらえたようです」
依頼者「破産が認められたんですね。安心しました。どうもありがとうございます。これで手続きはすべて終了なんですか」
弁護士「いえ、これから約2か月ほど、裁判所が債権者から意見を聴取するという手続きがあるんです。たとえば債権者からお金をだまし取っていた場合など、債務の免除を認めるべきでない事情がないかを確認するんです。ただ、実際には債権者が意見を述べることはほとんどないですし、今回の場合は特に問題になることはないと思いますから、ただ待っているだけになりますね」
依頼者「その間に特に何もなければ、それで終わりになるんですか」
弁護士「そうです。そうすると、裁判所が免責、つまり債務の免除を認める決定を出してくれますので、それで破産はすべて終了になります」
依頼者「わかりました。では、もうしばらく待っていますので、よろしくお願いします」
~免責決定、破産手続きの終了~
約2か月後、債権者から意見が出されることもなく、免責決定がなされました。
弁護士「無事に免責が認められましたので、これで負債はすべて免除されたことになります。破産手続きもすべて終了となります」
依頼者「本当にありがとうございました。借金が膨れ上がったときはどうしようかと本当に悩みましたが、弁護士さんにお願いしてよかったです。これからは借金なんてしないようにしていきます」
弁護士「いまはブラックリストにのってしまっているので、しばらくローンや借金はできないと思いますが、それが過ぎても慎重にされた方がいいですね。この数カ月の生活をそのまま維持されれば大丈夫だと思いますので、いらない心配かもしれませんが」
依頼者「いえ、気をつけます。このたびは本当にありがとうございました」
弁護士「また何かお困りの際は、お気軽にご連絡ください。こちらこそありがとうございました」
スムーズに進む場合の破産手続きの流れは、以上のようなものです。イメージをつかんでいただけましたでしょうか。
実際には、もう少し細かい説明ややり取りがありますし、お電話などでもう少し多く連絡をとることもありますが、流れとしてはそれほど変わりません。
ただ、前回説明したような、破産管財人が任命されるような事案では大きく異なる部分もありますが、大半の方は、今回見たような流れで進んでいくことになります。
実際の事例を見ていただいて、意外と簡単な手続きだと思われたのではないでしょうか。債務整理の経験がある弁護士が、適切に準備を行えば、破産手続きはそれほど大変な手続きではないのです。
しかし、申し立ての準備がずさんであったり、不十分であると、裁判所からの問い合わせが増えたり、破産管財人が選任されたりしてしまい、大変複雑なものとなってしまいますので注意が必要でしょう。
次回からは、破産手続きを進めるうえで問題となる点を順番に見ていきたいと思います。
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【債務整理】 破産手続きの流れを見てみよう
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第3回です。
前回(借金が返せないときの解決方法は?)で予告しましたが、今回からはしばらく破産をする場合の問題を見ていきます。
今回は、破産の全体的な流れを見たいと思います。
自己破産という言葉はみなさんご存じと思いますが、破産状態である場合、破産手続きをとることで債務を免除してもらうことができます。
では、破産状態というのは、どのような状態でしょうか。
破産法という法律では、債務者が「支払不能」であるときに、破産手続きが認められることになっています。
この「支払不能」という言葉の意味も破産法に規定されており、「支払不能」とは、「債務者が、支払い能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう」とされています。
少し難しい規定になっていますが、要するに、「現在も今後も、約束通りに借金を支払っていくめどが立たない状態」、ということです。
実際には、毎月の支払可能額よりも、約束の支払額が大幅に高くなっている場合や、返済が不可能なほどの高額の借金を抱えた場合などに破産状態となります。
そのような破産状態、支払不能状態になってしまったときは、破産を行うしか解決策がないことがほとんどです。
では、その場合、どのようにして破産手続きを行うのでしょうか。
破産の手続きは、大きく2つに分かれています。1つは破産状態の認定、財産の清算に関する手続きです。もう1つは、「免責」つまり債務の免除に関する手続きです。
前半を”破産手続き”、後半を”免責手続き”と呼んで説明します。
”破産手続き”の流れは、だいたい以下のようなものです。
① 裁判所に、破産申立書を提出し、審査を受ける。
② 裁判所は、債務者の提出した資料を検討し、破産状態、支払不能状態であるかを判断する。
③ 破産状態であると認められれば、裁判所は「破産開始決定」(以前は破産宣告といいました)を行います。
(④ 一定の場合、裁判所は破産管財人を任命して、債務者の財産状況の調査や清算を行わせます。)
(⑤ 調査や清算が終了すると、債権者集会を開いて、”破産手続き”を終了します。)
保有する財産がわずかな場合など、大半の事案では、①②③のみで”破産手続き”が終了します。
しかし、一定の場合は、④⑤という手続きに進むことになりますが、その際には破産手続きは複雑化・長期化してしまいます。
”破産手続き”が終了すると、今度は”免責手続き”が行われます。
”免責手続き”では、債務者が負債を抱えた事情などが確認され、債権者からも債務の免除を認めてよいかの意見を聴取します。
どういった場合に免責が認められないかは破産法で規定されていますが、大きな問題がない場合には、免責決定がなされます。
破産の目的は、債務の免除、つまり免責を得ることになります。
しかし、実際の手続きでは、債務の免除を認めてよいかが問題になることは多くなく、それよりも、保有する財産の清算手続きの方が大きな問題となります。
特に、上で説明したように、①②③のみで手続きが終わるか、破産管財人を任命して④⑤に進むか、といった点が実務的には重要となります。
実は、①②③だけで終わる場合には、ほとんどが書面審査のみで破産が認められています。つまり、裁判所に出席する必要もなく、破産を認めてもらえるのです。
その分、破産終了までの期間も短く、費用も少なくて済みます。
ところが、破産管財人が任命され、④⑤の手続きに進む場合には、裁判所へ出席したり、破産管財人と面談を行うなどの労力が必要となってきます。
しかも、その場合には破産申し立てから破産終了までの期間が半年から1年程度になることが多く、手続きが長期化するうえ、破産管財人の調査費用などを支払わばなければならないため、破産の費用も高額化します。
ですので、破産管財人が任命されるかどうかといった点が、破産希望者にとっては非常に重要な点となってきます。
では、どのような基準で振り分けが行われるのでしょうか。
基本的には、一定以上の財産があるかどうかで区別されています。
地域によって取扱いに差がありますが、札幌の場合には、20万円以上の価値がある財産を1つ以上保有しているか、で判断されます。
たとえば、ローンを完済し、売却すれば70万円程度の価値がある自動車を保有している場合や、解約すれば100万円の解約金が戻ってくる生命保険をかけている場合、住宅を所有し、ローンもある程度返済されている場合などには、破産管財人を選任することが避けられませんので、④⑤の手続きをせざるを得ません。
しかし、このような財産がない場合にも、破産管財人が任命されてしまう場合があります。
1つは、事業者、経営者の破産の場合です。事業者、経営者の場合、現在は手元に財産がなかったとしても、事業の内容や倒産に至る状況を精査したり、事業に関する財産が残されていないかを調査するために、破産管財人が選任される可能性が高くなります。
もっとも、事業の規模が大きくなく、十分な資料を提出できる場合には、破産管財人をつけないまま簡単な手続きで終了できることもあります。
もう1つは、申し立て時の資料や説明が不十分な場合や、債務を抱えた事情にあまりにも問題がある場合などには、調査のために破産管財人が選任されることがあります。
このような事案の場合には、もっと丁寧に調査・説明をしておけば、破産管財人を選任されずに済んだ、というケースも含まれています。申し立ての仕方が悪いために、余計な時間、余計な費用が生じてしまうことがあるのです。
破産手続きの流れをざっと見てきましたが、イメージはつかめたでしょうか。
実際の手続きでは、裁判所に破産を申し立てる時点で、ほぼ手続きは終了しています。申し立て時までの調査や資料の収集、申立書の作成までが破産手続きの山場であり、そこまでを適切に行えるかどうかによって破産の命運が決まるといってよいでしょう。
特に、事業者、経営者の場合や、不動産を所有している場合などは、事前準備によって破産がスムーズに進むかどうかに大きな差が生じてしまいます。
ですので、破産手続き、債務整理の経験が豊富な弁護士に依頼することが、非常に重要となってくるのです。
今回の話はわかりづらいところも多かったと思いますが、いかがでしょうか。
イメージを明確にしていただくため、次回は、実際の事例をもとに、破産の流れをシミュレーションしてみたいと思います。
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【解決事例】 債務総額350万円を自己破産により清算できました
【相談内容】
30代男性、札幌の会社員のAさんは、手取り30万円程度の収入があり、自動車ローンを組んで順調に生活していました。
ところが、勤務先が倒産してしまい、再就職までの生活費や自動車ローンの支払いのため、消費者金融から借り入れをし始めました。
何とか再就職しましたが、収入は20万円程度まで減少してしまい、債務やローンの返済までの余裕はなく、借り入れを増やしながら乗り切る自転車操業状態になっていました。
そのうち、自動車も手放すことになり、債務も350万円まで増え、毎月の返済額が10万円に及び、どうにもならないと思い、弁護士を頼り相談にいらっしゃいました。
【解決方法】
Aさんの負債は、利息制限法の範囲内のものが大半で、債務自体を減額することはできませんでした。
また、Aさんの収入や生活費をみると、毎月数万円の返済を行うことも難しく、赤渕弁護士も任意整理や個人再生による解決も難しいと判断しました。
そのため、債務を清算するには自己破産を選択するのが適切だと弁護士から説明し、Aさんも自己破産を希望しました。
自己破産の場合、一定以上の価値のある財産(1つあたり20万円が目安)は処分しなければなりませんが、Aさんにはすでに自動車もなく、そのほかにも問題となる財産はありませんでした。
破産に至る事情にも大きな問題はありませんので、自己破産を行うことに支障も見当たりませんでした。
Aさんは、最初の相談時に赤渕弁護士に自己破産の依頼し、約半年後に自己破産の申し立てを行った結果、その3カ月ほど後に無事に破産による債務免除が認められ、Aさんの負債はゼロになりました。
Aさんは返済の負担がなくなったため、収入の範囲内で生活できるようになったようで、「もう借金は懲りました。今後は堅実にやっていきます。」とおっしゃっていました。
【コメント】
自己破産は、債務整理の最後の手段ですが、もっとも強力な方法です。
借金が増えた事情や現在の経済状況などを裁判所に説明し、許可を受けることで債務の免除が認められます。
生活に行き詰まり、このままではいつまでもまともな生活を行えないのではないか、という悩みを解消し、生活を一から建て直すのが自己破産の目的です。
Aさんの場合、負債を抱えた事情にもやむを得ない部分があり、所有する財産も大きいものではなかったため、比較的スムーズに手続きを進めることができました。自己破産により借金から解放され、無事に再スタートできたようです。
借金問題でお悩みの方や破産を検討している方は、 当弁護士事務所までご相談ください。札幌市内だけでなく、北海道内各地からの依頼も受け付けております。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。
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