【債務整理】 個人再生では自宅を残すことができるって本当?(後)
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第15回です。
今回は、前回(個人再生では自宅を残すことができるって本当?(前)) に引き続き、個人再生手続きの場合の住宅の取扱いを説明します。
前回も説明しましたが、個人再生手続きでは、破産手続きの場合とは違って、住宅を残したまま債務の整理をできる場合があります。
どういった場合に住宅を残せるかは、「住宅ローンの残高」と「自宅の現在の価値(売却価格)」のどちらが大きいかによって異なります。
前回は、「住宅ローンの残高」が、「自宅の現在の価値」よりも大きい場合、いわゆるオーバーローンの場合を説明しました。
今回は、「自宅の現在の価値」が、「住宅ローンの残高」よりも大きい場合を見ていきます。
たとえば、自宅の土地・建物をいま売却すると、1500万円の値段がつくとします。
その土地・建物の住宅ローンが、1200万円残っている場合を考えましょう。
この場合、自宅を売却してローンを払っても、300万円が手元に残ることになりますので、この300万円分の価値ある資産ということになります。
このような住宅ローンを差し引いても資産価値が残る場合は、実は、住宅を残したまま個人再生手続きを利用することは難しい場合が多いのです。
これは、価値のある財産を保有したまま、破産や個人再生を申し立てるのは難しいためです。
破産や個人再生では、負債の方が多く、現在の財産を債権者に分配することで、足りない部分の負債をすべて免除してもらう手続きです。
そのため、手元にある価値ある財産は、処分して債権者に分配するのが原則になりのです。
もっとも、破産の場合にはおおむね20万円以内の財産は手元に残せますので、すべてを処分するわけではありません。
そして、個人再生の場合にはもっと多くの財産を手元に残すことが認められており、基本的には100万円以内の財産は手元に残すことができます。
しかし、100万円を超える財産を残す場合には、厳しい条件があります。
この問題は、「個人再生手続きで手元に残せる財産は?」で説明したのとまったく同じ問題ですので、そちらも参照いただければと思います。
簡単に説明すると、
- 個人再生では、返済額以内の財産は処分しないで手元に残すことができる
- 個人再生では、手元に残す財産の金額以上の金額を返済しなければならない
というルールがあります。
個人再生の返済額は、100万円となるケースが多いので、100万円以内の財産はそのまま残せることがほとんどです。
では、さきほどの300万円の差額が残る場合はどうなるのでしょうか。
この場合、個人再生を利用しても、「300万円」以上の金額を返済しなければならないことになります。
具体例を見てみましょう。
Aさんには、通常の債務が700万円、住宅ローンが1200万円あり、住宅の価値は1500万円ありました。
この場合、住宅を処分すると300万円(1500万-1200万)が残りますので、Aさんには300万円の財産があることになります。
ここで、個人再生手続きを使いますと、住宅ローン以外の負債が700万円の場合、これを5分の1まで減額することができます。
ですので、本来は、700万円→140万円となり、この140万円と住宅ローン1200万円を返済していけば、残りは免除になります。560万円も負債が免除されますので、相当な効果があるはずです。
しかし、ここでAさんには300万円の財産がありますので、住宅ローン以外の負債について、最低でも300万円以上返済しなければなりません。「手元に残す財産以上の金額を返済しなければならない」からです。
したがって、実際には、700万円→300万円と減額し、この300万円と住宅ローン1200万円を返済していくことになります。
この場合にも400万円の免除になりますので、効果は大きいですが、さきほどの例よりも返済額は相当大きくなってしまい、返済プランは厳しいものとなってきます。
さらに、住宅の価値が高くなり、たとえば住宅ローンが1000万円、住宅の価値が1500万円の場合は、500万円分の財産を保有することになりますので、返済額は最低500万円になります。
ですので、さきほどの例では、700万円→500万円へと200万円の減額はできますが、それでも500万円の負債が残ってしまうのです。
さらに住宅の価値が高く、住宅ローンが1000万円、住宅の価値が2000万円となった場合は、財産の価値が1000万円残ることになりますので、負債である700万円よりも財産の価値が高いため、個人再生を利用することはできなくなってしまいます。
これまでの話は、住宅ローンを完済しているにも同じようにあてはまりますので、そのような場合にも保有財産の価格が高くなってしまい、個人再生を使うことは難しいでしょう。
以上が、個人再生で自宅を残す場合についての解説です。
住宅ローンありの個人再生は条件が複雑ですので、少しわかりにくい説明だったかもしれません。
簡単に結論を整理すると、住宅ローンの残高と住宅の価値が近い場合には個人再生を利用しやすいですが、住宅の価値の方があまり高くなってしまうと、個人再生を利用して住宅を残すことは非常に難しくなってきます。
そのような場合には、たとえば不動産を担保に追加融資を受けて債務の返済にあてるなど、任意整理による返済を行っていくことを検討しなければならないでしょう。
前回と今回で、個人再生の場合に自宅を残せる条件を詳しく見てきました。繰り返し述べますが、この条件は非常に複雑で、専門的な知識や経験がないと、確実な判断はできません。
また、個人再生手続きは弁護士などに依頼しないで行うことは困難ですので、特に住宅をお持ちで債務整理を検討している方は、お早めに弁護士にご相談ください。
当事務所でも債務整理は相談料無料で対応していますので、お悩みの方は、お問い合わせのページをご覧のうえ、ご連絡ください。
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