【解決事例】 無銭飲食で逮捕されたが、嫌疑不十分で不起訴となった事例
【事件の内容】
Aさんは、ある日の深夜、飲み屋をはしごし、だいぶ酔いがまわった状態で、札幌市内にある居酒屋に行きました。
Aさんはこのお店に初めて来ましたが、お酒をだいぶ飲みすぎてしまい、正常な行動がとれないような状態になってしまいました。
そうすると、居酒屋の店員から、もう帰ってほしいと言われ、かっとなり、それなら金は払わないと怒鳴ってしまいました。
そこで、店員は無銭飲食だと思い、警察を呼びました。
現場を訪れた警察は、Aさんにお金を払うよう言いましたが、Aさんは、居酒屋の店員の態度に腹を立て、いきなり警察を呼ばれた動揺もあってか、こんなお店に払うお金はない、と言ってしまいました。
警察官は、Aさんがお金を持っていないのだと判断し、Aさんを無銭飲食(詐欺)の容疑で逮捕しました。Aさんは札幌市内の警察署に拘束されてしまいました。
逮捕の3日目に勾留(捜査のために10日程度、身柄拘束をすること)され、その時点で秋山弁護士が接見し、弁護人になりました。
【弁護活動】
まず、弁護士がAさんから詳しく事情を聴いたところ、実は、Aさんは当時、支払いをするのに十分なお金を持っていることがわかりました。
お金を持っていたのに、酔っぱらっていたためか、ついかっとなってお金を払わない、と強く言ってしまったとのことでした。
ところが、警察はAさんがお金を持っていたのを後から知って驚いたものの、Aさんに、「お金を持っていたことを本当は忘れていて、最初から踏み倒すつもりだったんだろう」という無茶な追及を続けていたのです。
警察の取調べは相当厳しいようでしたが、弁護人からはAさんに対応方法を丁寧に教え、警察署にも抗議を入れることとしました。
Aさんには取調べの際にどういったことを話したらよいかなどの対策を協議しました。
Aさんはお金を払うのを拒否してしまいましたが、これは単なる金銭トラブルです。刑事事件に問うようなものではありません。
無銭飲食になるには、最初からお金を踏み倒すつもりであったこと、つまり最初からだますつもりであったことが必要です。
Aさんは、売り言葉に買い言葉でこんな店にお金を払いたくない、と言ってしまっただけで、本当に払わないつもりはなかったのです。ところが、すぐに警察を呼ばれ、動揺しているうちに逮捕されてしまったのでした。
弁護人は、Aさんに取調べ対策を教えると同時に、迷惑をかけてしまった居酒屋へ謝罪と弁償に訪れました。
居酒屋のオーナーには、事件の真相や本人の反省の様子を伝えると、オーナーは飲食代金を払ってもらえればそれで良いと言ってくれましたので、本人から預かったお金で弁償し、示談が成立しました。
犯罪が成立するかどうかとは別に、払うべきものをしっかり払うのは当然のことですので、早い段階で示談を行ったのです。
その後、当初の勾留期限(逮捕から約10日ほどです)が来ました。Aさんは、代金を踏み倒すつもりなんてなかったとの言い分をがんばってつらぬいていました。
事件の内容は単純で、関係者も店員とAさんくらいしかいませんので、10日あれば処分が決まるだろうと予測していました。
ところが、検察官は、Aさんの処分を決めるにはまだ捜査が足りないと話し、さらに10日間、勾留を続ける許可を裁判所に求めました。
弁護人は、これ以上の捜査は不要であることを書面に記載して提出し、裁判官とも面談して理解を求めました。しかし、裁判官は検察官の請求通り、10日間の延長を認めてしまいました。
しかし、これほどシンプルな事件でこれ以上Aさんを身柄拘束する必要はないことに加え、Aさんが十分なお金を持っていたことや、この居酒屋の前に行ったお店ではどこもお金を払っていることなどから、Aさんが無銭飲食をするつもりはなかったことは明らかでした。
ところが、これ以上身柄拘束を続けられ、自白を求められ続ければ、Aさんは警察がいうような無茶な言い分を認めてしまいかねません。
そこで、勾留の延長を認めた裁判所の判断に対し、翌日、すぐに異議申し立て(「準抗告」といいます)を行いました。
お昼過ぎに出した準抗告は、夜の8時ごろに結論が出ました。
裁判所の判断は、準抗告を認め、Aさんをすぐに釈放するというものでした。事件が単純であること、すでに十分捜査をしていることなどを理由に、これ以上の勾留は必要ないとの判断でした。
Aさんは、夜9時ごろに無事に釈放されました。
その後、結局は一度も取調べに呼ばれることもなく、後日、Aさんの容疑は嫌疑不十分(犯罪したという確証がない)という理由で、不起訴になりました。
Aさんは、これからはお酒を控えることを弁護士と約束し、もとの生活に戻っていきました。
この事件では、Aさんが弁護士のアドバイスに従い、厳しい取調べにも負けなかったことと、早期の釈放を求めた弁護士の活動がうまくいったことが、良い結果につながったといえるでしょう。
刑事事件は、このように早い段階からの対応が良い結果につながることが多いといえます。犯罪の捜査を受けている方や、家族が逮捕されてしまった方は、すぐにご相談ください。当事務所では、札幌市だけでなく、近隣市町村の方からのご依頼も受け付けております。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。
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