【離婚】 離婚時の財産分与について知りたい!
札幌の弁護士による離婚解説コラム第17回です。
前回(面会交流の取り決めに違反した場合の対処法は?)までしばらく面会交流について詳しく見てきました。
今回からは、離婚の際の財産分与について、何度かに分けて取り上げていきます。
離婚をする際に問題となる事柄はいろいろとありますが、財産の分配に関する問題は特に争われることの多い点です。
夫婦が結婚してから離婚までの期間、お互いが得てきた財産をどのように清算するかという問題を、財産分与といいます。
今回はこの財産分与の基礎をまず説明したいと思います。
そもそも、この財産分与というのはどうして問題となるのでしょうか。
一番わかりやすいのは、ふたりで住宅ローンを組んで自宅を購入した場合です。
結婚生活のために買った不動産で、ローンも払ってきましたが、離婚する際にはこの自宅はどちらが受け取るのか、ローンはどちらが支払うのかなどが問題になります。
これが財産分与の典型的な問題の1つです(住宅問題の解決は次回以降に取り上げます)。
しかし、実際の財産分与は、このような不動産問題に限定されるわけではなく、もっと広い範囲で問題となります。
たとえば、夫婦で結婚し、その後、夫が仕事をして貯金をたくわえ、妻が主婦として子育てや家事を行っていたとします。
妻には収入がありませんので、離婚時にもたくわえがないことがほとんどでしょう。
これに対し、夫は、結婚中に1000万円の貯金をためていたとします。
このような場合に、この1000万円は夫にしか権利がなく、妻には何の権利も認められないのでしょうか。
夫婦で生活する場合、互いの協力によって家庭を維持するものと考えられています。
さきほどの例では、妻が家事や子育てを行うことで、夫が仕事の専念でき、財産をたくわえることができたと考えることができます。
また、夫婦間では、一般的に、どの財産がどちらのもの、といったことを区別せず、ふたりで共同の家計管理・財産管理をしていると意識している例が多いでしょう。
そうすると、さきほどの夫が貯めた1000万円は、夫婦で一緒に形成してきた財産と考えるのが実態に合うのではないでしょうか。
こういった考え方を民法は取り入れており、民法768条では、「離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」ということが規定されています。
これが財産分与という制度なのです。
つまり、住宅に限られず、「結婚期間中に夫婦が蓄えた財産は、お互いの共通の財産であり、離婚時にはその分配を求めることができる」ということです。
この財産分与は、さきほどの例のように、あまり結婚中にたくわえのなかった妻側から、仕事をして財産を形成した夫に対してなされることが多いといえます(もちろん反対になることもあります)。
ただし、注意が必要なのは、このような財産分与の対象となるのは、①夫婦で結婚生活を行っている期間中に、②夫婦生活に関係して得た財産に限られるということです。
①はどういうことかというと、結婚生活前から持っていた財産は分与の対象とならないという意味です。結婚前から持っていた不動産や預貯金などは、夫婦が協力して得たものではないため、そのような財産の分配を請求することはできません。
②は、夫婦の片方が、夫婦生活とは全く関係ない個人的な事情で取得した財産のことで、典型的なものは親からの相続財産です。たとえば夫の父親が亡くなり、1000万円の預貯金を夫が取得して貯金していた場合、これは夫が父から相続したために取得できたものですから、夫婦生活や結婚生活とは無関係に取得したことになります。
このような財産は、財産分与の対象外なのです。
ですので、離婚時に相手が持っている財産すべてが分与の対象となるのではない、という点をしっかり意識する必要があります。
なお、その条件をクリアしていれば、財産の種類には特に制限がありません。
不動産や現金、預貯金のほか、生命保険の解約金や株式、投資信託などの投資資産も分配の対象です。複雑になりがちなものとしては、退職金も一応は財産分与の対象となることがあります。この点はまた別の機会に取り上げたいと思います。
最後に、このような財産を分配する場合の割合はどうやって決めると思いますか?
本来は、個々の夫婦ごとに、財産形成にどの程度関与したのかを判断していくことになりますが、特別な事情がない場合には、基本的に50対50、つまり半分ずつ持ち分があると計算することになります。
たとえば、夫が1000万円、妻が100万円の財産があれば、合計で1100万円の夫婦財産がありますので、550万円ずつ取得することになります(これは、要するに妻は夫から450万円を受け取れる、ということですね)。
以上が財産分与の基礎的な説明になります。
今後、よく問題になる点などを中心に財産分与問題を取り上げていきたいと思います。
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