【離婚】 離婚したら夫の債務の保証人から抜けられる?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第20回です。
前回(負債がある場合の財産分与はどうすればいいの?)では、夫婦の一方が負債を抱える場合、それが財産分与に大きく影響することを見てきました。
これに関連して、今回は、夫婦の債務に、もう一方の夫婦が保証人となっている場合、離婚したら保証人から抜けられるのかを考えます。
以下のような具体例を考えましょう。
結婚後、夫の名義で住宅ローンを組みました。そのローンについて、妻が連帯保証人となりました。
その後、5年間ローンを返したところで、離婚し、妻が自宅を出てほかに移り住むことになりました。
まだローンが25年も残っていますが、このとき、妻は保証人から外れて責任を負わない、ということになるのでしょうか。
妻の立場からすれば、もう離婚したのだから、夫の負債について責任を負い続けるのは納得いかないでしょう。しかも、住宅には自分は住まないのですから、なおさら負債とは無関係になると考えるのが常識的だと思います。
ところが、この妻の考えは、間違っているのです。離婚し、自宅を出たからといって、保証人の責任は無くならないのです。離婚して何年も経ったとしても、そのままでは妻は保証人となったままなのです。
意外に思われた方もいるでしょうが、なぜ保証人のままになってしまうのでしょうか。
それは、債務の保証は、夫との間で約束をしたわけではなく、銀行などの債権者と妻が契約をしているからです。
夫と妻が離婚したとしても、銀行からすれば、銀行と妻が保証人の契約をしているのですから、離婚したからといって保証人から外れるのはおかしい、ということになります。
保証人となった際に、離婚した際には保証人から外れる、という取り決めでもあれば別ですが、現実にはそのような取り決めがなされることはまずありません。
ですので、離婚しても、別のところに住んでも、銀行との間の保証契約は生き続けていますので、夫がローンを完済するまで、いつまでも責任は残り続けてしまうのです。
では、妻が保証人から抜けることはまったくできないのでしょうか。
実は、保証人から抜ける方法が1つだけあります。それは、銀行から承諾をもらうことです。保証人の契約は銀行と結んでいますから、銀行の承諾が得られれば、契約を変更することができます。そのため、銀行からOKが出れば、保証人から外れることができるのです。
しかし、銀行は、離婚したという理由だけでは、保証人から外れることを認めません。
銀行としては、きちんとローンを全額返済してもらうために保証人をわざわざ立てています。
そのため、銀行から承諾をもらうためには、別の保証人を立てたり、保証人から外れるかわりにローンを一定額返済したりする必要があります。通常は、別の保証人を立てるという形で対応しています。
ただ、そうはいっても、自分とは関係ない夫のローンの保証人となってくれる人は、簡単に見つかるわけではありません。また、夫が新しい保証人探しに乗り気でない場合もあります。そうなってしまうと、なかなか保証人から抜けられないこともあり得ます。
特に、すでにローンを滞納しているような場合には、銀行も保証人の交代を認めないでしょうし、そのような状態で保証人になろうという人がいるはずもありません。
このような場合には、保証人から抜けられないままとなってしまうこともあるのです。
しかし、これはいったん保証人となってしまった以上、避けられない結果なのです。保証人というのは、それほど重大な責任を負う立場であるということです。
ですので、最終的に破産手続きを行って債務を免除してもらう、という事案も何度か経験しています。
保証人と離婚の際の処理については、このようになります。
債務や保証人の処理は、財産分与と関連して問題となることが非常に多いといえます。
特に、夫が事業者である場合には、事業に関する負債が多かったり、妻や妻の親族が保証人になっているというケースもあります。
このような場合には、その処理をめぐって深い対立が生じることがあります。
そのため、離婚協議や調停の中で、それらの点についても納得のいく解決を目指していく必要があるのです。
次回は、今回も少し触れましたが、住宅や住宅ローンに関する問題を取り上げます。
住宅に関する問題は複雑となりやすく、財産分与ではもっとも難しい点ですが、当事者の関心も強いところですので、興味がありましたらぜひご覧ください。
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