【債権回収】 売掛金・未収金を回収するためには
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第1回です。
今回から、債権回収をテーマとしてコラムを連載していきます。
債権回収は、企業や事業者にとっては必ず直面する問題です。
すべての取引をその場で現金取引で行っている場合には問題になることはありませんが、仕入れ代金や工事代金、賃料など、あとから代金を支払ってもらうという取引はごく日常的に行われています。
これらの売掛金・未収金をまとめて債権と呼び、その支払いを受けることを債権回収と呼びます。
このような企業、事業者にとってもっとも身近な法律問題である債権回収について、その方法や注意点、弁護士が行う活動などについて解説していきます。
なお、当弁護士事務所では、昔から信販会社や金融機関の顧問をしていたこともあり、債権回収は得意分野としています。
特に仮処分、仮差押えといった民事保全や、競売や差押えなどの強制執行手続きは数多く手掛けており、多くのノウハウを有しています。
このコラムは、そのような多数の債権回収案件を解決してきた経験を集約したものですので、債権管理に役立てていただけるものと思います。
では本題に入ります。
今回は、第1回目ということで、債権回収の全体像、一般的な流れを見ていきたいと思います。
詳細や具体例は次回以降に取り上げます。
Ⅰ 普段の情報収集・滞納リスクのチェック
そもそも、債権回収のもっとも基本的な考え方は、滞納しないでしっかり払ってもらうことです。
そのため、取引先の経済力、業績などを確認しておく必要はありますし、たとえ1回、1日でも支払いが遅れたり、支払いの猶予を求められた場合には、慎重に対応していく必要があります。
そのような場合、担保や保証人を求めたり、取引量を控えるなどの対応を検討しなければなりません。
最初は少しずつ支払いが遅れ、そのうちにまったく支払いがなくなってしまい、そのころには滞納額が多額に膨れ上がっている、という相談はまったく珍しくありません。
なお、後で説明する仮差押えや強制執行のためには、相手方の取引先、銀行口座、資産状況などを普段から把握しておくことが有益です。
Ⅱ 滞納時の対応
売掛金などの支払いが滞納するようになった場合、それを放置してはなりません。
突発的な事情による滞納であればよいのですが、業績悪化などにより資金繰りが厳しくなっている場合、一度滞納が始まったらそのまま滞納が解消されない状態が続くおそれがあります。
ですので、滞納が始まった場合、すぐに明確に請求の意志を伝え、いつまでに支払うかの確約を得る必要があります。
滞納額があいまいであったり、相手がはぐらかそうとする場合には、残金の確認書や支払時期の確約書などを作成してもらい、相手にこちらの強い意志を伝えることも効果的です。
Ⅲ 滞納が続く場合
それでも滞納が続いてしまう場合や金額が大きく、支払いの見込みが薄くなってきた場合には、もはやのんびりしている暇はありません。
相手がそのまま倒産してしまえば、債権をまったく回収ができなくなります。倒産した相手からの配当は、ほとんどの場合、ゼロか数パーセント程度にすぎません。
そのため、相手の倒産が決定的になる前に、一刻も早く回収を行う必要があり、これまでよりも強い対応が必要となります。
Ⅳ 弁護士からの請求・内容証明郵便
相手の滞納が長引く場合、いままでと同じように請求を行ってもほとんど効果がないでしょう。
その場合には、こちらも本気であることを示す必要があります。具体的には、弁護士から電話で請求したり、内容証明郵便で督促を行います。
弁護士からの請求というのは強いインパクトがあります。弁護士に依頼するほど本気であると相手に伝わりますし、弁護士が入った場合は、裁判などの法的措置をとられる可能性が高くなるからです。
そのため、相手が本当に倒産する直前というほど切迫していない限り、何らかの反応が来るのが通常です。
(なお、行政書士や司法書士も請求行為を行うことがありますが、相手との交渉や裁判をすることには制限がありますし、相手に与えるインパクトも弁護士よりは相当弱いのが実情です)
Ⅴ 弁護士による交渉
弁護士が相手と交渉し、相手の経済状況や滞納の理由を聴取しながら、支払いの確約をさせます。
どの程度の支払いならできるのか、支払いの見込みはどの程度かなどを確認し、できるだけ早期の支払いを実現します。
すぐに支払いできないという場合には、公正証書を作成して強制執行に備えたり、担保をとったりします。
相手の経営状態などによっては、早期に支払いを受けるかわりに、一定の減額を行うべき場合もあります。
実際には、この段階で解決する事案が多いといえます。
Ⅵ 民事保全(仮差押え・仮処分)
相手と話し合いをしても解決に至らない場合や、そもそも話し合いをしている余裕もない場合もあります。
そのような場合には、一気に法的措置をとり、強制的な回収に入ります。
相手が経済的な理由以外で、なにかしらの言い分があって支払いをしないような場合には、裁判を起こし、その中で裁判所の判断を受けて支払い義務を確定させていくのが通常です。
しかし、相手が経済的な理由のみで支払いをしない場合、のんびり裁判をやっていては相手が倒産したり、財産が空っぽになってしまう危険があります。
このような場合、正式な裁判ではなく、直ちに、簡易な手続きで裁判所の許可を得て、相手の財産を一時的に凍結してしまうという方法をとります。たとえば、相手の預金を凍結してお金を引き出せなくしたり、相手がほかの会社から受け取る予定の売掛金を凍結し、相手が受け取れない状態にしてしまうのです。
このような手続きを、民事保全とか、仮差押え・仮処分などといいます。この方法で財産を凍結して保全し、その間に正式な裁判を起こす時間を得るのです。
もっとも、資金繰りに窮している相手にとって、資産の凍結は死活問題となります。そのため、民事保全を受けた相手が、それをすぐに解除してほしいと求めてくることも少なくありません。
その場合、交換条件としてある程度の支払いを受けて債権を回収することになります。
相手が倒産してしまえば民事保全は無効になってしまうのがこの方法の最大のデメリットです。相手を倒産させるのが目的ではありませんので、ある程度譲歩して解決することも必要です。
Ⅶ 裁判・強制執行
民事保全でも解決しない場合や民事保全が適切でない事案では、裁判を起こし、裁判所から支払命令を出してもらいます。
それにしたがって相手が支払えば解決ですが、相手がそれでも支払わない場合、強制執行を行って強制的に債権を回収していきます。
強制執行は、具体的には、相手の預貯金や不動産を押さえたり、売掛金・商品などを取り上げて、債権を一方的に回収していきます。
これは債権回収の最強の方法ですが、同時に、最後の手段でもあります。この強制執行でも回収できない場合、支払いを受けることは事実上不可能となってしまいます。
あとは貸倒れ金として損金処理して損失を抑えるしかありません。
以上が債権回収のためのおおまかな手順です。
それぞれの段階において、注意点やノウハウがありますが、それについては次回以降に見ていきます。
ただ、相手が倒産してしまったらもう打つ手はありません。
そのため債権回収はスピードが勝負です。弁護士に相談に来た時点で、すでに何もできない、ということも非常に多いといえます。
ですので、少しでも危険を感じた場合には、まず弁護士に相談して対策を練っておく方がいいでしょう。
取引先からの入金が得られなかったために倒産してしまう会社もめずらしくありませんので、債権回収には十分な注意を払う必要があるのです。
当弁護士事務所では、債権回収を得意分野としており、これまでに数多くの事案を解決してきました。
債権回収についてお悩みの方は、まずはご相談ください。
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