生命保険や借金は遺産に含まれるか? -相続される財産の種類
札幌の弁護士による遺産相続コラム第4回です。
前回(相続できる財産の割合はどう決まっている? -法定相続分)は、民法ではだれが遺産のどれだけを相続することとされているかについて見てきました。
今回は、どのような財産が相続の対象となるのかを説明します。
1.相続の対象となる財産
本人が亡くなった際、どの財産が相続人に引き継がれるのかは、ひとことでいえば、死亡時に本人が保有していたほぼすべての財産が相続されることになります。
財産には、たとえば、現金、預貯金、不動産、株式、家財道具などが含まれます。さらに、不動産を人に貸して家賃を受け取っていた場合などには、その家賃を請求する権利も相続の対象となります。
これらの財産は、相続財産であるため、基本的に、法定相続分を基準として相続人が分割して引き継ぐことになります。
2.生命保険の取扱い
ここで注意が必要なのは、本人の死亡時に支払われる生命保険金の取扱いです。
生命保険については、契約時に受取人が決められていますし、もともと「本人の財産」とは言いづらいため、通常、遺産相続とは無関係に、保険契約で指定された受取人が受け取ることができます。そのため、多額の生命保険をもらっているからといって、ほかの遺産がもらえなくなることはなく、通常は生命保険のことは考慮しないで、ほかの遺産を分割していくことになります。
たとえば、妻と長男・次男の3人が相続人となり、遺産が3000万円あり、生命保険5000万円は次男が受取人となっていたとします。この場合、妻が2分の1、長男・次男は4分の1ずつ相続すると定められています。
そうすると、この場合、次男は生命保険金5000万円を全部受け取りますが、それ以外に、遺産の4分の1である750万円をそのまま受け取ることができます。生命保険をもらっているからといって、相続割合が変更されるわけではないのです(一定の例外はあります)。
長男などからすると不公平に思わえるかもしれませんが、生命保険と遺産相続は別物とされているため、このような結論となります。
3.借金・債務は相続されるか
これまで相続される財産について見てきましたが、ご本人が銀行から1000万円の借金をしたまま亡くなってしまった場合の借金(債務)はどうなるでしょうか。
結論としては、この借金・債務についても相続人が相続割合に応じて引き継ぐことになります。
相続人が長男と長女の2名であれば、500万円ずつの借金を相続してしまいます。財産だけを受け取って、債務については知らない、という対応はとれないということです。
財産が1000万円あり、借金が500万円というように、財産の金額の方が高ければ、相続人が相続財産から借金を返し、残りを分配するという方法で無理なく解決することができます。
しかし、財産はほとんどないのに、借金だけが残っていたという場合には、相続人は自分とは本来関係のない借金だけを引き継がされることになってしまい、理不尽な結果となります。
そのため、相続人は、一定の期間内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行えば、財産も借金もすべて相続しないでよい、という方法が認められています。この相続放棄については、こちら(財産や借金を相続をしないことはできる? -相続放棄)で説明していますが、残された債務が大きい場合には、速やかにこの手続きをとっていくことになります。
以上のように、本人が死亡時に持っていた財産・権利や、死亡時に負っていた債務がほぼすべて相続人に引き継がれます。
そうすると、場合によっては、家族も知らなかった財産や借金が存在している可能性があり、しばらく経ってから突然発見され、相続人が困惑することもあります。
財産や借金を完全に調べることは簡単ではありませんが、それでも、ある程度の方法やコツが存在するのも事実です。
そのような相続財産・相続債務の調査や処理についてお悩みでしたら、当事務所にてアドバイスいたしますので、お早めにご相談ください。
ご相談の予約は、(法律相談のご予約・お問い合わせのページ)をご覧ください。
次回は、「財産や借金を相続をしないことはできる? -相続放棄」について取り上げます。