【刑事事件】 弁護士・弁護人は何をするの?
札幌の弁護士による刑事事件解説コラム第8回です。
前回(保釈の際に守らなければならない条件とは)まで保釈について説明をしてきました。
今回からは、刑事事件の際の弁護士の役割などについて取り上げていきます。
刑事事件では、弁護士のことを「弁護人」と呼びます。
国選弁護人や私選弁護人、という言葉は聞いたことがあると思います。
では、弁護人は実際、どういった役割を果たしているのでしょうか。今回は、4つに分けて簡単に見ていきます。
1 被疑者・被告人との打ち合わせや面会
弁護士は、事件の相談や依頼を受けた段階では、その事件のことを何も知りません。
また、事件について一番詳しいのは当事者となっている被疑者、被告人である依頼者です。
そのため、弁護人にとってもっとも重要な仕事は、被疑者・被告人との打ち合わせです。
特に、被疑者・被告人が身柄拘束をされている場合には、弁護人が面会に行くことが重要な意味を持ちます。
たとえば、警察の留置場に身柄拘束をされている場合、基本的には家族や友人もご本人と面会することができます。
しかし、一回の面会時間は15分程度に限定されており、時間帯も平日の日中のみとされています。
これでは、突然身柄拘束され、多くの不安を抱える被疑者や家族にとっては十分とはいえないでしょう。
これに対し、弁護人は、留置場では時間制限なく、いつでも本人を面会することが認められています。
私自身、警察の留置場に夜中前に面会に出かけ、2,3時間打ち合わせをし続けたこともありました。
拘束されている被疑者にとって、弁護人との面会は、警察の捜査や今後の処分に関する情報を得たり、今後の対策を打ち合わせるだけでなく、警察官以外の人と話をして気分転換をするという意味も持っています。
いずれにしても、弁護人にとって、被疑者・被告人との打ち合わせがもっとも重要な仕事です。
2 身柄拘束からの解放
身柄拘束をされた被疑者・被告人にとっては、一刻も早く釈放してもらいたいというのが切実な思いでしょう。
もちろん、身柄拘束を避けられない事件も少なくありませんが、弁護人の熱意と活動次第で、身柄拘束から解放してもらえる事件も確かにあります。
たとえば、逮捕された直後であれば、勾留をしないで釈放するよう求めることがあります。
また、勾留が認められてしまっても、それに対して異議申し立てを行い、直ちに釈放するよう要求することもあります。
起訴され、裁判にかけられることが決まった場合であっても、保釈の申請をして、自宅から裁判所に出席することを認めてもらえる場合もあります。
このような、不必要な身柄拘束から、少しでも早く解放されるよう尽力することも弁護士の重要な役割といえます。
3 裁判の準備、関係者との打ち合わせ、示談交渉
起訴されて裁判にかけられてしまった場合、裁判の準備を行うことは弁護人として基本的な職務の1つです。
その活動のなかで、関係者と打ち合わせを行うことがあります。
たとえば、重要な証人に事情を聴いたり、被告人を今後監督してくれる家族や職場の上司と打ち合わせをしたります。
また、他人を死傷させたり、損害を負わせた事件で非常に重要な活動として、被害者との示談交渉を行います。
もちろん、弁償するだけの資力がなければ難しいこともありますが、被害者へ事件の動機や反省の状況を説明したり、弁償の打診を行ったりします。
このような被害者との協議は、加害者本人や家族が行うと感情的になり、かえってこじれてしまうことも珍しくありません。
事件によって他人に与えた迷惑・損害を穴埋めすることは、事件の責任をとるために欠かせない行為ですし、もちろん、刑や処分の重さにも影響してきます。
ですので、被害者との協議・示談は弁護活動の中でも重要度の高い活動です。
4 公判活動
弁護人は、公判に向けて、1~3のような活動を行ってきます。
その集大成となるのが、公判期日での弁護活動です。
自白事件では、事件後、被告人がどのように反省を深め、どのように責任を取ろうとしてきたのか、被告人に本当にふさわしい刑はどういったものなのかを、必要な証拠や尋問などにより明らかにし、裁判所を説得します。
否認事件では、検察官の主張立証を打ち崩し、被告人の言い分が正しいことを明らかにしていきます。
どちらの場合も、十分な事前準備や打ち合わせが必要となりますし、公判の場での臨機応変な対応も要求されます。
そのような弁護活動を踏まえて、判決が言い渡されます。
弁護人が行う活動はこのほかにも多くありますが、弁護人としての基本的な活動はこのようなものです。
前にも見てきましたが、逮捕から起訴・不起訴の決定までは長くても二十数日、自白事件であれば起訴から公判が終わるまで1か月程度しかないことも多いでしょう。
そのような短期間で十分な弁護活動を行っていく必要がありますので、弁護人には、十分な経験と迅速さが要求されるといえます。
いかがでしたでしょうか。
刑事事件には、警察や検察官、裁判所といった専門的・組織的な知識を持った相手に、対等な立場で言い分を主張立証していく必要があります。
そのため、専門的な知識・経験のない被疑者や被告人のみではほとんど対抗できないおそれが高いでしょう。
適正な裁判を受けるには、今回取り上げたような活動を弁護人が行うことが不可欠ですので、少しでも早い段階で弁護士に依頼するべきです。
当事務所では、逮捕前から起訴後までのどの段階からでも相談・依頼を受け付けていますので、お悩みの方はすぐにご相談ください。
次回も弁護人に関するテーマを取り上げる予定です。
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