【債権回収】 債権差し押さえ ~売掛金や預金を押さえるには
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第12回です。
前回(強制執行・差し押さえをするには ~その効果と必要なもの)は、差し押さえ全般について概要を見てきました。
今回からは、実際に差し押さえを行う際の手続きについて、差し押さえの種類ごとに見ていきたいと思います。
【債権の差し押さえとは】
差し押さえと聞くと、不動産や家財道具などを差し押さえる場面を連想する方が多いと思いますが、実務上、必ず検討するのが、「債権の差し押さえ」です。
債権というのは、売掛金や貸金などを取り立てる権利のことです。
つまり、債権の差し押さえというのは、相手方がほかの会社などに対して持っている権利を差し押さえてしまうことです。
具体的な例を見てみましょう。
あなたの会社が、赤渕建設に対して150万円の売掛金を持っていました。その赤渕建設は、秋山建設に対して200万円の売掛金を有しています。
このような場合、赤渕建設が代金を払ってこないのであれば、あなたは、赤渕建設が秋山建設に対して持っている売掛金のうち150万円を差し押さえればよいのです。
この差し押さえがなされると、秋山建設は、差し押さえられた150万円分については、赤渕建設ではなく、あなたに対して直接支払ってくることになります。
したがって、秋山建設から150万円を受け取って債権を無事に回収できるのです。これが、債権の差し押さえです。
実務上、よく用いるのは、このような売掛金のほかに、預金の差し押さえがあります。
預金は、銀行へお金を預けていることになりますので、銀行に対して、払い戻しを要求する権利があります。そのため、この預金を払い戻す権利を、債権差し押さえによって取得することができます。
この預金の差し押さえを行うことで、あなたの会社は銀行から、相手の預金の払い戻しを受けることができるのです。
【債権差し押さえに必要なもの】
こういった、売掛金や預金の差し押さえは非常に便利で、これをうまく利用することで債権の回収率が大きく向上することが期待できます。
しかし、これを行うためには、必ず入手しておかなければならないものがあります。
それは、差し押さえを行う債権の情報です。これを手に入れておかなければ、債権の差し押さえを行うことはできません。裁判所が調べてくれるということはありませんし、弁護士などが調べられる情報にも限りがあります。
普段、取引をしているあなた自身がもっとも情報を集めやすい立場にあるのです。
では、具体的にどのような情報が必要なのでしょうか。
売掛金の場合には、①誰に対する、②どのような内容の売掛金があるのか、が最低限必要になります。それに加えて、③支払時期、④売掛金の金額、がわかるとかなり有利になります。
たとえば、「秋山建設に対する工事代金で、支払日は今月末、金額は200万円」といった内容がわかると手続きが進めやすくなります。
預金の差し押さえの場合には、①どこの銀行の、②どの支店にある預金口座か、が必要です。口座番号まではなくても構いませんが、支店名までは必須となります。
何かトラブルになってからこれらの情報を入手しようとしても、相手も警戒しており難しいことも少なくありません。
そのため、普段から、取引先1つ1つについて、取引銀行や取引先の情報をよく把握しておくことが必要です。
そういった準備を日常的に行っているかどうかが、いざというときの債権回収率を大きく左右することになるでしょう。
以上が、売掛金や預金などの債権差し押さえの説明です。
取引先からの入金が滞ったとき、なにか差し押さえできそうな債権がないかを素早く考えることが重要です。
債権は、支払い時期が来ると支払われてしまいますが、そうなってしまうともう差し押さえはできません。
そのため、債権差し押さえは特に迅速に行う必要があるのです。
債権差し押さえについてお悩みの方は、当事務所にぜひご相談ください。豊富な経験にもとづいた適切なアドバイスをいたします。
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