慰謝料が発生する離婚、発生しない離婚
札幌の弁護士による離婚解説コラム第3回です。
前回(裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(後))までは、離婚原因をテーマにしました。
離婚特集の3回目は、慰謝料を取り上げます。
離婚といえば慰謝料、慰謝料といえば離婚、というくらい、離婚の際には慰謝料が大きな問題となります。
しかし、当然ですが、離婚をすることになったからといって、慰謝料が必ず発生するわけではありません。
慰謝料が発生する離婚と発生しない離婚があるのです。では、どういう場合に慰謝料が生じるのでしょうか。
慰謝料というのは、離婚に限ったものではなく、「不法行為」を行った者が、被害者に対して支払う義務を負うとされています。
ですので、離婚の際に慰謝料が認められるのは、離婚について、一方に「不法行為」にあたる重大な落ち度、責任がある場合に限られます。
性格の不一致や、お互いの価値観の違いなどによる離婚では、一方にそのような落ち度、責任があるとはいえませんので、離婚を求めた側も慰謝料を請求できず、求められた側も慰謝料を支払う必要はありません。
反対に、慰謝料が発生するもっとも代表的な例は、不貞行為です。
前回までも触れましたが、不貞行為、つまり浮気・不倫は、離婚原因の1つです。相手が不貞行為をした場合には、相手が反対したとしても、裁判でも離婚が認められることになります。
しかも、不貞行為の場合には、あわせて慰謝料の支払義務が発生することになります。
不貞をした側は、離婚を求められたり、慰謝料の支払いを求められたら、基本的には応じなくてはならないのです。
不貞行為以外では、暴力・DVのケースが典型的です。
たとえば、夫が度重なる暴力を振るい、妻が大けがをしてしまい、正常な夫婦生活が維持できず、シェルターなどに避難して、離婚を求める場合があります。
このような場合、暴力が不法行為になることは当然ですが、それによって離婚に追い込まれたという点も不法行為にあたります。
ですので、暴力に対する慰謝料と、離婚に追い込まれたことの慰謝料を請求できるのです(実際にはこれらを区別せず、ひとつの慰謝料として請求します)。
これら以外の理由で離婚をする場合には、慰謝料が認められることは多くありません。
不貞行為や暴力に並ぶほどの落ち度が相手にないと、簡単には認められないのが実情です。
余談ですが、離婚以外の場合でも、何か被害にあったり、不快な思いをした際に「慰謝料を請求したい」という方もご相談に来られます。
しかし、実際には慰謝料が認められるというのは、よほどの精神的苦痛を負ったような場合に限られており、怪我をさせられた場合や離婚の場合以外では、あまり認められていません。
なお、離婚の場合には、慰謝料のほかに財産分与や養育費などの支払いをあわせて求めることもあります。
そういった場合には、調停などの話し合いの際には、慰謝料がいくら、財産分与がいくら、という計算をするよりも、合計でいくら、という形で話し合いをまとめる方がわかりやすいことが多いと思います。
養育費は毎月の支払いとなるので、少し別ですが、財産分与と慰謝料は、離婚の精算としていくら負担するか、という点では似た面があるので、財産分与を多く支払う分、慰謝料を下げる、などといった解決の仕方も目にします。
それでは、慰謝料が発生する場合に、金額はどのように決めるのでしょうか。
慰謝料の相場は、どのくらいでしょうか。
そのあたりは、次回のテーマとしたいと思います。
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