裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(後)
札幌の弁護士による離婚解説コラム第2回です。
前回(裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(前))の続きとなります。
前回は、離婚原因として民法では5つが規定されていることと、それぞれの内容について触れてきました。
そして、よく問題となる不貞行為をめぐる事例では、2つの悩ましい問題があり、1つが証明が難しいという点だということを述べました。
もう1つの問題は、「婚姻破綻後」の不貞行為に関するものです。
弁護士が不貞行為に関する離婚裁判を扱ううえで、不貞行為をした側からよく出てくる反論が、「婚姻破綻後」に初めて不貞行為を行った、という主張です。
これは、不貞行為、浮気行為のせいで夫婦関係が破綻したのではなく、その前から事実上離婚状態にあったので、不貞行為が離婚の原因になっているわけではない、という主張です。
このような主張がなされるのは、夫婦の婚姻関係がすでに破綻していた場合には、夫婦間の義務や権利というものも消滅しており、片方が不貞行為を行ったとしても不法行為にならない(慰謝料は払う必要がない)という判例があるからでしょう。
そのためか、不貞行為を行い、慰謝料を要求された側がこの主張をよく行うのです。
しかし、実際の事例では、その不貞行為が離婚原因となっていることが明らかなケースが多く、その前に既に破綻していた、という弁解はほとんど認められません。
すでに夫婦関係が破綻していた、というのは、たとえば別居期間が長期間あり、お互い離婚することにほぼ同意していた場合など、明らかに夫婦関係が維持されていなかったような場合に限られるでしょうから、このような主張が認められるケースは少ないでしょう。
ただ、このような主張が出てくると、それまでの夫婦関係や、不貞行為を行った時期などが争点となることが多く、調停・裁判が長引く傾向にあるのが悩ましいところです。
ここまで4つの離婚原因を見てきましたが、最後の⑤は、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があることです。
これは、要するに、①から④には当てはまらないけれども、これらに匹敵するような夫婦関係を継続できないような事情がある場合、をいいます。
弁護士として関わった中では、この⑤に関する争いが大変多く、しかも対応が難しいと感じます。
この「婚姻を継続しがたい重大な事由」というのは、どのような場合であれば良いのか、法律にはこれ以上の説明は何もありません。そのため、事前に離婚が認められるかの見通しをつけるのが困難なのです。
ただ、主な目安としては、暴力・DV、不貞行為に近い行為、相手が犯罪を行って逮捕・服役されるなど、ある程度の重大な落ち度が相手にあることが必要で、さらに、すでに相当期間別居をしていること、が必要とされます。
後者の別居の点ですが、いわゆる家庭内別居などでは、まだ完全に夫婦関係が破綻しているとはいえない、という判断になることが多く、離婚が認められない可能性が高くなります(必ず認められないわけではありませんが、食事を一緒にとったり、日常会話があるような状態では家庭内別居とは認められない傾向にあります)。
また、別居と同時に離婚調停を起こしたような場合も同様です。
相手が離婚に反対しているような場合には、少なくとも数年程度の別居期間は必要と考えて良いでしょう。
前者の相手方の落ち度という点ですが、相手が反対しても一方的に離婚を認めて良いといえるだけの、大きい落ち度がなければなりません。
たとえば、性格の不一致を理由に離婚を求める場合、たとえば相手がだらしないとか、経済感覚が違うとか、生活の時間がずれている、などという場合は、一概にどちらが悪いとはいえないことも多く、また、婚姻関係を一方的に解消できるほど重大な事情があるとはいえないと判断されてしまいます。
相手が浪費を行うとか、家事を放棄する、などという事情も、家計や家事の分担などについても基本的には話し合いで解決すべき事柄だと判断されることが多く、そのことだけで離婚を認めるという判断はなされないでしょう。
そのため、実際には強い暴力が繰り返された場合などの重大な落ち度がある場合でないと、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たりづらいといえます。
以上の5つの離婚原因を確認してきましたが、それでは、これらに当たらない場合にはどうしたらいいのでしょうか。
これまでに述べてきたのは、あくまで話し合いで解決できない場合、判決でどう判断されるかという説明です。
ですので、判決で離婚が認められない見込みが高い場合には、話し合いや調停の中で相手と合意するしかありません。
実際にこれまで取り扱ってきた件でも、話し合いや調停で解決している事件の割合の方が高く、判決まで進む件は少ないです。
ただ、判決になった場合の見通しを持っておかなければ、調停の際の条件面の折り合いや、慰謝料を請求するかどうかといった点で正しい判断ができない危険があります。
離婚事件を取り扱っている弁護士であれば、過去の事例や経験から、離婚が認められるかどうか、慰謝料が認められるかどうかといった見通しを立てることができます。
ですので、離婚調停や訴訟を起こす前には、一度、弁護士に見通しについて相談することをおすすめします。
当弁護士事務所でも随時、離婚相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
次回は離婚時の慰謝料を取り上げたいと思いますので、ぜひご覧ください。
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