離婚調停と離婚裁判の流れを見てみよう
札幌の弁護士による離婚解説コラム第6回です。
さて、前回(離婚調停・裁判はどこの裁判所で行うの?)は離婚調停はどこの裁判所に起こすか、を説明しました。
それでは、実際に調停を申し立てた場合、実際はどのような流れで進むでしょうか。
離婚調停は、裁判所では「夫婦関係調整調停」という呼び方をします。離婚をする場合もあれば、離婚をせず、円満に復縁するケースもあるからでしょう。
調停の申立てには、裁判所でもらえる書式に必要事項を記入し、戸籍などの必要資料を添付して、家庭裁判所に書類を提出する必要があります。
調停を申し立てた後は、第1回目の調停の日時が指定され、その日に出席するよう指示されます。
調停は、家庭裁判所の調停室で行います。
裁判所は、事件ごとに裁判官1名と、有識者から選ばれた調停委員2名(男女1名ずつ)の担当者を決定します。ただ、裁判官が調停の場に直接出てくることはあまりなく、ほとんど調停委員2名で調停を実施することになります。
調停の場では、実は相手と直接顔をあわせたり、話し合ったりということはほとんどありません。
調停を開く際は、まずお互いが控え室で待機し、片方だけが調停室に呼ばれます。そこで、調停委員に事情や言い分を説明したり、質問に答えたりします。
それが一段落すると、今度は控え室に戻され、相手だけが調停室に呼ばれます。そして、相手も同じように調停委員と事情確認などをしていきます。
このように、調停の当事者は、調停委員と話をするだけで、相手本人と顔をあわせることはほとんどありません。
第1回目の調停を開始する際や、調停が円満に解決する時などに同席することもありますが、その程度です。
相手本人と顔をあわせませんので、相手に気兼ねなく、思ったことを伝えられるという面もありますし、調停委員という第三者と話をしていくことで気持ちを整理し、冷静に話し合いを進められることもあります。
まわりくどいと思う方もいるかもしれませんが、そもそも当事者同士では解決できない事件が持ち込まれますので、全く違うやり方を試すというのは効果的といえるではないでしょうか。
そのように、お互いが調停室に出たり入ったりし、切りの良いところで1回目の調停が終わります。
次回までに双方に資料の提出や検討事項が指示され、次回の日程を伝えられます。
だいたい、1ヶ月に1回のペースで進みますので、調停と調停の間は空きますが、冷静に物事を考えるにはちょうど良い期間かもしれません。
離婚調停が1回で終わるということはほとんどなく、3回程度で終われば相当スムーズだといえますし、だいたいの事案は5回程度の調停を重ねることが多いといえます。
1回の調停は2~3時間程度かかることが多いですが、そのうち半分程度は相手が調停室に入る時間であり、待ち時間ということになります。
ちなみに、ただ待つのも大変ですので、時間つぶしの本などを持参する方も見かけます。
ある程度事情の確認や話し合いが進み、お互いの折り合いがついたところで、調停成立となります。
調停成立となれば、合意した内容を裁判所が調停調書という公文書に記録します。この合意を破った場合には、すぐに強制執行を行えるという極めて強力な合意ですので、一度合意が成立すれば、それを守ることが強く求められます。
反対に、何度か調停を行っても妥協点が見いだせない場合には、調停は不成立となり、調停手続きが打ち切られてしまいます。
調停では解決できなかった場合は、離婚裁判・離婚訴訟を行うしかありません。
調停が不成立に終わってしまったときは、家庭裁判所に訴状という書類を提出し、訴訟の提起をすることになります。
調停と裁判・訴訟は全く別の手続きで、離婚訴訟では、調停委員はおらず、裁判官1名が担当します。
そして、調停のように話し合いや協議の場というよりは、証拠で自分の主張を立証していき、勝ち負けを決める、という場になります。
そのため、調停の場合に比べて手続きが難しく、弁護士を依頼しないで乗り切るには相当の苦労があります。
ちなみに、調停は、相手の自宅住所近くの裁判所で行わなければならない、ということを前回述べました。ところが、離婚訴訟は自分の住所近くの裁判所で行っても、相手の住所近くの裁判所で行っても、どちらでも良いことになっています。
それなら最初からどちらの住所でも良いとしてくれれば楽だと思いますが、法律でそう区別されているのでどうにもしがたいところです。
離婚裁判、離婚訴訟は、途中で話し合いによって解決することもありますが、そうならない限り、最後には裁判所の判決によって終了します。
判決には強制力がありますので、不満が残ったとしても、お互い、それを受け入れることになります。
ただ、そこまで行くと、調停から判決まではどれほど短くても1年程度はかかりますし、家族間の問題を判決で白黒つけるというのは、どうしてもその後の関係にも影響が出てしまいます。
弁護士としての経験上では、調停・和解で解決する事件の方が多いですし、そのような事件の方が当事者の納得度も高いと感じています。
駆け足になりましたが、おおまかな調停・裁判の流れはこのようなものになります。
次回にもお話したいと思いますが、弁護士としては、調停の前の話し合いから関与するケース、調停段階から関与するケース、裁判段階から関与するケースのどの場合もよく経験します。
ただ、スムーズな解決のためには、早い段階から関与していた方が良いと感じることが多く、裁判段階から依頼を受けた場合には、調停の段階で依頼を受けていればもっと良い形で解決できただろうと思うことも少なくありません。
弁護士に依頼するかは別としても、少なくとも第1回目の調停がはじまるまでには、必ず弁護士に相談することで良い方向に進むと感じています。
さて、次回は少し方向性を変えて、離婚問題を弁護士へ依頼するべきか、を取り上げます。
着手金、報酬なども触れていきたいと思いますので、ぜひご覧ください。
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