【債務整理】 破産をしても返済しなければならない負債とは
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第8回です。
前回(破産が認められない場合とは -免責不許可について)は、破産をしても債務の免除がされない場合を見てきました。
今回は、破産をして債務免除(免責)が認められても、免除されない負債について説明します。
破産を行って、免責が認められた場合、基本的にすべての債務が免除となり、一切返済する義務がないということをこれまで説明してきました。
しかし、特別に、破産を行っても免除されないもの、つまり、破産をしても返済をしなければならないものもあるのです。
このような、破産をしても返済義務が残る請求権を、非免責債権と呼んでいます。
非免責債権は、破産法253条に規定されており、以下のようなものがこれにあたります。
① 税金の支払い
滞納している税金や、今後請求が来る税金は、破産をしても免除されません。
免除されない税金には、所得税、住民税、固定資産税などのほか、健康保険や国民年金なども含まれます。
破産をしてもこれらの支払いは行わないとずっと義務が残ります。ただ、収入が少ない場合は、納税相談をすれば分割払いや一部免除が認められることもありますので、放置し続けないことが重要です。
② 悪意があって行った不法行為による損害賠償義務
悪質な違法行為で他人に損害を与えた場合、これを破産したからといって免除を認めては、あまりにも不公平となります。
そのため、悪質な場合に限り、破産をしても免除を認めないとしています。
③ 故意があるか、重大な過失によって、他人を死傷させた場合の損害賠償義務
たとえば、飲酒運転のために人をはねて怪我させたり死亡させたりしてしまった場合、その賠償義務は、破産をしても免除されません。
破産法では、被害者を保護するため、故意がある場合(わざと怪我させた場合)や重大な不注意によって他人を死傷させた場合には、破産をしても賠償をさせることとしています。
さきほどの②との違いが少しわかりづらいですが、たとえば、交通事故で他人を怪我させてしまった場合、普通は悪意があって事故を起こすのではなく、うっかり不注意によるものです。このような場合には②の「悪意がある」とはいえません。
他人に怪我をさせたり、死亡させてしまった場合に限って、被害者が賠償を受けられるように、悪意ある場合だけでなく、重大な不注意がある事故の場合などにも債務免除を認めないこととしているのです。
④ 婚姻費用(結婚中の生活費)や子どもの養育費
結婚中の生活費や子どもの養育費は、相手の生活を保障するためにも強く支払いが求められるため、特別に、破産による免除を認めないこととされています。
離婚の際の慰謝料はここでは保障されませんので、相手が破産した場合には免除の可能性があります(暴力や不倫の慰謝料は、②や③で保護される場合があります)。
⑤ 破産手続きの際に隠していた負債
破産手続きの場合には、一方的に債務免除を認めてもらう制度であるため、債権者(貸し手)には大きな影響を与えます。
そのため、債権者を必ず平等に扱い、一部だけを支払ったりすることは認められないとされています。
ところが、たとえば、自動車を残すためにローンを隠したり、クレジットカードを残すために1枚だけ隠していたりということがあります。
このように債務を隠していたまま破産を行った場合には、あとからやはり支払いができなくなったとしても、破産での免除が認められませんので、支払いを続けなければならなくなります。
破産手続きのルールに違反した以上、不利益を受けてもやむを得ないためです。
⑥ 罰金の支払い義務
事件を起こし、罰金の支払いを命じられた場合などは、破産をしても免除はされません。
ここに挙げたような負債は、破産を行っても免除が認められませんので、相手から支払いを請求された場合には、支払いを行わなければなりません。
ただ、税金や罰金以外の場合は、破産を行えば、実際には引き続き請求が来る例は多くありません。
免責が認められなくとも、破産申し立てを行うような状態では、支払いをするだけの財産がないことになりますので、相手もあきらめることが多いでしょう。
また、免除されない債務であることは、請求者側で証明しなければなりませんが、②や③の立証は実はそれほど簡単ではないからです。
ただし、免除されない以上、消滅時効が成立しない限り、一生負債が残ることになりますので、何年も請求され続ける可能性もあります。
いずれにしても、このような非免責債権があるかどうかは破産手続き上重要な問題ですので、早い段階で弁護士に説明する必要があるでしょう。
前回と今回は、免責がされない場合や免責がされない債務についてみてきました。
次回は、破産をした場合に退職をしなければならないのかという問題を取り上げます。
この点はよく依頼者の方から質問を受ける点で、関心が高いようですので、少し詳しく説明したいと思います。
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