【債務整理】 破産が認められない場合とは -免責不許可について
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第7回です。
前回(破産すると住宅はどうなる?すぐに出ていかないとならないの?)は、破産した際の住宅の取扱いについて取り上げました。
今回は、破産の申立てをしても、債務の免除が認められない場合についてです。
破産状態であったとしても、必ず破産手続きをとれば債務がなくなるというわけではありません。
債務の免除を受けるには、裁判所から「免責」(支払責任を免除すること)の許可を得なければならないのです。
破産は、債権者の同意もなく、一方的に債務をすべてゼロにしてしまう手続きであり、非常に強力です。
そのため、あまりにも不誠実な理由で借金を作ったり、破産を行おうとする人にまで免責を認めるべきではないと考えられています。
破産法では、そのような不誠実な事情のある一定の場合には、免責を認めないと規定しています。
それでは、どのような場合が免責不許可になるのでしょうか。破産法252条では、11項目の事情が挙げられていますが、主に問題となるものを見て行きます。
① 財産隠し
破産手続きを行う場合には、一定以上の価値のある財産を売却・処分し、代金を債権者への配当にまわさなければなりません。
しかし、中には、債務の免除は受けたいけれども、財産は手元に残したいと考えて、預貯金を親族に口座に移したり、車を隠し持ったりする場合があります。
このような財産隠しは、破産法の基本的なルールに違反し、極めて不誠実といえるため、これが発覚したときは免責を認めないとされています。
② 一部の債権者のみにあえて支払いをすること
破産手続きでは、債務がすべて免除になるかわりに、一部の債務のみの支払いを行うことも認められていません。
一部だけ支払い、それ以外は一切支払いをしなくてよいとすると、債権者にとって不公平となってしまうからです。
たとえば、車を残すためにローンだけ払う場合や、保証人がついた負債だけを支払うということも認められていません。
このようなルール違反は、ほかの債権者への裏切り行為になるため、免責不許可の事情とされています。
③ 浪費、賭博
浪費やギャンブルによって、多額の借金をした場合です。
多少の無駄遣いやギャンブルは問題にはなりませんが、度が過ぎており、正常な生活をおびやかすようなものであれば、免責不許可の事情になります。
たとえば、支払いができないことがわかっていながら、自動車や高級化粧品を買い続ける行為や、借金が返せないのに月に5万円もパチンコにつぎこんだような場合です。
借金の事情事態が不誠実で、破産を認めて救済すべきでないと判断されると、免責不許可となります。
④ 破産することをわかっていながら借金をした場合
破産をして免責が認められれば、負債を返済する必要はなくなります。
これを悪用して、破産直前にカードなどをできるだけ使い、最後に借金をする人も残念ながら見かけます。
しかし、破産をして免除してもらうつもりなのに、借入れを行うことは、立派な詐欺行為になり、逮捕されてもおかしくない行為です。
当然、そのような違法行為をあえて行った者を免責により救済すべきではないため、免責不許可となります。
⑤ 裁判所や破産管財人の調査を拒否したり、嘘をつくこと
裁判所や破産管財人は、破産手続きを適切に行うために、さまざまな調査をします。その中で、破産を申し立てた方に事情を聞く機会もあります。
その際に、嘘をついて財産を隠したり、都合の悪いことをごまかす人や、めんどくさいという理由で一切調査に応じない方もまれにいます。
しかし、自分で破産を希望しておきながら、裁判所の調査にまじめに応じないというのでは、破産免責を認める必要はありません。
そのため、このような場合も免責が認められません。
⑥ 免責から7年以内に新たに破産を申し立てる場合
実は、破産は人生に一度切り、というわけではなく、何度でも破産を認めてもらうことは可能とされています。破産に回数制限はないのです。
しかし、短期間に何度も破産を繰り返されては、債権者も納得できませんし、本人もどうせ破産すれば良いと不誠実な対応をしかねません。
そこで、一度破産をしてから7年以内に限り、破産免責を認めないとされています。
特に、前回の破産時の反省を活かせないで、同じような理由で借金を重ねた場合には、認められない可能性が非常に高くなります。
よく問題となる免責不許可の事情はこのようなものです。
しかし、注意が必要なのは、これらの事情があるからといって、必ず免責が認められないわけではないということです。
これらにあたる場合でも、その程度が軽い場合とか、やむを得ない事情がある場合、またはよく反省している場合などには、裁判所が特別に免責を許可してくれることもあります。
実際上は、免責不許可の事情はあるけれども、さまざまな事情を考慮して免責を認めます、という決定は非常に多く見かけます。
もちろん、これらの事情はない方がスムーズに免責が認められますが、そのような事情があったとしても、適切な対処を行っていけば免責が認められる可能性は決して低くはないのです。
破産の最終的な目標は免責を得ることですので、免責にならなければ、破産を申し立てた意味はほとんどなくなってしまいます。
免責は必ず認められるわけではありませんので、免責不許可の事情がないかを検討し、もしあてはまる場合にはしっかりと対処をすることが必要です。
破産の依頼を受ける場合に、弁護士がもっとも注意する点の1つですね。
今回は免責が全く認められない場合がある、という点を見てきました。
しかし、実は、免責は認められたのに、一部の債務が残ってしまうという場合があるのです。
次回は、そのような免責の対象とならない債務について取り上げます。
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