【刑事事件】 保釈金を立て替えてくれる制度
札幌の弁護士による刑事事件解説コラム第7回です。
前回は、「保釈金はあとで返ってくるの? 金額の相場は?」ということで、保釈金の額などに触れました。
前回も説明したとおり、保釈金額は、最低でも150万円程度は覚悟する必要があります。
しかも、納めた時点で釈放となりますので、少しずつ積み立てたり、分割で納めるということもできません。
では、お金がない場合にはどうしたらいいのでしょうか。
そのためによく利用するのが、保釈金立替業者と呼ばれる機関です。
その名前のとおり、保釈金を立て替えてくれます。
立て替えるというのは、要するに、貸してくれるという理解でいいと思います。つまり、保釈金専門の金融業者だというのがわかりやすいでしょう。
これを利用すれば、必要な保釈金額をすぐに貸してくれます。
何社か同業者がいるようですが、私が利用したことがあるのは、「日本保釈支援協会」という機関です。
詳細はそちらのサイトを見ていただければと思いますが、要点を挙げると、次のとおりです。
- 立て替える金額は500万円まで
- 立替は2か月単位。2か月を超えた場合には、2か月更新
- 2か月ごとに、立替額50万円につき、1万2500円の手数料がかかる
たとえば、傷害事件で保釈の許可を得て、200万円の保釈金の支払いを命じられたとします。
その場合、保釈から2か月以内に判決が出るのであれば、2か月分の手数料として、5万円が必要となります。
300万円の保釈金であれば、7万5000円です。
仮に、判決まで2か月を超えてしまうと、2か月ごとに同額の手数料がかかる仕組みです。
(ただし、延長後、1か月以内に判決が出たときは、半額返還されるようです)
この日本保釈支援協会を利用することで、手元にすぐお金が用意できない場合にも、保釈金を納めることができます。
これを利用するメリットは、銀行などからの融資と比べて、審査が緩やかであり、高額の立て替えも比較的認められやすいことと、申込み後、数日で立替金を受け取れることです。
銀行で300万円の融資を受けるとなるとなかなか大変でしょうが、保釈金立替業者の場合には、事件の内容や逃亡の危険、つまり保釈金が没収される可能性も考慮しますので、そのような危険が少ない事件であれば、ゆるやかに審査が通りやすいといえるでしょう。
なお、この日本保釈支援協会は東京にありますが、やり取りは電話と書面のみです。
しかも、書面は、FAXで代用したり、速達でやり取りしますので、札幌から手続きをしてもほとんど支障ありません。
(札幌にも他の保釈金立替業者があるようですが、特に不都合もないので、私自身は利用したことはありません)
反対に、この制度にもデメリットがあります。
よく、保釈金立替業者を使って保釈金を用意したいと希望する被告人がいますが、制度のデメリットを知らないで希望している方がいます。
しかし、この制度を使うために条件をよく知っておく必要があります。
この制度のデメリット、使いづらい点は、
- 必ず本人以外の家族が申込みをしなければならないこと
- 保釈金が没収された場合には、その申込みをした家族が保釈金を返済する義務を負うこと
- 手数料がやや高く、2か月以上保釈が続き事件では負担が大きいこと
が挙げられます。
特に1つ目の点、つまり、この制度の申込みは、本人自身ではできないという点に注意する必要があります。
この制度は、本人のために、周りの人が保釈金を借りてあげる、というものなのです。
ですので、本人がいくら保釈を望んでこの機関の立替を受けようとしても、申し込んでくれる人がいなければどうしようもできません。
しかも、本人が逃亡したりして保釈金を没収された場合には、その申込人が全額の返済義務を負います。
また、申し込んだ以上、手数料の支払義務もあります。保釈に協力したら、思ったより裁判が長引き、2か月ごとに何万円も支払わなければならない、という危険もあります。しかも、この手数料は返ってきません。
ただ、それでも保釈に協力してくれるという人がいる場合には、この制度は非常に便利です。
これまで何度か利用したことがありますが、いずれも立替を受けることができ、事件終了後も問題なく返還しています。
最近、日本弁護士連合会が、保釈金の支払いできない人のために援助する制度を構築しようとしているようですが、現時点ではまだ形も見えません。
ですので、少なくとも現在は、保釈金が用意できない方は保釈金立替業者を利用することを検討することになりますね。
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