弁護士に依頼するタイミングと報酬は?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第7回です。
前回(離婚調停と離婚裁判の流れを見てみよう)までは離婚についての法律的な問題についてみてきました。
今回は少しテーマを変えて、離婚を弁護士に依頼すべきか、依頼するとしたらそのタイミングはどうすべきか、を見ていきたいと思います。
現在は離婚する夫婦も数多くおり、みなさんの周りでも離婚を経験した方がいるかと思います。
しかし、ほとんどの場合、お互いの話し合いで離婚を合意し、離婚届を提出するという協議離婚で離婚することになります。
離婚すべきかという点や、親権、財産分与などでそれほど意見の対立がない場合は、そのようにスムーズに離婚成立となり、そのような場合に弁護士が表に出ることはまずありません。
ただ、このような場合でも、離婚するにあたって離婚の際の注意点などを弁護士に相談に来られる方は、実は相当いるのです。
そのような場合は、弁護士は相談者にアドバイスをし、今後の行動を助言しますが、正式に依頼を受けて相手と交渉を行うということはなく、相談者の方からは毎回の相談料のみをいただいています。
比較的、お互いの対立の程度が軽い場合には、それで十分だと思います。
しかし、話し合いで解決できず、離婚調停にまで発展すると、ご本人だけで対応していくことはかなり難しくなってきます。
実際のところ、離婚調停は、弁護士に依頼せずにご本人で対応している方も相当います。お互い、弁護士に依頼しないという形がスタンダードとさえいえるかもしれません。
家庭裁判所の調停委員も、そのような状況に慣れていますので、当事者に調停の仕組みを説明してくれますし、必要な情報や資料も整理してくれます。ですので弁護士がいなくても、調停は問題なく進行していき、解決に至ります。
ところが、弁護士に依頼をしないで調停成立した方が、後日、「わけがわからないまま、調停委員に言われたとおりに調停成立させてしまった。自分はそんなつもりじゃなかった。」と嘆いて相談にいらっしゃるということが実際にあるのです。
しかも、それは一人、二人の話ではなく、これまでに何度もそういった相談を経験しています。
この相談者の方々も、調停の手続きは説明を受けてなんとなくは理解しており、離婚調停が成立した際も、調停調書の内容を確認して「それで結構です。」と承諾しているのです。
それなのに、どうしてこういった事態が生じているのでしょうか。
一番の原因は、離婚に関する法律的な知識・経験がないため、専門的知識のある調停委員・裁判所の言葉に反論できず、つい従ってしまうからです。
調停委員にもそれぞれ個性があり、親切に説明してくれる方もいれば、あまり説明が上手でない方もいます。しかし、それでも離婚に関する経験は相当豊富です。
たとえば、知識のない当事者が、経験豊富な調停委員から、「この場合は慰謝料請求は難しいから、解決のためにあきらめた方がいいと思いますよ」「親権は母親が得るのが常識なので、親権を争うよりも面会交流の条件を話し合った方が得でしょう」などと言われたとしましょう。
調停委員の言葉に納得がいかないとしても、「専門家がそういうならしょうがないか」とか「とりあえず調停委員の指示に従って、後からまた考えよう」などと考え、調停委員の提案に反対しづらいのではないでしょうか。
そうして、流されるまま調停が成立してしまうと、もう後からそれをひっくり返したり、話し合いをやり直したりということは認められないのです。調停が成立してしまうと、そこですべて解決済みということになるのです。調停成立には、それほど重要な意味があります。
しかし、人生の中でももっとも重要な出来事の1つである離婚を、そのようなあいまいなまま解決してしまってよいのでしょうか。後になって、やっぱり調停の場でこれを主張しておけばよかった、と後悔するのは、大変残念なことです。
それを避けるためには、調停にのぞむ際には、自身も離婚に関する法律知識を十分に身に着けておく必要があります。
ただ、離婚問題は、夫婦によってさまざまです。市販の本をみても、あなた方夫婦の場合について説明した本はありませんし、財産分与や親権問題となると、少し本を読んだだけではほとんど理解できないほど複雑です。
そのため、適切な知識を得、アドバイスを受けるには、やはり調停に出席する前に弁護士に相談するべきです。
弁護士に依頼し、調停に出席してもらうべきかは、事案によって異なると思います。相談の際のアドバイスだけで十分対応できる事案も少なくありません。
しかし、財産分与が複雑であったり、親権について激しい対立がある場合、離婚原因(不貞行為など)が強く争われる場合などは、調停の段階から弁護士が参加する必要が高いといえます。これらは単なる話し合いでは解決が難しく、法律的な知識を使って、自分の主張が正しいことを証明しなければならないからです。
そのためには、調停委員に対してこちらの言い分を十分に伝え、適切な根拠を示す必要があります。うまく説明できなかったり、適切な根拠があげられないと、調停委員が判断を誤るかもしれません。
ですので、弁護士が依頼者とともに出席して、調停委員を直接説得する必要が高くなります。
また、複雑な事案では、弁護士と協議しながら依頼者自身も知識を深めていく必要がありますので、そういった意味でも弁護士への依頼が効果的となります。
特に、相手が弁護士に依頼している場合には、自身も弁護士を立てて対抗しなければ対応が難しいでしょう。
また、離婚という大変なトラブルを抱えている間、すべてを一人で判断し、対応していくというのは心身ともに大きな負担となります。
そのようなときに、事情を理解し、ともに歩む弁護士がいれば、そのような負担も軽くなることでしょう。
そういう目的で弁護士を依頼する方も多くいらっしゃいます。
なお、調停では解決せず、離婚訴訟にまで進行した場合、もはやご自分で対応できる段階ではありません。
訴訟では、裁判所は手続きを親切に説明してくれるわけではありません。自分の主張を自分で証明しなければ、負けてしまうのです。
訴訟段階でも弁護士に依頼しないままでは、裁判の流れもわからないうちに判決が出て終わってしまう、ということすらあるでしょう。
ここまでを整理すると、まず、調停が始まる段階では、必ず弁護士に相談だけでも行い、知識とアドバイスを受けることが不可欠です。
その際に、内容が複雑であると感じたり、自力での対応が難しいと思った場合には、調停への対応を弁護士に依頼すべきでしょう。
反対に、弁護士のアドバイスを受けて十分だと思えば、特に依頼する必要はありません。調停の進み具合に応じて、また相談に行くなりするだけで足りると思います。
調停が不成立になり、訴訟を行う場合には、必ず弁護士に依頼すべきです。一度訴訟で負けてしまったら、あとからひっくり返すことはできません。不成立が見込まれる場合には、その前の段階で相談だけでもしておくべきでしょう。
さて、それでは、実際に弁護士に依頼する場合、着手金、報酬などの弁護士費用はどれくらいかかるでしょうか。
日本弁護士連合会のアンケートや、法律事務所のウェブサイト等を確認してみると、離婚調停の場合、着手金として20~30万円程度、離婚成立時に成功報酬として20~30万円程度、さらに慰謝料や財産分与の請求があれば、着手金・成功報酬が上乗せ、という基準が多く目につきます。
当事務所では、離婚手続については、基本的に、着手金を15~30万円、報酬金を0~20万円と定めています(いずれも税別)。手続の種類や争点の内容などによって多少の幅を持たせています。
ただし、慰謝料や財産分与としてまとまった金銭を相手から受け取った場合の報酬金は、受領額の10%を基本としています。
なお、着手金が一括で用意できない場合に、一定の条件をクリアすれば、分割払いや「法テラス」による立替援助(融資のようなものです)を受けることもできます。
当事務所では、ご相談のときに、依頼をお受けした場合の弁護士費用の金額をあらかじめお示しし、ご依頼前に契約書を作成して金額を取り決めています。
そのため、弁護士費用の額を確認してからご依頼されるかをご検討いただいていますし、ご依頼の場合には、事前に書面で取り決めた以外の費用を頂戴することはありません。
離婚にお悩みの方にご安心してご相談・ご依頼をいただくことができるよう対応しております。
かなり長文になりましたが、離婚は人生の一大事ですので、不安や後悔を抱えるよりも、弁護士に相談・依頼して安心されてはいかがでしょうか。
さて、次回からは、離婚時の子どもに関する問題を取り上げます。親権、養育費、面会交流など多くの問題がありますので、順番に説明していきたいと思います。
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