【刑事事件】 保釈を認めてもらう方法・手続きは?
札幌の弁護士による刑事事件解説コラム第5回です。
前回(保釈って何?)にひきつづいて、今回は保釈を認めてもらうための方法、保釈の手続きについてみていきます。
保釈の手続き自体は、非常にシンプルです。
ポイントを示すと、以下の3つだけです。
- 起訴されたあと、判決が出るまでの間に、
- 裁判所に保釈請求書を提出し、
- 保釈の許可が出たら保釈金を裁判所に納める
保釈を求める手続きとしては、この程度です。
ここで保釈のためのハードルは、2つです。
1つは、裁判所に保釈を許可してもらうこと。もう1つは、保釈金を用意することです。
保釈の許可を受けるためには細かい条件がいくつがありますが、前回もみたとおり、主に問題となるのは、保釈を認めた場合に「証拠隠滅」と「逃亡」の危険がないかという点です。
ですので、弁護士が保釈の請求をする場合、証拠隠滅の危険も逃亡のおそれもないことを可能な限り主張立証し、裁判官を説得するのです。
では、それをどうやって説得するかという点ですが、それは個々の事件ごとにポイントが異なりますので、一概にはいえません。
ただ、保釈を求める場合にはまず行うことが1つあります。
それは、身元引受人を立てるということです。
保釈の申請をする際に、家族などの身元引受人に協力してもらい、裁判所にあてて、「保釈された場合には、私が責任を持って監督します」というような書面を作成してもらうのです。
これを行うことで、被告人には一応心配して協力してくれる人がおり、被告人もそれを簡単には裏切らないだろうと考えるなど、裁判所が保釈を認める事情の1つになります。
そして、たいていは、保釈金を用意してもらう人に、そのまま身元引受人をお願いしています。保釈金を出すほど被告人と関係が深い方であれば、まさに身元引受人として適任といえるでしょう。
では、身元引受人になったものの、被告人が保釈後に問題を起こしてしまった場合、身元引受人も何か責任を負うのでしょうか。
実は、そのような心配はいらないのです。身元引受人は、裁判所との約束のようなものではありますが、これに違反をしても何かペナルティがある、ということはありません。
ですので、身元引受人になったからといって、何か責任を負ったり、損害の賠償を求められたりということもありません。
ただ、当然、裁判所との約束ではありますので、できるだけ守ることが求められるでしょう。
なお、身元引受人がいないと保釈がまったく認められないかというと、そういうわけでもありません。
いた方が望ましいとはいえますが、いなくても保釈が認められることはいくらでもあります。
ですので、身元引受人になる方がいなくとも、保釈をあきらめる必要はありません。
ともかく、保釈の際には、身元引受書などの資料があればそれも添付して、裁判所に保釈の申請書を提出します。
申請書の作成は、保釈の請求に慣れている弁護士であれば、正直、1~2時間もあれば十分です(もちろん、事件の内容を把握していればですが)。
申請書を作成したら、資料とともに裁判所に提出します。
裁判所は保釈の申請書を受け取ったあと、必ず、担当検察官に保釈についての意見を聞きます。
検察官は、保釈には強く反対するとか、保釈をしてもかまわないとか、事件ごとに意見を出します。
その検察官の意見が裁判所に出たあと、裁判官が保釈の判断を行います。
札幌地裁で保釈の申請を行う場合、検察官の意見が出てくるのがだいたい申請の翌日になります。
しかも、土日は基本的に手続きが動きませんので、たとえば金曜日に保釈の申請をすると、判断が出るのが月曜日になることが通常です。
地域によってはその日のうちに判断が出るところもあるようですが、私の経験上、札幌ではたいてい翌日ですね。
これまで何件も保釈請求をしていますが、当日中に判断が出た経験はなかったように思います。
そうして裁判所の判断が出ることになりますが、裁判所の判断は、「許可」か「却下」の2パターンです。
「許可」の場合は、同時に、保釈金の金額と、保釈時に守るべき条件が指定されます。
その条件を守らないと、保釈金が没収され、保釈が取り消しとなってしまうのですが、その条件については次回以降に取り上げたいと思います。
保釈が許可されればあとは保釈金を納めるだけですが、反対に、保釈が「却下」されてしまうこともあります。
却下の場合は、保釈が認められなかったことになりますので、これに対して異議申し立てを行うかを検討することになります。
異議申し立てをしても保釈が認められなかった場合や、異議申し立てを見送った場合、もう保釈が認められないかというと、そうとは限りません。
保釈請求は、判決が出るまではいつでも、何度でも、することができるのです。
一般に、裁判の審理が進み、証拠や証人が取り調べられていくにつれて、証拠隠滅の危険は減っていきます。一度裁判所に提出された証拠をあとから隠滅することは難しいからです。
ですので、起訴された直後に保釈が認められなかったとしても、裁判を何度か重ねた段階で改めて保釈請求をすれば、今度は認められることもあります。
私の経験上では、保釈請求が4回却下され、5回目でやっと認められたケースもありました。
とはいえ、保釈が却下されたあと、すぐにまた申請をしてもまったく意味はありません。
あらたに保釈請求をするには、新しい資料が入手できた場合や、裁判がある程度進展し、状況が多少なりとも変化したといえることが必要です。
そういった事情もないのに保釈請求を繰り返しても、裁判所はまともに取り合わないでしょう。
さきほど述べた5回目で保釈が認められた件は、最初の保釈申請から最後の保釈申請までは、1年以上が経過していました。
保釈が許可され、保釈金を納付すれば、その直後に釈放され、自宅に帰ることができます。
自宅に帰ったあとは、保釈時の条件さえ守れば、あとはどのように生活をしても問題ありません。
仕事をしても良いですし、条件を守れば、旅行などにも行けます。
ただ、裁判には必ず出席する必要があり、判決が出た時点で、保釈も終わりになります。
判決が無罪や執行猶予判決ならそのまま自宅に帰ることができますが、実刑判決であれば、その場で身柄拘束されてしまうことになります。
以上が、保釈の手続きの流れです。
保釈制度には複雑なところもあり、誤解も多い制度です。ただ、やはり身柄拘束された被告人にとっては、特に強い関心があるところだと思います。
次回以降も、引き続き、保釈をテーマとしていきたいと思います。
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