【離婚】 面会交流が認められる場合/認められない場合
札幌の弁護士による離婚解説コラム第15回です。
前回(面会交流の具体的な方法は?)は、面会交流が認められる場合、具体的にどのように面会を行うのかを見てきました。
今回は、そのような面会交流がどういった場合に認められ、どういった場合に認められないのかを取り上げます。
面会交流という制度の意味については、「親権のない親が子どもに会う権利はある? ~面会交流とは~」でも解説しましたが、養育していない親と子どもとの面会交流というのは必ず認められるわけではありません。
面会交流は、親に権利があるわけではなく、子どものために認められる子どもの権利という側面が強いことも説明してきました。
そして、面会交流の決め方については、法律上は、民法766条で「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とだけ規定されています。
「子の利益」、つまり、子どものためには面会交流をどうしたらいいのか、という観点から決めるというわけです。
しかし、「子の利益」というだけでは判断のしようがありません。そこで、これまで多くの裁判などで判断された際に問題とされた基準を整理してみたいと思います。
多くの裁判例がよく検討している判断基準というのはある程度決まっていますので、調停や審判の際にも同様の基準が使われる可能性が高いでしょう。
1 子どもの年齢・意思
子どもが養育していない親との面会を望んでいるか避けたいと思っているかは、やはりある程度考慮されています。ただし、子どもの年齢が低い場合には、子どもは実際に一緒に住んでいる親に意見を影響されやすいことや、適切な判断が難しいこともあって、それほど重視されない場合もあります。
また、子どもの年齢は、重要な判断基準になります。子どもの年齢が大きく、子どもが心身ともに成長している場合には、面会交流を実施しても不測の事態は生じにくく、子どもが面会を終わらせたいと思ったときも自ら判断できますので、年齢が大きいほど面会交流は認められやすい傾向にあります。
反対に、子どもが乳幼児である場合は、普段接していない別居の親との面会によって不安を覚えるおそれもありますし、そのような幼い子どもの場合には子どもが一人で面会に行くことはできませんので、養育している親が立ち会って短時間にとどめる、など、面会が認められなかったり、制限されやすい傾向にあるといえます。
2 養育している親に与える影響
子どもが他方の親と面会交流を行うことが、現在、養育している親にどのような影響を与えるかという点も判断材料の1つとなります。
たとえば、父母の対立が激しかったり、強く恐れている場合などには、子どもと他方の親との面会を認めると、養育している親の心身に重大な影響を及ぼす危険があります。
特に、子どもが幼く、一人で面会にいけない場合などには、父母の関係がどういったものかは重要な問題になります。
ただし、そのような場合には、手紙や電話など、面会以外の方法での交流を認めて、しばらく様子を見るという結論をとることもあります。
3 養育していない親と子どもの関係
父母の別居前に、子どもと、現在養育していない方の親の関係がどのようなものであったかも問題となります。
特段問題がなく、子どももなついていた、という状況であれば面会交流を認めても問題はなく、子どもも面会を望むことが多いでしょう。
反対に、同居中には、親が子どもに暴力をふるっていたとか、子どもとの仲が険悪であった場合などには、面会交流を認めると子どもに強いストレスが加わるおそれもあり、面会交流は否定的に判断されるでしょう。
ただし、そのような場合でも手紙のやり取りなど、負担の少ない方法での面会を認める例もあります。
ほかにも判断基準はいろいろとありますが、主なものはここに取り上げたようなものです。
これまで見てきたように、面会交流には、子どもにとって良い部分も悪い部分もあり得ます。
ただ、基本的には、子どもにとって実の父母は一人ずつしかいないため、円満に面会交流ができるような事案については、面会交流を認める方向で調整していくことが多いでしょう。
一般的には、面会交流が認められないケースの方が少ないといえます。
むしろ、面会交流にもいろいろな方法がありますので、認める認めないという点よりも、どの程度、どのような方法で認めるのか、といった点の方が難しい問題といえるかもしれません。
今回はここまでにしたいと思います。
次回は、せっかく決めた面会交流の取り決めを守られなかった場合の対策についてをテーマとする予定です。
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