【離婚】 親権のない親が子どもに会う権利はある? ~面会交流とは~
札幌の弁護士による離婚解説コラム第13回です。
前回(一度決めた親権者をあとから変更できる?)まで、親権者の決め方などを見てきました。
今回からは、親権者を決めて離婚したあと、親権者ではない方の親と子どもは会うことができるのか、会わせなければならないのか、といった問題を取り上げます。
同居していない親と子どもとが会ったり、連絡をとりあったりすることを、「面会交流」と呼びます。以前は、これを「面接交渉」と呼んでいました。
面接交渉という言葉はなんとも堅苦しいこともあって、最近は面会交流という言葉が使われることが多くました。
そして、今年の4月の民法改正では、「子との面会及びその他の交流」という表現が採用されましたので、今後は「面会交流」というのが正式な用語といえるでしょう。
さて、この別居の親が子どもと会うという面会交流について、法律ではどう規定されているのでしょうか。
実は、法律では、民法766条で「父母が協議上の離婚をするときは、・・・父又は母と子との面会及びその他の交流・・・について必要な事項は、その協議で定める」としか規定されておらず、具体的な内容は決められていません。
そして、決め方の基準については、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と定められているだけです。
子どもの利益を優先して考慮して、協議で決めてください、ということしか法律には書かれていないのです。
では、この面会交流は、必ず認められるものなのでしょうか。
結論からいうと、面会交流は基本的に認められるべきものです。例外的な場合には認められないこともありますが、多くの事案では、面会の機会は認められるべきといえます。
ただ、離婚トラブルの中では、夫婦間の対立が深まっていることも多く、別居している親には子どもは会わせない、という主張がされることもめずらしくありません。
しかし、そのような主張が調停や審判で行われた場合でも、多くの事案では、裁判所も面会交流を認め、子どもに会わせることを命じています。
では、なぜ面会交流が認められるのでしょうか。
面会交流が争いになる事案では、自分も親だから子どもに会う権利があるとか、浮気をして離婚の原因を作った親には会う権利はないとか、そういった意見が当事者から出ることがあります。
しかし、面会交流というのは、親の権利とは考えられていません。
実は、面会交流というのは、子どもが自分の親と会う権利のことで、親は、子どもの面会交流を行わせる義務を負う、というのが正しい理解なのです。
さきほど見た民法766条では、面会交流は、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と規定されており、子どもための親の義務を定めています。
また、日本も批准する子どもの権利条約9条3項では、「締約国は、・・・児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」と規定されており、子どもには親と関係や接触を維持する権利があると定めています。
ですので、子どもを養育している親も、別居している親も、子どもが自分の親と触れあえるよう協力する義務があるといえます。
子どもにとっては、離婚をしていたとしても、自分の本当の父親も母親も一人しかいません。
親同士が仲が悪いからといって、子どもと相手親との関係を断たせてしまえば、子どもにとっては両方の親とふれあうという機会が失われてしまい、子どものためになりません。
民法で「子の利益を最も優先して考慮」するというのは、親の利益を優先してはならない、ということを意味しています。
これまで見てきたような理由から、面会交流というのは基本的に認められることになっており、両親が協力して、面会の機会を子どもに与えてあげなければなりません。
しかし、それでも面会交流が認められない場合もあるのは事実です。
たとえば相手親が子どもに暴力を振るっていたなど、面会を認めることが子どもにとって強い悪影響を与える場合、子どもとの面会交流を認めない方が子どもの利益になる、という結論になるでしょう。
このように見てくると、相手親の面会交流が認められるかといった点自体が強く争われるべき事案は、決して多くはありません。
仮に離婚する場合であっても、子どもの問題を考える際には、両親が協力して対応するというスタンスが重要です。
夫婦間の問題を考える際と、子どもの問題を考える際とでは、視点や考え方を変えて対応する必要があるでしょう。
なお、参考までに、法務省が作成している面会交流に関するリーフレットをぜひご覧ください。
面会交流の考え方などが、わかりやすく整理されています。
今回は面会交流とはなにか、を中心に見てきました。
次回からは、面会交流の決め方や具体的は面会方法などを取り上げたいと思います。
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