【離婚】 面会交流の取り決めに違反した場合の対処法は?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第16回です。
前回は、「面会交流が認められる場合/認められない場合」について見てきました。
今回は、面会交流の約束をしたのに、その約束が守られなかった場合についてです。
母が親権者、父が別居しているというケースを考えます。
離婚時に面会交流について、たとえば、「母は、父に対し、子どもと毎月第1日曜日に3時間面会させる」ということを調停で決めたとします。
しかし、母親がこれを違反し、父親に子どもと会せなかったとしたら、父親はどのような対応ができるでしょうか。
これについては、養育費の不払いとほとんど同じで、「養育費が支払われない場合の対処法」でも詳しく取り上げています。ただ、面会交流では少し違うところもありますので、簡単に説明していきます。
1つ目の対応として、履行勧告という制度があります。
これは、家庭裁判所の調停や審判で決めた約束については、約束違反があったとき、家庭裁判所から約束を守るよう相手に指導してくれるというものです。
裁判所からの指導ですから、当事者が要求するよりも相手が応じる可能性は高くなります。また、この手続きは非常に簡単ですので、便利な制度といえます。
ただし、裁判所の指導に強制力はないため、相手が裁判所の指導を無視してしまえば、効果はないことになります。
2つ目の対応として、面会交流の調停を改めて行うことです。
相手が面会交流を拒否している理由が、たとえば生活状況の変化により、頻度や時間があわない、というものであれば、新たに調停で、現在の生活にあった面会交流の取り決めを行うことが考えられます。
しかし、相手が調停に応じなかったり、そもそも面会交流を全面的に拒否している場合には、調停を行っても無意味でしょう。
3つ目の対応として、強制執行の申し立てができます。
強制執行というのは、裁判所での調停や審判に違反した場合、強制執行を裁判所に申し立てることで、一方的に財産の差し押さえなどを行うものです。
ただ、ここで重要なのは、子どもの面会というのを強制執行でむりやり行うことはできないのです。
たとえば、裁判所に申し立てをして、子どもをむりやり連れてきてもらい、面会を実施する、ということは認められません。このような方法で面会を実現すると、あまりにも子どもにとって負担や精神的はショックが大きく、子どもを物として扱うようなものだからです。
では、強制執行の申し立てはまったくできないかというと、実は間接的な方法で、相手に面会を強制する方法が認められています。
どういう方法かというと、面会を拒むごとに一定額の罰金を払わせ続ける、ということが認められています。これを間接強制といいます。
たとえば、面会を一回拒むごとに5万円を相手に払わせる、という命令が出るのです。
この場合、最初の方であげた例では、今月の第1日曜日に面会させないと、母親は父親に5万円を支払う義務を負います。
翌月も面会を拒否したら、さらに5万円を支払う義務があります。
これを1年続けると、12か月分で60万円を支払わなければならないということです。
そして、この金額については通常の差し押さえができますので、たとえば母親が受け取っている給料や預貯金を一方的に押さえることもできるようになります。
母親としては、この罰金を止めるためには、父親と子どもの面会を認めるしかないということになります。
こうやって、間接的に強制し、面会交流を実現できるのです。
ちなみに、間接強制の金額は、1回あたりだいたい3~5万円程度になることが多いといえます。
ただし、相手がいくらお金を払っても面会させたくないと思っていたり、そもそもお金がないから支払いを命じられても構わない、という場合には、この方法でも面会交流は実現できないこともあります。
そのような場合は、最終的には相手が親として不適切なことを主張立証し、親権者の変更を求めるなどしなければならない場合もあるでしょう。
面会交流の約束を守らなかった場合の対処法には以上のようなものがあります。
ここで1つ注意してほしいのは、これは、あくまで面会交流の方法を家庭裁判所の調停や審判で決めた場合に行える、ということです。
調停をしないで、協議で面会交流の方法を決めただけのときは、これらの方法をとることはできませんので、その場合にはまず面会交流の調停を起こさなければなりません。
これまで4回にわたって面会交流を詳しく解説してきました。
面会交流は、子どもにとっては非常に重要なものであり、子どもと両親とがきちんと親子として触れ合えるようにすることを忘れないでほしいと思います。
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