【債務整理】 個人再生では自宅を残すことができるって本当?(前)
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第14回です。
前回は、「個人再生手続きを行う場合の返済方法・返済額は?」というテーマで、個人再生の具体的な返済プランについて解説しました。
今回は、債務整理を考える方に特に関心の高いテーマとして、個人再生とマイホームの問題を取り上げます。
さて、今回のコラムのタイトルでは、「個人再生では自宅を残すことができるって本当?」という質問を投げかけています。
この答えはというと、「ローンが大きく残っている場合には、一定の条件を満たせば残すことができます!」というものです。
破産の場合にも同じ問題を、「破産すると住宅はどうなる?すぐに出ていかないとならないの?」と題して取り上げましたが、このときの結論は、「破産手続きの場合には、住宅を残すことはできない」というものでした。
破産手続きの場合には、
①住宅ローンよりも現在の自宅の価値(売却代金)が高い場合には、住宅を売却してローンを返済し、残ったお金を債権者へ分配する
②住宅ローン残額が現在の自宅の価値より高い場合にも、破産手続きではローン返済は禁止されるため、結局、競売にかけられてしまう
という2つの理由で住宅は残せませんでした。
しかし、個人再生の場合には、一定の条件をクリアすれば住宅を残してもよい、と法律で特別に認められているのです。
これが、破産手続きと比べた場合の、個人再生の最大のメリットといえます。
ですので、約束通りの返済はできないけれども、住宅はどうしても残したい、という方は、破産ではなく個人再生を検討することになります。
ただし、さきほどの①と②の場合では、住宅を残せるかどうかの条件も変わってきます。
今回は、②の場合、つまり、住宅ローンの残額が、現在の自宅の価値より高い場合を取り上げます。
これは、たとえば住宅ローンが1200万円残っているけれども、自宅をいま売却しても1000万円にしかならない場合のように、住宅を売却してもまだローンが残るような場合です。
反対の①の場合、つまり、住宅ローンよりも現在の自宅の価値が高い場合や、住宅ローンを完済している場合については次回に取り上げます(個人再生では自宅を残すことができるって本当?(後)をご覧ください)。
では、②の場合の、個人再生で住宅を残せる「一定の条件」とはどのようなものでしょうか。
実は、この条件は非常に複雑で、難しい法律問題が含まれているため、ここで説明すると長くなりますし、おそらく説明しても理解は難しいと思います。
ですので、住宅を残したまま個人再生をしたい、という方は、弁護士にご相談いただき、条件をクリアするかを判定してもらうことをお勧めしています。
ただ、それでは不安もあるでしょうから、条件のうち基本的なものを説明したいと思います。これらの条件をクリアすれば、8~9割方、住宅を残せるでしょう。
基本的な条件を5つ紹介します。
条件1 住宅ローン以外について、個人再生手続きの条件をクリアしていること
条件2 住宅ローン以外の債務の返済に加え、住宅ローンを今後も返済していく経済力のあること
条件3 ローン債務者が実際に居住している不動産であること
条件4 自宅に、住宅ローンかリフォームローンの抵当権がついており、それ以外の抵当権がついていないこと
条件5 住宅ローンの滞納が一定期間以内であること
条件が多いと思ったかもしれませんが、簡単に説明していきます。
条件1は、そもそも個人再生手続きを利用できない場合にはどうにもなりませんので、まず住宅ローン以外の債務について、個人再生手続きを使えば返済していける、ということが必要です。その場合の返済条件や返済額は前回まで説明してきましたね。
条件2は、よく問題になるところです。
個人再生を使った場合、実は、住宅ローン以外の債務は大幅にカットされますが、住宅ローンはカットされません。
たとえば、住宅ローン以外の負債が300万円、住宅ローンが1000万円残っていたとします。
このとき、個人再生を使えば、住宅ローン以外の負債は300万円から100万円まで圧縮できます。これを3年間で返済するとすれば、月3万円程度の返済になります(詳しくは「個人再生手続きを行う場合の返済方法・返済額は?」を参照)。
しかし、住宅ローンの1000万円は、そのまま残ります。もともと住宅ローンを月8万円返済していたとすれば、個人再生を使ったあとは、住宅ローン以外の債務月3万円+住宅ローン月8万円=月11万円の返済が必要になります。
ですので、住宅ローン以外の部分の負担は相当軽くなりますが、住宅ローン自体の負担は通常は変わりません。
この条件で返済を続けていけないのであれば、個人再生手続きを使っても住宅を残すことはできないのです。
条件3は、この制度で残せるのは、実際に本人が住んでいる自宅であるということです。別荘とか、事業用の建物などは残せません。
また、自宅が2つあっても、残せるのは、主に生活に利用している1つだけです。
条件4は、自宅を購入したときやリフォームをしたときに、自宅に抵当権が設定されていることです。通常の住宅ローンでは問題ありません。ただし、その抵当権以外に、別の借金のために抵当権がついていたり、税金の滞納で差し押さえをされている場合には、この制度は使えません。
条件5は、住宅ローンを滞納しすぎると、もはやこの制度でも住宅を残せなくなってしまいます。半年以内なら大丈夫ですが、1年になるとほぼ不可能でしょう。その期間内でも、住宅ローンの滞納が増えると、返済条件が厳しくなっていきますので、住宅を残すことは難しくなってきます。
個人再生で住宅を残す場合の条件をざっと見てきましたが、いかがでしょうか。
さきほども説明したとおり、この制度の条件は非常に複雑です。しかも、今回説明していない条件もいくつかあります。
どちらにしても、個人再生を申し立てる場合には弁護士に依頼する必要がありますので、住宅を残したまま手続きをとりたい、という方は、早いうちに弁護士に相談してください。
条件5で説明したとおり、住宅ローンの滞納が続いてしまうと手遅れになってしまいますから。
当弁護士事務所では債務整理は数多く扱っており、住宅ローンありの個人再生手続きの経験も豊富です。
債務整理のご相談は無料ですので、お悩みの方は、お問い合わせのページをご覧のうえ、ご連絡ください。
次回は、住宅ローンの残額よりも、住宅の価値が大きい場合を説明します。
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