【債務整理】 破産すると住宅はどうなる?すぐに出ていかないとならないの?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第6回です。
前回は「破産をすると、家族や職場に迷惑がかかる?」という問題を見てきましたが、今回は、住宅ローンがある場合の破産についてです。
住宅ローンは、債務整理を検討するうえでもっとも重要な問題となります。
ご相談に来る方も、やはり自宅がどうなるかといった点に関心が高い場合が多く、住宅をなんとか残したいと希望される方は非常に多いといえます。
そこで、破産をする場合の住宅がどうなるか、出ていかなければならないかという点を取り上げていきます。
まず、結論からいえば、破産を行う場合には住宅を手放すしかありません。住宅を維持したまま、破産を行うことは認められないのです。
これには、2つの理由があります。
1つは、これまでも見てきたように、破産を行う場合、財産を処分しなければならないからです。一定以上の価値のある財産は、売却するなどしてお金に替え、債権者に分配しなければなりません。
不動産は、売却したときの金額よりも、住宅ローンの残額が少ない場合、その差額が資産とみなされます。たとえば、売却すれば2000万円、住宅ローンが現在1500万円残っている不動産は、差額の500万円分の価値があるとみなされますので、これを売却して500万円を債権者に分配するのです。
ですので、住宅ローンをある程度返済し、ローン残額が少ない場合は、処分しなければならないのです。
では、住宅ローンの残額が多く、売却してもローンが残ってしまう場合はどうでしょうか。たとえば、住宅を売却しても1000万円にしかならないのに、ローンが1300万円残っている場合です。
この場合、この住宅を売却してもすべてローンにあてられますので、実際には価値のない財産とみなされます。
ですので、これを売却して売却代金を分配することはできません。
ところが、この場合もやはり住宅を残すことはできないのです。
その理由が、破産を行う場合には、一部の債権者への返済を続けることが許されない、というものです。
破産は、すべての債務を一気に免除してもらうという非常に強力な制度ですが、そのかわり、すべての債権者を平等に扱う必要があります。ですので、一部の債務のみを返済することは禁止されています。
そのため、住宅ローンのみを返済してくことも認められないのです。
ローンが返済できない以上、住宅は競売にかけられることになり、結局、追い出されてしまうのです。
この2つの理由で住宅を手放さなければなりませんが、この2つのどちらにあたるかで、実際の処理は少し変わってきます。
住宅を売却しても代金が残り、債権者へ分配する場合は、住宅の売却や債権者への分配を破産手続きの中で行う必要があります。そのため、裁判所は破産管財人を選任し、時間と費用をかけて破産手続きを行います。
この場合は、住宅も早めに処分することが求められますので、比較的早い段階で自宅からの退去をしなければならないといえます。
そして、その売却が終わるまで破産手続きも続いていくことになります。
これと異なり、住宅を売却してもローンが残ってしまう場合は、この住宅は破産手続きの中では取り扱われることはありません。住宅が財産とはみなされないため、これだけで管財人が選任されることもなく、住宅が売却できなくても破産手続きは先に終了することもあります。
ですので、このような住宅があっても破産手続きが複雑化したり、長期化したりすることはありません。
また、破産手続きとは無関係に進むため、それほど急いで住宅を売却しなくてもよい場合もあり、退去まではある程度、時間の余裕があることが多いといえます。
このように、住宅ローンと破産手続きの関係は少し複雑ですが、どちらにしても退去を求められることになります。
この場合、いつごろまでに退去しなければならないのでしょうか。
実は、住宅を処分する方法は2通りあります。1つは任意売却といい、不動産業者などに買い手を探してもらい、買い手と契約して売却する方法です。
もう1つは、競売といい、住宅ローンの抵当権者が裁判所の許可を得て、裁判所での競売により買い手が決定される方法です。
任意売却での処分を行う場合は、新しい買い手に売却するころまでに退去すればよく、ある程度、柔軟に対応してもらえる場合もあります。
これに対し、競売は、裁判所がスケジュールを厳格に定めていきますので、決められた期日までに退去しなければ、強制的に追い出されてしまうこともあります。
また、任意売却を目指していても、なかなか買い手がつかないなどの事情があれば、いずれは競売にかけられてしまいます。
このように競売となった場合、競売の申し立てから、おおむね半年程度で手続きが終了しますので、それまでに退去を終える必要があります。
その期間内に、新しい引っ越し先を決めて、荷物なども運び出さなければならないということです。
なお、どうしても住宅は残したい、という方もいると思います。
その場合は、破産以外の方法で債務整理を行うしかありません。
任意整理や個人再生手続きを行えば、住宅を残すことができる可能性があります。
しかし、どちらの場合も、十分な返済余力がなければなりませんので、それも難しければやはり破産手続きを行い、住宅を処分するしかありません。
結局、破産手続きをした場合には住宅を手放すことにはなりますが、そのための手続きはこのように複雑です。
また、破産以外の手続きをとり、住宅を残す場合にも、いろいろな条件と手続きが必要となってきます。
ですので、住宅ローンの支払いができなくなった場合には、少しでも早い段階で弁護士などの専門家に相談した方が良いでしょう。
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