【債権回収】 債権回収を弁護士に依頼するメリット・デメリット
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第2回です。
前回は、債権回収の全体像を「売掛金・未収金を回収するためには」と題して解説しました。
今回は債権回収について弁護士が果たす役割を紹介したいと思います。
債権回収は、企業や事業者にとってもっとも身近な法律問題といえます。
弁護士が企業から依頼を受ける業務の中でも、債権回収に関する依頼は相当の割合を占めます。
では、なぜ弁護士が債権回収を行うのか、そのメリットとデメリットを紹介したいと思います。
【メリット】
弁護士に依頼するメリットは、おおまかに述べると、
- 相手への強いインパクトを与えることができる
- 債権回収のための豊富な知識・手段を利用できる
- 民事保全、訴訟、強制執行などの法的手続きを行うことができる
- 債権回収、交渉にかける労力・時間を節約できる
といった点にあります。
最初の3つは、一言でまとめるなら、「弁護士に依頼すれば回収率が上がる」ということです。
順番に見ていきましょう。
Ⅰ 相手への強いインパクトを与えることができる
弁護士から督促を受けた方はいらっしゃるでしょうか。あまり経験がない企業、事業者の方がほとんどだと思います。
普段顔を合わせている当事者が直接相手に請求するよりも、法律・裁判の専門家である弁護士が請求を行う方が、相手に対するインパクトは何倍にもなるでしょう。
弁護士からの督促があれば、無視したり、支払わなければ、裁判を起こされたり、財産の差し押さえを受けるかもしれない、というプレッシャーを相手に与えることができます。
その結果、これまで何カ月も支払いを拒否していた相手が、弁護士から内容証明郵便が来ただけで、すぐに全額を支払ってきた、というケースもあるのです。当事務所でも、そのような事例を何度も経験しています。
内容証明の文面はケースバイケースですが、具体的な事情を踏まえ、もっとも効果的と思える文面を作成しています。
もちろん、電話や面談して交渉を行うこともありますが、その場合でも弁護士という肩書や弁護士が持つ知識・経験、交渉力が有効な事案は多いでしょう。
これはまさに弁護士に依頼しなければ得られないメリットです。
Ⅱ 債権回収のための豊富な知識・手段を利用できる
弁護士は、債権回収のためにさまざまな知識や、債権回収に利用できる多くの手段を持っています。
特に、当事務所は信販会社や金融機関の顧問をしてきた経験により、他の弁護士事務所に比べても豊富な知識・経験を有していると自負しています。
そのため、事案に応じてもっとも適切な方法を選択することができます。
じっくり交渉すべき事案、訴訟提起し裁判所の判断を得るべき事案、直ちに民事保全を行って最速での解決を目指すべき事案、あるいは、コストをかけずに回収をあきらめるべき事案など、事案ごとにとるべき方法は異なります。
適切な方法を選択し、迅速に実行することが、回収率を高めるにはもっとも重要です。
当事務所には蓄積された事例やノウハウもあるため、極めて迅速に回収策を実行することができます。
たとえば、民事保全には裁判所に事案を説明し、説得して許可を得る必要がありますが、これまで経験した事案では、依頼を受けた3日後には裁判所の許可を得て民事保全を実行できたものもありました(3日で実行しなければ間に合わない事案でした)。
Ⅲ 民事保全、訴訟、強制執行などの法的手続きを行うことができる
前に述べたところとも重なりますが、弁護士は債権回収のための豊富な手段を持っています。
その中で、もっとも強力なのが民事保全、訴訟、強制執行といった裁判手続き・法的手続きです。
話し合いで解決できない相手から強制的に回収を図るには、これらの法的手続きを行うしかありません。しかし、民事保全や強制執行には複数の選択肢やノウハウがあり、経験の豊富な弁護士でなければ、適切な対応は難しいといえます。
特に民事保全は、弁護士に依頼せずに適切に行うのは非常に困難です。
なお、弁護士以外に、司法書士や行政書士が債権回収の依頼を受けることがあります。弁護士よりも報酬が割安と考えて依頼する方もいるようですが、行政書士は法律上、代理人として交渉や訴訟手続きを行うことは禁止されていますし、司法書士も請求額140万円までの交渉や簡易裁判所での訴訟手続きしか代理できないことになっています。
そのため、債権回収の最後までを一括して代理できるのは弁護士のみに限られます。ですので、結果的に、弁護士に依頼する方がかえって効率的となるケースが多いのです。
Ⅳ 債権回収、交渉にかける労力・時間を節約できる
支払いを滞納している相手との話し合いや督促には、時間も労力も相当かかってしまいます。
本来、事業者や従業員の時間は、営業や販売などの本業のために使うものです。それが、支払いの督促などに時間を割かれてしまうのは非効率といえます。
また、債権回収に不慣れな方が、いろいろな知識や手続きを調べながら債権回収に取り組む労力や時間も相当なものでしょう。
そのうえ、取引先への督促や未払いの場合の心配などは精神的にも負担が大きく、頼れる専門家の援助を受けたいとの声も聞かれます。
弁護士に依頼することで、債権回収に割く労力・時間を大幅に節約することができます。弁護士は要点を抑えた処理を迅速に行いますし、相手との交渉や書類作成は弁護士が行います。それによって、ご担当者の精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。
こういったメリットは、特に債権回収案件が何件も発生している場合には大きいといえます。
【デメリット】
弁護士に依頼した場合のデメリットとしては、
- 弁護士への報酬がかかってしまう
- 取引先との関係が悪化してしまう
といった不安がよく聞かれます。
Ⅰ 弁護士への報酬がかかってしまう
弁護士が依頼をお受けする以上、一定の報酬がかかってしまうのは避けられません。
ですので、依頼に要する費用と、前述したメリットをよく比較して検討していただく必要があります。
当事務所の弁護士報酬は、弁護士費用のページでおおまかに説明していますが、最初の「金銭請求事件一般」に該当するケースが多いでしょう(民事保全を行う場合などには金額が増減することがあります)。
相手が倒産した場合など、回収が失敗するケースも現実にはありますが、その場合には、依頼時にお支払いいただく着手金と実費分の損失が生じてしまいます。
(なお、当事務所では成功報酬は実際に回収できた金額に応じていただきますので、たとえば裁判で勝訴したが回収できなかった、という場合には成功報酬はありません)
当事務所では、ご依頼を受ける前に、回収の見込みや費用の見積もりを提示していますので、それをもとにご依頼の有無を判断いただき、メリットが大きいと判断された際にご依頼いただいております。
Ⅱ 取引先との関係が悪化してしまう
弁護士が表に出て、法的手続き等を行うなどすれば、やはり相手との関係は険悪になってしまうことが多いでしょう。
もっとも、事案に応じてはそれを避けるために、あまり強い請求を行わず、円満な話し合いを求めていくこともあります。
ただ、弁護士に依頼するほどの事案では、多くの場合、相手の対応やこれまでの滞納により信頼関係が相当悪化しているのが通常です。
そのため、もはや相手との取引継続を考えていないケースが多く、この点が問題になることは多くないでしょう。
弁護士に依頼する場合のメリット・デメリットはこのようなものです。
メリット、デメリットを十分に検討いただく必要があるでしょう。
ただし、前回も述べたとおり、債権回収は時間との戦いです。どうしようかと悩んでいるうちに、相手が倒産してしまい、まったく回収できなくなってしまうということも珍しくありません。
ですので、弁護士に依頼するか判断つかない時点でも、まずは弁護士に相談してアドバイスを受けたり、今後法的措置をとるための準備を行っておくことが必要です。
ご相談を受けても依頼する必要はなく、ご相談のみで終了しても結構ですので、お気軽にご相談いただければと思います。ご相談のご予約は、お問い合わせのページをご覧ください。
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