【債権回収】 内容証明郵便の特徴・使い方
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第3回です。
前回(債権回収を弁護士に依頼するメリット・デメリット)まで、債権回収の概要や弁護士に依頼するメリットなどについてみてきました。
今回からは、債権回収に関する具体的なノウハウを解説していきたいと思います。
債権回収の流れは、「売掛金・未収金を回収するためには」で説明したとおりですが、未払いが続いている相手方から債権回収を行う際の手段として、内容証明郵便による督促は大変よく利用されます。
この内容証明郵便がどのようなものであるか、そして債権回収にどのように利用できるか、を見ていきましょう。
内容証明郵便は、郵便局が提供するサービスの1つで、書留郵便の一種です。
細かい説明は郵便局のサイトをみていただくとして、ここではおおまかな特徴を説明します。
企業、事業者にとって、郵便を送付することは極めて日常的な業務です。このような日常的な郵便は、手元に控えを残すでしょうが、そのまま発送し、おそらくは郵便局員が適切に相手方へ届けてくれているでしょう。通常の業務ではこれで問題ありません。
あるいは、貴重品や重要な文書を送る際には、簡易書留で郵便を送ることもあるかもしれません。
ところが、債権回収などの場面では、これらの郵便では不十分に終わることがあります。
なぜなら、通常の郵便では、「どういった内容の手紙を送ったか」「それがいつ届いたのか」を後から証明することができないからです。
書留であれば、配達証明によっていつ相手に配達されたかは証明できるでしょう。しかし、それがどのような内容であったかは誰も証明してくれません。
手元に控えは残りますが、あとから相手に、その控えは後から作ったでっちあげであり、自分が受け取ったものとは違っている、と言われてしまうと反論が難しくなります。
内容証明郵便は、このような「どのような内容の手紙を送り」「それがいつ到達したか」をはっきりさせたいときに使うのです。
具体的には、内容証明郵便は同じ内容の文書を3通使用します。1通は郵便局の受理印を受けて差出人の控えになり、1通は書留文書として相手方に配達されます。そしてもう1通は、郵便局が5年間保管し、その文書が差し出されたことを証明してくれるのです。
(なお、配達証明を必ずつけなければならないわけではありませんが、内容証明郵便では配達証明をつけるのが一般的ですし、つけなければその意味が半減してしまいます)
では、この内容証明郵便を、なぜ債権回収の場面で利用するのでしょうか。
その理由は、大きく3つあります。
1つ目は、法律上、その内容の文書がいつ相手に到達したかを明確にしなければならないことがあるからです。
たとえば、相手に商品を販売したのに、その代金が支払われないとします。この場合、相手に支払いの督促を行って一定期間内に支払われないときは、契約を解除して、商品を取り戻すことができます。
このような契約解除を行う際には、その督促がいつ相手に到着したかをはっきりさせなければなりません。そうしないと、いつの時点で契約解除が成立したのかがわからなくなってしまいます。
また、後から相手が文句をいってきたときに、「解除の通知なんて受け取ってない」と反論されてしまうと、内容証明郵便を使用してなければ、解除の文書を送ったことが証明できなくなります。
そんなことでもめるはずはないとか、後から証明なんてする必要ないとか思われるかもしれませんが、後で裁判に発展した場合には、内容証明郵便で適切に通知を行っておかなければ敗訴してしまいかねません。
こういった場合には、必ず内容証明郵便を利用しなければなりません。
2つ目は、後から裁判になったなどに証拠として利用するためです。
さきほどの点とも重なりますが、あとから裁判に発展した場合、相手が、「そんなことを言われていない」「○○といっていたはずだ」と、交渉経過などについて言い分が食い違う場合があります。
このような場合、交渉時に自社の言い分を明確かつ具体的に記載した内容証明を送付しておけば、自社が相手にどのような請求をしていたかや、自社がどのようなスタンスで交渉を行っていたのかを証明することができます。
ただ、注意が必要なのは、内容証明で自社に不利なことや間違ったことを記載してしまうと、あとから不利な証拠としても利用されてしまうということです。
その意味で、内容証明郵便は諸刃の剣となる場合もあります。
3つ目は、内容証明は相手に対してインパクトを与えることができるためです。
一般的に、内容証明郵便の用途としてはこの目的が一番多いといえます。
内容証明は、決まった書式で送付しなければならないため、日常的に受け取る郵便とは、その体裁や雰囲気が大きく異なります。いわば、格式ばった体裁となっており、差出人の強い意志を感じさせるといえます。
そして、文面にも強い請求の意思や法的措置の予告を盛り込むことにより、相手には通常の請求書とは異なる大きなインパクトを与えることができるのです。それによって、相手が支払いに応じる可能性が上がります。
このようなインパクトは、弁護士が差出人として送付することで効果が倍増します。弁護士からの督促は、無視したり拒否すれば裁判を起こされてしまうという危機感を相手に与えることになりますので、弁護士からの内容証明郵便には大きな効果があります。
実際、当事務所でも、弁護士が内容証明で督促をしただけで、数か月分の未払い金をすぐに回収できたこともあります。
以上が内容証明郵便の概要と、その使い道になります。
なお、注意が必要ですが、内容証明郵便は、これだけですべて解決できる、というものではありません。
交渉の入り口として用いたり、裁判を起こすための準備段階として利用することも多いのです。
ですので、内容証明を出す前に、それを送った後の対応についてもよく考えておく必要があるのです。
内容証明郵便を利用する場合には、これらの特徴に注意し、最大の効果を発揮できるように文面を作成する必要があります。 明確な証拠として残ってしまいますので、間違った内容や不適切な文面となってしまうと、かえって何もしない方がよかったということにもなりかねません。
では、どういった内容で作成すればいいのか、については次回に少し文例を取り上げたいと思います。
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