【債権回収】 内容証明郵便の送り方・具体例
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第4回です。
前回(内容証明郵便の特徴・使い方)では、内容証明郵便の特徴や使い道について解説しました。
今回は、具体的にどういった内容の文面を作成するかを具体例・見本も挙げて説明したいと思います。
内容証明郵便は、1行の文字数や1ページあたりの行数、使える文字・使えない文字がすべて定められており、その書式に従う必要があります。
書式に従っていないと、訂正を求められたり、差出ができないことがあります。
書店などに内容証明用の原稿用紙も販売されていますので、そういったものを使う方が確実かもしれません。
また、内容証明郵便は、郵便局に持参して発送する必要があり、ポストでは差出ができません。パソコンから送れる電子内容証明もありますが、事前の登録が必要であり、定期的に利用する方以外には向いていないでしょう。
そのため、慣れていないと意外に手間がかかってしまうかもしれません。
そういった書式上の注意点などは、郵便局のサイトをご覧ください。
では、本題に入ります。まず、1つ具体例を挙げましょう。
滞納している家賃を払ってもらう場合の文例です。
札幌市中央区○○○○
借主 太郎 殿
平成24年11月1日
札幌市豊平区○○○○
貸主 花子 印
通知書
私は、貴殿に対し、平成23年9月1日以来、毎月の賃料を月6万円と定めて、札幌市中央区○○○○の建物を賃貸しております。しかしながら、貴殿は、平成24年7月以降、一切の賃料を支払っておらず、同月から平成24年10月までの賃料合計24万円の支払いを滞納しております。
つきましては、上記24万円の支払いを請求しますので、本書面到達後、7日以内に全額をお支払下さい。
万一、上記期間内に支払いがないときは、本書面をもって賃貸借契約を解除し、直ちに、札幌地方裁判所へ建物の明け渡し及び賃料の支払いを求める訴訟を提起いたしますので、ご了承ください。
実際には建物の特定や契約内容をもう少し詳細に書くこともありますが、この程度でも十分でしょう。
このような文例で必ず盛り込むのは、
- 支払いを求める金額を明確に記載すること(合計24万円)
- 支払いを求める根拠を明確にすること(いつからいつまでの滞納賃料)
- 支払い期限の明示(到達後7日以内)
- 解除の予告(支払いがないときは、契約を解除する)
- 訴訟の予告
といった点です。
当然のことですが、相手に何を求めているのかをはっきりさせなければなりません。そのため、どういった契約に基づいて、いくらの金額を支払うよう要求しているのかを明確にする必要があります。
さらに、返答や支払いの期限を決めなければ、相手はどうしていいかわからないまま先延ばしにし、いつまでの連絡が来ないことがあります。
そのため、支払期限を区切ることが不可欠です。この期限は、1~2週間程度を設定するのが通常です。
また、賃貸借契約や売買契約を解除する場合には、必ず、解除の予告と解除時期を盛り込む必要があります。これを入れておかなければ、契約解除は認められませんので注意が必要です。
そして、最後に、この請求に応じなければ法的措置をとる、という強い意志を示すのです。これを入れることで、相手が文書を無視する可能性は相当低くなりますし、支払いに応じる可能性を上げることができるのです。
なお、訴訟提起の予告が口だけではなく本気である、と相手に信じさせるために、この文例では「札幌地方裁判所」といった具体的な裁判所名を入れています。単に法的措置をとる、というよりも具体性があり、説得力があるからです。
もう1つ、売掛金の請求書例を取り上げます。なお、差出人・受取人はさきほどと同じですので、省略します。
請求書
当社は、貴社に対し、平成24年6月1日付売買契約に基づき、支払日を同年8月末日と定めて、資材一式を金300万円で売り渡しました。
しかしながら、貴社は、そのうち100万円を支払ったのみで、残金200万円の支払いを怠っております。当社も再三、請求を行って参りましたが、貴社からは誠意ある対応をいただけておりません。
つきましては、上記200万円の支払いを改めてご請求いたしますので、本書面到達後、10日以内に下記預金口座に全額をお支払ください(口座省略)。
もし上記期間内に全額のお支払いがなく、何らの誠意ある対応もいただけないときは、誠に遺憾ではございますが、札幌地方裁判所に対し、売掛金請求訴訟を提起せざるを得ません。その際には、上記200万円のみならず、支払期日以降に発生した遅延損害金及び訴訟費用についても貴社にご負担いただくことになりますので、ご承知おき下さい。
基本は、さきほどの賃料の際と同様です。
売買契約による残金を請求していますので、その内容を明らかにしています。
今回の文例では契約解除を求めても意味がないため、解除の予告は盛り込んでいません。
前の文例と違う点としては、最後の訴訟予告の部分で、裁判になった際には遅延損害金や訴訟費用も支払ってもらうと警告しているところです。
契約で定めた支払日を過ぎた場合には、契約書で遅延利率を決めていればその利率で、そうでなければ、会社間の取引では年6%の遅延金が生じることになっています。
また、裁判を提起し、全面的に勝訴した場合などには、裁判を起こす際に裁判所に収める印紙代などの訴訟費用の支払いを相手に求めることができます(なお、弁護士費用の請求は原則としてできません)。
こういった、支払いがない場合に負担が増えることを警告することで、相手がそれを避けるために早期に支払う可能性が上がるといえます。
2つほど例を挙げて説明しましたが、いかがでしょうか。
内容証明にはおおよその書式例があり、今回の文例などを踏まえて、弁護士に依頼せずにすませることも可能です。
ただし、2つの文例にも異なる点があるように、事案によって、または相手によって、どういった文面が適切かは異なってきます。
また、金額のミスや解除予告の不備などがあると、せっかくの内容証明が無駄になったり、かえって不利な結果をもたらすこともあります。
ですので、効果のある内容証明を作成するのはそれほど簡単ではないのです。
当事務所の弁護士が内容証明を送付する場合、これまでの経験を踏まえて、もっとも効果の高いと考えられる文面を選択しています。
しかも、当事者の名前ではなく、弁護士の名前で督促を行うことで、相手に与えるインパクトはまったく違うものになるでしょう。
また、内容証明郵便を出す際には、その後の対応についても検討しておく必要があります。たとえば、「支払いがないときは訴訟を起こします」と通知をしても、相手がそれを無視してきたとき、どうしたらいいでしょうか。
たとえば当事務所では、内容証明を出す時点で、無視されたら訴訟を起こすべきであるとか、民事保全を行うべきであるとか、あるいはそのまま諦めて損失を抑えるべき事案であるとか、あらかじめ戦略を考えておきます。
実際、内容証明をただ出すだけで解決する事案は多くなく、その後に交渉をしたり、担保の提供を受けたり、訴訟を起こしたりなど、さまざまな対応が必要になってきます。
ですので、結果として、最初から弁護士に依頼した方が効率がよく、債権の回収率も高くなるのです。
そのため、内容証明による督促を行う際には、自社で行うべきか、弁護士に依頼すべきかも検討することをお勧めします。
なお、お悩みの際には、弁護士の法律相談だけを利用することもできます。
ご相談された場合には依頼せず、そのまま相談のみで終了していただいても構いませんし、相談のみでお悩みが解決することも少なくありません。
その場合、5250円の相談料のみで、それ以上の費用がかかることはありません。
相談を利用されたい方は、お問い合わせのページをご覧のうえ、相談のご予約をお願いいたします。
札幌の弁護士が債権回収を解説 【債権回収に関する実践的情報一覧はこちら】