【債務整理】 借金が返せないときの解決方法は?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第2回です。
前回(借金をまったく返せない…ほうっておいてもいい?)、借金問題、債務問題は、弁護士に相談すれば解決できると述べました。
それでは、実際にはどういう解決方法があるのでしょうか。
債務整理には、大きく3つの解決方法があります。
1つは、任意整理という方法です。2つめは、個人再生、民事再生という方法、最後の3つめは、自己破産です。
それぞれメリットとデメリットがあり、詳しい説明は次回以降で取り上げますが、ここではおおまかに見ていきましょう。
任意整理というのは、要するに、債権者と個別に話し合いをして、返済条件をゆるやかにしてもらう、というものです。
たとえば、毎月3万円ずつ3年間返済するという約束のところを、毎月2万円に減額して4年あまりで返済する、という形へ条件変更をします。
またその際に、本来であれば発生する利息を免除してもらえる場合もあります。その場合には、返済総額が相当減ることになり、より緩やかな条件での返済が可能となります。
この方法は、現在の返済額は高すぎるが、もう少し返済額を減らしてもらえれば支払いができる、という方が利用します。
逆にいえば、多少減額してもらった程度ではどのみち返済できない、という方は難しいですね。
個人再生、民事再生というのは、非常に複雑な制度です。
簡単に説明すると、いま抱えている借金、債務のうち、合計100万円を3~5年間かけてしっかりと払いきれれば、残りの債務は免除されるという制度です(債務総額が500万円以内の場合の説明です)。
たとえば、現在、合計400万円の負債を抱え、毎月10万円程度の支払いを求められているとします。
この場合、個人再生を利用すれば、400万円のうち100万円だけを支払えばよいことになります。3年間で100万円を支払うというのは、毎月2万8000円程度を支払えばいいという計算です。
それを3年間支払った段階で、残りの300万円が免除され、借金はゼロになります。
この方法は、毎月3万円程度なら確実に支払えるという方に向いています。そして、この方法と破産の一番の違いは、個人再生の場合、住宅ローンの支払いを継続すれば、一定の条件のもとで、住宅を残すことができるという点です。
借金をすべては払えないけど、住宅だけはなんとか残したい、という場合、この個人再生が利用できるかを検討していきます。
最後の自己破産は、手持ちの財産を処分し、債権者に分配するかわりに、残った債務をすべて免除してもらうという制度です。
任意整理や個人再生でも解決できない、という場合には、この方法を選択することになります。
自己破産は、きわめて強力な効果があり、債権者には一円も払わないまま、免除を受けることすらできます。
その分だけ、手続きやルールが厳しく定められており、ルールに違反した場合には破産が認められないこともあります。
自己破産で問題になるのは、車や住宅は基本的に手放さなければならない点です。
個人再生のように、住宅ローンだけを支払っていくということもできず、住宅は手放し、引っ越ししなければならなくなります。
ただし、ローンが完済された車の場合、車の時価が20万円以内なら手放さずに所有できます。
そのほかにも細かいルールがありますが、それは次回以降に見ていきます。
借金問題、債務問題は、ほとんどがこの3つの方法で解決できます。
なお、これ以外にも、時効が成立したために解決する、ということもあります。
多くの借金は、5年間なにもやり取りがないと時効で消滅します。そのような場合、時効の通知を債権者に送付すれば、それで債務がなくなるのです。
ただし、債権者から裁判を起こされていた場合などには時効は使えないので、時効だけで解決することは多くはありません。
これまでの説明した方法の中から、適切な方法を選択し、解決をすることになります。
それでは、どの方法を選んだらよいのでしょうか。
それを判断するには、現在の生活状況、収支の状況、保有する財産などのほか、借金ができた事情などを詳しくお聞きすることになります。
だいたいの目安としては、
・借金総額を60で割った金額を毎月支払っていけるなら、任意整理を選択
(300万円の債務なら、60で割ると5万円ですので、毎月5万円以上返済できるかどうか)
・任意整理が無理な場合は、個人再生か破産かを選択
・毎月3万円程度の支払いが可能なら、個人再生を検討。住宅ローンを残したい場合や、借金の経緯に大きな問題がある場合も個人再生を検討
・毎月2,3万円程度の返済もできない状態(無収入など)では、破産を選択
などの基準があります。
ただし、実際にはもっと多くの基準で振り分けを行うことと、最終的には相談者の希望に沿った解決が必要になります。
ちなみに、当事務所に相談に来る方は、以前は任意整理により解決する割合が高かったように思います。
それは、長年、債権者が利息を多く取りすぎる状態が続いていたため、弁護士が交渉し、本来の利息で計算しなおした場合、債務が大幅に減額されることが多かったからです。場合によっては、すでに本当は債務を完済しており、払い過ぎの状態になっており、その過払い金を取り戻してほかの借金の返済にあてることもできました。
ですので、借金を長く抱えていた方は、ほとんどが任意整理により債務を完済することができました。
しかし、2010年6月以降は、そのような利息の取りすぎが法律で禁止されており、利息を払いすぎることはなくなりました。
それ以前の取引については、払い過ぎになっていることもありますが、武富士、SFCG、三和ファイナンスなどの貸金業者が相次いで倒産し、過払い金の取り戻しが難しくなったことなどから、債務の圧縮や過払い金の取り戻しが困難となりました。
ですので、10年前から借金があるという方は別ですが、ここ3,4年で借金をはじめてしまったという方は、もともと正しい利息しか払っていない可能性が高く、債務の減額は難しくなっています。
そういった事情のほか、不景気の影響や高い失業率のためもあってか、いまは個人再生や自己破産を選択する方が多くなっている印象です。
少し複雑な内容となってしまいましたが、債務整理の3つの方法をご理解いただけたでしょうか。
任意整理、個人再生、自己破産には、今回ご紹介したもののほかに、それぞれ、難しい問題や多くのルールがあります。
次回からは、まずはもっとも強力な手段である自己破産について、細かく見ていきます。
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