【債務整理】 破産手続きの流れを見てみよう
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第3回です。
前回(借金が返せないときの解決方法は?)で予告しましたが、今回からはしばらく破産をする場合の問題を見ていきます。
今回は、破産の全体的な流れを見たいと思います。
自己破産という言葉はみなさんご存じと思いますが、破産状態である場合、破産手続きをとることで債務を免除してもらうことができます。
では、破産状態というのは、どのような状態でしょうか。
破産法という法律では、債務者が「支払不能」であるときに、破産手続きが認められることになっています。
この「支払不能」という言葉の意味も破産法に規定されており、「支払不能」とは、「債務者が、支払い能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう」とされています。
少し難しい規定になっていますが、要するに、「現在も今後も、約束通りに借金を支払っていくめどが立たない状態」、ということです。
実際には、毎月の支払可能額よりも、約束の支払額が大幅に高くなっている場合や、返済が不可能なほどの高額の借金を抱えた場合などに破産状態となります。
そのような破産状態、支払不能状態になってしまったときは、破産を行うしか解決策がないことがほとんどです。
では、その場合、どのようにして破産手続きを行うのでしょうか。
破産の手続きは、大きく2つに分かれています。1つは破産状態の認定、財産の清算に関する手続きです。もう1つは、「免責」つまり債務の免除に関する手続きです。
前半を”破産手続き”、後半を”免責手続き”と呼んで説明します。
”破産手続き”の流れは、だいたい以下のようなものです。
① 裁判所に、破産申立書を提出し、審査を受ける。
② 裁判所は、債務者の提出した資料を検討し、破産状態、支払不能状態であるかを判断する。
③ 破産状態であると認められれば、裁判所は「破産開始決定」(以前は破産宣告といいました)を行います。
(④ 一定の場合、裁判所は破産管財人を任命して、債務者の財産状況の調査や清算を行わせます。)
(⑤ 調査や清算が終了すると、債権者集会を開いて、”破産手続き”を終了します。)
保有する財産がわずかな場合など、大半の事案では、①②③のみで”破産手続き”が終了します。
しかし、一定の場合は、④⑤という手続きに進むことになりますが、その際には破産手続きは複雑化・長期化してしまいます。
”破産手続き”が終了すると、今度は”免責手続き”が行われます。
”免責手続き”では、債務者が負債を抱えた事情などが確認され、債権者からも債務の免除を認めてよいかの意見を聴取します。
どういった場合に免責が認められないかは破産法で規定されていますが、大きな問題がない場合には、免責決定がなされます。
破産の目的は、債務の免除、つまり免責を得ることになります。
しかし、実際の手続きでは、債務の免除を認めてよいかが問題になることは多くなく、それよりも、保有する財産の清算手続きの方が大きな問題となります。
特に、上で説明したように、①②③のみで手続きが終わるか、破産管財人を任命して④⑤に進むか、といった点が実務的には重要となります。
実は、①②③だけで終わる場合には、ほとんどが書面審査のみで破産が認められています。つまり、裁判所に出席する必要もなく、破産を認めてもらえるのです。
その分、破産終了までの期間も短く、費用も少なくて済みます。
ところが、破産管財人が任命され、④⑤の手続きに進む場合には、裁判所へ出席したり、破産管財人と面談を行うなどの労力が必要となってきます。
しかも、その場合には破産申し立てから破産終了までの期間が半年から1年程度になることが多く、手続きが長期化するうえ、破産管財人の調査費用などを支払わばなければならないため、破産の費用も高額化します。
ですので、破産管財人が任命されるかどうかといった点が、破産希望者にとっては非常に重要な点となってきます。
では、どのような基準で振り分けが行われるのでしょうか。
基本的には、一定以上の財産があるかどうかで区別されています。
地域によって取扱いに差がありますが、札幌の場合には、20万円以上の価値がある財産を1つ以上保有しているか、で判断されます。
たとえば、ローンを完済し、売却すれば70万円程度の価値がある自動車を保有している場合や、解約すれば100万円の解約金が戻ってくる生命保険をかけている場合、住宅を所有し、ローンもある程度返済されている場合などには、破産管財人を選任することが避けられませんので、④⑤の手続きをせざるを得ません。
しかし、このような財産がない場合にも、破産管財人が任命されてしまう場合があります。
1つは、事業者、経営者の破産の場合です。事業者、経営者の場合、現在は手元に財産がなかったとしても、事業の内容や倒産に至る状況を精査したり、事業に関する財産が残されていないかを調査するために、破産管財人が選任される可能性が高くなります。
もっとも、事業の規模が大きくなく、十分な資料を提出できる場合には、破産管財人をつけないまま簡単な手続きで終了できることもあります。
もう1つは、申し立て時の資料や説明が不十分な場合や、債務を抱えた事情にあまりにも問題がある場合などには、調査のために破産管財人が選任されることがあります。
このような事案の場合には、もっと丁寧に調査・説明をしておけば、破産管財人を選任されずに済んだ、というケースも含まれています。申し立ての仕方が悪いために、余計な時間、余計な費用が生じてしまうことがあるのです。
破産手続きの流れをざっと見てきましたが、イメージはつかめたでしょうか。
実際の手続きでは、裁判所に破産を申し立てる時点で、ほぼ手続きは終了しています。申し立て時までの調査や資料の収集、申立書の作成までが破産手続きの山場であり、そこまでを適切に行えるかどうかによって破産の命運が決まるといってよいでしょう。
特に、事業者、経営者の場合や、不動産を所有している場合などは、事前準備によって破産がスムーズに進むかどうかに大きな差が生じてしまいます。
ですので、破産手続き、債務整理の経験が豊富な弁護士に依頼することが、非常に重要となってくるのです。
今回の話はわかりづらいところも多かったと思いますが、いかがでしょうか。
イメージを明確にしていただくため、次回は、実際の事例をもとに、破産の流れをシミュレーションしてみたいと思います。
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