【債務整理】 破産の実際の流れを体験しよう!
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第4回です。
前回(破産手続きの流れを見てみよう)、破産手続きの概要を見ましたので、今回、実際の例をもとに、破産手続きを一通り体験していきたいと思います。
~弁護士への相談、依頼~
破産手続きの第一歩は、まず弁護士への相談、依頼から始まります。
依頼者「生活に困り、300万円も借金してしまいました。今の給料では、毎月2万円くらいを返すのが精いっぱいなんですが…」
弁護士「そうすると、返済していくのは難しいですね。破産手続きを検討せざるを得ないでしょう」
依頼者「破産手続きというのはどういった手続きなんですか」
弁護士「破産というのは、・・・・・・(説明中)・・・・・・というものです」
依頼者「そうすると、私の場合はやっぱり破産しかないようですね。では、破産手続きをお願いできますか」
弁護士「わかりました」
実際にはもっと時間をかけてやり取りすることになりますが、おおむね、こういった形で、まずは弁護士が相談を受け、状況に応じ、破産手続きによる解決を選択することになります。
~破産申し立ての準備~
破産手続きをとると決めた後、破産申し立てに必要な準備を行っていきます。
弁護士「まず、破産手続きを行うことを、債権者(貸し手)に弁護士から書面で通知しますね。通知を行うと、債権者はご本人に支払いの請求や連絡をしてはいけないことになっていますので、今後は請求が来ることはなくなります。支払いもしなくて結構です」
依頼者「支払いもしないくて大丈夫なんですか。助かります」
弁護士「また、あわせて、債権者に請求額の詳細や請求内容についても問い合わせます。その返答が来るまで、1,2か月かかりますので、少し待つ必要がありますね」
依頼者「わかりました」
弁護士「その期間がありますので、1か月後にもう一度打ち合わせをしたいと思います。その際に、破産申し立てに必要な資料をお持ちいただけますか」
依頼者「どういった資料が必要になりますか」
弁護士「必要資料としては、人によって違いますが、あなたの場合には次のようなものが必要です。まず、一緒に住んでいる家族分の戸籍、住民票は必ず必要です。ご住所は札幌でしたね。そうすると、札幌地方裁判所に破産の申し立てをすることになりますね。
次に、今の収入・支出の状態を報告するために、あなたや家族が得ている収入に関する資料が必要になります。具体的には、給与明細、前年度の源泉徴収票、各種手当・年金の受給証などですね。どれもコピーで構いませんが、あなたの分だけでなく、同居の家族の分もお持ちください」
依頼者「わかりました。妻も仕事をしていますので、2人分の給与明細と源泉徴収票を用意します。そのほかはありますか」
弁護士「現在保有している資産に関する資料も必要です。同居家族分の預金通帳のコピーを提出しないとなりませんね。いまお金の入出金や引き落としなどがある通帳がすべて必要になってきます。お子さん名義の通帳があれば、それも用意していただけますか」
依頼者「通帳ですね。銀行や郵便局がありますので、家族分用意しないとならないんですね」
弁護士「そうです。お願いします。それから、家族で契約している生命保険、医療保険、自動車保険などの保険がありませんか。保険がある場合、契約内容がわかる保険証券と、解約した場合に返還される金額がわかる書類を出す必要があります」
依頼者「私と妻は生命保険、医療保険をかけていて、私の車には自動車保険をかけています。ただ、どれも掛け捨ての保険だったはずですが」
弁護士「それでしたら、掛け捨てだとわかる書類があると助かりますね。どちらにしても保険証券は必要です」
依頼者「あの、破産をすると保険は解約しないとならないんでしょうか。知り合いに頼まれて入っているので、解約はしづらいのですが」
弁護士「解約しても戻ってくるお金がないのなら、解約する必要はありませんよ。ただ、保険料が少し高いので、安くしてもらえると今後の生活が少し楽になると思いますけど、保険自体は残しても問題ありません」
依頼者「そうですか、安心しました」
弁護士「あとは、自動車があるということですので、車検証のコピーが必要です。車の年式はわかりますか」
依頼者「12,3年乗っている古い車です。車も処分しないとならないでしょうか」
弁護士「10年以上経過しているなら、大丈夫かもしれません。価値がだいたい20万円以内であれば残すこともできますので、一応、ディーラーなどで買い取ってもらう場合の査定を受けていただいた方がいいですね」
依頼者「わかりました。すぐにみてもらいます」
弁護士「あなたの場合ですと、必要資料はそのくらいだと思います。1か月後の打ち合わせ時にご持参ください」
依頼者「わかりました。用意する際にわからないことがあったら、お電話してもよいでしょうか」
弁護士「もちろんです。いつでもご連絡ください」
~1か月後の打ち合わせ~
依頼者「指示された資料を用意してきました」
弁護士「ありがとうございます。一通りそろっていますね。では、これをもとに少し確認させてください。まず・・・(打ち合わせ中)・・・」
弁護士「あと、借金が増えてしまった事情も前回お聞きしましたが、この通帳によると・・・(打ち合わせ中)・・・」
弁護士「そういう事情でしたら、負債を抱えてしまったのはやむを得ないといえるでしょう。特に破産手続きに支障が出るところはないようですね。では、これから準備をして、1か月後をめどに裁判所に申し立てをしたいと思います」
依頼者「そうですか、ありがとうございます。今は支払いの請求も来ていないですが、やっぱり早めに解決したいですね」
弁護士「少しお時間をいただきますが、早めに準備を進めておきます。また足りない点があったらご連絡しますね」
~破産申し立て~
弁護士が必要な資料を整理し、必要事項を記入した破産免責申立書を作成して、札幌地方裁判所へ提出しました。
弁護士「お電話で失礼します。本日、準備が整いましたので、裁判所に破産の申し立てを行いました」
依頼者「そうですか、ありがとうございます。このあとはどうなるんでしたか」
弁護士「裁判所が書類を審査し、不足しているところがあれば問い合わせが来ることになります。今回の内容を考えると、書面審査で終わると思いますので、裁判所に出席する必要はないと思います」
依頼者「そうなんですね。では、しばらく待っていればよいということですか」
弁護士「そうなります。おそらく、1,2週間程度で連絡が来ると思いますので、動きがあればご連絡します」
~破産手続き開始決定~
申し立てから2週間ほど経過した日、札幌地裁から破産手続き開始決定が出たとの連絡がきました。
弁護士から依頼者へそのことをご連絡します。
弁護士「いまお時間よろしいですか。裁判所から、破産を認めるという決定書が届きました。破産管財人などをつけないで、書面審査だけで破産を認めてもらえたようです」
依頼者「破産が認められたんですね。安心しました。どうもありがとうございます。これで手続きはすべて終了なんですか」
弁護士「いえ、これから約2か月ほど、裁判所が債権者から意見を聴取するという手続きがあるんです。たとえば債権者からお金をだまし取っていた場合など、債務の免除を認めるべきでない事情がないかを確認するんです。ただ、実際には債権者が意見を述べることはほとんどないですし、今回の場合は特に問題になることはないと思いますから、ただ待っているだけになりますね」
依頼者「その間に特に何もなければ、それで終わりになるんですか」
弁護士「そうです。そうすると、裁判所が免責、つまり債務の免除を認める決定を出してくれますので、それで破産はすべて終了になります」
依頼者「わかりました。では、もうしばらく待っていますので、よろしくお願いします」
~免責決定、破産手続きの終了~
約2か月後、債権者から意見が出されることもなく、免責決定がなされました。
弁護士「無事に免責が認められましたので、これで負債はすべて免除されたことになります。破産手続きもすべて終了となります」
依頼者「本当にありがとうございました。借金が膨れ上がったときはどうしようかと本当に悩みましたが、弁護士さんにお願いしてよかったです。これからは借金なんてしないようにしていきます」
弁護士「いまはブラックリストにのってしまっているので、しばらくローンや借金はできないと思いますが、それが過ぎても慎重にされた方がいいですね。この数カ月の生活をそのまま維持されれば大丈夫だと思いますので、いらない心配かもしれませんが」
依頼者「いえ、気をつけます。このたびは本当にありがとうございました」
弁護士「また何かお困りの際は、お気軽にご連絡ください。こちらこそありがとうございました」
スムーズに進む場合の破産手続きの流れは、以上のようなものです。イメージをつかんでいただけましたでしょうか。
実際には、もう少し細かい説明ややり取りがありますし、お電話などでもう少し多く連絡をとることもありますが、流れとしてはそれほど変わりません。
ただ、前回説明したような、破産管財人が任命されるような事案では大きく異なる部分もありますが、大半の方は、今回見たような流れで進んでいくことになります。
実際の事例を見ていただいて、意外と簡単な手続きだと思われたのではないでしょうか。債務整理の経験がある弁護士が、適切に準備を行えば、破産手続きはそれほど大変な手続きではないのです。
しかし、申し立ての準備がずさんであったり、不十分であると、裁判所からの問い合わせが増えたり、破産管財人が選任されたりしてしまい、大変複雑なものとなってしまいますので注意が必要でしょう。
次回からは、破産手続きを進めるうえで問題となる点を順番に見ていきたいと思います。
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