【債務整理】 破産をすると、家族や職場に迷惑がかかる?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第5回です。
前回(破産の実際の流れを体験しよう!)までで、破産手続きのおおまかな流れをご理解いただけたかと思います。
今回からは、破産手続きを行ううえで問題となる点、弁護士がよく質問を受ける点について取り上げていきたいと思います。
債務整理のご相談を受ける際にかなりの方が不安に思う点として、破産をしたことで、家族や職場などに迷惑がかかるのでないか、というものがあります。
なかには、自分が破産をすると奥さんも破産しないとならないとか、自分が破産する前に離婚しておかないと妻に迷惑がかかる、という心配をお持ちの方もいます。
ごくまれにですが、破産を決意したのでまず離婚してきました、という相談者の方もいらっしゃいます。
このような心配はよくわかりますが、実際にはほとんどの場合、不要な心配なのです。
借金を抱え、支払いができなくなったとき、借りた本人には債権者から当然請求が来ます。
そのときに、本人が払えないなら家族が払わなければならない、家族の財産を処分してでも返済しないとならない、と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、これは大きな誤解です。
借金は、あくまで借りた本人のものであり、家族であっても、何も契約をしていない人が責任を負うことはないのです。
ですので、ご主人や奥さんが個人的に作った多額の借金があったとしても、家族が支払う義務はありませんし、債権者は家族に請求することすらできないことになっているのです。
もちろん、家族の問題ですので、奥さんやご主人が代わりに払ってあげるということは問題ありませんが、自分から払う義務はありません。
これと同じように、たとえばご主人が破産状態となり、破産手続きをすることになっても、家族には何も影響がありません。
家族が借金を肩代わりすることもありませんし、家族も一緒に破産したことになるわけでもありません。
借金を払う義務があるのも、破産をするのも、基本的にはご本人だけの問題なのです。
奥さんや子どもに影響が出るということもないのです。
実際には家族に内緒のまま破産を申し立てすることもちらほらありますが、それで問題となることもありません。
それでも職場とか、親族とか、子どもの学校とかに破産したことが知られて、肩身の狭い思いをするのではないか、と思う方もいるでしょう。
けれども、このような心配もほとんど不要です。
破産したことは、「官報」という役所の新聞のようなものに記載されてしまいますが、この官報を見ている人はほとんどいません。それどころか、官報というものの存在も知らず、どこに行けば買えるかもわからない人が大半だと思います。
これまで弁護士として多くの方の破産手続きを行ってきましたが、官報を見られて周りの人に破産を知られた、という人に会ったことは一度もありません。
それ以外に、戸籍や新聞に載ることもありませんし、選挙権などに影響が出ることもありません。
自分から言わなければ、職場も、親戚も、子どもの学校も、破産に気づく可能性はほぼゼロといってよいでしょう。
(ただし、警備員など一定の特殊な職業は、破産者が就けないことになっており、そのような職にある場合には退職せざるを得ません。この点は次回以降にまた触れます)
もちろん、自分で事業をされている方や、会社を経営されている方は、会社が倒産となれば取引先や家族も知るでしょうから、その場合には周りに隠すことは難しいでしょう。
しかし、普通の会社員や主婦の方は、周囲に知られる心配も、家族に迷惑をかける心配もほとんどありません。
もっとも、このような方でも、絶対に周囲に迷惑をかけないわけではないのです。実は周囲に影響が出てしまう場合がいくつかあります。
1つは、家族などが自分の借金の保証人になっている場合です。住宅ローンや銀行からの借り入れの際など、保証人を立てていることがあります。
このような場合、借りた本人が破産しても、保証人の責任は消えません。
本人が払えなくなってしまった以上、保証人には残りの負債を払う義務があるのです。そうすると、その保証人には本人が破産したことによって、大きな負担が生じることになります(なお、たとえばその後離婚をしたりしても、その義務は変わりません)。
しかも、破産する方が、この保証人がついている債務だけ支払う、ということは禁止されています。破産手続きでは、すべての債務を免除してもらえる代わりに、一部だけ支払うことも禁止されているからです。一部だけ払ってしまえば、払ってもらえない債権者にとって不公平となるのがその理由です。
そのため、保証人としては、自分で支払いをしていくか、保証人自身も破産などの手続きをするしかなくなってしまうのです。
また、自分以外の人が責任を負う場合としては、相続の場合があります。
借金を抱えた方が亡くなってしまった場合、実は借金も相続の対象となります。
この場合には自分自身が借金をしていなくても、借金を抱えていた家族の負債を引き継ぐことになり、返済の義務が発生してしまいます。
もっとも、この場合は、死亡時から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行えば、負債も引き継がずにすみます。
本人以外が義務を負う場合というのは、このような場合にほとんど限られています。
もちろん、本人が破産をしたことで、ブラックリストにのってしまい、家族のためにローンを組んだり、他人の保証人になれなかったりするなどの支障は生じてしまいます。
しかし、破産をしなくとも、約束通りの支払いができなくなればやはりブラックリストになりますので、これは破産だけのデメリットでもありません。
今回みてきたように、破産をすることで家族や職場など、周囲に迷惑をかけることはほとんどありません。
むしろ、債務を精算し、正常な生活を取り戻すことで、家族も安心し、仕事にも専念できるのではないのでしょうか。
こういう場合は周りに迷惑とならないか、こういう点は問題でないか、など、不安な点がありましたら債務整理の経験豊富な弁護士へ相談ください。
今回のように、意外と悩むような問題ではないかもしれませんよ。
次回は、破産の際の住宅問題について見て行きます。
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