【刑事事件】 刑事事件の流れ(後) ~起訴から判決まで~
札幌の弁護士による刑事事件解説コラム第2回です。
前回(刑事事件の流れ(前) ~逮捕から起訴・不起訴まで~)の続きとなります。
前回は、逮捕されてからのタイムスケジュールや、不起訴や略式命令の場合にはそこで事件が終了となること、起訴された場合には正式裁判を受けることなどを見てきました。
今回は、起訴されてしまった場合の手続きについてです。
起訴され、正式な裁判にかけられる場合にも、身柄拘束されている場合と、されていない場合とがあります。
以下では、逮捕・勾留されている場合を主に扱っていきます。
逮捕・勾留されていない場合にも、流れはほとんど同じです。
1 起訴
起訴するか、不起訴にするかの判断は、検察官が行います。
検察官が起訴を決定した場合、「起訴状」という書類を裁判所に提出し、被疑者本人にも起訴状が届くことになります。
起訴された時点で、「被疑者」という呼び名は変わり、「被告人」という呼び方をすることになります。
ニュースなどでは「被告」という言い方をすることが多いですが、実際の刑事裁判では必ず「被告人」と呼びます。
起訴後は、裁判所が裁判の日時を決め、その連絡が来ますので、その日時に裁判所で刑事裁判を受けることになります。欠席は許されません。
2 保釈
起訴された時点で身柄拘束されていない場合は、通常はそのまま自宅で生活していくことができます。
しかし、反対に、起訴された時点で逮捕・勾留されていたときは、起訴後もそのまま勾留され続けることになります。
それがいつまで続くかといえば、実は判決までそのまま拘束されてしまうのです。
札幌の場合、起訴されるまでは警察署の留置場で寝泊まりすることになりますが、起訴後、一定の時間が経過した段階で、拘置所(札幌の場合は、男性は札幌拘置支所、女性は札幌刑務支所。どちらも東区の東苗穂にあります)に移動させられます。
そこで、判決の日まで寝泊まりしなければなりません。この時点では取調べも終わってますので、裁判までの間、ただそこで過ごすだけとなります。
それでは、判決の前に釈放してもらうことは絶対にできないのでしょうか。
実は、釈放を認めてもらう方法が用意されています。それが、保釈という制度です。
ニュース等でご存じの方も多いでしょうが、保釈というのは、起訴された後、保釈金(正確には、保釈保証金といいますが)というお金を裁判所に預けることで、判決までの間、釈放を認めてもらうという制度です。
この保釈が認められ、保釈金を納めれば、身柄拘束から解放されるのです。
しかし、保釈は必ず認められるわけではありません。保釈を認めるには一定の条件があります。
保釈制度については、また後日、詳しく説明する予定ですので、ここではこの程度にしておきます。
3 公判
刑事裁判では、裁判所で裁判を行うことを「公判」と呼びます。「初公判」という言葉を聞いたことがあると思いますが、弁護士や裁判所はあまり初公判という言い方はせず、第1回公判、ということが普通だと思います。
ちなみに、民事裁判では「第1回弁論」という言い方をしており、「公判」という言葉は使いません。
第1回公判、つまり1回目の裁判は、通常、起訴から約1か月後に行われます。
公判には、被告人が出席するのは当然ですが、そのほかに、裁判官、弁護人(ベンゴニン。刑事裁判では、弁護士を弁護人と呼びます)と検察官も出席します。
そこで、裁判となっている事件について、審理を進めることになります。
実際にどのようなことを行っていくかは、また別の機会に取り上げたいと思います。
ところで、刑事裁判は、だいたい何回くらい公判を行うと思いますか?
ニュースでは、よく第5回公判とか第10回公判という話を聞きますし、1年も2年も公判が続いているような印象もあると思います。
ところが、実際の刑事裁判は、ほとんどの事件が、なんと1回目でほぼ終了しています。
第1回公判で審理がすべて終了し、その次の公判で判決を言い渡して事件が終結、というのがむしろスタンダードといえます。
ちょっと手続きが長引いても、2,3回で終結という事件が大半でしょう。そうすると、起訴から2,3か月以内には、判決が決まっていることになります。
しかも、第1回公判は、だいたい1時間以内で終了します。判決の言い渡しは5分もかかりませんので、多くの事件は、裁判全体で1時間もしないで終わっています。
ですので、裁判というのは意外とあっさり終わってしまうのです。
しかし、逆にいえば、その1時間で言いたいことをすべて裁判所に伝えなければなりませんので、それだけ事前の準備や、公判の場での活動が重要になってくるのです。
4 判決
審理がすべて終了すると、判決を言い渡す公判を開きます。
そこで、裁判官が被告人にどういう刑罰を決めるかという「判決」を言い渡します。
判決の際には、結論とその理由を述べます。
結論というのは、要するに有罪か無罪か、有罪のときはどのような刑を与えるか、というものです。
たとえば、「被告人を懲役3年に処する」というようなものです。
そして、その判決の理由として、「前科がある。内容が悪質である。反省の態度が見られない。」などの事情を説明していきます。
有罪判決には、大きく、実刑判決と執行猶予判決があります。
執行猶予判決について説明すると長くなりますので、これも別の機会に取り上げます。
執行猶予判決になればその直後に釈放されますが、実刑判決では、そのまま身柄拘束が続き、釈放してもらえません。
5 控訴・上告
判決の結論に不満がある場合には、高等裁判所に控訴することができます。
通常、刑事裁判は簡易裁判所か地方裁判所で行います(大半は地方裁判所です)。
しかし、その判決が間違っているとか、重すぎるという場合には、高等裁判所でもう一度判断しなおしてもらうことができるのです。
本当は無実なのに有罪判決を受けたとか、執行猶予をつけるべきなのに実刑判決だった、などの理由で控訴を行うことがあります。
控訴を行い、高等裁判所での判決にも不満がある場合には、最高裁判所に上告をすることもできます。
しかし、実際には上告できる場合は非常に限定されており、上告が認められることはほとんどありません。
控訴や上告をしないか、上告がしりぞけられた場合には、その判決が確定し、争うことはできなくなります。
6 刑の執行
有罪判決が確定した場合には、裁判所が命じた刑の執行を受けなければなりません。
罰金刑であれば、罰金額を納付しなければなりませんし、懲役の実刑判決であれば刑務所に服役をします。
また、裁判に関する費用の支払いを命じられることもあります。
刑の執行を終えた段階で、刑事手続きは終了といえるでしょう。
前回・今回で見てきたように、捜査開始・逮捕時から、判決を受けた後の刑の執行まで、さまざまな手続きが行われます。
要点のみにしぼって簡単に述べてきましたが、それでもかなり複雑な手続きだと思われたのではないでしょうか。
しかし、裁判が1回目で終了する場合は、逮捕から判決までの期間は、2か月程度にすぎません。
実際には、この手続きに沿ったなかで、多くの弁護活動を行っていかなければならず、時間的にも労力的にも相当大変なものとなります。
ですので、逮捕前や逮捕直後から、弁護士と相談しながら迅速に対応をしていかなければ、どんどん取り返しがつかない状況になってしまうのです。
刑事事件、刑事裁判の全体像をざっと見てきましたので、次回は、裁判ではどのようなことが行われるか、実際のケースをもとに体験したいと思います。
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