決めた養育費を支払えなくなってしまった場合
札幌の弁護士による離婚解説コラム第11回です。
前回(養育費が支払われない場合の対処法)では、相手が養育費を支払ってくれない場合の解決策について見てきました。
今回は、反対に、養育費を支払う約束をしたのに、支払いができなくなった場合にはどうすべきかを取り上げます。
養育費の取り決め方については前回見てきましたが、調停を行わず、公正証書も作成せずに、お互いで養育費の金額を決めただけの場合をまず考えます。
この場合、養育費を取り決めていれば、夫婦間では支払いの義務や受け取る権利があることになりますので、支払う側も支払う義務を負います。
ただし、この場合には、支払いをできなくなってしまった場合にも、すぐに差し押さえなどの強制執行を受けることはありません。
前回詳しく見たように、差し押さえには、裁判所での合意か公正証書が必要になるからです。
それなら、支払いをそのまま止めてしまっても問題ないかというと、もちろん、そういうわけではありません。
いまは差押えができないとしても、養育費を支払う義務があることは間違いありませんので、そのままでは養育費の滞納分が毎月積み重なっていきます。
そして、後から調停や裁判を起こされた場合、状況によっては、これまでの滞納分を一括で支払うことになりかねません。しかも、その場合には、裁判所での取り決めになりますので、一括で支払えない場合には、差し押さえをされてしまうことになるのです。
ですので、結局、あとから全額の差し押さえを受ける危険がありますので、いますぐに強制執行される危険がないからといって支払いを止めていいわけではありません。
しかし、現実問題として支払いができなくなってしまうことはあります。
たとえば、養育費の取り決め時には仕事をして、相応の収入を得ていたのに、何年かして会社が倒産してしまい、収入がなくなってしまった場合が考えられます。
また、反対に、子どもを引き取った妻が再婚し、世帯の収入が一気に上昇した場合などにも、元のまま養育費を支払い続けるというのは釈然としない場合もあるでしょう。
養育費の支払いは、通常は子どもが成人するまで続きますので、10年や15年続くこともめずらしくありません。
最初に取り決めた金額が、その後、一切変更できないというのはあまりに理不尽な話でしょう。
そこで、このような場合には、養育費の減額を求める調停を起こすことが認められています。
もちろん、養育費の減額を相手に申し入れて、相手がOKしてくれれば何の問題もありませんが、相手が認めてくれない場合には、やはり調停を起こすしかないでしょう。
その調停手続きの中で、今までどおりに養育費を支払えない事情を説明し、減額を求めて行くことになります。
ただ、一度取り決めた養育費ですから、簡単に変更することはできません。
やはり、取り決めた時点から何年も経ち、事情が大きく変わったことが必要になります。少し収入が減ったという程度ではなかなか認められないでしょう。
しかし、現実問題として支払いができなくなってしまったときには、減額を求めるしかありませんので、そのような場合には無断で支払いを止めるのではなく、話し合いや調停という形で解決しなければなりません。
そうでないと、やはり差し押さえなどを受ける危険が残り続けることになります。
なお、今回は養育費を後から減額できる、という観点でお話しましたが、実は、反対に、後から増額を求めることもできます。
考え方や手続きは全く同じで、取り決めた後の事情が変わったことで、より多くの養育費が必要となった場合などに、話し合いか調停を起こして増額を求めることができます。
たとえば、子どもが進学し、学費が相当かかるようになった場合などが典型的でしょう。
このように、一度決めた養育費は、絶対に変わらないものではありません。
双方の生活状況や子どもの状況に応じて、変更することが認められているのです。
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