【離婚】 一度決めた親権者をあとから変更できる?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第12回です。
前回(決めた養育費を支払えなくなってしまった場合)は、子どもの養育費をあとから変更する方法を見てきました。
今回は、親権について、あとから変更する方法について取り上げます。
離婚の際に未成年の子どもがいる場合、必ず親権者を決めなければなりません。
親権者の決め方については、「必ず母親が親権を得る? ― 親権者の決め方は」で詳しく取り上げましたが、離婚時の当事者の協議で決めるか、話し合いがつかなければ調停・審判で決定してもらうことになります。
では、そのように親権者を一度決めたけれども、あとから変更したい、という場合はどうしたらいいのでしょうか。
実は、離婚の際に親権者を決めるときとは違い、あとから親権者を変更する場合には、当事者の協議だけでは認められません。
必ず、家庭裁判所で調停・審判という手続きを行わなければならないことになっています。
一度決まった親権者がすぐに変わってしまっては、子どもも周囲の人も混乱しますので、変更するには裁判所の関与が必要ということです。
ですので、あとから親権者を変更するには、裁判所の関与・判断を受け、変更を認めてもらわなければならないのです。
では、どのような場合に変更が認められるのでしょうか。
親権者変更には、大きく2つのパターンがあります。
1つは、親権者は健在だけども、親権者や子どもの生活状況が変わり、親権者を変更したい場合です。もう1つは、これまでの親権者が亡くなってしまうなど、親権者がいなくなってしまった場合です。
1つ目のケースについては、これまでの親権者が引き続き健在ですから、現在の親権者のもとでの生活には問題があることが必要となるでしょう。
親権者の判断基準は、子どもにとって、誰が親権者となるのがもっとも適切なのかという、子どもの利益という視点から検討します。
たとえば、現在の親権者が病気などにより養育困難となった場合や、現在の親権者が子どもに暴力をふるうなど適切な養育をしていない場合には、変更の必要性が高いといえます。
しかし、現在の生活に問題がなければ、あえて親権者を変更して混乱を生じさせるべきではないため、なかなか変更が認められないのが実情でしょう。
もちろん、変更を求める場合には、変更した方が子どものためになる、という主張立証を行う必要がありますので、親権者になりたい方の生活状況や子どもとの関係も重要な考慮要素になります。
2つめの、現在の親権者が亡くなってしまった場合、親権者はどうなるのでしょうか。
たとえば、親権者であった母親が亡くなってしまった場合、自動的に、父親が親権者になるのでしょうか。
実は、現在の親権者が亡くなったとしても、自動的に親権者が移ることはありません。
このような場合であっても、家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行わなければならないのです。
そして、裁判の場で、親権者として適切かどうかを判断されることになります。
ちなみに、父母とも亡くなってしまった場合のように、親権者がいない場合には、未成年後見人という立場の監督者を家庭裁判所が選任します。
通常、これは祖父母などの親戚を後見人として、その後の養育や財産管理を行うことになります。
これまで見てきたように、前回の養育費や今回の親権は、どちらも、離婚時に決定するのが本来ですが、あとから変更する制度も用意されています。
ただし、どちらも、離婚後、生活の状況などのお互いの事情が大きく変わったことが必要になります。
特に事情が変わったところはないのに、気持ちが変わったとか、やっぱり変えてほしい、というだけではまず認められません。
そのため、離婚時に慎重に検討することが重要となってくるのです。
子どもに関する問題をしばらく見てきましたが、次回は、子どもと一緒に暮らしていない親と子どもとの面会交流をテーマとする予定です。
「親権のない親が子どもに会う権利はある? ~面会交流とは~」へ
札幌の弁護士が離婚を解説 【離婚に関する実践的情報一覧はこちら】