【債務整理】 個人再生手続きで手元に残せる財産は?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第12回です。
前回(個人再生手続きとは ~債務は払えないけど破産を避けるには)は、個人再生の基本的なポイントを説明しました。
個人再生は、現在の債務を大幅に圧縮し、それを3~5年間で支払っていくという手続きです。
負債が400万円なら100万円を返済すればよく、負債が700万円なら140万円を返済すれば残りは免除になるんでしたね。
今回は、個人再生の場合には、手元にある財産・資産を残せるのか、処分しなければならないのかを説明します。
破産手続きの場合には、「破産手続きの流れを見てみよう」で取り上げましたが、基本的には、1個あたり20万円以内の財産は残せますが、20万円を超える財産を残すことはできません。
たとえば、解約金が20万円を超える生命保険や、時価20万円を超えた自動車なども処分を求められます。
それでは、個人再生の場合はどうなるのでしょうか。
実は、個人再生の場合、破産よりも多くの財産を保有することが認められています。これは個人再生の大きなメリットの1つです。
個人再生は、破産とは異なり、債務の一部は返済するため、破産よりも有利に扱われる部分もいくつかあるのです。
では、個人再生ではどの程度の資産を持っていてもよいのでしょうか。
その答えは、「個人再生手続きによる返済額までの財産」は、手元に残すことができます。
具体的に見てみましょう。
前回も取り上げましたが、総債務額が500万円以内の場合、個人再生手続きを利用すれば、債務のうち100万円を返済すれば、残りは免除されます。
この場合の「返済額」は100万円となります。そうすると、このときに手元に残せるのは、この返済額100万円以内の財産ということになります。
ですので、解約金が40万円の生命保険と、時価が50万円の自動車(ローン完済)があったとしても、合計が90万円ですから、両方とも残したまま手続きを行うことができるのです。
もし、債務が700万円の場合は、返済額が140万円となりますので、合計140万円までの価値の財産を手元に残すことができるのです。
破産の場合には1個あたり20万円までの財産しか残せませんから、個人再生の方が非常に広く認められていますよね。
では、債務が400万円なのに、手元に130万円分の財産がある場合、どうしたらいいでしょうか。
返済額は100万円まで圧縮できますが、財産額の方が多くなってしまいます。
この場合、方法は2つあります。
1つは、返済額100万円であるため、130万円ある財産のうち、30万円以上を処分して返済にあてるなどし、手元に残す財産を合計100万円以内にする方法です。ただ、この方法には多少問題があり、使いづらい方法です。
もう1つは、130万円の財産を残すために、返済額を130万円にする方法です。
本来、400万円の債務がある場合には、個人再生では100万円まで圧縮できますが、これより多い金額を返すことは自由なのです。そのため、100万円ではなく、130万円を返済することにすれば、130万円の財産を残すことも可能なのです。
これを簡単に整理すると、以下のようにまとめることができます。
- 個人再生では、返済額以内の財産は処分しないで手元に残すことができる
- 個人再生では、手元に残す財産の金額以上の金額を返済しなければならない
これは、どちらも結局同じ意味ですが、ある程度資産のある方の場合には非常に重要となります。
特に、破産手続きを行うか、個人再生手続きを行うかを判断する際には、このルールを検討する必要があります。
なお、自動車について、一点だけ重要な注意点があります。
それは、ローンの残っている自動車は、価値にかかわらず、残すことはできないという点です。
ローンが残っている自動車の場合、破産や個人再生を行うと、ローン会社が自動車を引き上げてしまいます。
これはローン会社との契約で決められていますので、基本的には従うしかありません。
ですので、ローンが残っている自動車の場合には、破産でも個人再生でも、自動車は取り上げられてしまうのです。
今回は個人再生手続きと手持ち資産についてみてきました。
次回は、個人再生の場合の返済方法を取り上げます。
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