【債権回収】 内容証明郵便の特徴・使い方
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第3回です。
前回(債権回収を弁護士に依頼するメリット・デメリット)まで、債権回収の概要や弁護士に依頼するメリットなどについてみてきました。
今回からは、債権回収に関する具体的なノウハウを解説していきたいと思います。
債権回収の流れは、「売掛金・未収金を回収するためには」で説明したとおりですが、未払いが続いている相手方から債権回収を行う際の手段として、内容証明郵便による督促は大変よく利用されます。
この内容証明郵便がどのようなものであるか、そして債権回収にどのように利用できるか、を見ていきましょう。
内容証明郵便は、郵便局が提供するサービスの1つで、書留郵便の一種です。
細かい説明は郵便局のサイトをみていただくとして、ここではおおまかな特徴を説明します。
企業、事業者にとって、郵便を送付することは極めて日常的な業務です。このような日常的な郵便は、手元に控えを残すでしょうが、そのまま発送し、おそらくは郵便局員が適切に相手方へ届けてくれているでしょう。通常の業務ではこれで問題ありません。
あるいは、貴重品や重要な文書を送る際には、簡易書留で郵便を送ることもあるかもしれません。
ところが、債権回収などの場面では、これらの郵便では不十分に終わることがあります。
なぜなら、通常の郵便では、「どういった内容の手紙を送ったか」「それがいつ届いたのか」を後から証明することができないからです。
書留であれば、配達証明によっていつ相手に配達されたかは証明できるでしょう。しかし、それがどのような内容であったかは誰も証明してくれません。
手元に控えは残りますが、あとから相手に、その控えは後から作ったでっちあげであり、自分が受け取ったものとは違っている、と言われてしまうと反論が難しくなります。
内容証明郵便は、このような「どのような内容の手紙を送り」「それがいつ到達したか」をはっきりさせたいときに使うのです。
具体的には、内容証明郵便は同じ内容の文書を3通使用します。1通は郵便局の受理印を受けて差出人の控えになり、1通は書留文書として相手方に配達されます。そしてもう1通は、郵便局が5年間保管し、その文書が差し出されたことを証明してくれるのです。
(なお、配達証明を必ずつけなければならないわけではありませんが、内容証明郵便では配達証明をつけるのが一般的ですし、つけなければその意味が半減してしまいます)
では、この内容証明郵便を、なぜ債権回収の場面で利用するのでしょうか。
その理由は、大きく3つあります。
1つ目は、法律上、その内容の文書がいつ相手に到達したかを明確にしなければならないことがあるからです。
たとえば、相手に商品を販売したのに、その代金が支払われないとします。この場合、相手に支払いの督促を行って一定期間内に支払われないときは、契約を解除して、商品を取り戻すことができます。
このような契約解除を行う際には、その督促がいつ相手に到着したかをはっきりさせなければなりません。そうしないと、いつの時点で契約解除が成立したのかがわからなくなってしまいます。
また、後から相手が文句をいってきたときに、「解除の通知なんて受け取ってない」と反論されてしまうと、内容証明郵便を使用してなければ、解除の文書を送ったことが証明できなくなります。
そんなことでもめるはずはないとか、後から証明なんてする必要ないとか思われるかもしれませんが、後で裁判に発展した場合には、内容証明郵便で適切に通知を行っておかなければ敗訴してしまいかねません。
こういった場合には、必ず内容証明郵便を利用しなければなりません。
2つ目は、後から裁判になったなどに証拠として利用するためです。
さきほどの点とも重なりますが、あとから裁判に発展した場合、相手が、「そんなことを言われていない」「○○といっていたはずだ」と、交渉経過などについて言い分が食い違う場合があります。
このような場合、交渉時に自社の言い分を明確かつ具体的に記載した内容証明を送付しておけば、自社が相手にどのような請求をしていたかや、自社がどのようなスタンスで交渉を行っていたのかを証明することができます。
ただ、注意が必要なのは、内容証明で自社に不利なことや間違ったことを記載してしまうと、あとから不利な証拠としても利用されてしまうということです。
その意味で、内容証明郵便は諸刃の剣となる場合もあります。
3つ目は、内容証明は相手に対してインパクトを与えることができるためです。
一般的に、内容証明郵便の用途としてはこの目的が一番多いといえます。
内容証明は、決まった書式で送付しなければならないため、日常的に受け取る郵便とは、その体裁や雰囲気が大きく異なります。いわば、格式ばった体裁となっており、差出人の強い意志を感じさせるといえます。
そして、文面にも強い請求の意思や法的措置の予告を盛り込むことにより、相手には通常の請求書とは異なる大きなインパクトを与えることができるのです。それによって、相手が支払いに応じる可能性が上がります。
このようなインパクトは、弁護士が差出人として送付することで効果が倍増します。弁護士からの督促は、無視したり拒否すれば裁判を起こされてしまうという危機感を相手に与えることになりますので、弁護士からの内容証明郵便には大きな効果があります。
実際、当事務所でも、弁護士が内容証明で督促をしただけで、数か月分の未払い金をすぐに回収できたこともあります。
以上が内容証明郵便の概要と、その使い道になります。
なお、注意が必要ですが、内容証明郵便は、これだけですべて解決できる、というものではありません。
交渉の入り口として用いたり、裁判を起こすための準備段階として利用することも多いのです。
ですので、内容証明を出す前に、それを送った後の対応についてもよく考えておく必要があるのです。
内容証明郵便を利用する場合には、これらの特徴に注意し、最大の効果を発揮できるように文面を作成する必要があります。 明確な証拠として残ってしまいますので、間違った内容や不適切な文面となってしまうと、かえって何もしない方がよかったということにもなりかねません。
では、どういった内容で作成すればいいのか、については次回に少し文例を取り上げたいと思います。
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【離婚】 負債がある場合の財産分与はどうすればいいの?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第19回です。
前回(財産分与を請求する方法・手続きは?)は、財産分与の請求方法について取り上げました。
今回からは財産分与の際に問題となる点を見ていきます。
今回のテーマは、負債がある場合、財産分与にどのような影響があるのか、という点です。
これには、2つの問題が含まれています。
1つ目は、”債務がある場合、財産分与の金額に影響が出るのか”という点です。
2つ目は、”財産分与をする場合、債務も引き継がなければならないのか”という点です。
ここでいう債務には住宅ローンなども含まれますので、これらの2点は、財産分与の相談の際には非常によく質問される点ですので、当事者の関心が強い部分です。
それでは、順番に解説していきます。
1点目として、”債務がある場合、財産分与の金額に影響が出るのか”という点ですが、これは、「影響が出る」というのが答えです。
ただし、その債務が、結婚生活に関連して負った債務、というのが前提ですが。
たとえば、夫が1000万円の預金があるけれども、夫婦生活のためにローンとして600万円の債務も負っていたとします。妻には財産も借金もないとします。
この場合、債務を無視して考えると、1000万円を500万円ずつ分配することになるでしょう。
そうすると、分配後は、夫は500万円の預金と600万円の債務が残り、妻は500万円の財産を受け取れるようにみえます。
しかし、夫の債務が結婚生活のために必要なものであった場合には、このような結果はあまりに夫に不利になってしまうでしょう。夫が夫婦生活と関係なく、個人的な趣味などで借金を増やした場合は別ですが、収入を得るためや、妻との生活のために借金をした場合には、分与時に債務のことも清算するのが公平だといえます。
そのため、この事例の場合には、1000万円の財産から600万円の債務をひいた400万円の部分だけが、財産分与の対象になると考えます。
したがって、400万円を200万円ずつ分けますので、妻は200万円を取得できることになります。夫は、現金が800万円残りますが、負債も600万円残りますので、負債を全部返済すれば妻と同じ200万円が手元に残る結果となります。
要するに、現在夫婦が持つ財産から、債務を差し引いた部分だけを財産分与の対象にするわけです。
これが財産分与の際の一般的な取扱いです。もちろん、債務の理由や財産状況によって多少変化することはありますが、このような処理が基本となります。
では、2つ目の問題として、”財産分与をする場合、債務も引き継がなければならないのか”という点を見てみます。
さきほどの1つ目の問題点で見たように、「財産が債務よりも多い場合」は、財産から債務をひいた残額を二人で分配することになりました。
それでは、「債務の方が財産よりも多い場合」にはどうしたらよいのでしょうか。
具体的には、たとえば夫の財産が600万円あるが、債務が1000万円ある場合を考えます。この場合、夫が手持ちの財産をすべて使って債務を返済しても、400万円の借金が残ってしまうことになります。そうすると、この400万円の借金を妻も半分負担しなければならないのでしょうか。
答えは、債務を引き継ぐ必要はない、ということになります。
今の場合、結局、夫の財産状態は赤字であり、分与するだけの財産がない、ということになってしまうため、妻は財産分与を受け取れないことになります。そのため、妻側としては納得がいかないかもしれません。
そのかわり、夫が抱えていた1000万円の債務をまったく負担する必要もないのです。
その結果、当初のまま、夫には600万円の現金と1000万円の負債がそのまま残り、妻は財産を得られないかわりに負債も負わないのです。
これが公平かどうかは悩ましいところもありますが、裁判所の考え方としてはこのような結論になります。
もっとも、実際に協議や調停を行う際には、ある程度の分配を求めることが多く、夫も多少であれば応じることが多いでしょう。しかし、審判や判決までいくと、分与が認められない可能性が高い、ということです。
今回は少し複雑なテーマでしたが、いかがでしょうか。
財産分与の際には、実際に夫婦で持っている財産だけでなく、抱えている負債も大きく影響するということを理解いただけたと思います。
財産分与時には負債が大きな意味を持ちますので、その点にも注意が必要です。
なお、今回のテーマに関連して、夫婦の一方が保証人となっている場合の処理も大きな問題となります。
それは、次回に取り上げていきたいと思います。
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【債権回収】 債権回収を弁護士に依頼するメリット・デメリット
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第2回です。
前回は、債権回収の全体像を「売掛金・未収金を回収するためには」と題して解説しました。
今回は債権回収について弁護士が果たす役割を紹介したいと思います。
債権回収は、企業や事業者にとってもっとも身近な法律問題といえます。
弁護士が企業から依頼を受ける業務の中でも、債権回収に関する依頼は相当の割合を占めます。
では、なぜ弁護士が債権回収を行うのか、そのメリットとデメリットを紹介したいと思います。
【メリット】
弁護士に依頼するメリットは、おおまかに述べると、
- 相手への強いインパクトを与えることができる
- 債権回収のための豊富な知識・手段を利用できる
- 民事保全、訴訟、強制執行などの法的手続きを行うことができる
- 債権回収、交渉にかける労力・時間を節約できる
といった点にあります。
最初の3つは、一言でまとめるなら、「弁護士に依頼すれば回収率が上がる」ということです。
順番に見ていきましょう。
Ⅰ 相手への強いインパクトを与えることができる
弁護士から督促を受けた方はいらっしゃるでしょうか。あまり経験がない企業、事業者の方がほとんどだと思います。
普段顔を合わせている当事者が直接相手に請求するよりも、法律・裁判の専門家である弁護士が請求を行う方が、相手に対するインパクトは何倍にもなるでしょう。
弁護士からの督促があれば、無視したり、支払わなければ、裁判を起こされたり、財産の差し押さえを受けるかもしれない、というプレッシャーを相手に与えることができます。
その結果、これまで何カ月も支払いを拒否していた相手が、弁護士から内容証明郵便が来ただけで、すぐに全額を支払ってきた、というケースもあるのです。当事務所でも、そのような事例を何度も経験しています。
内容証明の文面はケースバイケースですが、具体的な事情を踏まえ、もっとも効果的と思える文面を作成しています。
もちろん、電話や面談して交渉を行うこともありますが、その場合でも弁護士という肩書や弁護士が持つ知識・経験、交渉力が有効な事案は多いでしょう。
これはまさに弁護士に依頼しなければ得られないメリットです。
Ⅱ 債権回収のための豊富な知識・手段を利用できる
弁護士は、債権回収のためにさまざまな知識や、債権回収に利用できる多くの手段を持っています。
特に、当事務所は信販会社や金融機関の顧問をしてきた経験により、他の弁護士事務所に比べても豊富な知識・経験を有していると自負しています。
そのため、事案に応じてもっとも適切な方法を選択することができます。
じっくり交渉すべき事案、訴訟提起し裁判所の判断を得るべき事案、直ちに民事保全を行って最速での解決を目指すべき事案、あるいは、コストをかけずに回収をあきらめるべき事案など、事案ごとにとるべき方法は異なります。
適切な方法を選択し、迅速に実行することが、回収率を高めるにはもっとも重要です。
当事務所には蓄積された事例やノウハウもあるため、極めて迅速に回収策を実行することができます。
たとえば、民事保全には裁判所に事案を説明し、説得して許可を得る必要がありますが、これまで経験した事案では、依頼を受けた3日後には裁判所の許可を得て民事保全を実行できたものもありました(3日で実行しなければ間に合わない事案でした)。
Ⅲ 民事保全、訴訟、強制執行などの法的手続きを行うことができる
前に述べたところとも重なりますが、弁護士は債権回収のための豊富な手段を持っています。
その中で、もっとも強力なのが民事保全、訴訟、強制執行といった裁判手続き・法的手続きです。
話し合いで解決できない相手から強制的に回収を図るには、これらの法的手続きを行うしかありません。しかし、民事保全や強制執行には複数の選択肢やノウハウがあり、経験の豊富な弁護士でなければ、適切な対応は難しいといえます。
特に民事保全は、弁護士に依頼せずに適切に行うのは非常に困難です。
なお、弁護士以外に、司法書士や行政書士が債権回収の依頼を受けることがあります。弁護士よりも報酬が割安と考えて依頼する方もいるようですが、行政書士は法律上、代理人として交渉や訴訟手続きを行うことは禁止されていますし、司法書士も請求額140万円までの交渉や簡易裁判所での訴訟手続きしか代理できないことになっています。
そのため、債権回収の最後までを一括して代理できるのは弁護士のみに限られます。ですので、結果的に、弁護士に依頼する方がかえって効率的となるケースが多いのです。
Ⅳ 債権回収、交渉にかける労力・時間を節約できる
支払いを滞納している相手との話し合いや督促には、時間も労力も相当かかってしまいます。
本来、事業者や従業員の時間は、営業や販売などの本業のために使うものです。それが、支払いの督促などに時間を割かれてしまうのは非効率といえます。
また、債権回収に不慣れな方が、いろいろな知識や手続きを調べながら債権回収に取り組む労力や時間も相当なものでしょう。
そのうえ、取引先への督促や未払いの場合の心配などは精神的にも負担が大きく、頼れる専門家の援助を受けたいとの声も聞かれます。
弁護士に依頼することで、債権回収に割く労力・時間を大幅に節約することができます。弁護士は要点を抑えた処理を迅速に行いますし、相手との交渉や書類作成は弁護士が行います。それによって、ご担当者の精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。
こういったメリットは、特に債権回収案件が何件も発生している場合には大きいといえます。
【デメリット】
弁護士に依頼した場合のデメリットとしては、
- 弁護士への報酬がかかってしまう
- 取引先との関係が悪化してしまう
といった不安がよく聞かれます。
Ⅰ 弁護士への報酬がかかってしまう
弁護士が依頼をお受けする以上、一定の報酬がかかってしまうのは避けられません。
ですので、依頼に要する費用と、前述したメリットをよく比較して検討していただく必要があります。
当事務所の弁護士報酬は、弁護士費用のページでおおまかに説明していますが、最初の「金銭請求事件一般」に該当するケースが多いでしょう(民事保全を行う場合などには金額が増減することがあります)。
相手が倒産した場合など、回収が失敗するケースも現実にはありますが、その場合には、依頼時にお支払いいただく着手金と実費分の損失が生じてしまいます。
(なお、当事務所では成功報酬は実際に回収できた金額に応じていただきますので、たとえば裁判で勝訴したが回収できなかった、という場合には成功報酬はありません)
当事務所では、ご依頼を受ける前に、回収の見込みや費用の見積もりを提示していますので、それをもとにご依頼の有無を判断いただき、メリットが大きいと判断された際にご依頼いただいております。
Ⅱ 取引先との関係が悪化してしまう
弁護士が表に出て、法的手続き等を行うなどすれば、やはり相手との関係は険悪になってしまうことが多いでしょう。
もっとも、事案に応じてはそれを避けるために、あまり強い請求を行わず、円満な話し合いを求めていくこともあります。
ただ、弁護士に依頼するほどの事案では、多くの場合、相手の対応やこれまでの滞納により信頼関係が相当悪化しているのが通常です。
そのため、もはや相手との取引継続を考えていないケースが多く、この点が問題になることは多くないでしょう。
弁護士に依頼する場合のメリット・デメリットはこのようなものです。
メリット、デメリットを十分に検討いただく必要があるでしょう。
ただし、前回も述べたとおり、債権回収は時間との戦いです。どうしようかと悩んでいるうちに、相手が倒産してしまい、まったく回収できなくなってしまうということも珍しくありません。
ですので、弁護士に依頼するか判断つかない時点でも、まずは弁護士に相談してアドバイスを受けたり、今後法的措置をとるための準備を行っておくことが必要です。
ご相談を受けても依頼する必要はなく、ご相談のみで終了しても結構ですので、お気軽にご相談いただければと思います。ご相談のご予約は、お問い合わせのページをご覧ください。
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【債権回収】 売掛金・未収金を回収するためには
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第1回です。
今回から、債権回収をテーマとしてコラムを連載していきます。
債権回収は、企業や事業者にとっては必ず直面する問題です。
すべての取引をその場で現金取引で行っている場合には問題になることはありませんが、仕入れ代金や工事代金、賃料など、あとから代金を支払ってもらうという取引はごく日常的に行われています。
これらの売掛金・未収金をまとめて債権と呼び、その支払いを受けることを債権回収と呼びます。
このような企業、事業者にとってもっとも身近な法律問題である債権回収について、その方法や注意点、弁護士が行う活動などについて解説していきます。
なお、当弁護士事務所では、昔から信販会社や金融機関の顧問をしていたこともあり、債権回収は得意分野としています。
特に仮処分、仮差押えといった民事保全や、競売や差押えなどの強制執行手続きは数多く手掛けており、多くのノウハウを有しています。
このコラムは、そのような多数の債権回収案件を解決してきた経験を集約したものですので、債権管理に役立てていただけるものと思います。
では本題に入ります。
今回は、第1回目ということで、債権回収の全体像、一般的な流れを見ていきたいと思います。
詳細や具体例は次回以降に取り上げます。
Ⅰ 普段の情報収集・滞納リスクのチェック
そもそも、債権回収のもっとも基本的な考え方は、滞納しないでしっかり払ってもらうことです。
そのため、取引先の経済力、業績などを確認しておく必要はありますし、たとえ1回、1日でも支払いが遅れたり、支払いの猶予を求められた場合には、慎重に対応していく必要があります。
そのような場合、担保や保証人を求めたり、取引量を控えるなどの対応を検討しなければなりません。
最初は少しずつ支払いが遅れ、そのうちにまったく支払いがなくなってしまい、そのころには滞納額が多額に膨れ上がっている、という相談はまったく珍しくありません。
なお、後で説明する仮差押えや強制執行のためには、相手方の取引先、銀行口座、資産状況などを普段から把握しておくことが有益です。
Ⅱ 滞納時の対応
売掛金などの支払いが滞納するようになった場合、それを放置してはなりません。
突発的な事情による滞納であればよいのですが、業績悪化などにより資金繰りが厳しくなっている場合、一度滞納が始まったらそのまま滞納が解消されない状態が続くおそれがあります。
ですので、滞納が始まった場合、すぐに明確に請求の意志を伝え、いつまでに支払うかの確約を得る必要があります。
滞納額があいまいであったり、相手がはぐらかそうとする場合には、残金の確認書や支払時期の確約書などを作成してもらい、相手にこちらの強い意志を伝えることも効果的です。
Ⅲ 滞納が続く場合
それでも滞納が続いてしまう場合や金額が大きく、支払いの見込みが薄くなってきた場合には、もはやのんびりしている暇はありません。
相手がそのまま倒産してしまえば、債権をまったく回収ができなくなります。倒産した相手からの配当は、ほとんどの場合、ゼロか数パーセント程度にすぎません。
そのため、相手の倒産が決定的になる前に、一刻も早く回収を行う必要があり、これまでよりも強い対応が必要となります。
Ⅳ 弁護士からの請求・内容証明郵便
相手の滞納が長引く場合、いままでと同じように請求を行ってもほとんど効果がないでしょう。
その場合には、こちらも本気であることを示す必要があります。具体的には、弁護士から電話で請求したり、内容証明郵便で督促を行います。
弁護士からの請求というのは強いインパクトがあります。弁護士に依頼するほど本気であると相手に伝わりますし、弁護士が入った場合は、裁判などの法的措置をとられる可能性が高くなるからです。
そのため、相手が本当に倒産する直前というほど切迫していない限り、何らかの反応が来るのが通常です。
(なお、行政書士や司法書士も請求行為を行うことがありますが、相手との交渉や裁判をすることには制限がありますし、相手に与えるインパクトも弁護士よりは相当弱いのが実情です)
Ⅴ 弁護士による交渉
弁護士が相手と交渉し、相手の経済状況や滞納の理由を聴取しながら、支払いの確約をさせます。
どの程度の支払いならできるのか、支払いの見込みはどの程度かなどを確認し、できるだけ早期の支払いを実現します。
すぐに支払いできないという場合には、公正証書を作成して強制執行に備えたり、担保をとったりします。
相手の経営状態などによっては、早期に支払いを受けるかわりに、一定の減額を行うべき場合もあります。
実際には、この段階で解決する事案が多いといえます。
Ⅵ 民事保全(仮差押え・仮処分)
相手と話し合いをしても解決に至らない場合や、そもそも話し合いをしている余裕もない場合もあります。
そのような場合には、一気に法的措置をとり、強制的な回収に入ります。
相手が経済的な理由以外で、なにかしらの言い分があって支払いをしないような場合には、裁判を起こし、その中で裁判所の判断を受けて支払い義務を確定させていくのが通常です。
しかし、相手が経済的な理由のみで支払いをしない場合、のんびり裁判をやっていては相手が倒産したり、財産が空っぽになってしまう危険があります。
このような場合、正式な裁判ではなく、直ちに、簡易な手続きで裁判所の許可を得て、相手の財産を一時的に凍結してしまうという方法をとります。たとえば、相手の預金を凍結してお金を引き出せなくしたり、相手がほかの会社から受け取る予定の売掛金を凍結し、相手が受け取れない状態にしてしまうのです。
このような手続きを、民事保全とか、仮差押え・仮処分などといいます。この方法で財産を凍結して保全し、その間に正式な裁判を起こす時間を得るのです。
もっとも、資金繰りに窮している相手にとって、資産の凍結は死活問題となります。そのため、民事保全を受けた相手が、それをすぐに解除してほしいと求めてくることも少なくありません。
その場合、交換条件としてある程度の支払いを受けて債権を回収することになります。
相手が倒産してしまえば民事保全は無効になってしまうのがこの方法の最大のデメリットです。相手を倒産させるのが目的ではありませんので、ある程度譲歩して解決することも必要です。
Ⅶ 裁判・強制執行
民事保全でも解決しない場合や民事保全が適切でない事案では、裁判を起こし、裁判所から支払命令を出してもらいます。
それにしたがって相手が支払えば解決ですが、相手がそれでも支払わない場合、強制執行を行って強制的に債権を回収していきます。
強制執行は、具体的には、相手の預貯金や不動産を押さえたり、売掛金・商品などを取り上げて、債権を一方的に回収していきます。
これは債権回収の最強の方法ですが、同時に、最後の手段でもあります。この強制執行でも回収できない場合、支払いを受けることは事実上不可能となってしまいます。
あとは貸倒れ金として損金処理して損失を抑えるしかありません。
以上が債権回収のためのおおまかな手順です。
それぞれの段階において、注意点やノウハウがありますが、それについては次回以降に見ていきます。
ただ、相手が倒産してしまったらもう打つ手はありません。
そのため債権回収はスピードが勝負です。弁護士に相談に来た時点で、すでに何もできない、ということも非常に多いといえます。
ですので、少しでも危険を感じた場合には、まず弁護士に相談して対策を練っておく方がいいでしょう。
取引先からの入金が得られなかったために倒産してしまう会社もめずらしくありませんので、債権回収には十分な注意を払う必要があるのです。
当弁護士事務所では、債権回収を得意分野としており、これまでに数多くの事案を解決してきました。
債権回収についてお悩みの方は、まずはご相談ください。
ご相談のご予約は、お問い合わせのページからお願いいたします。
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【離婚】 財産分与を請求する方法・手続きは?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第18回です。
前回(離婚時の財産分与について知りたい!)は財産分与とは何か、ついて簡単に見てきました。
今回は、その財産分与を請求する方法や、請求するための手続きを見ていきたいと思います。
前回説明したとおり、財産分与は、夫婦が結婚生活中に得た財産を離婚の際に分配する、というものです。
そのため、離婚時までに蓄えた財産の少ない側が、多い側へ請求するという形になります。一般的には、妻側から夫側へ請求することがほとんどですね。
では、どうやって財産分与を請求したらいいでしょうか。
基本的には、財産分与は、離婚の際の条件の1つとして、離婚協議の際に決定することになります。
離婚する際に、親権者や養育費の問題と一緒に、お互いの財産や住宅をどうするかを話し合い、話がまとまればそれにしたがって財産分与を行います。
協議ではなく、離婚調停を行う際にも、調停の中で財産分与について協議を行うことが通常です。
話し合いや調停で決める場合には、お互いが納得できる形であればどのような解決をしても構いません。
普通は、厳密にお互いの財産を半分に分ける、というやり方ではなく、ある程度ざっくりした形で、合計500万円を支払うとか、住宅は夫が取得し、預貯金は妻がもらうとか、分配しやすい方法で分ける例が多いといえます。
そのような話し合いや調停でまとまらない場合には、離婚訴訟や財産分与の審判の中で、裁判所が適切な財産分与方法について判断を下すことになります。
その判断には強制力がありますので、当事者はそれにしたがわなければならない、ということになります。
では、一度離婚してしまったあとは、財産分与の請求はもうできなくなってしまうのでしょうか。
結論からいえば、離婚が成立したあとでも、財産分与の請求をすることは問題ありません。ただし、期間が制限されており、離婚成立後、2年以内に解決するか、2年以内に調停を起こさなければなりません。
離婚後、3年たってしまった場合や、話し合いを続けて解決しないうちに2年を超えてしまったときは、もうその後の請求は認められません。
ただ、2年以内は請求できるとはいえ、一度離婚して時間が経ってしまうと、相手の生活状況や財産状況も大きく変化していってしまいます。そうすると、当初はあったはずの財産がなくなってしまったり、どこにあるかわからないという事態が生じやすくなりますので、時間が経過するにつれて財産分与の請求も難しくなります。
ですので、可能な限り、離婚時に決めておくか、離婚成立後の早い段階で解決することが必要です。
このように、財産分与は離婚時か、離婚後2年以内に請求を行う必要があります。また、基本的には協議で決定しますが、解決しない場合には調停や訴訟・審判で決定することになります。
もっとも、一度合意が済んでも、その後にいろいろな手続きが出てくることがあります。
たとえば、不動産について取り決めた後は、不動産の登記名義を変更しておかなければなりません。そうしないと、将来権利関係でトラブルが起きたり、固定資産税の責任を負う可能性があります。自動車についても同様です。
また、生命保険の受取人・解約金などについても変更が出ることが多いでしょう。
財産分与時の金銭の支払いを、分割払いなどで取り決めた場合には、その後にしっかりとお金が払われるのかを確認し、払われない場合には財産差し押さえなどの方法をとる必要も出てきます。
財産分与の場合には、合意が成立したあとの諸手続きも確実に行っておく必要がありますので、その手続きについても事前に取り決めておくべきでしょう。
以上が財産分与の請求の流れになります。
なお、財産分与は、離婚時に問題となる事柄の中でも、もっとも複雑といえます。相手の財産を把握することが難しいことや、財産の種類ごとに金額の評価や分配の方法が異なること、実際に合意したあとに約束通り分配されないケースも少なくないこと、分配に関する諸手続きが複雑な場合もあることなど、多くの関連する問題点があるからです。
そのため、ある程度まとまった金額の分与を請求する場合には、当人同士の話し合いではこじれてしまうことが多く、調停を行おうにも、手続きや流れがよくわからないまま進んでしまうことが少なくありません。
これまでのご相談者の中には、財産分与の調停を起こしたがよくわからないまま終わってしまい後悔している、という方もいらっしゃいました。
離婚には、これまでのコラムでも見てきたような多くの問題がありますが、特に財産分与は本人のみで解決するのは難しいといえます。
当弁護士事務所では、財産分与が生じる離婚事件も数多く経験しており、財産が多かったり、相手が事業者であるなどの複雑な事案にも対応することができます。もちろん、財産分与を請求されている方からのご依頼も対応しています。
財産分与問題でお悩みの方は、まずはご相談ください。お問い合わせは、こちらの法律相談の ご予約・お問い合わせのページからお願いいたします。
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