【債権回収】 内容証明郵便の送り方・具体例
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第4回です。
前回(内容証明郵便の特徴・使い方)では、内容証明郵便の特徴や使い道について解説しました。
今回は、具体的にどういった内容の文面を作成するかを具体例・見本も挙げて説明したいと思います。
内容証明郵便は、1行の文字数や1ページあたりの行数、使える文字・使えない文字がすべて定められており、その書式に従う必要があります。
書式に従っていないと、訂正を求められたり、差出ができないことがあります。
書店などに内容証明用の原稿用紙も販売されていますので、そういったものを使う方が確実かもしれません。
また、内容証明郵便は、郵便局に持参して発送する必要があり、ポストでは差出ができません。パソコンから送れる電子内容証明もありますが、事前の登録が必要であり、定期的に利用する方以外には向いていないでしょう。
そのため、慣れていないと意外に手間がかかってしまうかもしれません。
そういった書式上の注意点などは、郵便局のサイトをご覧ください。
では、本題に入ります。まず、1つ具体例を挙げましょう。
滞納している家賃を払ってもらう場合の文例です。
札幌市中央区○○○○
借主 太郎 殿
平成24年11月1日
札幌市豊平区○○○○
貸主 花子 印
通知書
私は、貴殿に対し、平成23年9月1日以来、毎月の賃料を月6万円と定めて、札幌市中央区○○○○の建物を賃貸しております。しかしながら、貴殿は、平成24年7月以降、一切の賃料を支払っておらず、同月から平成24年10月までの賃料合計24万円の支払いを滞納しております。
つきましては、上記24万円の支払いを請求しますので、本書面到達後、7日以内に全額をお支払下さい。
万一、上記期間内に支払いがないときは、本書面をもって賃貸借契約を解除し、直ちに、札幌地方裁判所へ建物の明け渡し及び賃料の支払いを求める訴訟を提起いたしますので、ご了承ください。
実際には建物の特定や契約内容をもう少し詳細に書くこともありますが、この程度でも十分でしょう。
このような文例で必ず盛り込むのは、
- 支払いを求める金額を明確に記載すること(合計24万円)
- 支払いを求める根拠を明確にすること(いつからいつまでの滞納賃料)
- 支払い期限の明示(到達後7日以内)
- 解除の予告(支払いがないときは、契約を解除する)
- 訴訟の予告
といった点です。
当然のことですが、相手に何を求めているのかをはっきりさせなければなりません。そのため、どういった契約に基づいて、いくらの金額を支払うよう要求しているのかを明確にする必要があります。
さらに、返答や支払いの期限を決めなければ、相手はどうしていいかわからないまま先延ばしにし、いつまでの連絡が来ないことがあります。
そのため、支払期限を区切ることが不可欠です。この期限は、1~2週間程度を設定するのが通常です。
また、賃貸借契約や売買契約を解除する場合には、必ず、解除の予告と解除時期を盛り込む必要があります。これを入れておかなければ、契約解除は認められませんので注意が必要です。
そして、最後に、この請求に応じなければ法的措置をとる、という強い意志を示すのです。これを入れることで、相手が文書を無視する可能性は相当低くなりますし、支払いに応じる可能性を上げることができるのです。
なお、訴訟提起の予告が口だけではなく本気である、と相手に信じさせるために、この文例では「札幌地方裁判所」といった具体的な裁判所名を入れています。単に法的措置をとる、というよりも具体性があり、説得力があるからです。
もう1つ、売掛金の請求書例を取り上げます。なお、差出人・受取人はさきほどと同じですので、省略します。
請求書
当社は、貴社に対し、平成24年6月1日付売買契約に基づき、支払日を同年8月末日と定めて、資材一式を金300万円で売り渡しました。
しかしながら、貴社は、そのうち100万円を支払ったのみで、残金200万円の支払いを怠っております。当社も再三、請求を行って参りましたが、貴社からは誠意ある対応をいただけておりません。
つきましては、上記200万円の支払いを改めてご請求いたしますので、本書面到達後、10日以内に下記預金口座に全額をお支払ください(口座省略)。
もし上記期間内に全額のお支払いがなく、何らの誠意ある対応もいただけないときは、誠に遺憾ではございますが、札幌地方裁判所に対し、売掛金請求訴訟を提起せざるを得ません。その際には、上記200万円のみならず、支払期日以降に発生した遅延損害金及び訴訟費用についても貴社にご負担いただくことになりますので、ご承知おき下さい。
基本は、さきほどの賃料の際と同様です。
売買契約による残金を請求していますので、その内容を明らかにしています。
今回の文例では契約解除を求めても意味がないため、解除の予告は盛り込んでいません。
前の文例と違う点としては、最後の訴訟予告の部分で、裁判になった際には遅延損害金や訴訟費用も支払ってもらうと警告しているところです。
契約で定めた支払日を過ぎた場合には、契約書で遅延利率を決めていればその利率で、そうでなければ、会社間の取引では年6%の遅延金が生じることになっています。
また、裁判を提起し、全面的に勝訴した場合などには、裁判を起こす際に裁判所に収める印紙代などの訴訟費用の支払いを相手に求めることができます(なお、弁護士費用の請求は原則としてできません)。
こういった、支払いがない場合に負担が増えることを警告することで、相手がそれを避けるために早期に支払う可能性が上がるといえます。
2つほど例を挙げて説明しましたが、いかがでしょうか。
内容証明にはおおよその書式例があり、今回の文例などを踏まえて、弁護士に依頼せずにすませることも可能です。
ただし、2つの文例にも異なる点があるように、事案によって、または相手によって、どういった文面が適切かは異なってきます。
また、金額のミスや解除予告の不備などがあると、せっかくの内容証明が無駄になったり、かえって不利な結果をもたらすこともあります。
ですので、効果のある内容証明を作成するのはそれほど簡単ではないのです。
当事務所の弁護士が内容証明を送付する場合、これまでの経験を踏まえて、もっとも効果の高いと考えられる文面を選択しています。
しかも、当事者の名前ではなく、弁護士の名前で督促を行うことで、相手に与えるインパクトはまったく違うものになるでしょう。
また、内容証明郵便を出す際には、その後の対応についても検討しておく必要があります。たとえば、「支払いがないときは訴訟を起こします」と通知をしても、相手がそれを無視してきたとき、どうしたらいいでしょうか。
たとえば当事務所では、内容証明を出す時点で、無視されたら訴訟を起こすべきであるとか、民事保全を行うべきであるとか、あるいはそのまま諦めて損失を抑えるべき事案であるとか、あらかじめ戦略を考えておきます。
実際、内容証明をただ出すだけで解決する事案は多くなく、その後に交渉をしたり、担保の提供を受けたり、訴訟を起こしたりなど、さまざまな対応が必要になってきます。
ですので、結果として、最初から弁護士に依頼した方が効率がよく、債権の回収率も高くなるのです。
そのため、内容証明による督促を行う際には、自社で行うべきか、弁護士に依頼すべきかも検討することをお勧めします。
なお、お悩みの際には、弁護士の法律相談だけを利用することもできます。
ご相談された場合には依頼せず、そのまま相談のみで終了していただいても構いませんし、相談のみでお悩みが解決することも少なくありません。
その場合、5250円の相談料のみで、それ以上の費用がかかることはありません。
相談を利用されたい方は、お問い合わせのページをご覧のうえ、相談のご予約をお願いいたします。
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【債権回収】 内容証明郵便の特徴・使い方
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第3回です。
前回(債権回収を弁護士に依頼するメリット・デメリット)まで、債権回収の概要や弁護士に依頼するメリットなどについてみてきました。
今回からは、債権回収に関する具体的なノウハウを解説していきたいと思います。
債権回収の流れは、「売掛金・未収金を回収するためには」で説明したとおりですが、未払いが続いている相手方から債権回収を行う際の手段として、内容証明郵便による督促は大変よく利用されます。
この内容証明郵便がどのようなものであるか、そして債権回収にどのように利用できるか、を見ていきましょう。
内容証明郵便は、郵便局が提供するサービスの1つで、書留郵便の一種です。
細かい説明は郵便局のサイトをみていただくとして、ここではおおまかな特徴を説明します。
企業、事業者にとって、郵便を送付することは極めて日常的な業務です。このような日常的な郵便は、手元に控えを残すでしょうが、そのまま発送し、おそらくは郵便局員が適切に相手方へ届けてくれているでしょう。通常の業務ではこれで問題ありません。
あるいは、貴重品や重要な文書を送る際には、簡易書留で郵便を送ることもあるかもしれません。
ところが、債権回収などの場面では、これらの郵便では不十分に終わることがあります。
なぜなら、通常の郵便では、「どういった内容の手紙を送ったか」「それがいつ届いたのか」を後から証明することができないからです。
書留であれば、配達証明によっていつ相手に配達されたかは証明できるでしょう。しかし、それがどのような内容であったかは誰も証明してくれません。
手元に控えは残りますが、あとから相手に、その控えは後から作ったでっちあげであり、自分が受け取ったものとは違っている、と言われてしまうと反論が難しくなります。
内容証明郵便は、このような「どのような内容の手紙を送り」「それがいつ到達したか」をはっきりさせたいときに使うのです。
具体的には、内容証明郵便は同じ内容の文書を3通使用します。1通は郵便局の受理印を受けて差出人の控えになり、1通は書留文書として相手方に配達されます。そしてもう1通は、郵便局が5年間保管し、その文書が差し出されたことを証明してくれるのです。
(なお、配達証明を必ずつけなければならないわけではありませんが、内容証明郵便では配達証明をつけるのが一般的ですし、つけなければその意味が半減してしまいます)
では、この内容証明郵便を、なぜ債権回収の場面で利用するのでしょうか。
その理由は、大きく3つあります。
1つ目は、法律上、その内容の文書がいつ相手に到達したかを明確にしなければならないことがあるからです。
たとえば、相手に商品を販売したのに、その代金が支払われないとします。この場合、相手に支払いの督促を行って一定期間内に支払われないときは、契約を解除して、商品を取り戻すことができます。
このような契約解除を行う際には、その督促がいつ相手に到着したかをはっきりさせなければなりません。そうしないと、いつの時点で契約解除が成立したのかがわからなくなってしまいます。
また、後から相手が文句をいってきたときに、「解除の通知なんて受け取ってない」と反論されてしまうと、内容証明郵便を使用してなければ、解除の文書を送ったことが証明できなくなります。
そんなことでもめるはずはないとか、後から証明なんてする必要ないとか思われるかもしれませんが、後で裁判に発展した場合には、内容証明郵便で適切に通知を行っておかなければ敗訴してしまいかねません。
こういった場合には、必ず内容証明郵便を利用しなければなりません。
2つ目は、後から裁判になったなどに証拠として利用するためです。
さきほどの点とも重なりますが、あとから裁判に発展した場合、相手が、「そんなことを言われていない」「○○といっていたはずだ」と、交渉経過などについて言い分が食い違う場合があります。
このような場合、交渉時に自社の言い分を明確かつ具体的に記載した内容証明を送付しておけば、自社が相手にどのような請求をしていたかや、自社がどのようなスタンスで交渉を行っていたのかを証明することができます。
ただ、注意が必要なのは、内容証明で自社に不利なことや間違ったことを記載してしまうと、あとから不利な証拠としても利用されてしまうということです。
その意味で、内容証明郵便は諸刃の剣となる場合もあります。
3つ目は、内容証明は相手に対してインパクトを与えることができるためです。
一般的に、内容証明郵便の用途としてはこの目的が一番多いといえます。
内容証明は、決まった書式で送付しなければならないため、日常的に受け取る郵便とは、その体裁や雰囲気が大きく異なります。いわば、格式ばった体裁となっており、差出人の強い意志を感じさせるといえます。
そして、文面にも強い請求の意思や法的措置の予告を盛り込むことにより、相手には通常の請求書とは異なる大きなインパクトを与えることができるのです。それによって、相手が支払いに応じる可能性が上がります。
このようなインパクトは、弁護士が差出人として送付することで効果が倍増します。弁護士からの督促は、無視したり拒否すれば裁判を起こされてしまうという危機感を相手に与えることになりますので、弁護士からの内容証明郵便には大きな効果があります。
実際、当事務所でも、弁護士が内容証明で督促をしただけで、数か月分の未払い金をすぐに回収できたこともあります。
以上が内容証明郵便の概要と、その使い道になります。
なお、注意が必要ですが、内容証明郵便は、これだけですべて解決できる、というものではありません。
交渉の入り口として用いたり、裁判を起こすための準備段階として利用することも多いのです。
ですので、内容証明を出す前に、それを送った後の対応についてもよく考えておく必要があるのです。
内容証明郵便を利用する場合には、これらの特徴に注意し、最大の効果を発揮できるように文面を作成する必要があります。 明確な証拠として残ってしまいますので、間違った内容や不適切な文面となってしまうと、かえって何もしない方がよかったということにもなりかねません。
では、どういった内容で作成すればいいのか、については次回に少し文例を取り上げたいと思います。
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【債権回収】 債権回収を弁護士に依頼するメリット・デメリット
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第2回です。
前回は、債権回収の全体像を「売掛金・未収金を回収するためには」と題して解説しました。
今回は債権回収について弁護士が果たす役割を紹介したいと思います。
債権回収は、企業や事業者にとってもっとも身近な法律問題といえます。
弁護士が企業から依頼を受ける業務の中でも、債権回収に関する依頼は相当の割合を占めます。
では、なぜ弁護士が債権回収を行うのか、そのメリットとデメリットを紹介したいと思います。
【メリット】
弁護士に依頼するメリットは、おおまかに述べると、
- 相手への強いインパクトを与えることができる
- 債権回収のための豊富な知識・手段を利用できる
- 民事保全、訴訟、強制執行などの法的手続きを行うことができる
- 債権回収、交渉にかける労力・時間を節約できる
といった点にあります。
最初の3つは、一言でまとめるなら、「弁護士に依頼すれば回収率が上がる」ということです。
順番に見ていきましょう。
Ⅰ 相手への強いインパクトを与えることができる
弁護士から督促を受けた方はいらっしゃるでしょうか。あまり経験がない企業、事業者の方がほとんどだと思います。
普段顔を合わせている当事者が直接相手に請求するよりも、法律・裁判の専門家である弁護士が請求を行う方が、相手に対するインパクトは何倍にもなるでしょう。
弁護士からの督促があれば、無視したり、支払わなければ、裁判を起こされたり、財産の差し押さえを受けるかもしれない、というプレッシャーを相手に与えることができます。
その結果、これまで何カ月も支払いを拒否していた相手が、弁護士から内容証明郵便が来ただけで、すぐに全額を支払ってきた、というケースもあるのです。当事務所でも、そのような事例を何度も経験しています。
内容証明の文面はケースバイケースですが、具体的な事情を踏まえ、もっとも効果的と思える文面を作成しています。
もちろん、電話や面談して交渉を行うこともありますが、その場合でも弁護士という肩書や弁護士が持つ知識・経験、交渉力が有効な事案は多いでしょう。
これはまさに弁護士に依頼しなければ得られないメリットです。
Ⅱ 債権回収のための豊富な知識・手段を利用できる
弁護士は、債権回収のためにさまざまな知識や、債権回収に利用できる多くの手段を持っています。
特に、当事務所は信販会社や金融機関の顧問をしてきた経験により、他の弁護士事務所に比べても豊富な知識・経験を有していると自負しています。
そのため、事案に応じてもっとも適切な方法を選択することができます。
じっくり交渉すべき事案、訴訟提起し裁判所の判断を得るべき事案、直ちに民事保全を行って最速での解決を目指すべき事案、あるいは、コストをかけずに回収をあきらめるべき事案など、事案ごとにとるべき方法は異なります。
適切な方法を選択し、迅速に実行することが、回収率を高めるにはもっとも重要です。
当事務所には蓄積された事例やノウハウもあるため、極めて迅速に回収策を実行することができます。
たとえば、民事保全には裁判所に事案を説明し、説得して許可を得る必要がありますが、これまで経験した事案では、依頼を受けた3日後には裁判所の許可を得て民事保全を実行できたものもありました(3日で実行しなければ間に合わない事案でした)。
Ⅲ 民事保全、訴訟、強制執行などの法的手続きを行うことができる
前に述べたところとも重なりますが、弁護士は債権回収のための豊富な手段を持っています。
その中で、もっとも強力なのが民事保全、訴訟、強制執行といった裁判手続き・法的手続きです。
話し合いで解決できない相手から強制的に回収を図るには、これらの法的手続きを行うしかありません。しかし、民事保全や強制執行には複数の選択肢やノウハウがあり、経験の豊富な弁護士でなければ、適切な対応は難しいといえます。
特に民事保全は、弁護士に依頼せずに適切に行うのは非常に困難です。
なお、弁護士以外に、司法書士や行政書士が債権回収の依頼を受けることがあります。弁護士よりも報酬が割安と考えて依頼する方もいるようですが、行政書士は法律上、代理人として交渉や訴訟手続きを行うことは禁止されていますし、司法書士も請求額140万円までの交渉や簡易裁判所での訴訟手続きしか代理できないことになっています。
そのため、債権回収の最後までを一括して代理できるのは弁護士のみに限られます。ですので、結果的に、弁護士に依頼する方がかえって効率的となるケースが多いのです。
Ⅳ 債権回収、交渉にかける労力・時間を節約できる
支払いを滞納している相手との話し合いや督促には、時間も労力も相当かかってしまいます。
本来、事業者や従業員の時間は、営業や販売などの本業のために使うものです。それが、支払いの督促などに時間を割かれてしまうのは非効率といえます。
また、債権回収に不慣れな方が、いろいろな知識や手続きを調べながら債権回収に取り組む労力や時間も相当なものでしょう。
そのうえ、取引先への督促や未払いの場合の心配などは精神的にも負担が大きく、頼れる専門家の援助を受けたいとの声も聞かれます。
弁護士に依頼することで、債権回収に割く労力・時間を大幅に節約することができます。弁護士は要点を抑えた処理を迅速に行いますし、相手との交渉や書類作成は弁護士が行います。それによって、ご担当者の精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。
こういったメリットは、特に債権回収案件が何件も発生している場合には大きいといえます。
【デメリット】
弁護士に依頼した場合のデメリットとしては、
- 弁護士への報酬がかかってしまう
- 取引先との関係が悪化してしまう
といった不安がよく聞かれます。
Ⅰ 弁護士への報酬がかかってしまう
弁護士が依頼をお受けする以上、一定の報酬がかかってしまうのは避けられません。
ですので、依頼に要する費用と、前述したメリットをよく比較して検討していただく必要があります。
当事務所の弁護士報酬は、弁護士費用のページでおおまかに説明していますが、最初の「金銭請求事件一般」に該当するケースが多いでしょう(民事保全を行う場合などには金額が増減することがあります)。
相手が倒産した場合など、回収が失敗するケースも現実にはありますが、その場合には、依頼時にお支払いいただく着手金と実費分の損失が生じてしまいます。
(なお、当事務所では成功報酬は実際に回収できた金額に応じていただきますので、たとえば裁判で勝訴したが回収できなかった、という場合には成功報酬はありません)
当事務所では、ご依頼を受ける前に、回収の見込みや費用の見積もりを提示していますので、それをもとにご依頼の有無を判断いただき、メリットが大きいと判断された際にご依頼いただいております。
Ⅱ 取引先との関係が悪化してしまう
弁護士が表に出て、法的手続き等を行うなどすれば、やはり相手との関係は険悪になってしまうことが多いでしょう。
もっとも、事案に応じてはそれを避けるために、あまり強い請求を行わず、円満な話し合いを求めていくこともあります。
ただ、弁護士に依頼するほどの事案では、多くの場合、相手の対応やこれまでの滞納により信頼関係が相当悪化しているのが通常です。
そのため、もはや相手との取引継続を考えていないケースが多く、この点が問題になることは多くないでしょう。
弁護士に依頼する場合のメリット・デメリットはこのようなものです。
メリット、デメリットを十分に検討いただく必要があるでしょう。
ただし、前回も述べたとおり、債権回収は時間との戦いです。どうしようかと悩んでいるうちに、相手が倒産してしまい、まったく回収できなくなってしまうということも珍しくありません。
ですので、弁護士に依頼するか判断つかない時点でも、まずは弁護士に相談してアドバイスを受けたり、今後法的措置をとるための準備を行っておくことが必要です。
ご相談を受けても依頼する必要はなく、ご相談のみで終了しても結構ですので、お気軽にご相談いただければと思います。ご相談のご予約は、お問い合わせのページをご覧ください。
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【債権回収】 売掛金・未収金を回収するためには
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第1回です。
今回から、債権回収をテーマとしてコラムを連載していきます。
債権回収は、企業や事業者にとっては必ず直面する問題です。
すべての取引をその場で現金取引で行っている場合には問題になることはありませんが、仕入れ代金や工事代金、賃料など、あとから代金を支払ってもらうという取引はごく日常的に行われています。
これらの売掛金・未収金をまとめて債権と呼び、その支払いを受けることを債権回収と呼びます。
このような企業、事業者にとってもっとも身近な法律問題である債権回収について、その方法や注意点、弁護士が行う活動などについて解説していきます。
なお、当弁護士事務所では、昔から信販会社や金融機関の顧問をしていたこともあり、債権回収は得意分野としています。
特に仮処分、仮差押えといった民事保全や、競売や差押えなどの強制執行手続きは数多く手掛けており、多くのノウハウを有しています。
このコラムは、そのような多数の債権回収案件を解決してきた経験を集約したものですので、債権管理に役立てていただけるものと思います。
では本題に入ります。
今回は、第1回目ということで、債権回収の全体像、一般的な流れを見ていきたいと思います。
詳細や具体例は次回以降に取り上げます。
Ⅰ 普段の情報収集・滞納リスクのチェック
そもそも、債権回収のもっとも基本的な考え方は、滞納しないでしっかり払ってもらうことです。
そのため、取引先の経済力、業績などを確認しておく必要はありますし、たとえ1回、1日でも支払いが遅れたり、支払いの猶予を求められた場合には、慎重に対応していく必要があります。
そのような場合、担保や保証人を求めたり、取引量を控えるなどの対応を検討しなければなりません。
最初は少しずつ支払いが遅れ、そのうちにまったく支払いがなくなってしまい、そのころには滞納額が多額に膨れ上がっている、という相談はまったく珍しくありません。
なお、後で説明する仮差押えや強制執行のためには、相手方の取引先、銀行口座、資産状況などを普段から把握しておくことが有益です。
Ⅱ 滞納時の対応
売掛金などの支払いが滞納するようになった場合、それを放置してはなりません。
突発的な事情による滞納であればよいのですが、業績悪化などにより資金繰りが厳しくなっている場合、一度滞納が始まったらそのまま滞納が解消されない状態が続くおそれがあります。
ですので、滞納が始まった場合、すぐに明確に請求の意志を伝え、いつまでに支払うかの確約を得る必要があります。
滞納額があいまいであったり、相手がはぐらかそうとする場合には、残金の確認書や支払時期の確約書などを作成してもらい、相手にこちらの強い意志を伝えることも効果的です。
Ⅲ 滞納が続く場合
それでも滞納が続いてしまう場合や金額が大きく、支払いの見込みが薄くなってきた場合には、もはやのんびりしている暇はありません。
相手がそのまま倒産してしまえば、債権をまったく回収ができなくなります。倒産した相手からの配当は、ほとんどの場合、ゼロか数パーセント程度にすぎません。
そのため、相手の倒産が決定的になる前に、一刻も早く回収を行う必要があり、これまでよりも強い対応が必要となります。
Ⅳ 弁護士からの請求・内容証明郵便
相手の滞納が長引く場合、いままでと同じように請求を行ってもほとんど効果がないでしょう。
その場合には、こちらも本気であることを示す必要があります。具体的には、弁護士から電話で請求したり、内容証明郵便で督促を行います。
弁護士からの請求というのは強いインパクトがあります。弁護士に依頼するほど本気であると相手に伝わりますし、弁護士が入った場合は、裁判などの法的措置をとられる可能性が高くなるからです。
そのため、相手が本当に倒産する直前というほど切迫していない限り、何らかの反応が来るのが通常です。
(なお、行政書士や司法書士も請求行為を行うことがありますが、相手との交渉や裁判をすることには制限がありますし、相手に与えるインパクトも弁護士よりは相当弱いのが実情です)
Ⅴ 弁護士による交渉
弁護士が相手と交渉し、相手の経済状況や滞納の理由を聴取しながら、支払いの確約をさせます。
どの程度の支払いならできるのか、支払いの見込みはどの程度かなどを確認し、できるだけ早期の支払いを実現します。
すぐに支払いできないという場合には、公正証書を作成して強制執行に備えたり、担保をとったりします。
相手の経営状態などによっては、早期に支払いを受けるかわりに、一定の減額を行うべき場合もあります。
実際には、この段階で解決する事案が多いといえます。
Ⅵ 民事保全(仮差押え・仮処分)
相手と話し合いをしても解決に至らない場合や、そもそも話し合いをしている余裕もない場合もあります。
そのような場合には、一気に法的措置をとり、強制的な回収に入ります。
相手が経済的な理由以外で、なにかしらの言い分があって支払いをしないような場合には、裁判を起こし、その中で裁判所の判断を受けて支払い義務を確定させていくのが通常です。
しかし、相手が経済的な理由のみで支払いをしない場合、のんびり裁判をやっていては相手が倒産したり、財産が空っぽになってしまう危険があります。
このような場合、正式な裁判ではなく、直ちに、簡易な手続きで裁判所の許可を得て、相手の財産を一時的に凍結してしまうという方法をとります。たとえば、相手の預金を凍結してお金を引き出せなくしたり、相手がほかの会社から受け取る予定の売掛金を凍結し、相手が受け取れない状態にしてしまうのです。
このような手続きを、民事保全とか、仮差押え・仮処分などといいます。この方法で財産を凍結して保全し、その間に正式な裁判を起こす時間を得るのです。
もっとも、資金繰りに窮している相手にとって、資産の凍結は死活問題となります。そのため、民事保全を受けた相手が、それをすぐに解除してほしいと求めてくることも少なくありません。
その場合、交換条件としてある程度の支払いを受けて債権を回収することになります。
相手が倒産してしまえば民事保全は無効になってしまうのがこの方法の最大のデメリットです。相手を倒産させるのが目的ではありませんので、ある程度譲歩して解決することも必要です。
Ⅶ 裁判・強制執行
民事保全でも解決しない場合や民事保全が適切でない事案では、裁判を起こし、裁判所から支払命令を出してもらいます。
それにしたがって相手が支払えば解決ですが、相手がそれでも支払わない場合、強制執行を行って強制的に債権を回収していきます。
強制執行は、具体的には、相手の預貯金や不動産を押さえたり、売掛金・商品などを取り上げて、債権を一方的に回収していきます。
これは債権回収の最強の方法ですが、同時に、最後の手段でもあります。この強制執行でも回収できない場合、支払いを受けることは事実上不可能となってしまいます。
あとは貸倒れ金として損金処理して損失を抑えるしかありません。
以上が債権回収のためのおおまかな手順です。
それぞれの段階において、注意点やノウハウがありますが、それについては次回以降に見ていきます。
ただ、相手が倒産してしまったらもう打つ手はありません。
そのため債権回収はスピードが勝負です。弁護士に相談に来た時点で、すでに何もできない、ということも非常に多いといえます。
ですので、少しでも危険を感じた場合には、まず弁護士に相談して対策を練っておく方がいいでしょう。
取引先からの入金が得られなかったために倒産してしまう会社もめずらしくありませんので、債権回収には十分な注意を払う必要があるのです。
当弁護士事務所では、債権回収を得意分野としており、これまでに数多くの事案を解決してきました。
債権回収についてお悩みの方は、まずはご相談ください。
ご相談のご予約は、お問い合わせのページからお願いいたします。
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【解決事例】 早期に仮差押えを行い、1200万円の売掛金を回収できた事例
【相談内容】
札幌市内で建築業を営むC社は、元請のY社から注文を受けて、建物の改築などの工事を行いました。
当初の取り決めでは、必要な資材はY社が手配することになっており、工事代金は工事完了時に受け取ることになっていました。
ところが、工事の途中で、Y社は、資材を買う資金は後で返すから、C社で立て替えてほしいと言い出しました。
C社は、工事が進まないのも困るため、やむを得ず自ら資材を購入し、工事を継続しました。
工事が完了し、Y社に資材の購入代金200万円と工事代金1000万円を請求しましたが、Y社は、月末まで待ってくれというのみで、支払いをしてくれません。
結局、2ケ月経っても支払いを受けられず、そのうち、Y社は連絡に応じない状態になりました。
C社は、工事代金も受け取れず、資材の購入代金も負担させられてしまいました。C社への打撃は大きく、このまま泣き寝入りするわけにもいきません。
そこで、どうにかならないかと思い、弁護士に相談に来ました。
【解決方法】
相談を受けた秋山弁護士は、相談に来たC社に、Y社の財産状況を詳しく聞きました。すると、あと10日ほど後に、Y社は大手の取引先から2000万円程度の入金があるということがわかりました。
しかし、Y社の社長は、その代金は給料や別の取引先などの支払いに充てるからC社に払う余裕はないと言っていたとのことでした。
このような状態では、10日後にY社が2000万円程度の入金を受けてしまうと、それを他の支払いに充てるなどし、C社が回収できなくなってしまう可能性が大きいでしょう。
そうすると、弁護士がY社に督促を行ったり、裁判を行ったりしても、結果が出るころにはY社にはお金がまったく残っておらず、1円の回収もできなくなるかもしれません。
そこで、秋山弁護士はその2000万円が支払われる前に、その代金を「仮差押え」することにしました。
「仮差押え」とは、正式な裁判を起こしている余裕がないほどの緊急性がある場合に、臨時の手段として、裁判所の許可を得て、相手の財産を「動かせない」状態にしておく手続きです。
今回の場合には、2000万円を支払う大手の取引先に対し、裁判所から、Y社への支払いを一時的に禁止する命令を出してもらうのです。
しかし、仮差押えがされる前に代金が支払われてしまえば効果がないため、遅くとも1週間以内には裁判所に仮差押えを認めてもらわなければなりません。
秋山弁護士は、C社とY社の取引内容や、資材の購入代金を証明する証拠を用意してもらいました。
また、Y社の取引先会社の名前や、その2000万円が何の代金であるかも聞き取るなどの準備を進めました。
C社は証拠も保管し、Y社の取引先のことなども詳しく知っていたため、準備は順調に進みました。
仮差押えの効果は絶大である反面、裁判所の許可をスムーズに得るためには、ポイントを押さえた申立書と的確な証拠が不可欠なのです。
秋山弁護士はそれらの証拠や情報をもとに、C社が相談に来た2日後には申立書を仕上げ、札幌地方裁判所へ提出しました。
その結果、裁判所から1,2点の確認があったのみで、それ以外に問題はなく、申立書を提出した翌日には仮差押えを認める決定を得ることができました。
なお、仮差押えは、緊急の手段であるため、一定額の保証金を担保として用意しなければなりません。C社の場合も、1200万円分の支払いのために仮差押えしましたので、250万円程度の保証金を用意を命じられ、すぐにそれを納めました(問題がなければ後で返ってくるお金です)。
これらを迅速に進めた結果、Y社への支払いがなされる前に仮差押え手続きが完了し、Y社への取引先からの入金を差し止めることに成功しました。
そして、すぐにY社に対して正式な裁判を起こそうとしたところ、仮差押えを受けたことに驚いたY社が秋山弁護士に連絡してきました。
Y社の社長は、すぐに1000万円を支払い、残りの200万円も1か月以内に支払うので、仮差押えを取り下げてほしいと頼んできました。どうやら、仮差押えを受けたことを取引先の会社から強く叱責されたようでした。
秋山弁護士は、C社と協議した結果、Y社の要望に応じることとしました。そして、仮差押えをした代金から1000万円分をC社が受け取るのと引き換えに仮差押えを取り下げ、無事にC社は1000万円を回収できました。
また、約束通り、1か月後には残りの200万円も支払われました。
非常にあわただしい10日間でしたが、C社は短期間で全額の代金を回収することができ、大変満足いただけたようでした。
【コメント】
債権回収については債権回収のページでも説明していますが、今回の事案のように、スピードが重視されることが多いです。
C社の場合も、手続きがあと1週間遅ければ、まったく代金を受け取れなかったかもしれません。
当事務所で扱った事例では、ご相談にいらっしゃるのが遅かったため、わずか半日の差で仮差押えが無効となったケースもあります。
当事務所では債権回収や仮差押え手続きは数多く手掛けており、緊急性のある事案では、最短時間での処理を行っています。それでも、裁判所の審査等の時間もありますので、どんなに急いでも手続きが完了するまで3,4日はかかってしまいます(しかも、土日は裁判所がストップしますので、手続きが進みません)。
相手が代金を支払ってくれないという債権回収のケースでは、少しでも早い段階で詳しい弁護士にご相談されることで、回収の可能性が上がると考えてよいでしょう。
債権回収や債権保全でお悩みの法人・個人の方、当弁護士事務所にご相談ください。札幌市内を中心に、北海道各地からのご相談・ご依頼を受け付けております。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。