離婚調停・裁判はどこの裁判所で行うの?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第5回です。
前回は「離婚による慰謝料の金額 決め方・相場は?」を説明しました。
離婚連載の5回目は、離婚調停・裁判の流れ、手続きについて取り上げます。
当事者の協議で離婚問題が解決すれば良いのですが、やはり離婚するかどうかや離婚の際の条件で合意できず、話し合いが壊れてしまうことがあります。
その場合、問題を解決したいと思えば、離婚調停か離婚裁判を起こすしかありません。
それでは、離婚調停と離婚裁判のどちらを起こすべきでしょうか。
答えは、離婚調停です。一部の例外をのぞいて、離婚裁判を起こすには、先に離婚調停で話し合いをしなければならない、というルールが法律で定められています。
これを、調停前置主義、と読んでいます。
離婚というのは、夫婦間の問題で、財産の精算や今後のやり取りなどの多くの問題がからみますし、子どもがいる場合には、親権や面会の問題もあります。
こういった当事者にとって重要な問題は、裁判所が一刀両断で決定するよりは、当事者ができる限り納得できるように、できるだけ話し合いによる解決を目指しましょう、というのが調停前置主義の目的です。
ですので、もう話し合いの余地なんてない、と思っていても、まずは調停を申し立てる必要があります。
しかし、調停は当事者が出頭することが求められますので、遠隔地で調停を行うことは非常に負担が大きくなります。交通費は自己負担ですし、遠くまで出席する負担も大変です。
しかも、調停は、「相手の自宅住所」を基準として、担当する裁判所が決定されるのです。
たとえば、妻が札幌市内、夫が釧路市内で別居している場合、妻が離婚調停を起こしたいと思えば、相手の住所のある釧路家庭裁判所に調停を起こさなければなりません。
反対に、夫から離婚調停を申し立てるときは、妻の住所がある札幌家庭裁判所に申立てをする必要があります。
そして、その後の調停が行われる度に、相手の住所の裁判所まで毎回出席しなければならないのです。
これは、相手がどれほど遠隔地にいても変わりません。極論すれば、稚内と沖縄でも同じように取り扱われます。
その場合の交通費や労力の負担がどれほど大変か、簡単に想像できると思います。
この問題のために調停を断念するケースも実際にあります。離婚や調停に関わる当事者、弁護士にとって、この問題は切実なものでした。
ところが、平成25年の法改正によって、この問題は大きく改善されることとなりました。
この法改正は、家庭裁判所での調停や審判に関する手続きを、現代的に一新するものと考えてもらえば良いと思いますが、これによって、「電話会議システム」による調停への参加が認められたのです。
これまで、民事裁判では電話会議システムにより、たとえば札幌にいる弁護士が東京の裁判所に出席しなくとも、裁判所内の電話会議システムを利用して、札幌の事務所にいながら、電話により裁判官・相手方弁護士と同時に通話し、裁判を進めることができました。
ところが、家庭裁判所の手続きではこの制度が認められず、当事者は裁判所に出席することとされていたのです。
そのような不公平が現在では改められ、今後は、遠隔地の裁判所で離婚調停をする場合にも、電話による参加が認められることとなり、わざわざ遠隔地の裁判所まで行かなくても良いことになりました。
大事な局面では出席を求められることもあるでしょうが、それでも負担は相当減ることになります。
実際、当事務所で取り扱った離婚調停でも、札幌の当事務所から電話で調停を行い、道内であれば函館や浦河、道外であれば東京や横浜などの遠隔地の裁判所とやり取りを行うなどしています。
交通費や時間などを大幅に節約できますので、相手方が遠くに居住していても、調停を行うことに大きな支障は生じなくなっているのです。
少し長くなりましたので、続きは次回にしたいと思います。
次回は、調停の実際の流れや、離婚裁判・離婚訴訟についてです。
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離婚による慰謝料の金額 決め方・相場は?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第4回です。
前回(慰謝料が発生する離婚、発生しない離婚)にひきつづき、離婚の際の慰謝料問題です。
不貞行為や暴力があって離婚する場合、落ち度がある側は、慰謝料を支払う義務があります。
では、慰謝料はどうやって計算するのでしょうか。
慰謝料は、夫婦ごとや離婚の理由ごとに大きく異なりますが、次のようなポイントで増減されます。
① 支払い側の落ち度、責任の重さ
② 結婚してからの期間、子どもの有無
③ 支払い側の経済力
このうち、①はわかりやすいと思います。不貞行為であれば、その頻度や期間などによって悪質性、責任の重さが変わりますし、暴力の場合は、その頻度、暴力の程度や怪我の大きさによってやはり落ち度、責任が変わってきます。
落ち度、責任が重いほど、慰謝料額も高くなる傾向にあります。
②も、結婚してからの期間が長かったり、未成年の子どもを何人も抱えている方が、離婚による打撃・精神的ショックは大きいといえ、慰謝料額が高額になります。
最後の③は、財産分与との兼ね合いもありますが、相手の経済力が高い方が、離婚の原因を作った制裁としての意味などから、慰謝料が高くなる傾向があるといわれています。
ただ、実際の裁判では、①がこうだからいくら加算、②がこうだからいくら減額、などという内訳は明らかにされず、合計で○○円、という結論の金額しか明確にはなりません。
弁護士が慰謝料の請求を検討する際には、このあたりの事情を詳しくお聞きすることになります。
では、慰謝料は実際にはどれくらいになるでしょうか。
調停などの話し合いの場合には、最終的にはお互いの合意で決めますので、大きなばらつきがありますが、裁判となり、判決となった場合には、おおよその相場があります。
慰謝料が問題となるのは不貞行為のケースが多いですが、経験上、不貞行為が原因で離婚に至った場合、大半の事例で150万円から300万円の間におさまっています。その範囲で、さきほどの①②③の事情などによって上下しているのです。
暴力事案は、離婚の慰謝料自体は、不貞行為と同様かやや低いくらいの金額です。怪我が重大で後遺症が生じるような場合は500万円を超える場合もありますが、それは離婚の慰謝料というよりも、怪我の重さに対する慰謝料が高額となるからです。
実際に相手に請求する際には、さきほどの①②③などの事情を検討して金額を見積もることになります。
慰謝料を請求する場合、高ければ高い方が良いと考える方もいるでしょうが、余り相場から離れた金額を請求すると、相手も支払いや話し合いに応じる気持ちもなくなるでしょうし、裁判所からも不審に思われるでしょう。
相手を納得させたり、裁判所にこちらの言い分を理解してもらうには、慰謝料も適切かつ説得的な金額を計算し、根拠を示す必要があるのです。
当事者が自分で判断するのは非常に難しいため、弁護士に相談し、アドバイスをもらうことが重要です。
前回・今回と慰謝料についてみてきましたが、ひとくちに慰謝料といっても、簡単に決まるわけではないのです。
また、慰謝料が争点になるような事件では、お互いの感情の対立が激しいことが多く、その意味でも解決が容易ではありません。
どういった場合に慰謝料が請求でき、金額はどのように算定されるかを知らなければ、スムーズな解決はできないでしょう。
さて次回は、少しテーマを変えて、離婚調停・裁判は、どこでどのように行うのか、を説明したいと思います。
札幌の自宅に同居していたけど、相手が不倫相手と帯広に移り住んでしまったといった場合、どこの裁判所で行ったらよいのでしょうか。
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慰謝料が発生する離婚、発生しない離婚
札幌の弁護士による離婚解説コラム第3回です。
前回(裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(後))までは、離婚原因をテーマにしました。
離婚特集の3回目は、慰謝料を取り上げます。
離婚といえば慰謝料、慰謝料といえば離婚、というくらい、離婚の際には慰謝料が大きな問題となります。
しかし、当然ですが、離婚をすることになったからといって、慰謝料が必ず発生するわけではありません。
慰謝料が発生する離婚と発生しない離婚があるのです。では、どういう場合に慰謝料が生じるのでしょうか。
慰謝料というのは、離婚に限ったものではなく、「不法行為」を行った者が、被害者に対して支払う義務を負うとされています。
ですので、離婚の際に慰謝料が認められるのは、離婚について、一方に「不法行為」にあたる重大な落ち度、責任がある場合に限られます。
性格の不一致や、お互いの価値観の違いなどによる離婚では、一方にそのような落ち度、責任があるとはいえませんので、離婚を求めた側も慰謝料を請求できず、求められた側も慰謝料を支払う必要はありません。
反対に、慰謝料が発生するもっとも代表的な例は、不貞行為です。
前回までも触れましたが、不貞行為、つまり浮気・不倫は、離婚原因の1つです。相手が不貞行為をした場合には、相手が反対したとしても、裁判でも離婚が認められることになります。
しかも、不貞行為の場合には、あわせて慰謝料の支払義務が発生することになります。
不貞をした側は、離婚を求められたり、慰謝料の支払いを求められたら、基本的には応じなくてはならないのです。
不貞行為以外では、暴力・DVのケースが典型的です。
たとえば、夫が度重なる暴力を振るい、妻が大けがをしてしまい、正常な夫婦生活が維持できず、シェルターなどに避難して、離婚を求める場合があります。
このような場合、暴力が不法行為になることは当然ですが、それによって離婚に追い込まれたという点も不法行為にあたります。
ですので、暴力に対する慰謝料と、離婚に追い込まれたことの慰謝料を請求できるのです(実際にはこれらを区別せず、ひとつの慰謝料として請求します)。
これら以外の理由で離婚をする場合には、慰謝料が認められることは多くありません。
不貞行為や暴力に並ぶほどの落ち度が相手にないと、簡単には認められないのが実情です。
余談ですが、離婚以外の場合でも、何か被害にあったり、不快な思いをした際に「慰謝料を請求したい」という方もご相談に来られます。
しかし、実際には慰謝料が認められるというのは、よほどの精神的苦痛を負ったような場合に限られており、怪我をさせられた場合や離婚の場合以外では、あまり認められていません。
なお、離婚の場合には、慰謝料のほかに財産分与や養育費などの支払いをあわせて求めることもあります。
そういった場合には、調停などの話し合いの際には、慰謝料がいくら、財産分与がいくら、という計算をするよりも、合計でいくら、という形で話し合いをまとめる方がわかりやすいことが多いと思います。
養育費は毎月の支払いとなるので、少し別ですが、財産分与と慰謝料は、離婚の精算としていくら負担するか、という点では似た面があるので、財産分与を多く支払う分、慰謝料を下げる、などといった解決の仕方も目にします。
それでは、慰謝料が発生する場合に、金額はどのように決めるのでしょうか。
慰謝料の相場は、どのくらいでしょうか。
そのあたりは、次回のテーマとしたいと思います。
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裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(後)
札幌の弁護士による離婚解説コラム第2回です。
前回(裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(前))の続きとなります。
前回は、離婚原因として民法では5つが規定されていることと、それぞれの内容について触れてきました。
そして、よく問題となる不貞行為をめぐる事例では、2つの悩ましい問題があり、1つが証明が難しいという点だということを述べました。
もう1つの問題は、「婚姻破綻後」の不貞行為に関するものです。
弁護士が不貞行為に関する離婚裁判を扱ううえで、不貞行為をした側からよく出てくる反論が、「婚姻破綻後」に初めて不貞行為を行った、という主張です。
これは、不貞行為、浮気行為のせいで夫婦関係が破綻したのではなく、その前から事実上離婚状態にあったので、不貞行為が離婚の原因になっているわけではない、という主張です。
このような主張がなされるのは、夫婦の婚姻関係がすでに破綻していた場合には、夫婦間の義務や権利というものも消滅しており、片方が不貞行為を行ったとしても不法行為にならない(慰謝料は払う必要がない)という判例があるからでしょう。
そのためか、不貞行為を行い、慰謝料を要求された側がこの主張をよく行うのです。
しかし、実際の事例では、その不貞行為が離婚原因となっていることが明らかなケースが多く、その前に既に破綻していた、という弁解はほとんど認められません。
すでに夫婦関係が破綻していた、というのは、たとえば別居期間が長期間あり、お互い離婚することにほぼ同意していた場合など、明らかに夫婦関係が維持されていなかったような場合に限られるでしょうから、このような主張が認められるケースは少ないでしょう。
ただ、このような主張が出てくると、それまでの夫婦関係や、不貞行為を行った時期などが争点となることが多く、調停・裁判が長引く傾向にあるのが悩ましいところです。
ここまで4つの離婚原因を見てきましたが、最後の⑤は、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があることです。
これは、要するに、①から④には当てはまらないけれども、これらに匹敵するような夫婦関係を継続できないような事情がある場合、をいいます。
弁護士として関わった中では、この⑤に関する争いが大変多く、しかも対応が難しいと感じます。
この「婚姻を継続しがたい重大な事由」というのは、どのような場合であれば良いのか、法律にはこれ以上の説明は何もありません。そのため、事前に離婚が認められるかの見通しをつけるのが困難なのです。
ただ、主な目安としては、暴力・DV、不貞行為に近い行為、相手が犯罪を行って逮捕・服役されるなど、ある程度の重大な落ち度が相手にあることが必要で、さらに、すでに相当期間別居をしていること、が必要とされます。
後者の別居の点ですが、いわゆる家庭内別居などでは、まだ完全に夫婦関係が破綻しているとはいえない、という判断になることが多く、離婚が認められない可能性が高くなります(必ず認められないわけではありませんが、食事を一緒にとったり、日常会話があるような状態では家庭内別居とは認められない傾向にあります)。
また、別居と同時に離婚調停を起こしたような場合も同様です。
相手が離婚に反対しているような場合には、少なくとも数年程度の別居期間は必要と考えて良いでしょう。
前者の相手方の落ち度という点ですが、相手が反対しても一方的に離婚を認めて良いといえるだけの、大きい落ち度がなければなりません。
たとえば、性格の不一致を理由に離婚を求める場合、たとえば相手がだらしないとか、経済感覚が違うとか、生活の時間がずれている、などという場合は、一概にどちらが悪いとはいえないことも多く、また、婚姻関係を一方的に解消できるほど重大な事情があるとはいえないと判断されてしまいます。
相手が浪費を行うとか、家事を放棄する、などという事情も、家計や家事の分担などについても基本的には話し合いで解決すべき事柄だと判断されることが多く、そのことだけで離婚を認めるという判断はなされないでしょう。
そのため、実際には強い暴力が繰り返された場合などの重大な落ち度がある場合でないと、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たりづらいといえます。
以上の5つの離婚原因を確認してきましたが、それでは、これらに当たらない場合にはどうしたらいいのでしょうか。
これまでに述べてきたのは、あくまで話し合いで解決できない場合、判決でどう判断されるかという説明です。
ですので、判決で離婚が認められない見込みが高い場合には、話し合いや調停の中で相手と合意するしかありません。
実際にこれまで取り扱ってきた件でも、話し合いや調停で解決している事件の割合の方が高く、判決まで進む件は少ないです。
ただ、判決になった場合の見通しを持っておかなければ、調停の際の条件面の折り合いや、慰謝料を請求するかどうかといった点で正しい判断ができない危険があります。
離婚事件を取り扱っている弁護士であれば、過去の事例や経験から、離婚が認められるかどうか、慰謝料が認められるかどうかといった見通しを立てることができます。
ですので、離婚調停や訴訟を起こす前には、一度、弁護士に見通しについて相談することをおすすめします。
当弁護士事務所でも随時、離婚相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
次回は離婚時の慰謝料を取り上げたいと思いますので、ぜひご覧ください。
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裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(前)
札幌の弁護士による離婚解説コラムです。
当弁護士事務所では様々な分野を取り扱っていますが、その中でも多くの方の関心が高い離婚事件について、実際の事件で問題となる点を中心に解説をしていきます。
しばらくの間、連載という形で掲載していきます。
第1回目は、そもそも裁判所が離婚を認めるのは、どういった場合なのか。法律用語ではこれを「離婚原因」といいますが、離婚原因としてどのようなものが認められるのかを見て行きたいと思います。
夫婦のどちらかが離婚を決意した場合、相手も同じ考えであれば、離婚の成立自体に問題はありません。あとは養育費、慰謝料などの条件が問題になるだけです。
しかし、夫婦の片方が離婚を希望しているのに、もう片方は離婚に応じるつもりはない、という場合、簡単には解決しません。
当事者の話し合いで進展しない場合は、離婚調停を行い、裁判所の調停委員が仲介して話し合いを行うことになりますが、そこでも離婚の合意ができなかったり、条件で折り合いがつかないときは、最終的に裁判・訴訟となります。
裁判になった場合は、最終的には裁判官が判決という形で結論を決めます。
離婚が認められる場合には、裁判官は、「原告と被告とを離婚する」という判決を言い渡すことになりますし、認められない場合には、「原告の(離婚の)請求を棄却する」という判決を言い渡します。
このように、どうしても話し合いで解決しないときは、最後は裁判官が離婚を認めるかどうかを判断しますが、裁判官はどういった場合に離婚を認めるのでしょうか。
実は、法律で離婚が認められる場合というのは決められています。
民法770条1項では、次の5つが「離婚原因」であり、それが認められる場合に、離婚の判決ができることとなっています。
①相手が不貞行為をしたとき
②相手から悪意で遺棄されていたとき
③相手の生死が3年以上明らかでないとき
④相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
このうち、③や④というのはイメージしやすいと思います。
相手が生死不明だったり、重大な精神病にかかっていた場合には、正常な夫婦生活はもはや維持できませんし、話し合いによって解決することもできませんので、離婚を特に認めています(実際には④の場合に離婚が認められる事例は少ないですが)。
わかりづらいのは②で、「悪意の遺棄」という言葉は耳慣れないでしょうが、要するに、夫婦としての同居、協力などの義務を全く行わない状態のことです。ただ、実際には、単に同居しない場合や、生活費を家庭に入れないというだけでは認められません。
実際に裁判で離婚が認められた事例としては、半身不随の障害がある妻を自宅に置き去りにして別居し、生活費も一切支払わなかった事例など、よほど悪質な場合に限られています。
実際に裁判で②③④が問題になることは多くありません。弁護士として日常経験する事例は、ほぼ全てが①と⑤の離婚原因に関する事例です。
①の「不貞行為」とは、要するに浮気・不倫のことで、端的に、夫婦以外の者と性的関係を持つことです。
そのような不貞行為があった場合には、夫婦関係を裏切る重大な行為ということで、原則として離婚が認められ、相当額の慰謝料も発生します。この不貞行為は、1度切りの関係でもあたりますし、相手から誘惑された場合などでも関係ありません。
そのため、裁判で見られる離婚原因としては、不貞行為に関するものが非常に多いといえます。
しかし、不貞行為については、弁護士からみて、非常に悩ましい問題が2つあります。
1つは、不貞行為の立証が難しいという点です。
不貞行為は、通常、周囲に隠れて行われますし、密室での出来事となりやすいので、間違いなく不貞行為があった、というには、ある程度決定的な証拠が必要です。
相手が認めていれば簡単ですが、認めていない場合には、不倫現場の写真や相手とのメールのやり取りなどの強力な証拠が必要となります。
このような証拠がなく、相手が不倫していると思うけどその確信がない、という程度では、裁判所は離婚を認めません。
実際には、問い詰められるとあっさり不倫を認めることも多いですが、徹底的に否定し続ける場合もあります。
裁判で実際に経験した中では、夫が、別の女性とホテルに入っていく写真がある場合に、「女性が体調が悪くなったから看病していただけだ」という弁解をし続けていた件などもありました(さすがにこの弁解は通らず、離婚が認められました)。
少し長くなりましたので、不貞行為で問題となる点の2つ目と、離婚原因の⑤については、次回に持ち越したいと思います。
「性格の不一致」や「夫が生活費を入れない」、「妻が家事を全くしない」といった場合は、離婚が認められるのか、といった点を取り上げたいと思います。
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やっぱり弁護士の敷居は高い?
札幌市内に、どれくらいの弁護士がいるかご存じでしょうか。
日本弁護士連合会のサイトでは法律事務所の住所ごとに弁護士検索ができるので、事務所住所を「札幌市」として検索してみました。
そうすると、本日時点で、588名の弁護士がおり、うち、男性弁護士が513名、女性弁護士が75名という結果です。
なお、弁護士は必ず地域ごとの「弁護士会」に加入していますが、「札幌弁護士会」で検索すると、会員は630名になります。
ただ、札幌弁護士会は、札幌市内だけでなく、小樽市、江別市、岩見沢市などの弁護士も含みますので、札幌市内の弁護士数とは一致しません。
ところで、6月1日時点で、札幌市内の人口は192万7507人だったようです。
これをもとに単純計算すると、札幌市内の弁護士1人あたりがカバーする札幌市民の数は、3278人ということになります。
言い換えると、市民の3300人程度に1人は、弁護士といえるでしょう。
このようにみると、札幌市内には思ったより弁護士がいると思われるかもしれません。
(なお、司法書士は札幌市内に300名余りのようで、弁護士の方が倍近くいるようです)
札幌の弁護士数も年々増えていますし、最近は広告やCMも見かけるようになりましたので、弁護士を探すことは簡単になってきたはずです。
ただ、それでも、弁護士は敷居が高い、相談がしにくいと言われます。
私も先日、ある相談者の方から、「弁護士事務所の看板やホームページを多く見かけるようになったけど、それでも弁護士に相談に行くのは敷居が高いね」と言われました。
このようなイメージは昔からあるようで、その原因もいろいろとあるようです。
ただ、その相談者の方の話では、いったいどれくらいの費用がかかるかわからない、という悩みや、こんな相談でも真面目に聞いてくれるだろうか、といった不安などが大きいようでした。
そういった敷居が高い、なんだかよくわからない、というイメージを軽くしたい、という思いで、このサイトをリニューアルしたのです。
札幌市内の法律事務所のウェブサイトも数多く存在しています。
当事務所のウェブサイトも、これから改良する余地は多く残されています。
それでも、弁護士費用をできるだけわかりやすく記載したり、相談の流れを具体的に説明したり、解決事例をご紹介したり、それなりの工夫をしたつもりですが、いかがでしょうか。
当事務所の考え方や姿勢を、当サイトから感じ取っていただければ幸いです。
【解決事例】 賃料を滞納する借主に退去を求めた事例
【相談内容】
Tさんは、札幌市内にアパートをいくつも所有し、賃料収入を得ていました。
その入居者の1人であるSさんが、1年くらい前から家賃の支払いが遅れがちになり、請求をすれば少しずつ支払う程度となりました。
そして、3ヶ月ほど前からは全く支払いがなくなり、合計で家賃半年分も滞納が生じていました。
そこで、Tさんは、Sさんとの契約を解除して、退去を求めたいと思い、弁護士に相談に来たのでした。
【解決方法】
借主にとって、家を出て行かなければならないというのは生活の基盤を失うことであるため、法律では、借り主の権利は強く保護されてます。
そのため、家賃を1,2ヶ月滞納しただけでは、一方的に契約を解除することは認められていません。
重大な契約違反行為が何度もあったり、あるいは家賃滞納が半年程度あるような場合でないと、退去を求めることは認められないことが多いでしょう。
Sさんの場合は、半年分も家賃を滞納しているとのことですので、解除が認められる可能性が高いと弁護士は判断しました。
そこで、弁護士からsさんに対し、2週間以内に滞納家賃を支払うこと、支払いがないときは契約解除とし、訴訟提起すること、を内容証明郵便で通告しました。
弁護士もTさんも、Sさんから連絡が来れば、話し合いで解決したいと考えていましたが、2週間以内に連絡はありませんでした。
このまま時間が経てば、滞納家賃は増え続け、Tさんの損害は大きくなる一方です。そのため、損害拡大を防ぐため、弁護士は直ちに札幌地方裁判所へ裁判を起こしたのです。
第1回目の裁判が約1ヶ月後に行われ、その場にSさんは姿を現しました。
Sさんは、今後はなんとか家賃を払うので、このまま住まわせてほしいと希望しましたが、支払いのあてはないとのことで、今後も滞納が続く可能性が高いことは明らかでした。
そこで、弁護士は、事前にTさんと協議したとおり、早めに退去してくれるのであれば、滞納家賃は免除しても構わないので、早期に引っ越ししてほしいと申し入れたのです。
裁判所もその案に賛同してくれ、結局、Sさんは2ヶ月以内に引っ越すこと、2ヶ月間の賃料は支払うこと、期限までに引っ越した場合にはSさんの滞納家賃を免除すること、を合意し、裁判所で和解調書を作成しました。
その後、Sさんは予定通り退去したため、事件は解決となりました。
そして、Tさんはさっそく新たな入居者を募集し始めたとのことです。
【コメント】
借り主が賃料を滞納してしまう場合は、そもそも生活に困っていることが多く、何ヶ月もの滞納家賃を全額回収することは非常に困難です。
そのようなリスクを避けるには、滞納が始まった時点から細かく連絡をとり、支払いが難しければ退去を促すなどの方法が必要です。
しかし、一部の悪徳業者に見られるように、勝手にカギを変更したり、室内に立ち入って荷物を放り出したりすれば、違法行為となってしまい、損害賠償の対象となります。
そのため、賃貸借に関する法律関係をよく把握して対応しなければ、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあるのです。
賃料滞納が数ヶ月続いたような場合には、一度弁護士と相談し、少しでも損失を抑える方法を協議することが適切でしょう。
なお、今回の事例では、借り主が早期に退去する代わりに、滞納家賃を免除することにしました。
滞納家賃を免除する、というのは苦渋の選択ですが、免除をしなくとも相手が支払いに応じるだけの経済力があるとは思えない事案でしたし、借り主が退去するまでは他人に貸すこともできない状態でした。
そのため、弁護士が貸し主と打合せをし、一刻も早く借り主に退去してもらい、新たな入居者を確保する方が、損失を最小限に抑えられると判断したのです。それによって、裁判は早期に解決し、退去もスムーズに進んだといえます。
なお、滞納賃料を回収する方法としては、経済力のある保証人をつけておくことが重要です。しかし、実際には経済力のない家族や、名義貸し程度の保証人をつけているケースもあり、保証人からの回収がうまくいかないことが多いようです。
契約時に保証人をしっかり選定してもらうことや、滞納が発生したらすぐに保証人にも連絡することが、リスクを軽減する方法になると思います。
賃貸問題や家賃滞納、退去問題などでお悩みの方は、当弁護士事務所にご相談ください。札幌市内を中心に、北海道内各地からのご相談を受け付けております。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。
取扱分野・得意分野について
「専門はなんですか?」「得意な分野はありますか?」
これは初対面の方とお会いした際に、弁護士がよく聞かれる質問です。
このウェブサイトでは、債権回収、不動産トラブル、交通事故といった通常の民事事件や、離婚、相続といった家族間の事件、債務整理、会社破産などの倒産事件、さらには刑事事件、少年事件など、多くの分野を取扱分野として掲げています。
しかし、当事務所で実際に取り扱っている事件はこれらにとどまるわけではなく、会社の法務に関する案件や行政・税務に関する案件、残業代や解雇問題などの労働事件、後見人・遺言執行者などの財産管理など、幅広い事件を取り扱っています。
そして、多くの弁護士は、当事務所と同様に、一部の専門的な事件をのぞき、ほとんどの法律業務を取り扱っています。
ただ、それでも重点的に取り扱っている分野、得意とする分野はそれぞれ異なります。
当事務所が特に得意とする分野はいくつかあります。
1つは、契約トラブルなどに起因する債権回収・売掛金回収業務です。
請求内容や金額に問題がない事件は、どのような方法でいかに素早く回収するかといった点が重要となりますが、反対に請求内容に争いがある事件は、交渉力のほか、裁判になった場合を見据えた洞察力・立証能力が問われます。
裁判は、実際に起こしてみないと結論がわからないところはありますが、それでも適切な情報と十分な経験があれば、ある程度の見通しをつけることはできます。
そして、裁判になった場合に有利な結論が得られるか否かによって、交渉の方法は大きく変わってきますので、実際には裁判をしない場合にも、裁判への見通しを判断することが重要になるのです。
当事務所では契約トラブルや債権回収業務の経験が多く、これらの分野が得意分野にあたります。
これに関連しますが、当事務所では裁判・訴訟事件の比率が比較的高いため、裁判対応、訴訟対応も得意分野といえます。
主に、顧問先などから、契約トラブル、不動産トラブルや損害賠償事件の依頼を数多く受けており、裁判に発展したケースも非常に多く経験しています。
なかには、提訴から5年もの間裁判が継続し、最後には逆転勝訴で終結したという事件もありました。
ただ、通常の裁判はもっと短期間で終了しますし、当事務所ではできるだけ素早い解決を目指した対応を行っています。
また、その他の業務としては、事業者・法人の倒産手続きも多く手がけています。
当事務所は会計士や税理士の先生方とのつながりもあり、会社・事業者の倒産に関するご依頼を受ける機会が多いのです。
特に、従業員、債権者などの利害関係者が多い事案では、1日も早い迅速な対応が不可欠ですが、当事務所ではこれまでの経験から要点を押さえた効率的な対応を行っています。
もっとも、ご相談が早ければ早いほど、適切な対応がとりやすくなりますので、早めにご相談をいただく方がスムーズではありますが、緊急事態に陥ってからのご相談にも迅速に対応しています。
そのほかにも得意とする分野はあり、2名の弁護士もそれぞれ異なる分野を取り扱っていますが、それらについてはまた別の機会にご紹介したいと思います。
なお、「こういった分野は扱っていますか」「○○という分野を取り扱ったことはありますか」といったお問い合わせにもお答えしていますので、お電話かメールフォームからお問い合わせ下さい。
【解決事例】 早期に仮差押えを行い、1200万円の売掛金を回収できた事例
【相談内容】
札幌市内で建築業を営むC社は、元請のY社から注文を受けて、建物の改築などの工事を行いました。
当初の取り決めでは、必要な資材はY社が手配することになっており、工事代金は工事完了時に受け取ることになっていました。
ところが、工事の途中で、Y社は、資材を買う資金は後で返すから、C社で立て替えてほしいと言い出しました。
C社は、工事が進まないのも困るため、やむを得ず自ら資材を購入し、工事を継続しました。
工事が完了し、Y社に資材の購入代金200万円と工事代金1000万円を請求しましたが、Y社は、月末まで待ってくれというのみで、支払いをしてくれません。
結局、2ケ月経っても支払いを受けられず、そのうち、Y社は連絡に応じない状態になりました。
C社は、工事代金も受け取れず、資材の購入代金も負担させられてしまいました。C社への打撃は大きく、このまま泣き寝入りするわけにもいきません。
そこで、どうにかならないかと思い、弁護士に相談に来ました。
【解決方法】
相談を受けた秋山弁護士は、相談に来たC社に、Y社の財産状況を詳しく聞きました。すると、あと10日ほど後に、Y社は大手の取引先から2000万円程度の入金があるということがわかりました。
しかし、Y社の社長は、その代金は給料や別の取引先などの支払いに充てるからC社に払う余裕はないと言っていたとのことでした。
このような状態では、10日後にY社が2000万円程度の入金を受けてしまうと、それを他の支払いに充てるなどし、C社が回収できなくなってしまう可能性が大きいでしょう。
そうすると、弁護士がY社に督促を行ったり、裁判を行ったりしても、結果が出るころにはY社にはお金がまったく残っておらず、1円の回収もできなくなるかもしれません。
そこで、秋山弁護士はその2000万円が支払われる前に、その代金を「仮差押え」することにしました。
「仮差押え」とは、正式な裁判を起こしている余裕がないほどの緊急性がある場合に、臨時の手段として、裁判所の許可を得て、相手の財産を「動かせない」状態にしておく手続きです。
今回の場合には、2000万円を支払う大手の取引先に対し、裁判所から、Y社への支払いを一時的に禁止する命令を出してもらうのです。
しかし、仮差押えがされる前に代金が支払われてしまえば効果がないため、遅くとも1週間以内には裁判所に仮差押えを認めてもらわなければなりません。
秋山弁護士は、C社とY社の取引内容や、資材の購入代金を証明する証拠を用意してもらいました。
また、Y社の取引先会社の名前や、その2000万円が何の代金であるかも聞き取るなどの準備を進めました。
C社は証拠も保管し、Y社の取引先のことなども詳しく知っていたため、準備は順調に進みました。
仮差押えの効果は絶大である反面、裁判所の許可をスムーズに得るためには、ポイントを押さえた申立書と的確な証拠が不可欠なのです。
秋山弁護士はそれらの証拠や情報をもとに、C社が相談に来た2日後には申立書を仕上げ、札幌地方裁判所へ提出しました。
その結果、裁判所から1,2点の確認があったのみで、それ以外に問題はなく、申立書を提出した翌日には仮差押えを認める決定を得ることができました。
なお、仮差押えは、緊急の手段であるため、一定額の保証金を担保として用意しなければなりません。C社の場合も、1200万円分の支払いのために仮差押えしましたので、250万円程度の保証金を用意を命じられ、すぐにそれを納めました(問題がなければ後で返ってくるお金です)。
これらを迅速に進めた結果、Y社への支払いがなされる前に仮差押え手続きが完了し、Y社への取引先からの入金を差し止めることに成功しました。
そして、すぐにY社に対して正式な裁判を起こそうとしたところ、仮差押えを受けたことに驚いたY社が秋山弁護士に連絡してきました。
Y社の社長は、すぐに1000万円を支払い、残りの200万円も1か月以内に支払うので、仮差押えを取り下げてほしいと頼んできました。どうやら、仮差押えを受けたことを取引先の会社から強く叱責されたようでした。
秋山弁護士は、C社と協議した結果、Y社の要望に応じることとしました。そして、仮差押えをした代金から1000万円分をC社が受け取るのと引き換えに仮差押えを取り下げ、無事にC社は1000万円を回収できました。
また、約束通り、1か月後には残りの200万円も支払われました。
非常にあわただしい10日間でしたが、C社は短期間で全額の代金を回収することができ、大変満足いただけたようでした。
【コメント】
債権回収については債権回収のページでも説明していますが、今回の事案のように、スピードが重視されることが多いです。
C社の場合も、手続きがあと1週間遅ければ、まったく代金を受け取れなかったかもしれません。
当事務所で扱った事例では、ご相談にいらっしゃるのが遅かったため、わずか半日の差で仮差押えが無効となったケースもあります。
当事務所では債権回収や仮差押え手続きは数多く手掛けており、緊急性のある事案では、最短時間での処理を行っています。それでも、裁判所の審査等の時間もありますので、どんなに急いでも手続きが完了するまで3,4日はかかってしまいます(しかも、土日は裁判所がストップしますので、手続きが進みません)。
相手が代金を支払ってくれないという債権回収のケースでは、少しでも早い段階で詳しい弁護士にご相談されることで、回収の可能性が上がると考えてよいでしょう。
債権回収や債権保全でお悩みの法人・個人の方、当弁護士事務所にご相談ください。札幌市内を中心に、北海道各地からのご相談・ご依頼を受け付けております。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。