【離婚】 負債がある場合の財産分与はどうすればいいの?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第19回です。
前回(財産分与を請求する方法・手続きは?)は、財産分与の請求方法について取り上げました。
今回からは財産分与の際に問題となる点を見ていきます。
今回のテーマは、負債がある場合、財産分与にどのような影響があるのか、という点です。
これには、2つの問題が含まれています。
1つ目は、”債務がある場合、財産分与の金額に影響が出るのか”という点です。
2つ目は、”財産分与をする場合、債務も引き継がなければならないのか”という点です。
ここでいう債務には住宅ローンなども含まれますので、これらの2点は、財産分与の相談の際には非常によく質問される点ですので、当事者の関心が強い部分です。
それでは、順番に解説していきます。
1点目として、”債務がある場合、財産分与の金額に影響が出るのか”という点ですが、これは、「影響が出る」というのが答えです。
ただし、その債務が、結婚生活に関連して負った債務、というのが前提ですが。
たとえば、夫が1000万円の預金があるけれども、夫婦生活のためにローンとして600万円の債務も負っていたとします。妻には財産も借金もないとします。
この場合、債務を無視して考えると、1000万円を500万円ずつ分配することになるでしょう。
そうすると、分配後は、夫は500万円の預金と600万円の債務が残り、妻は500万円の財産を受け取れるようにみえます。
しかし、夫の債務が結婚生活のために必要なものであった場合には、このような結果はあまりに夫に不利になってしまうでしょう。夫が夫婦生活と関係なく、個人的な趣味などで借金を増やした場合は別ですが、収入を得るためや、妻との生活のために借金をした場合には、分与時に債務のことも清算するのが公平だといえます。
そのため、この事例の場合には、1000万円の財産から600万円の債務をひいた400万円の部分だけが、財産分与の対象になると考えます。
したがって、400万円を200万円ずつ分けますので、妻は200万円を取得できることになります。夫は、現金が800万円残りますが、負債も600万円残りますので、負債を全部返済すれば妻と同じ200万円が手元に残る結果となります。
要するに、現在夫婦が持つ財産から、債務を差し引いた部分だけを財産分与の対象にするわけです。
これが財産分与の際の一般的な取扱いです。もちろん、債務の理由や財産状況によって多少変化することはありますが、このような処理が基本となります。
では、2つ目の問題として、”財産分与をする場合、債務も引き継がなければならないのか”という点を見てみます。
さきほどの1つ目の問題点で見たように、「財産が債務よりも多い場合」は、財産から債務をひいた残額を二人で分配することになりました。
それでは、「債務の方が財産よりも多い場合」にはどうしたらよいのでしょうか。
具体的には、たとえば夫の財産が600万円あるが、債務が1000万円ある場合を考えます。この場合、夫が手持ちの財産をすべて使って債務を返済しても、400万円の借金が残ってしまうことになります。そうすると、この400万円の借金を妻も半分負担しなければならないのでしょうか。
答えは、債務を引き継ぐ必要はない、ということになります。
今の場合、結局、夫の財産状態は赤字であり、分与するだけの財産がない、ということになってしまうため、妻は財産分与を受け取れないことになります。そのため、妻側としては納得がいかないかもしれません。
そのかわり、夫が抱えていた1000万円の債務をまったく負担する必要もないのです。
その結果、当初のまま、夫には600万円の現金と1000万円の負債がそのまま残り、妻は財産を得られないかわりに負債も負わないのです。
これが公平かどうかは悩ましいところもありますが、裁判所の考え方としてはこのような結論になります。
もっとも、実際に協議や調停を行う際には、ある程度の分配を求めることが多く、夫も多少であれば応じることが多いでしょう。しかし、審判や判決までいくと、分与が認められない可能性が高い、ということです。
今回は少し複雑なテーマでしたが、いかがでしょうか。
財産分与の際には、実際に夫婦で持っている財産だけでなく、抱えている負債も大きく影響するということを理解いただけたと思います。
財産分与時には負債が大きな意味を持ちますので、その点にも注意が必要です。
なお、今回のテーマに関連して、夫婦の一方が保証人となっている場合の処理も大きな問題となります。
それは、次回に取り上げていきたいと思います。
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【債権回収】 債権回収を弁護士に依頼するメリット・デメリット
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第2回です。
前回は、債権回収の全体像を「売掛金・未収金を回収するためには」と題して解説しました。
今回は債権回収について弁護士が果たす役割を紹介したいと思います。
債権回収は、企業や事業者にとってもっとも身近な法律問題といえます。
弁護士が企業から依頼を受ける業務の中でも、債権回収に関する依頼は相当の割合を占めます。
では、なぜ弁護士が債権回収を行うのか、そのメリットとデメリットを紹介したいと思います。
【メリット】
弁護士に依頼するメリットは、おおまかに述べると、
- 相手への強いインパクトを与えることができる
- 債権回収のための豊富な知識・手段を利用できる
- 民事保全、訴訟、強制執行などの法的手続きを行うことができる
- 債権回収、交渉にかける労力・時間を節約できる
といった点にあります。
最初の3つは、一言でまとめるなら、「弁護士に依頼すれば回収率が上がる」ということです。
順番に見ていきましょう。
Ⅰ 相手への強いインパクトを与えることができる
弁護士から督促を受けた方はいらっしゃるでしょうか。あまり経験がない企業、事業者の方がほとんどだと思います。
普段顔を合わせている当事者が直接相手に請求するよりも、法律・裁判の専門家である弁護士が請求を行う方が、相手に対するインパクトは何倍にもなるでしょう。
弁護士からの督促があれば、無視したり、支払わなければ、裁判を起こされたり、財産の差し押さえを受けるかもしれない、というプレッシャーを相手に与えることができます。
その結果、これまで何カ月も支払いを拒否していた相手が、弁護士から内容証明郵便が来ただけで、すぐに全額を支払ってきた、というケースもあるのです。当事務所でも、そのような事例を何度も経験しています。
内容証明の文面はケースバイケースですが、具体的な事情を踏まえ、もっとも効果的と思える文面を作成しています。
もちろん、電話や面談して交渉を行うこともありますが、その場合でも弁護士という肩書や弁護士が持つ知識・経験、交渉力が有効な事案は多いでしょう。
これはまさに弁護士に依頼しなければ得られないメリットです。
Ⅱ 債権回収のための豊富な知識・手段を利用できる
弁護士は、債権回収のためにさまざまな知識や、債権回収に利用できる多くの手段を持っています。
特に、当事務所は信販会社や金融機関の顧問をしてきた経験により、他の弁護士事務所に比べても豊富な知識・経験を有していると自負しています。
そのため、事案に応じてもっとも適切な方法を選択することができます。
じっくり交渉すべき事案、訴訟提起し裁判所の判断を得るべき事案、直ちに民事保全を行って最速での解決を目指すべき事案、あるいは、コストをかけずに回収をあきらめるべき事案など、事案ごとにとるべき方法は異なります。
適切な方法を選択し、迅速に実行することが、回収率を高めるにはもっとも重要です。
当事務所には蓄積された事例やノウハウもあるため、極めて迅速に回収策を実行することができます。
たとえば、民事保全には裁判所に事案を説明し、説得して許可を得る必要がありますが、これまで経験した事案では、依頼を受けた3日後には裁判所の許可を得て民事保全を実行できたものもありました(3日で実行しなければ間に合わない事案でした)。
Ⅲ 民事保全、訴訟、強制執行などの法的手続きを行うことができる
前に述べたところとも重なりますが、弁護士は債権回収のための豊富な手段を持っています。
その中で、もっとも強力なのが民事保全、訴訟、強制執行といった裁判手続き・法的手続きです。
話し合いで解決できない相手から強制的に回収を図るには、これらの法的手続きを行うしかありません。しかし、民事保全や強制執行には複数の選択肢やノウハウがあり、経験の豊富な弁護士でなければ、適切な対応は難しいといえます。
特に民事保全は、弁護士に依頼せずに適切に行うのは非常に困難です。
なお、弁護士以外に、司法書士や行政書士が債権回収の依頼を受けることがあります。弁護士よりも報酬が割安と考えて依頼する方もいるようですが、行政書士は法律上、代理人として交渉や訴訟手続きを行うことは禁止されていますし、司法書士も請求額140万円までの交渉や簡易裁判所での訴訟手続きしか代理できないことになっています。
そのため、債権回収の最後までを一括して代理できるのは弁護士のみに限られます。ですので、結果的に、弁護士に依頼する方がかえって効率的となるケースが多いのです。
Ⅳ 債権回収、交渉にかける労力・時間を節約できる
支払いを滞納している相手との話し合いや督促には、時間も労力も相当かかってしまいます。
本来、事業者や従業員の時間は、営業や販売などの本業のために使うものです。それが、支払いの督促などに時間を割かれてしまうのは非効率といえます。
また、債権回収に不慣れな方が、いろいろな知識や手続きを調べながら債権回収に取り組む労力や時間も相当なものでしょう。
そのうえ、取引先への督促や未払いの場合の心配などは精神的にも負担が大きく、頼れる専門家の援助を受けたいとの声も聞かれます。
弁護士に依頼することで、債権回収に割く労力・時間を大幅に節約することができます。弁護士は要点を抑えた処理を迅速に行いますし、相手との交渉や書類作成は弁護士が行います。それによって、ご担当者の精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。
こういったメリットは、特に債権回収案件が何件も発生している場合には大きいといえます。
【デメリット】
弁護士に依頼した場合のデメリットとしては、
- 弁護士への報酬がかかってしまう
- 取引先との関係が悪化してしまう
といった不安がよく聞かれます。
Ⅰ 弁護士への報酬がかかってしまう
弁護士が依頼をお受けする以上、一定の報酬がかかってしまうのは避けられません。
ですので、依頼に要する費用と、前述したメリットをよく比較して検討していただく必要があります。
当事務所の弁護士報酬は、弁護士費用のページでおおまかに説明していますが、最初の「金銭請求事件一般」に該当するケースが多いでしょう(民事保全を行う場合などには金額が増減することがあります)。
相手が倒産した場合など、回収が失敗するケースも現実にはありますが、その場合には、依頼時にお支払いいただく着手金と実費分の損失が生じてしまいます。
(なお、当事務所では成功報酬は実際に回収できた金額に応じていただきますので、たとえば裁判で勝訴したが回収できなかった、という場合には成功報酬はありません)
当事務所では、ご依頼を受ける前に、回収の見込みや費用の見積もりを提示していますので、それをもとにご依頼の有無を判断いただき、メリットが大きいと判断された際にご依頼いただいております。
Ⅱ 取引先との関係が悪化してしまう
弁護士が表に出て、法的手続き等を行うなどすれば、やはり相手との関係は険悪になってしまうことが多いでしょう。
もっとも、事案に応じてはそれを避けるために、あまり強い請求を行わず、円満な話し合いを求めていくこともあります。
ただ、弁護士に依頼するほどの事案では、多くの場合、相手の対応やこれまでの滞納により信頼関係が相当悪化しているのが通常です。
そのため、もはや相手との取引継続を考えていないケースが多く、この点が問題になることは多くないでしょう。
弁護士に依頼する場合のメリット・デメリットはこのようなものです。
メリット、デメリットを十分に検討いただく必要があるでしょう。
ただし、前回も述べたとおり、債権回収は時間との戦いです。どうしようかと悩んでいるうちに、相手が倒産してしまい、まったく回収できなくなってしまうということも珍しくありません。
ですので、弁護士に依頼するか判断つかない時点でも、まずは弁護士に相談してアドバイスを受けたり、今後法的措置をとるための準備を行っておくことが必要です。
ご相談を受けても依頼する必要はなく、ご相談のみで終了しても結構ですので、お気軽にご相談いただければと思います。ご相談のご予約は、お問い合わせのページをご覧ください。
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【債権回収】 売掛金・未収金を回収するためには
札幌の弁護士による債権回収解説コラム第1回です。
今回から、債権回収をテーマとしてコラムを連載していきます。
債権回収は、企業や事業者にとっては必ず直面する問題です。
すべての取引をその場で現金取引で行っている場合には問題になることはありませんが、仕入れ代金や工事代金、賃料など、あとから代金を支払ってもらうという取引はごく日常的に行われています。
これらの売掛金・未収金をまとめて債権と呼び、その支払いを受けることを債権回収と呼びます。
このような企業、事業者にとってもっとも身近な法律問題である債権回収について、その方法や注意点、弁護士が行う活動などについて解説していきます。
なお、当弁護士事務所では、昔から信販会社や金融機関の顧問をしていたこともあり、債権回収は得意分野としています。
特に仮処分、仮差押えといった民事保全や、競売や差押えなどの強制執行手続きは数多く手掛けており、多くのノウハウを有しています。
このコラムは、そのような多数の債権回収案件を解決してきた経験を集約したものですので、債権管理に役立てていただけるものと思います。
では本題に入ります。
今回は、第1回目ということで、債権回収の全体像、一般的な流れを見ていきたいと思います。
詳細や具体例は次回以降に取り上げます。
Ⅰ 普段の情報収集・滞納リスクのチェック
そもそも、債権回収のもっとも基本的な考え方は、滞納しないでしっかり払ってもらうことです。
そのため、取引先の経済力、業績などを確認しておく必要はありますし、たとえ1回、1日でも支払いが遅れたり、支払いの猶予を求められた場合には、慎重に対応していく必要があります。
そのような場合、担保や保証人を求めたり、取引量を控えるなどの対応を検討しなければなりません。
最初は少しずつ支払いが遅れ、そのうちにまったく支払いがなくなってしまい、そのころには滞納額が多額に膨れ上がっている、という相談はまったく珍しくありません。
なお、後で説明する仮差押えや強制執行のためには、相手方の取引先、銀行口座、資産状況などを普段から把握しておくことが有益です。
Ⅱ 滞納時の対応
売掛金などの支払いが滞納するようになった場合、それを放置してはなりません。
突発的な事情による滞納であればよいのですが、業績悪化などにより資金繰りが厳しくなっている場合、一度滞納が始まったらそのまま滞納が解消されない状態が続くおそれがあります。
ですので、滞納が始まった場合、すぐに明確に請求の意志を伝え、いつまでに支払うかの確約を得る必要があります。
滞納額があいまいであったり、相手がはぐらかそうとする場合には、残金の確認書や支払時期の確約書などを作成してもらい、相手にこちらの強い意志を伝えることも効果的です。
Ⅲ 滞納が続く場合
それでも滞納が続いてしまう場合や金額が大きく、支払いの見込みが薄くなってきた場合には、もはやのんびりしている暇はありません。
相手がそのまま倒産してしまえば、債権をまったく回収ができなくなります。倒産した相手からの配当は、ほとんどの場合、ゼロか数パーセント程度にすぎません。
そのため、相手の倒産が決定的になる前に、一刻も早く回収を行う必要があり、これまでよりも強い対応が必要となります。
Ⅳ 弁護士からの請求・内容証明郵便
相手の滞納が長引く場合、いままでと同じように請求を行ってもほとんど効果がないでしょう。
その場合には、こちらも本気であることを示す必要があります。具体的には、弁護士から電話で請求したり、内容証明郵便で督促を行います。
弁護士からの請求というのは強いインパクトがあります。弁護士に依頼するほど本気であると相手に伝わりますし、弁護士が入った場合は、裁判などの法的措置をとられる可能性が高くなるからです。
そのため、相手が本当に倒産する直前というほど切迫していない限り、何らかの反応が来るのが通常です。
(なお、行政書士や司法書士も請求行為を行うことがありますが、相手との交渉や裁判をすることには制限がありますし、相手に与えるインパクトも弁護士よりは相当弱いのが実情です)
Ⅴ 弁護士による交渉
弁護士が相手と交渉し、相手の経済状況や滞納の理由を聴取しながら、支払いの確約をさせます。
どの程度の支払いならできるのか、支払いの見込みはどの程度かなどを確認し、できるだけ早期の支払いを実現します。
すぐに支払いできないという場合には、公正証書を作成して強制執行に備えたり、担保をとったりします。
相手の経営状態などによっては、早期に支払いを受けるかわりに、一定の減額を行うべき場合もあります。
実際には、この段階で解決する事案が多いといえます。
Ⅵ 民事保全(仮差押え・仮処分)
相手と話し合いをしても解決に至らない場合や、そもそも話し合いをしている余裕もない場合もあります。
そのような場合には、一気に法的措置をとり、強制的な回収に入ります。
相手が経済的な理由以外で、なにかしらの言い分があって支払いをしないような場合には、裁判を起こし、その中で裁判所の判断を受けて支払い義務を確定させていくのが通常です。
しかし、相手が経済的な理由のみで支払いをしない場合、のんびり裁判をやっていては相手が倒産したり、財産が空っぽになってしまう危険があります。
このような場合、正式な裁判ではなく、直ちに、簡易な手続きで裁判所の許可を得て、相手の財産を一時的に凍結してしまうという方法をとります。たとえば、相手の預金を凍結してお金を引き出せなくしたり、相手がほかの会社から受け取る予定の売掛金を凍結し、相手が受け取れない状態にしてしまうのです。
このような手続きを、民事保全とか、仮差押え・仮処分などといいます。この方法で財産を凍結して保全し、その間に正式な裁判を起こす時間を得るのです。
もっとも、資金繰りに窮している相手にとって、資産の凍結は死活問題となります。そのため、民事保全を受けた相手が、それをすぐに解除してほしいと求めてくることも少なくありません。
その場合、交換条件としてある程度の支払いを受けて債権を回収することになります。
相手が倒産してしまえば民事保全は無効になってしまうのがこの方法の最大のデメリットです。相手を倒産させるのが目的ではありませんので、ある程度譲歩して解決することも必要です。
Ⅶ 裁判・強制執行
民事保全でも解決しない場合や民事保全が適切でない事案では、裁判を起こし、裁判所から支払命令を出してもらいます。
それにしたがって相手が支払えば解決ですが、相手がそれでも支払わない場合、強制執行を行って強制的に債権を回収していきます。
強制執行は、具体的には、相手の預貯金や不動産を押さえたり、売掛金・商品などを取り上げて、債権を一方的に回収していきます。
これは債権回収の最強の方法ですが、同時に、最後の手段でもあります。この強制執行でも回収できない場合、支払いを受けることは事実上不可能となってしまいます。
あとは貸倒れ金として損金処理して損失を抑えるしかありません。
以上が債権回収のためのおおまかな手順です。
それぞれの段階において、注意点やノウハウがありますが、それについては次回以降に見ていきます。
ただ、相手が倒産してしまったらもう打つ手はありません。
そのため債権回収はスピードが勝負です。弁護士に相談に来た時点で、すでに何もできない、ということも非常に多いといえます。
ですので、少しでも危険を感じた場合には、まず弁護士に相談して対策を練っておく方がいいでしょう。
取引先からの入金が得られなかったために倒産してしまう会社もめずらしくありませんので、債権回収には十分な注意を払う必要があるのです。
当弁護士事務所では、債権回収を得意分野としており、これまでに数多くの事案を解決してきました。
債権回収についてお悩みの方は、まずはご相談ください。
ご相談のご予約は、お問い合わせのページからお願いいたします。
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【離婚】 財産分与を請求する方法・手続きは?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第18回です。
前回(離婚時の財産分与について知りたい!)は財産分与とは何か、ついて簡単に見てきました。
今回は、その財産分与を請求する方法や、請求するための手続きを見ていきたいと思います。
前回説明したとおり、財産分与は、夫婦が結婚生活中に得た財産を離婚の際に分配する、というものです。
そのため、離婚時までに蓄えた財産の少ない側が、多い側へ請求するという形になります。一般的には、妻側から夫側へ請求することがほとんどですね。
では、どうやって財産分与を請求したらいいでしょうか。
基本的には、財産分与は、離婚の際の条件の1つとして、離婚協議の際に決定することになります。
離婚する際に、親権者や養育費の問題と一緒に、お互いの財産や住宅をどうするかを話し合い、話がまとまればそれにしたがって財産分与を行います。
協議ではなく、離婚調停を行う際にも、調停の中で財産分与について協議を行うことが通常です。
話し合いや調停で決める場合には、お互いが納得できる形であればどのような解決をしても構いません。
普通は、厳密にお互いの財産を半分に分ける、というやり方ではなく、ある程度ざっくりした形で、合計500万円を支払うとか、住宅は夫が取得し、預貯金は妻がもらうとか、分配しやすい方法で分ける例が多いといえます。
そのような話し合いや調停でまとまらない場合には、離婚訴訟や財産分与の審判の中で、裁判所が適切な財産分与方法について判断を下すことになります。
その判断には強制力がありますので、当事者はそれにしたがわなければならない、ということになります。
では、一度離婚してしまったあとは、財産分与の請求はもうできなくなってしまうのでしょうか。
結論からいえば、離婚が成立したあとでも、財産分与の請求をすることは問題ありません。ただし、期間が制限されており、離婚成立後、2年以内に解決するか、2年以内に調停を起こさなければなりません。
離婚後、3年たってしまった場合や、話し合いを続けて解決しないうちに2年を超えてしまったときは、もうその後の請求は認められません。
ただ、2年以内は請求できるとはいえ、一度離婚して時間が経ってしまうと、相手の生活状況や財産状況も大きく変化していってしまいます。そうすると、当初はあったはずの財産がなくなってしまったり、どこにあるかわからないという事態が生じやすくなりますので、時間が経過するにつれて財産分与の請求も難しくなります。
ですので、可能な限り、離婚時に決めておくか、離婚成立後の早い段階で解決することが必要です。
このように、財産分与は離婚時か、離婚後2年以内に請求を行う必要があります。また、基本的には協議で決定しますが、解決しない場合には調停や訴訟・審判で決定することになります。
もっとも、一度合意が済んでも、その後にいろいろな手続きが出てくることがあります。
たとえば、不動産について取り決めた後は、不動産の登記名義を変更しておかなければなりません。そうしないと、将来権利関係でトラブルが起きたり、固定資産税の責任を負う可能性があります。自動車についても同様です。
また、生命保険の受取人・解約金などについても変更が出ることが多いでしょう。
財産分与時の金銭の支払いを、分割払いなどで取り決めた場合には、その後にしっかりとお金が払われるのかを確認し、払われない場合には財産差し押さえなどの方法をとる必要も出てきます。
財産分与の場合には、合意が成立したあとの諸手続きも確実に行っておく必要がありますので、その手続きについても事前に取り決めておくべきでしょう。
以上が財産分与の請求の流れになります。
なお、財産分与は、離婚時に問題となる事柄の中でも、もっとも複雑といえます。相手の財産を把握することが難しいことや、財産の種類ごとに金額の評価や分配の方法が異なること、実際に合意したあとに約束通り分配されないケースも少なくないこと、分配に関する諸手続きが複雑な場合もあることなど、多くの関連する問題点があるからです。
そのため、ある程度まとまった金額の分与を請求する場合には、当人同士の話し合いではこじれてしまうことが多く、調停を行おうにも、手続きや流れがよくわからないまま進んでしまうことが少なくありません。
これまでのご相談者の中には、財産分与の調停を起こしたがよくわからないまま終わってしまい後悔している、という方もいらっしゃいました。
離婚には、これまでのコラムでも見てきたような多くの問題がありますが、特に財産分与は本人のみで解決するのは難しいといえます。
当弁護士事務所では、財産分与が生じる離婚事件も数多く経験しており、財産が多かったり、相手が事業者であるなどの複雑な事案にも対応することができます。もちろん、財産分与を請求されている方からのご依頼も対応しています。
財産分与問題でお悩みの方は、まずはご相談ください。お問い合わせは、こちらの法律相談の ご予約・お問い合わせのページからお願いいたします。
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【離婚】 離婚時の財産分与について知りたい!
札幌の弁護士による離婚解説コラム第17回です。
前回(面会交流の取り決めに違反した場合の対処法は?)までしばらく面会交流について詳しく見てきました。
今回からは、離婚の際の財産分与について、何度かに分けて取り上げていきます。
離婚をする際に問題となる事柄はいろいろとありますが、財産の分配に関する問題は特に争われることの多い点です。
夫婦が結婚してから離婚までの期間、お互いが得てきた財産をどのように清算するかという問題を、財産分与といいます。
今回はこの財産分与の基礎をまず説明したいと思います。
そもそも、この財産分与というのはどうして問題となるのでしょうか。
一番わかりやすいのは、ふたりで住宅ローンを組んで自宅を購入した場合です。
結婚生活のために買った不動産で、ローンも払ってきましたが、離婚する際にはこの自宅はどちらが受け取るのか、ローンはどちらが支払うのかなどが問題になります。
これが財産分与の典型的な問題の1つです(住宅問題の解決は次回以降に取り上げます)。
しかし、実際の財産分与は、このような不動産問題に限定されるわけではなく、もっと広い範囲で問題となります。
たとえば、夫婦で結婚し、その後、夫が仕事をして貯金をたくわえ、妻が主婦として子育てや家事を行っていたとします。
妻には収入がありませんので、離婚時にもたくわえがないことがほとんどでしょう。
これに対し、夫は、結婚中に1000万円の貯金をためていたとします。
このような場合に、この1000万円は夫にしか権利がなく、妻には何の権利も認められないのでしょうか。
夫婦で生活する場合、互いの協力によって家庭を維持するものと考えられています。
さきほどの例では、妻が家事や子育てを行うことで、夫が仕事の専念でき、財産をたくわえることができたと考えることができます。
また、夫婦間では、一般的に、どの財産がどちらのもの、といったことを区別せず、ふたりで共同の家計管理・財産管理をしていると意識している例が多いでしょう。
そうすると、さきほどの夫が貯めた1000万円は、夫婦で一緒に形成してきた財産と考えるのが実態に合うのではないでしょうか。
こういった考え方を民法は取り入れており、民法768条では、「離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」ということが規定されています。
これが財産分与という制度なのです。
つまり、住宅に限られず、「結婚期間中に夫婦が蓄えた財産は、お互いの共通の財産であり、離婚時にはその分配を求めることができる」ということです。
この財産分与は、さきほどの例のように、あまり結婚中にたくわえのなかった妻側から、仕事をして財産を形成した夫に対してなされることが多いといえます(もちろん反対になることもあります)。
ただし、注意が必要なのは、このような財産分与の対象となるのは、①夫婦で結婚生活を行っている期間中に、②夫婦生活に関係して得た財産に限られるということです。
①はどういうことかというと、結婚生活前から持っていた財産は分与の対象とならないという意味です。結婚前から持っていた不動産や預貯金などは、夫婦が協力して得たものではないため、そのような財産の分配を請求することはできません。
②は、夫婦の片方が、夫婦生活とは全く関係ない個人的な事情で取得した財産のことで、典型的なものは親からの相続財産です。たとえば夫の父親が亡くなり、1000万円の預貯金を夫が取得して貯金していた場合、これは夫が父から相続したために取得できたものですから、夫婦生活や結婚生活とは無関係に取得したことになります。
このような財産は、財産分与の対象外なのです。
ですので、離婚時に相手が持っている財産すべてが分与の対象となるのではない、という点をしっかり意識する必要があります。
なお、その条件をクリアしていれば、財産の種類には特に制限がありません。
不動産や現金、預貯金のほか、生命保険の解約金や株式、投資信託などの投資資産も分配の対象です。複雑になりがちなものとしては、退職金も一応は財産分与の対象となることがあります。この点はまた別の機会に取り上げたいと思います。
最後に、このような財産を分配する場合の割合はどうやって決めると思いますか?
本来は、個々の夫婦ごとに、財産形成にどの程度関与したのかを判断していくことになりますが、特別な事情がない場合には、基本的に50対50、つまり半分ずつ持ち分があると計算することになります。
たとえば、夫が1000万円、妻が100万円の財産があれば、合計で1100万円の夫婦財産がありますので、550万円ずつ取得することになります(これは、要するに妻は夫から450万円を受け取れる、ということですね)。
以上が財産分与の基礎的な説明になります。
今後、よく問題になる点などを中心に財産分与問題を取り上げていきたいと思います。
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【解決事例】 個人再生で450万円の債務が100万円に減額された事例
【相談内容】
田中さん(仮名)は、47歳の男性で札幌市内にある建設関係の会社に勤めていました。
しかし、一時、病気のため休職したり、同時期に母親が亡くなり、その葬儀代などで資金が足りなくなり、持っていたクレジットカードのキャッシングを利用し始めました。
その後、返済を継続していましたが、臨時の出費が相次ぎ、少しずつ借入金額を増やさざるを得ませんでした。その時点での負債は200万円程度となり、毎月の返済額も5万円を超えていました。
ただ、田中さんは復職し、なんとか返済を続けていましたが、あるとき、会社の業績不振で少し収入が下げられてしまいました。
そのため、返済資金が足りず、毎月、返済のために借り入れを繰り返す状況になってしまいました。
だんだんと利息の負担も増えていき、気が付けば借金も400万円を超えました。
そのころに会社も持ち直し、収入ももとの水準に戻りましたが、負債は450万円となり、毎月の返済額も約10万円に及んでいます。
しかも、毎月返済額10万円のうち、利息の返済が約4万円にもなっており、いくら返しても元本がなかなか減っていきません。
そこで、田中さんはこれ以上の返済は難しいと思い、少しでも返済の負担を減らせないかと思い、弁護士に相談したのです。
【解決方法】
田中さんの負債は450万円となっており、多額にのぼっています。
解決の方法として、任意整理、個人再生、破産という3つの方法が考えられましたが、負債額が大きく、任意整理での解決は少し難しい状況でした。
他方、田中さんには一定の収入があり、毎月4,5万円程度なら無理なく返済できそうでしたので、破産手続きしか選べないという状況でもありませんでした。
しかも、田中さんは自宅と会社間の交通の便が悪く、5年前に購入した車が通勤に不可欠でした。この車のローンは少し前に完済していましたが、いま売りに出せば50万円程度にはなるため、破産手続きではこの車を売却しなければなりません。
そこで、弁護士は、借金を減額し、自動車も手元に残すために、個人再生を選択することが適切とアドバイスをしました。
田中さんもその説明を受けて、個人再生による解決を希望しました。
弁護士は、より詳しい事情の聞き取りや、必要資料の提供を受け、札幌地方裁判所へ個人再生の申し立てを行いました。
その際の返済計画案は、次のようなものです。
「450万円の負債を、100万円まで減額する。この100万円を3年間(36カ月)で返済するため、毎月2万8000円程度を返済する。この返済を3年間で予定通り終えたときは、残りの350万円をすべて免除する。」
裁判所は、弁護士の申し立て内容を審査し、この返済計画案が適切なものと判断し、債権者からも反対意見がなかったため、この返済計画案を認可しました。
これで、あとは3年間返済を続ければ計画通りの効力が生じることになります。
その後、田中さんは、弁護士が指示したとおり、毎月2万8000円ずつを返済し続け、一度も滞納することなく3年間が経過し、無事に借金がすべて免除となりました。
本来であれば、450万円に高い利息をつけた金額を長い期間払い続けなければならないのに、わずか3年間、100万円の支払いで借金が免除になったことで、田中さんは本当に安心したようです。
今後は、借金をしなくてすむよう生活費を見直すなどしながら老後の資金をためていきたいとのことでした。
【コメント】
田中さんは、いろいろな事情で借金を増やしてしまい、自分の収入で払える範囲を超える負債を抱えてしまいました。
このような場合に、本当は支払いが不可能な状態になっているのに、無理に返済を続けてしまうと、身の回りの財産を処分して返済にあてたり、親族に援助を繰り返し頼んだりして、正常な生活を失ってしまうことがあります。
田中さんは、そうなる前に、これ以上の返済は無理だと判断し、弁護士に債務整理を依頼したのです。
その判断が良い結果につながったといえ、田中さんは、3年間、無理のない範囲で返済を続けたことで借金を清算できたうえ、車も残すことができました。
もう少し相談が遅ければ、債権者から裁判を起こされて給料を差し押さえされたり、自動車を処分して返済にあてざるを得なかったことでしょう。
田中さんが行った個人再生では、債務総額500万円以内の方は、債務を100万円まで減額することができます。そして、それを3年から5年間かけて返済を実行することで、残りの負債をすべて免除してもらえるのです。
債務をすべて払うのは無理だけど、破産は避けたい、という方に最適の方法です。
田中さんは、予定通りに返済を実行し、無事に債務をすべて清算することができました。
個人再生手続きには複雑なルールやノウハウが必要となります。借金問題でお悩みの方は、当事務所までお早めにご相談ください。札幌市だけでなく、北海道内各地からのご相談に対応いたします。
※事件の特定を避けるため、複数の事案を組み合わせたり、細部を変更するなどしていますが、可能な限り実例をベースにしています。
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【解決事例】 夫の暴言を理由として離婚調停を申し立て、離婚が成立した事例
【相談内容】
Aさんは、40代女性です。夫は、札幌市内で個人事業を営んでおり、Aさんもその手伝いをしていました。
2人の間には子どもが一人いますが、既に成人していました。
最近まで夫婦の関係は良好でしたが、夫の事業の業績が年々悪くなるにつれ、夫との仲もぎくしゃくし始めました。
夫は、家で愚痴や暴言を吐くことが多くなり、Aさんにも毎日のように怒鳴ったり、悪口を繰り返すようになりました。
そして、あるとき、我慢できなくなったAさんが文句を言い返すと、夫はかっとなり、手元にあったコップを投げつけ、それがAさんの顔にあたってはれ上がってしまいました。
夫は、すぐに謝ってきましたが、Aさんはもうこのような生活には耐えられないと思い、離婚を決意し、自宅を出て、札幌市内に住む姉の家に移り住みました。
Aさんからの離婚の申し入れに、夫は最初は離婚を拒否していましたが、財産分与や慰謝料の話が出ると、お金を払うつもりはない、反対に慰謝料を払うなら離婚に応じる、と言われてしまい、話し合いは進みませんでした。
そこで、弁護士に依頼して離婚調停を申し立てることにしました。
【解決方法】
Aさんは、仕事を持っておらず、蓄えも少ししかなく、今後の生活に不安がありました。他方、夫は、仕事の業績が落ちてきたとはいえ、これまでに蓄えた財産はそれなりにあり、生活に困っているというわけでもありませんでした。
これまでのAさんと夫の話し合いの内容から、弁護士が相手と交渉しても解決は見込めないと判断し、すぐに調停を起こすことにしました。
離婚調停がスムーズに進むかわからなかったことと、Aさんが当面の生活費にも不安を抱えていたため、離婚調停と同時に、離婚成立までの生活費(婚姻費用)の支払いを求める調停も起こすことにしました。
その後、札幌家庭裁判所で調停が進みましたが、婚姻費用の調停は早い段階で決着し、生活費を受け取ることができました。しかし、離婚調停は、Aさんの離婚の意思が固いことから、夫も離婚自体は納得してきましたが、金銭面の条件がなかなか折り合いがつきませんでした。
しかし、夫が事業により蓄えた財産は、Aさんが仕事を手伝ってきたおかげでもあることや、別居前の夫のAさんに対する態度がひどいものであったこと、Aさんにはほとんど今後の蓄えがないことなどを調停委員によく理解してもらい、調停委員から夫を説得してもらうことができました。
最終的に、慰謝料や財産分与を含めた解決金として600万円を夫から受け取り、6回目の調停で、離婚成立となりました。
離婚調停の途中からAさんは仕事を見つけて新しい生活を始めており、無事に離婚が成立したことに安心されたようでした。
【コメント】
離婚が問題となる事案では、一方が離婚を望むのに、他方が離婚を拒み続けるというケースもあります。
その中には、本当に離婚自体を避けたいと思い、なんとか円満な夫婦関係を取り戻したいと考えている場合のほか、離婚に伴う慰謝料や財産分与の支払いを避けるために離婚を拒み続けているという場合もあります。
実際には離婚調停にまで発展した時点で、正常な夫婦関係を取り戻すのは難しい場合が多く、お互いが離婚を前向きに考える場合が多いといえますが、やはり金銭などの条件に関して話し合いが紛糾することは少なくありません。
この事案では、夫の暴言や一度の暴力が離婚のきっかけになっていますが、暴力自体は夫も衝動的にやってしまったもので、すぐに謝るなどしていたため、これだけで離婚や慰謝料が認められるものではありませんでした。ただ、暴言などは執拗に続いていたようで、Aさんの受けた苦痛は相当なものであったようです。
また、夫は事業で蓄えた財産がそれなりにあり、その事業はAさんも手伝って発展してきたものでしたから、財産分与の精算を強く主張しやすい事案であったといえます。
調停の場ということもあり、最終的には、慰謝料がいくら、財産分与がいくら、という細かい決め方はせず、解決金ということで600万円を受け取り、離婚調停成立となりました。
厳密に計算していけば、もう少し受け取る権利はあったようにも思いますが、Aさんも早い段階で解決したいと思っていたことと、夫の事業が好調とはいえないことから、お互いが納得できる条件として調停が成立し、円満に解決したといえるでしょう。
この事案のように、離婚や離婚時の慰謝料、財産分与などにお悩みの方や調停手続きを考えている方は、当弁護士事務所にご相談ください。札幌市内だけでなく、北海道内各地からのご相談・ご依頼を受け付けております。ご相談は、お問い合わせのページをご確認のうえ、ご予約をお願い致します。
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【債務整理】 個人再生では自宅を残すことができるって本当?(後)
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第15回です。
今回は、前回(個人再生では自宅を残すことができるって本当?(前)) に引き続き、個人再生手続きの場合の住宅の取扱いを説明します。
前回も説明しましたが、個人再生手続きでは、破産手続きの場合とは違って、住宅を残したまま債務の整理をできる場合があります。
どういった場合に住宅を残せるかは、「住宅ローンの残高」と「自宅の現在の価値(売却価格)」のどちらが大きいかによって異なります。
前回は、「住宅ローンの残高」が、「自宅の現在の価値」よりも大きい場合、いわゆるオーバーローンの場合を説明しました。
今回は、「自宅の現在の価値」が、「住宅ローンの残高」よりも大きい場合を見ていきます。
たとえば、自宅の土地・建物をいま売却すると、1500万円の値段がつくとします。
その土地・建物の住宅ローンが、1200万円残っている場合を考えましょう。
この場合、自宅を売却してローンを払っても、300万円が手元に残ることになりますので、この300万円分の価値ある資産ということになります。
このような住宅ローンを差し引いても資産価値が残る場合は、実は、住宅を残したまま個人再生手続きを利用することは難しい場合が多いのです。
これは、価値のある財産を保有したまま、破産や個人再生を申し立てるのは難しいためです。
破産や個人再生では、負債の方が多く、現在の財産を債権者に分配することで、足りない部分の負債をすべて免除してもらう手続きです。
そのため、手元にある価値ある財産は、処分して債権者に分配するのが原則になりのです。
もっとも、破産の場合にはおおむね20万円以内の財産は手元に残せますので、すべてを処分するわけではありません。
そして、個人再生の場合にはもっと多くの財産を手元に残すことが認められており、基本的には100万円以内の財産は手元に残すことができます。
しかし、100万円を超える財産を残す場合には、厳しい条件があります。
この問題は、「個人再生手続きで手元に残せる財産は?」で説明したのとまったく同じ問題ですので、そちらも参照いただければと思います。
簡単に説明すると、
- 個人再生では、返済額以内の財産は処分しないで手元に残すことができる
- 個人再生では、手元に残す財産の金額以上の金額を返済しなければならない
というルールがあります。
個人再生の返済額は、100万円となるケースが多いので、100万円以内の財産はそのまま残せることがほとんどです。
では、さきほどの300万円の差額が残る場合はどうなるのでしょうか。
この場合、個人再生を利用しても、「300万円」以上の金額を返済しなければならないことになります。
具体例を見てみましょう。
Aさんには、通常の債務が700万円、住宅ローンが1200万円あり、住宅の価値は1500万円ありました。
この場合、住宅を処分すると300万円(1500万-1200万)が残りますので、Aさんには300万円の財産があることになります。
ここで、個人再生手続きを使いますと、住宅ローン以外の負債が700万円の場合、これを5分の1まで減額することができます。
ですので、本来は、700万円→140万円となり、この140万円と住宅ローン1200万円を返済していけば、残りは免除になります。560万円も負債が免除されますので、相当な効果があるはずです。
しかし、ここでAさんには300万円の財産がありますので、住宅ローン以外の負債について、最低でも300万円以上返済しなければなりません。「手元に残す財産以上の金額を返済しなければならない」からです。
したがって、実際には、700万円→300万円と減額し、この300万円と住宅ローン1200万円を返済していくことになります。
この場合にも400万円の免除になりますので、効果は大きいですが、さきほどの例よりも返済額は相当大きくなってしまい、返済プランは厳しいものとなってきます。
さらに、住宅の価値が高くなり、たとえば住宅ローンが1000万円、住宅の価値が1500万円の場合は、500万円分の財産を保有することになりますので、返済額は最低500万円になります。
ですので、さきほどの例では、700万円→500万円へと200万円の減額はできますが、それでも500万円の負債が残ってしまうのです。
さらに住宅の価値が高く、住宅ローンが1000万円、住宅の価値が2000万円となった場合は、財産の価値が1000万円残ることになりますので、負債である700万円よりも財産の価値が高いため、個人再生を利用することはできなくなってしまいます。
これまでの話は、住宅ローンを完済しているにも同じようにあてはまりますので、そのような場合にも保有財産の価格が高くなってしまい、個人再生を使うことは難しいでしょう。
以上が、個人再生で自宅を残す場合についての解説です。
住宅ローンありの個人再生は条件が複雑ですので、少しわかりにくい説明だったかもしれません。
簡単に結論を整理すると、住宅ローンの残高と住宅の価値が近い場合には個人再生を利用しやすいですが、住宅の価値の方があまり高くなってしまうと、個人再生を利用して住宅を残すことは非常に難しくなってきます。
そのような場合には、たとえば不動産を担保に追加融資を受けて債務の返済にあてるなど、任意整理による返済を行っていくことを検討しなければならないでしょう。
前回と今回で、個人再生の場合に自宅を残せる条件を詳しく見てきました。繰り返し述べますが、この条件は非常に複雑で、専門的な知識や経験がないと、確実な判断はできません。
また、個人再生手続きは弁護士などに依頼しないで行うことは困難ですので、特に住宅をお持ちで債務整理を検討している方は、お早めに弁護士にご相談ください。
当事務所でも債務整理は相談料無料で対応していますので、お悩みの方は、お問い合わせのページをご覧のうえ、ご連絡ください。
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【債務整理】 個人再生では自宅を残すことができるって本当?(前)
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第14回です。
前回は、「個人再生手続きを行う場合の返済方法・返済額は?」というテーマで、個人再生の具体的な返済プランについて解説しました。
今回は、債務整理を考える方に特に関心の高いテーマとして、個人再生とマイホームの問題を取り上げます。
さて、今回のコラムのタイトルでは、「個人再生では自宅を残すことができるって本当?」という質問を投げかけています。
この答えはというと、「ローンが大きく残っている場合には、一定の条件を満たせば残すことができます!」というものです。
破産の場合にも同じ問題を、「破産すると住宅はどうなる?すぐに出ていかないとならないの?」と題して取り上げましたが、このときの結論は、「破産手続きの場合には、住宅を残すことはできない」というものでした。
破産手続きの場合には、
①住宅ローンよりも現在の自宅の価値(売却代金)が高い場合には、住宅を売却してローンを返済し、残ったお金を債権者へ分配する
②住宅ローン残額が現在の自宅の価値より高い場合にも、破産手続きではローン返済は禁止されるため、結局、競売にかけられてしまう
という2つの理由で住宅は残せませんでした。
しかし、個人再生の場合には、一定の条件をクリアすれば住宅を残してもよい、と法律で特別に認められているのです。
これが、破産手続きと比べた場合の、個人再生の最大のメリットといえます。
ですので、約束通りの返済はできないけれども、住宅はどうしても残したい、という方は、破産ではなく個人再生を検討することになります。
ただし、さきほどの①と②の場合では、住宅を残せるかどうかの条件も変わってきます。
今回は、②の場合、つまり、住宅ローンの残額が、現在の自宅の価値より高い場合を取り上げます。
これは、たとえば住宅ローンが1200万円残っているけれども、自宅をいま売却しても1000万円にしかならない場合のように、住宅を売却してもまだローンが残るような場合です。
反対の①の場合、つまり、住宅ローンよりも現在の自宅の価値が高い場合や、住宅ローンを完済している場合については次回に取り上げます(個人再生では自宅を残すことができるって本当?(後)をご覧ください)。
では、②の場合の、個人再生で住宅を残せる「一定の条件」とはどのようなものでしょうか。
実は、この条件は非常に複雑で、難しい法律問題が含まれているため、ここで説明すると長くなりますし、おそらく説明しても理解は難しいと思います。
ですので、住宅を残したまま個人再生をしたい、という方は、弁護士にご相談いただき、条件をクリアするかを判定してもらうことをお勧めしています。
ただ、それでは不安もあるでしょうから、条件のうち基本的なものを説明したいと思います。これらの条件をクリアすれば、8~9割方、住宅を残せるでしょう。
基本的な条件を5つ紹介します。
条件1 住宅ローン以外について、個人再生手続きの条件をクリアしていること
条件2 住宅ローン以外の債務の返済に加え、住宅ローンを今後も返済していく経済力のあること
条件3 ローン債務者が実際に居住している不動産であること
条件4 自宅に、住宅ローンかリフォームローンの抵当権がついており、それ以外の抵当権がついていないこと
条件5 住宅ローンの滞納が一定期間以内であること
条件が多いと思ったかもしれませんが、簡単に説明していきます。
条件1は、そもそも個人再生手続きを利用できない場合にはどうにもなりませんので、まず住宅ローン以外の債務について、個人再生手続きを使えば返済していける、ということが必要です。その場合の返済条件や返済額は前回まで説明してきましたね。
条件2は、よく問題になるところです。
個人再生を使った場合、実は、住宅ローン以外の債務は大幅にカットされますが、住宅ローンはカットされません。
たとえば、住宅ローン以外の負債が300万円、住宅ローンが1000万円残っていたとします。
このとき、個人再生を使えば、住宅ローン以外の負債は300万円から100万円まで圧縮できます。これを3年間で返済するとすれば、月3万円程度の返済になります(詳しくは「個人再生手続きを行う場合の返済方法・返済額は?」を参照)。
しかし、住宅ローンの1000万円は、そのまま残ります。もともと住宅ローンを月8万円返済していたとすれば、個人再生を使ったあとは、住宅ローン以外の債務月3万円+住宅ローン月8万円=月11万円の返済が必要になります。
ですので、住宅ローン以外の部分の負担は相当軽くなりますが、住宅ローン自体の負担は通常は変わりません。
この条件で返済を続けていけないのであれば、個人再生手続きを使っても住宅を残すことはできないのです。
条件3は、この制度で残せるのは、実際に本人が住んでいる自宅であるということです。別荘とか、事業用の建物などは残せません。
また、自宅が2つあっても、残せるのは、主に生活に利用している1つだけです。
条件4は、自宅を購入したときやリフォームをしたときに、自宅に抵当権が設定されていることです。通常の住宅ローンでは問題ありません。ただし、その抵当権以外に、別の借金のために抵当権がついていたり、税金の滞納で差し押さえをされている場合には、この制度は使えません。
条件5は、住宅ローンを滞納しすぎると、もはやこの制度でも住宅を残せなくなってしまいます。半年以内なら大丈夫ですが、1年になるとほぼ不可能でしょう。その期間内でも、住宅ローンの滞納が増えると、返済条件が厳しくなっていきますので、住宅を残すことは難しくなってきます。
個人再生で住宅を残す場合の条件をざっと見てきましたが、いかがでしょうか。
さきほども説明したとおり、この制度の条件は非常に複雑です。しかも、今回説明していない条件もいくつかあります。
どちらにしても、個人再生を申し立てる場合には弁護士に依頼する必要がありますので、住宅を残したまま手続きをとりたい、という方は、早いうちに弁護士に相談してください。
条件5で説明したとおり、住宅ローンの滞納が続いてしまうと手遅れになってしまいますから。
当弁護士事務所では債務整理は数多く扱っており、住宅ローンありの個人再生手続きの経験も豊富です。
債務整理のご相談は無料ですので、お悩みの方は、お問い合わせのページをご覧のうえ、ご連絡ください。
次回は、住宅ローンの残額よりも、住宅の価値が大きい場合を説明します。
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【離婚】 面会交流の取り決めに違反した場合の対処法は?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第16回です。
前回は、「面会交流が認められる場合/認められない場合」について見てきました。
今回は、面会交流の約束をしたのに、その約束が守られなかった場合についてです。
母が親権者、父が別居しているというケースを考えます。
離婚時に面会交流について、たとえば、「母は、父に対し、子どもと毎月第1日曜日に3時間面会させる」ということを調停で決めたとします。
しかし、母親がこれを違反し、父親に子どもと会せなかったとしたら、父親はどのような対応ができるでしょうか。
これについては、養育費の不払いとほとんど同じで、「養育費が支払われない場合の対処法」でも詳しく取り上げています。ただ、面会交流では少し違うところもありますので、簡単に説明していきます。
1つ目の対応として、履行勧告という制度があります。
これは、家庭裁判所の調停や審判で決めた約束については、約束違反があったとき、家庭裁判所から約束を守るよう相手に指導してくれるというものです。
裁判所からの指導ですから、当事者が要求するよりも相手が応じる可能性は高くなります。また、この手続きは非常に簡単ですので、便利な制度といえます。
ただし、裁判所の指導に強制力はないため、相手が裁判所の指導を無視してしまえば、効果はないことになります。
2つ目の対応として、面会交流の調停を改めて行うことです。
相手が面会交流を拒否している理由が、たとえば生活状況の変化により、頻度や時間があわない、というものであれば、新たに調停で、現在の生活にあった面会交流の取り決めを行うことが考えられます。
しかし、相手が調停に応じなかったり、そもそも面会交流を全面的に拒否している場合には、調停を行っても無意味でしょう。
3つ目の対応として、強制執行の申し立てができます。
強制執行というのは、裁判所での調停や審判に違反した場合、強制執行を裁判所に申し立てることで、一方的に財産の差し押さえなどを行うものです。
ただ、ここで重要なのは、子どもの面会というのを強制執行でむりやり行うことはできないのです。
たとえば、裁判所に申し立てをして、子どもをむりやり連れてきてもらい、面会を実施する、ということは認められません。このような方法で面会を実現すると、あまりにも子どもにとって負担や精神的はショックが大きく、子どもを物として扱うようなものだからです。
では、強制執行の申し立てはまったくできないかというと、実は間接的な方法で、相手に面会を強制する方法が認められています。
どういう方法かというと、面会を拒むごとに一定額の罰金を払わせ続ける、ということが認められています。これを間接強制といいます。
たとえば、面会を一回拒むごとに5万円を相手に払わせる、という命令が出るのです。
この場合、最初の方であげた例では、今月の第1日曜日に面会させないと、母親は父親に5万円を支払う義務を負います。
翌月も面会を拒否したら、さらに5万円を支払う義務があります。
これを1年続けると、12か月分で60万円を支払わなければならないということです。
そして、この金額については通常の差し押さえができますので、たとえば母親が受け取っている給料や預貯金を一方的に押さえることもできるようになります。
母親としては、この罰金を止めるためには、父親と子どもの面会を認めるしかないということになります。
こうやって、間接的に強制し、面会交流を実現できるのです。
ちなみに、間接強制の金額は、1回あたりだいたい3~5万円程度になることが多いといえます。
ただし、相手がいくらお金を払っても面会させたくないと思っていたり、そもそもお金がないから支払いを命じられても構わない、という場合には、この方法でも面会交流は実現できないこともあります。
そのような場合は、最終的には相手が親として不適切なことを主張立証し、親権者の変更を求めるなどしなければならない場合もあるでしょう。
面会交流の約束を守らなかった場合の対処法には以上のようなものがあります。
ここで1つ注意してほしいのは、これは、あくまで面会交流の方法を家庭裁判所の調停や審判で決めた場合に行える、ということです。
調停をしないで、協議で面会交流の方法を決めただけのときは、これらの方法をとることはできませんので、その場合にはまず面会交流の調停を起こさなければなりません。
これまで4回にわたって面会交流を詳しく解説してきました。
面会交流は、子どもにとっては非常に重要なものであり、子どもと両親とがきちんと親子として触れ合えるようにすることを忘れないでほしいと思います。
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