【債務整理】 破産手続きの流れを見てみよう
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第3回です。
前回(借金が返せないときの解決方法は?)で予告しましたが、今回からはしばらく破産をする場合の問題を見ていきます。
今回は、破産の全体的な流れを見たいと思います。
自己破産という言葉はみなさんご存じと思いますが、破産状態である場合、破産手続きをとることで債務を免除してもらうことができます。
では、破産状態というのは、どのような状態でしょうか。
破産法という法律では、債務者が「支払不能」であるときに、破産手続きが認められることになっています。
この「支払不能」という言葉の意味も破産法に規定されており、「支払不能」とは、「債務者が、支払い能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう」とされています。
少し難しい規定になっていますが、要するに、「現在も今後も、約束通りに借金を支払っていくめどが立たない状態」、ということです。
実際には、毎月の支払可能額よりも、約束の支払額が大幅に高くなっている場合や、返済が不可能なほどの高額の借金を抱えた場合などに破産状態となります。
そのような破産状態、支払不能状態になってしまったときは、破産を行うしか解決策がないことがほとんどです。
では、その場合、どのようにして破産手続きを行うのでしょうか。
破産の手続きは、大きく2つに分かれています。1つは破産状態の認定、財産の清算に関する手続きです。もう1つは、「免責」つまり債務の免除に関する手続きです。
前半を”破産手続き”、後半を”免責手続き”と呼んで説明します。
”破産手続き”の流れは、だいたい以下のようなものです。
① 裁判所に、破産申立書を提出し、審査を受ける。
② 裁判所は、債務者の提出した資料を検討し、破産状態、支払不能状態であるかを判断する。
③ 破産状態であると認められれば、裁判所は「破産開始決定」(以前は破産宣告といいました)を行います。
(④ 一定の場合、裁判所は破産管財人を任命して、債務者の財産状況の調査や清算を行わせます。)
(⑤ 調査や清算が終了すると、債権者集会を開いて、”破産手続き”を終了します。)
保有する財産がわずかな場合など、大半の事案では、①②③のみで”破産手続き”が終了します。
しかし、一定の場合は、④⑤という手続きに進むことになりますが、その際には破産手続きは複雑化・長期化してしまいます。
”破産手続き”が終了すると、今度は”免責手続き”が行われます。
”免責手続き”では、債務者が負債を抱えた事情などが確認され、債権者からも債務の免除を認めてよいかの意見を聴取します。
どういった場合に免責が認められないかは破産法で規定されていますが、大きな問題がない場合には、免責決定がなされます。
破産の目的は、債務の免除、つまり免責を得ることになります。
しかし、実際の手続きでは、債務の免除を認めてよいかが問題になることは多くなく、それよりも、保有する財産の清算手続きの方が大きな問題となります。
特に、上で説明したように、①②③のみで手続きが終わるか、破産管財人を任命して④⑤に進むか、といった点が実務的には重要となります。
実は、①②③だけで終わる場合には、ほとんどが書面審査のみで破産が認められています。つまり、裁判所に出席する必要もなく、破産を認めてもらえるのです。
その分、破産終了までの期間も短く、費用も少なくて済みます。
ところが、破産管財人が任命され、④⑤の手続きに進む場合には、裁判所へ出席したり、破産管財人と面談を行うなどの労力が必要となってきます。
しかも、その場合には破産申し立てから破産終了までの期間が半年から1年程度になることが多く、手続きが長期化するうえ、破産管財人の調査費用などを支払わばなければならないため、破産の費用も高額化します。
ですので、破産管財人が任命されるかどうかといった点が、破産希望者にとっては非常に重要な点となってきます。
では、どのような基準で振り分けが行われるのでしょうか。
基本的には、一定以上の財産があるかどうかで区別されています。
地域によって取扱いに差がありますが、札幌の場合には、20万円以上の価値がある財産を1つ以上保有しているか、で判断されます。
たとえば、ローンを完済し、売却すれば70万円程度の価値がある自動車を保有している場合や、解約すれば100万円の解約金が戻ってくる生命保険をかけている場合、住宅を所有し、ローンもある程度返済されている場合などには、破産管財人を選任することが避けられませんので、④⑤の手続きをせざるを得ません。
しかし、このような財産がない場合にも、破産管財人が任命されてしまう場合があります。
1つは、事業者、経営者の破産の場合です。事業者、経営者の場合、現在は手元に財産がなかったとしても、事業の内容や倒産に至る状況を精査したり、事業に関する財産が残されていないかを調査するために、破産管財人が選任される可能性が高くなります。
もっとも、事業の規模が大きくなく、十分な資料を提出できる場合には、破産管財人をつけないまま簡単な手続きで終了できることもあります。
もう1つは、申し立て時の資料や説明が不十分な場合や、債務を抱えた事情にあまりにも問題がある場合などには、調査のために破産管財人が選任されることがあります。
このような事案の場合には、もっと丁寧に調査・説明をしておけば、破産管財人を選任されずに済んだ、というケースも含まれています。申し立ての仕方が悪いために、余計な時間、余計な費用が生じてしまうことがあるのです。
破産手続きの流れをざっと見てきましたが、イメージはつかめたでしょうか。
実際の手続きでは、裁判所に破産を申し立てる時点で、ほぼ手続きは終了しています。申し立て時までの調査や資料の収集、申立書の作成までが破産手続きの山場であり、そこまでを適切に行えるかどうかによって破産の命運が決まるといってよいでしょう。
特に、事業者、経営者の場合や、不動産を所有している場合などは、事前準備によって破産がスムーズに進むかどうかに大きな差が生じてしまいます。
ですので、破産手続き、債務整理の経験が豊富な弁護士に依頼することが、非常に重要となってくるのです。
今回の話はわかりづらいところも多かったと思いますが、いかがでしょうか。
イメージを明確にしていただくため、次回は、実際の事例をもとに、破産の流れをシミュレーションしてみたいと思います。
札幌の弁護士が債務整理を解説 【債務整理に関する実践的情報一覧はこちら】
【債務整理】 借金が返せないときの解決方法は?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第2回です。
前回(借金をまったく返せない…ほうっておいてもいい?)、借金問題、債務問題は、弁護士に相談すれば解決できると述べました。
それでは、実際にはどういう解決方法があるのでしょうか。
債務整理には、大きく3つの解決方法があります。
1つは、任意整理という方法です。2つめは、個人再生、民事再生という方法、最後の3つめは、自己破産です。
それぞれメリットとデメリットがあり、詳しい説明は次回以降で取り上げますが、ここではおおまかに見ていきましょう。
任意整理というのは、要するに、債権者と個別に話し合いをして、返済条件をゆるやかにしてもらう、というものです。
たとえば、毎月3万円ずつ3年間返済するという約束のところを、毎月2万円に減額して4年あまりで返済する、という形へ条件変更をします。
またその際に、本来であれば発生する利息を免除してもらえる場合もあります。その場合には、返済総額が相当減ることになり、より緩やかな条件での返済が可能となります。
この方法は、現在の返済額は高すぎるが、もう少し返済額を減らしてもらえれば支払いができる、という方が利用します。
逆にいえば、多少減額してもらった程度ではどのみち返済できない、という方は難しいですね。
個人再生、民事再生というのは、非常に複雑な制度です。
簡単に説明すると、いま抱えている借金、債務のうち、合計100万円を3~5年間かけてしっかりと払いきれれば、残りの債務は免除されるという制度です(債務総額が500万円以内の場合の説明です)。
たとえば、現在、合計400万円の負債を抱え、毎月10万円程度の支払いを求められているとします。
この場合、個人再生を利用すれば、400万円のうち100万円だけを支払えばよいことになります。3年間で100万円を支払うというのは、毎月2万8000円程度を支払えばいいという計算です。
それを3年間支払った段階で、残りの300万円が免除され、借金はゼロになります。
この方法は、毎月3万円程度なら確実に支払えるという方に向いています。そして、この方法と破産の一番の違いは、個人再生の場合、住宅ローンの支払いを継続すれば、一定の条件のもとで、住宅を残すことができるという点です。
借金をすべては払えないけど、住宅だけはなんとか残したい、という場合、この個人再生が利用できるかを検討していきます。
最後の自己破産は、手持ちの財産を処分し、債権者に分配するかわりに、残った債務をすべて免除してもらうという制度です。
任意整理や個人再生でも解決できない、という場合には、この方法を選択することになります。
自己破産は、きわめて強力な効果があり、債権者には一円も払わないまま、免除を受けることすらできます。
その分だけ、手続きやルールが厳しく定められており、ルールに違反した場合には破産が認められないこともあります。
自己破産で問題になるのは、車や住宅は基本的に手放さなければならない点です。
個人再生のように、住宅ローンだけを支払っていくということもできず、住宅は手放し、引っ越ししなければならなくなります。
ただし、ローンが完済された車の場合、車の時価が20万円以内なら手放さずに所有できます。
そのほかにも細かいルールがありますが、それは次回以降に見ていきます。
借金問題、債務問題は、ほとんどがこの3つの方法で解決できます。
なお、これ以外にも、時効が成立したために解決する、ということもあります。
多くの借金は、5年間なにもやり取りがないと時効で消滅します。そのような場合、時効の通知を債権者に送付すれば、それで債務がなくなるのです。
ただし、債権者から裁判を起こされていた場合などには時効は使えないので、時効だけで解決することは多くはありません。
これまでの説明した方法の中から、適切な方法を選択し、解決をすることになります。
それでは、どの方法を選んだらよいのでしょうか。
それを判断するには、現在の生活状況、収支の状況、保有する財産などのほか、借金ができた事情などを詳しくお聞きすることになります。
だいたいの目安としては、
・借金総額を60で割った金額を毎月支払っていけるなら、任意整理を選択
(300万円の債務なら、60で割ると5万円ですので、毎月5万円以上返済できるかどうか)
・任意整理が無理な場合は、個人再生か破産かを選択
・毎月3万円程度の支払いが可能なら、個人再生を検討。住宅ローンを残したい場合や、借金の経緯に大きな問題がある場合も個人再生を検討
・毎月2,3万円程度の返済もできない状態(無収入など)では、破産を選択
などの基準があります。
ただし、実際にはもっと多くの基準で振り分けを行うことと、最終的には相談者の希望に沿った解決が必要になります。
ちなみに、当事務所に相談に来る方は、以前は任意整理により解決する割合が高かったように思います。
それは、長年、債権者が利息を多く取りすぎる状態が続いていたため、弁護士が交渉し、本来の利息で計算しなおした場合、債務が大幅に減額されることが多かったからです。場合によっては、すでに本当は債務を完済しており、払い過ぎの状態になっており、その過払い金を取り戻してほかの借金の返済にあてることもできました。
ですので、借金を長く抱えていた方は、ほとんどが任意整理により債務を完済することができました。
しかし、2010年6月以降は、そのような利息の取りすぎが法律で禁止されており、利息を払いすぎることはなくなりました。
それ以前の取引については、払い過ぎになっていることもありますが、武富士、SFCG、三和ファイナンスなどの貸金業者が相次いで倒産し、過払い金の取り戻しが難しくなったことなどから、債務の圧縮や過払い金の取り戻しが困難となりました。
ですので、10年前から借金があるという方は別ですが、ここ3,4年で借金をはじめてしまったという方は、もともと正しい利息しか払っていない可能性が高く、債務の減額は難しくなっています。
そういった事情のほか、不景気の影響や高い失業率のためもあってか、いまは個人再生や自己破産を選択する方が多くなっている印象です。
少し複雑な内容となってしまいましたが、債務整理の3つの方法をご理解いただけたでしょうか。
任意整理、個人再生、自己破産には、今回ご紹介したもののほかに、それぞれ、難しい問題や多くのルールがあります。
次回からは、まずはもっとも強力な手段である自己破産について、細かく見ていきます。
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【債務整理】 借金をまったく返せない…ほうっておいてもいい?
札幌の弁護士による債務整理解説コラム第1回です。
このブログでは離婚について連載し、離婚にまつわる法律問題を取り扱っている途中ですが、今回からは債務整理についても詳しく取り上げていきたいと思います。
債務整理の概要は債務整理・破産のページをご覧いただければと思いますが、ここでは、実際に債務整理を解決する際に問題となる点を、具体的に見ていきたいと思います。
さて、今回は、「借金をどうやっても返せないから、そのままほうっておいてもいい?」という問いを考えてみましょう。
そもそも債務というのは、支払い義務のことで、負債という言葉と同じ意味と考えてよいでしょう。
具体的には、銀行や消費者金融、サラ金からの借金を指すことが多いですが、クレジットカードの利用残高も債務に含まれます。さらに、自動車ローン、住宅ローンも債務にあたります。
相談に来られる方がよく見落としてしまうものとしては、お子さんの奨学金などの保証人としての責任があり、保証人の責任というのもご自身の債務になります。
保証人は少し特殊ですが、それ以外の借金、クレジットカード、ローンはどれも約束通りに支払う義務があります。
では、約束通りに支払わないとどうなってしまうのでしょうか。
約束の日に支払いをしなかった場合、すぐに銀行、サラ金、ローン会社など(これらを債権者といいます)から電話や手紙で支払いの督促が来ます。1回の遅れや数日の遅れであれば、債権者も納得し、特に問題が起きないことが多いと思います。
しかし、遅れが2度3度、あるいは数カ月にもなると、大きな問題が生じてきます。
まず、債権者からの督促が強力なものとなり、裁判・訴訟の予告、警告が届くようになります。
また、遅れが続くと、いわゆるブラックリストに登録されますし、債権者からさらに借り入れたり、カードを利用することが制限されてしまいます。
そのうえ、延滞が続くと、契約書にしたがって、高額の遅延損害金(延滞金)が発生し、遅延損害金も含めた全額の一括払いを求められてしまいます。
しかし、その時点で何カ月も滞納してしまっている方が、すぐに債務を全額支払ったり、遅延損害金を支払う余力があるとは思えません。
その時点で、債権者に事情を説明して支払いを待ってもらったり、親族に援助を受けたり、あるいは弁護士に相談に行くなど、なんらかの対応をしなければなりません。多くの方はなんとか解決に動きます。
ところが、もうどうにもならないと思いそのまま放置してしまう方もいます。また、いろいろ手を尽くしたものの、どうしようもなかったという方もいます。
そのような場合、債権者は、裁判所に支払いを求める裁判を起こしてきます。そして、借金をした方へ裁判所から呼び出し状が届き、裁判所で支払いの約束をさせられるか、裁判所から全額支払えとの命令を出されることになります。
その時点で支払いができればいいですが、それもできないままとなってしまうと、最終的には、裁判所の命令にもとづいて、財産の差し押さえをされてしまいます。
差し押さえは、預貯金や自動車などの財産を一方的に取り上げるほか、勤務先の給料を差し押さえることもできます。裁判所からの呼び出しを無視し、ほうっておいたところ、突然、勤務先に裁判所から給料差し押さえの書類が届いてしまい、勤務先から叱責を受けた、という方と何人もお会いしてきました。
どうやっても払えないからほうっておく、というのは最悪の方法です。
結局、給料は差し押さえられ、勤務先からは白い目で見られて、退職を求められることすらあるのです。
このような事態を避けるためには、どうすればよいのでしょうか。
それは、これ以上は正常な支払いが続けられない、と感じた時点で、すぐに弁護士に相談にするしかありません。
問題を先延ばしにしたり、身の回りのものを売却したりして目先の支払いを行っていっても、結局、すぐに行き詰ってしまうことは目に見えています。
この先、借金を全部返すあてがある、自信がある、というのであれば問題ありませんが、それが無理だと感じるのであれば、根本的な解決を行うしかないのです。
借金問題で苦しむ方は、弁護士に相談に来る直前が、もっとも不安で、もっとも苦しい時期です。
弁護士に相談さえすれば、必ず解決する方法を見つけることができるのです。
いまは多くの弁護士が、債務整理の相談は無料で行っています。ひとりで悩むよりも、30分ほど時間をとって相談を受ければ、それで心が一気に軽くなりますよ。
なお、いまは昔とは異なり、借金を滞納しても、債権者が自宅や勤務先に押し掛けたり、近所に聞こえるように大声で取り立てを行う、ということはまずありません。督促といっても、電話と手紙が来るだけです。
ですので、電話番号を変えたり、引っ越して住民票を移さないなどの方法で、請求をやり過ごしてきた、という方もいます。
この方法は当面の請求を避けるということでは確かに効果的といえる部分もあります。
しかし、いつまでも住民票を移さないまま、生活をしていくのは不便ではないでしょうか。また、いつまでも解決しないまま、債権者から隠れるように過ごすことは大変ではないでしょうか。
債権者は、滞納者の住民票を定期的にチェックしています。こっそり引っ越して3年後、住民票をこっそり今の住所に移したとしても、債権者はそれを確認しますので、また請求書が届くようになってしまいます。
また、何も債務の処理がされないままですので、相談者の中には、15年前の借金がまだブラックリストに登録されたままで、いまでもローンが組めない、という方もいました。
こういった不都合を考えると、やはり根本的な解決が必要です。
それでも、弁護士に相談できない方は少なくありません。
理由を聞きますと、借金したことをひとに話したくないとか、借金の理由がプライベートなものなので隠したいという方、あとは家族や会社に知られたくないから誰にもいえないなど、やはりそれなりの理由があるようです。
しかし、これまで多くの債務整理を扱ってきた弁護士から見れば、これらの理由はすべて勘違い、思い込みです。実際には、このような心配は必要ないのです。
当事務所では、これまで、毎年何十人もの借金に関するご相談を受けてきました。当事務所の弁護士にとって、借金の相談は、日常的な事柄です。しかも、相談の内容を他人にもらすということは絶対にありません。
また、たとえば相談に来た方が、「同居の夫にも内緒で破産したいんです」と希望されることもあります。毎年1,2人はこのように希望する方がいますが、ほとんどの方が、最後まで夫にも知られないまま破産を終えています(家族に知られた方もいましたが、これは、隠すのがつらくなり、ご自分から告白した方でした。最後まで隠そうとしたのにばれてしまった、という方はこれまでいませんでした)。
家族にさえ知られないのですから、勤務先や友人らに知られることはまずありません。
「破産したら戸籍にのってしまう」「選挙権がなくなってしまう」というのも、ただのデマです。そのようなことはありません。
いまだに、多額の借金に悩み、命を絶ってしまう方も少なくありません。
そこまでいかなくとも、借金返済のために何かを犠牲にしたり、犯罪に手を染めてしまう方もいます。
けれども、本当はそんな必要はありません。ただ弁護士に相談さえすれば、解決の方法が必ず見つかるのです。
もし借金に悩んでいるなら、すぐにご相談ください。解決への道をお示しします。
さて、今回は借金問題を放置してはいけない、ということをお話ししました。
次回は、それならどうやって解決したらいいのか、についてみたいと思います。
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弁護士に依頼するタイミングと報酬は?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第7回です。
前回(離婚調停と離婚裁判の流れを見てみよう)までは離婚についての法律的な問題についてみてきました。
今回は少しテーマを変えて、離婚を弁護士に依頼すべきか、依頼するとしたらそのタイミングはどうすべきか、を見ていきたいと思います。
現在は離婚する夫婦も数多くおり、みなさんの周りでも離婚を経験した方がいるかと思います。
しかし、ほとんどの場合、お互いの話し合いで離婚を合意し、離婚届を提出するという協議離婚で離婚することになります。
離婚すべきかという点や、親権、財産分与などでそれほど意見の対立がない場合は、そのようにスムーズに離婚成立となり、そのような場合に弁護士が表に出ることはまずありません。
ただ、このような場合でも、離婚するにあたって離婚の際の注意点などを弁護士に相談に来られる方は、実は相当いるのです。
そのような場合は、弁護士は相談者にアドバイスをし、今後の行動を助言しますが、正式に依頼を受けて相手と交渉を行うということはなく、相談者の方からは毎回の相談料のみをいただいています。
比較的、お互いの対立の程度が軽い場合には、それで十分だと思います。
しかし、話し合いで解決できず、離婚調停にまで発展すると、ご本人だけで対応していくことはかなり難しくなってきます。
実際のところ、離婚調停は、弁護士に依頼せずにご本人で対応している方も相当います。お互い、弁護士に依頼しないという形がスタンダードとさえいえるかもしれません。
家庭裁判所の調停委員も、そのような状況に慣れていますので、当事者に調停の仕組みを説明してくれますし、必要な情報や資料も整理してくれます。ですので弁護士がいなくても、調停は問題なく進行していき、解決に至ります。
ところが、弁護士に依頼をしないで調停成立した方が、後日、「わけがわからないまま、調停委員に言われたとおりに調停成立させてしまった。自分はそんなつもりじゃなかった。」と嘆いて相談にいらっしゃるということが実際にあるのです。
しかも、それは一人、二人の話ではなく、これまでに何度もそういった相談を経験しています。
この相談者の方々も、調停の手続きは説明を受けてなんとなくは理解しており、離婚調停が成立した際も、調停調書の内容を確認して「それで結構です。」と承諾しているのです。
それなのに、どうしてこういった事態が生じているのでしょうか。
一番の原因は、離婚に関する法律的な知識・経験がないため、専門的知識のある調停委員・裁判所の言葉に反論できず、つい従ってしまうからです。
調停委員にもそれぞれ個性があり、親切に説明してくれる方もいれば、あまり説明が上手でない方もいます。しかし、それでも離婚に関する経験は相当豊富です。
たとえば、知識のない当事者が、経験豊富な調停委員から、「この場合は慰謝料請求は難しいから、解決のためにあきらめた方がいいと思いますよ」「親権は母親が得るのが常識なので、親権を争うよりも面会交流の条件を話し合った方が得でしょう」などと言われたとしましょう。
調停委員の言葉に納得がいかないとしても、「専門家がそういうならしょうがないか」とか「とりあえず調停委員の指示に従って、後からまた考えよう」などと考え、調停委員の提案に反対しづらいのではないでしょうか。
そうして、流されるまま調停が成立してしまうと、もう後からそれをひっくり返したり、話し合いをやり直したりということは認められないのです。調停が成立してしまうと、そこですべて解決済みということになるのです。調停成立には、それほど重要な意味があります。
しかし、人生の中でももっとも重要な出来事の1つである離婚を、そのようなあいまいなまま解決してしまってよいのでしょうか。後になって、やっぱり調停の場でこれを主張しておけばよかった、と後悔するのは、大変残念なことです。
それを避けるためには、調停にのぞむ際には、自身も離婚に関する法律知識を十分に身に着けておく必要があります。
ただ、離婚問題は、夫婦によってさまざまです。市販の本をみても、あなた方夫婦の場合について説明した本はありませんし、財産分与や親権問題となると、少し本を読んだだけではほとんど理解できないほど複雑です。
そのため、適切な知識を得、アドバイスを受けるには、やはり調停に出席する前に弁護士に相談するべきです。
弁護士に依頼し、調停に出席してもらうべきかは、事案によって異なると思います。相談の際のアドバイスだけで十分対応できる事案も少なくありません。
しかし、財産分与が複雑であったり、親権について激しい対立がある場合、離婚原因(不貞行為など)が強く争われる場合などは、調停の段階から弁護士が参加する必要が高いといえます。これらは単なる話し合いでは解決が難しく、法律的な知識を使って、自分の主張が正しいことを証明しなければならないからです。
そのためには、調停委員に対してこちらの言い分を十分に伝え、適切な根拠を示す必要があります。うまく説明できなかったり、適切な根拠があげられないと、調停委員が判断を誤るかもしれません。
ですので、弁護士が依頼者とともに出席して、調停委員を直接説得する必要が高くなります。
また、複雑な事案では、弁護士と協議しながら依頼者自身も知識を深めていく必要がありますので、そういった意味でも弁護士への依頼が効果的となります。
特に、相手が弁護士に依頼している場合には、自身も弁護士を立てて対抗しなければ対応が難しいでしょう。
また、離婚という大変なトラブルを抱えている間、すべてを一人で判断し、対応していくというのは心身ともに大きな負担となります。
そのようなときに、事情を理解し、ともに歩む弁護士がいれば、そのような負担も軽くなることでしょう。
そういう目的で弁護士を依頼する方も多くいらっしゃいます。
なお、調停では解決せず、離婚訴訟にまで進行した場合、もはやご自分で対応できる段階ではありません。
訴訟では、裁判所は手続きを親切に説明してくれるわけではありません。自分の主張を自分で証明しなければ、負けてしまうのです。
訴訟段階でも弁護士に依頼しないままでは、裁判の流れもわからないうちに判決が出て終わってしまう、ということすらあるでしょう。
ここまでを整理すると、まず、調停が始まる段階では、必ず弁護士に相談だけでも行い、知識とアドバイスを受けることが不可欠です。
その際に、内容が複雑であると感じたり、自力での対応が難しいと思った場合には、調停への対応を弁護士に依頼すべきでしょう。
反対に、弁護士のアドバイスを受けて十分だと思えば、特に依頼する必要はありません。調停の進み具合に応じて、また相談に行くなりするだけで足りると思います。
調停が不成立になり、訴訟を行う場合には、必ず弁護士に依頼すべきです。一度訴訟で負けてしまったら、あとからひっくり返すことはできません。不成立が見込まれる場合には、その前の段階で相談だけでもしておくべきでしょう。
さて、それでは、実際に弁護士に依頼する場合、着手金、報酬などの弁護士費用はどれくらいかかるでしょうか。
日本弁護士連合会のアンケートや、法律事務所のウェブサイト等を確認してみると、離婚調停の場合、着手金として20~30万円程度、離婚成立時に成功報酬として20~30万円程度、さらに慰謝料や財産分与の請求があれば、着手金・成功報酬が上乗せ、という基準が多く目につきます。
当事務所では、離婚手続については、基本的に、着手金を15~30万円、報酬金を0~20万円と定めています(いずれも税別)。手続の種類や争点の内容などによって多少の幅を持たせています。
ただし、慰謝料や財産分与としてまとまった金銭を相手から受け取った場合の報酬金は、受領額の10%を基本としています。
なお、着手金が一括で用意できない場合に、一定の条件をクリアすれば、分割払いや「法テラス」による立替援助(融資のようなものです)を受けることもできます。
当事務所では、ご相談のときに、依頼をお受けした場合の弁護士費用の金額をあらかじめお示しし、ご依頼前に契約書を作成して金額を取り決めています。
そのため、弁護士費用の額を確認してからご依頼されるかをご検討いただいていますし、ご依頼の場合には、事前に書面で取り決めた以外の費用を頂戴することはありません。
離婚にお悩みの方にご安心してご相談・ご依頼をいただくことができるよう対応しております。
かなり長文になりましたが、離婚は人生の一大事ですので、不安や後悔を抱えるよりも、弁護士に相談・依頼して安心されてはいかがでしょうか。
さて、次回からは、離婚時の子どもに関する問題を取り上げます。親権、養育費、面会交流など多くの問題がありますので、順番に説明していきたいと思います。
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離婚調停と離婚裁判の流れを見てみよう
札幌の弁護士による離婚解説コラム第6回です。
さて、前回(離婚調停・裁判はどこの裁判所で行うの?)は離婚調停はどこの裁判所に起こすか、を説明しました。
それでは、実際に調停を申し立てた場合、実際はどのような流れで進むでしょうか。
離婚調停は、裁判所では「夫婦関係調整調停」という呼び方をします。離婚をする場合もあれば、離婚をせず、円満に復縁するケースもあるからでしょう。
調停の申立てには、裁判所でもらえる書式に必要事項を記入し、戸籍などの必要資料を添付して、家庭裁判所に書類を提出する必要があります。
調停を申し立てた後は、第1回目の調停の日時が指定され、その日に出席するよう指示されます。
調停は、家庭裁判所の調停室で行います。
裁判所は、事件ごとに裁判官1名と、有識者から選ばれた調停委員2名(男女1名ずつ)の担当者を決定します。ただ、裁判官が調停の場に直接出てくることはあまりなく、ほとんど調停委員2名で調停を実施することになります。
調停の場では、実は相手と直接顔をあわせたり、話し合ったりということはほとんどありません。
調停を開く際は、まずお互いが控え室で待機し、片方だけが調停室に呼ばれます。そこで、調停委員に事情や言い分を説明したり、質問に答えたりします。
それが一段落すると、今度は控え室に戻され、相手だけが調停室に呼ばれます。そして、相手も同じように調停委員と事情確認などをしていきます。
このように、調停の当事者は、調停委員と話をするだけで、相手本人と顔をあわせることはほとんどありません。
第1回目の調停を開始する際や、調停が円満に解決する時などに同席することもありますが、その程度です。
相手本人と顔をあわせませんので、相手に気兼ねなく、思ったことを伝えられるという面もありますし、調停委員という第三者と話をしていくことで気持ちを整理し、冷静に話し合いを進められることもあります。
まわりくどいと思う方もいるかもしれませんが、そもそも当事者同士では解決できない事件が持ち込まれますので、全く違うやり方を試すというのは効果的といえるではないでしょうか。
そのように、お互いが調停室に出たり入ったりし、切りの良いところで1回目の調停が終わります。
次回までに双方に資料の提出や検討事項が指示され、次回の日程を伝えられます。
だいたい、1ヶ月に1回のペースで進みますので、調停と調停の間は空きますが、冷静に物事を考えるにはちょうど良い期間かもしれません。
離婚調停が1回で終わるということはほとんどなく、3回程度で終われば相当スムーズだといえますし、だいたいの事案は5回程度の調停を重ねることが多いといえます。
1回の調停は2~3時間程度かかることが多いですが、そのうち半分程度は相手が調停室に入る時間であり、待ち時間ということになります。
ちなみに、ただ待つのも大変ですので、時間つぶしの本などを持参する方も見かけます。
ある程度事情の確認や話し合いが進み、お互いの折り合いがついたところで、調停成立となります。
調停成立となれば、合意した内容を裁判所が調停調書という公文書に記録します。この合意を破った場合には、すぐに強制執行を行えるという極めて強力な合意ですので、一度合意が成立すれば、それを守ることが強く求められます。
反対に、何度か調停を行っても妥協点が見いだせない場合には、調停は不成立となり、調停手続きが打ち切られてしまいます。
調停では解決できなかった場合は、離婚裁判・離婚訴訟を行うしかありません。
調停が不成立に終わってしまったときは、家庭裁判所に訴状という書類を提出し、訴訟の提起をすることになります。
調停と裁判・訴訟は全く別の手続きで、離婚訴訟では、調停委員はおらず、裁判官1名が担当します。
そして、調停のように話し合いや協議の場というよりは、証拠で自分の主張を立証していき、勝ち負けを決める、という場になります。
そのため、調停の場合に比べて手続きが難しく、弁護士を依頼しないで乗り切るには相当の苦労があります。
ちなみに、調停は、相手の自宅住所近くの裁判所で行わなければならない、ということを前回述べました。ところが、離婚訴訟は自分の住所近くの裁判所で行っても、相手の住所近くの裁判所で行っても、どちらでも良いことになっています。
それなら最初からどちらの住所でも良いとしてくれれば楽だと思いますが、法律でそう区別されているのでどうにもしがたいところです。
離婚裁判、離婚訴訟は、途中で話し合いによって解決することもありますが、そうならない限り、最後には裁判所の判決によって終了します。
判決には強制力がありますので、不満が残ったとしても、お互い、それを受け入れることになります。
ただ、そこまで行くと、調停から判決まではどれほど短くても1年程度はかかりますし、家族間の問題を判決で白黒つけるというのは、どうしてもその後の関係にも影響が出てしまいます。
弁護士としての経験上では、調停・和解で解決する事件の方が多いですし、そのような事件の方が当事者の納得度も高いと感じています。
駆け足になりましたが、おおまかな調停・裁判の流れはこのようなものになります。
次回にもお話したいと思いますが、弁護士としては、調停の前の話し合いから関与するケース、調停段階から関与するケース、裁判段階から関与するケースのどの場合もよく経験します。
ただ、スムーズな解決のためには、早い段階から関与していた方が良いと感じることが多く、裁判段階から依頼を受けた場合には、調停の段階で依頼を受けていればもっと良い形で解決できただろうと思うことも少なくありません。
弁護士に依頼するかは別としても、少なくとも第1回目の調停がはじまるまでには、必ず弁護士に相談することで良い方向に進むと感じています。
さて、次回は少し方向性を変えて、離婚問題を弁護士へ依頼するべきか、を取り上げます。
着手金、報酬なども触れていきたいと思いますので、ぜひご覧ください。
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離婚調停・裁判はどこの裁判所で行うの?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第5回です。
前回は「離婚による慰謝料の金額 決め方・相場は?」を説明しました。
離婚連載の5回目は、離婚調停・裁判の流れ、手続きについて取り上げます。
当事者の協議で離婚問題が解決すれば良いのですが、やはり離婚するかどうかや離婚の際の条件で合意できず、話し合いが壊れてしまうことがあります。
その場合、問題を解決したいと思えば、離婚調停か離婚裁判を起こすしかありません。
それでは、離婚調停と離婚裁判のどちらを起こすべきでしょうか。
答えは、離婚調停です。一部の例外をのぞいて、離婚裁判を起こすには、先に離婚調停で話し合いをしなければならない、というルールが法律で定められています。
これを、調停前置主義、と読んでいます。
離婚というのは、夫婦間の問題で、財産の精算や今後のやり取りなどの多くの問題がからみますし、子どもがいる場合には、親権や面会の問題もあります。
こういった当事者にとって重要な問題は、裁判所が一刀両断で決定するよりは、当事者ができる限り納得できるように、できるだけ話し合いによる解決を目指しましょう、というのが調停前置主義の目的です。
ですので、もう話し合いの余地なんてない、と思っていても、まずは調停を申し立てる必要があります。
しかし、調停は当事者が出頭することが求められますので、遠隔地で調停を行うことは非常に負担が大きくなります。交通費は自己負担ですし、遠くまで出席する負担も大変です。
しかも、調停は、「相手の自宅住所」を基準として、担当する裁判所が決定されるのです。
たとえば、妻が札幌市内、夫が釧路市内で別居している場合、妻が離婚調停を起こしたいと思えば、相手の住所のある釧路家庭裁判所に調停を起こさなければなりません。
反対に、夫から離婚調停を申し立てるときは、妻の住所がある札幌家庭裁判所に申立てをする必要があります。
そして、その後の調停が行われる度に、相手の住所の裁判所まで毎回出席しなければならないのです。
これは、相手がどれほど遠隔地にいても変わりません。極論すれば、稚内と沖縄でも同じように取り扱われます。
その場合の交通費や労力の負担がどれほど大変か、簡単に想像できると思います。
この問題のために調停を断念するケースも実際にあります。離婚や調停に関わる当事者、弁護士にとって、この問題は切実なものでした。
ところが、平成25年の法改正によって、この問題は大きく改善されることとなりました。
この法改正は、家庭裁判所での調停や審判に関する手続きを、現代的に一新するものと考えてもらえば良いと思いますが、これによって、「電話会議システム」による調停への参加が認められたのです。
これまで、民事裁判では電話会議システムにより、たとえば札幌にいる弁護士が東京の裁判所に出席しなくとも、裁判所内の電話会議システムを利用して、札幌の事務所にいながら、電話により裁判官・相手方弁護士と同時に通話し、裁判を進めることができました。
ところが、家庭裁判所の手続きではこの制度が認められず、当事者は裁判所に出席することとされていたのです。
そのような不公平が現在では改められ、今後は、遠隔地の裁判所で離婚調停をする場合にも、電話による参加が認められることとなり、わざわざ遠隔地の裁判所まで行かなくても良いことになりました。
大事な局面では出席を求められることもあるでしょうが、それでも負担は相当減ることになります。
実際、当事務所で取り扱った離婚調停でも、札幌の当事務所から電話で調停を行い、道内であれば函館や浦河、道外であれば東京や横浜などの遠隔地の裁判所とやり取りを行うなどしています。
交通費や時間などを大幅に節約できますので、相手方が遠くに居住していても、調停を行うことに大きな支障は生じなくなっているのです。
少し長くなりましたので、続きは次回にしたいと思います。
次回は、調停の実際の流れや、離婚裁判・離婚訴訟についてです。
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離婚による慰謝料の金額 決め方・相場は?
札幌の弁護士による離婚解説コラム第4回です。
前回(慰謝料が発生する離婚、発生しない離婚)にひきつづき、離婚の際の慰謝料問題です。
不貞行為や暴力があって離婚する場合、落ち度がある側は、慰謝料を支払う義務があります。
では、慰謝料はどうやって計算するのでしょうか。
慰謝料は、夫婦ごとや離婚の理由ごとに大きく異なりますが、次のようなポイントで増減されます。
① 支払い側の落ち度、責任の重さ
② 結婚してからの期間、子どもの有無
③ 支払い側の経済力
このうち、①はわかりやすいと思います。不貞行為であれば、その頻度や期間などによって悪質性、責任の重さが変わりますし、暴力の場合は、その頻度、暴力の程度や怪我の大きさによってやはり落ち度、責任が変わってきます。
落ち度、責任が重いほど、慰謝料額も高くなる傾向にあります。
②も、結婚してからの期間が長かったり、未成年の子どもを何人も抱えている方が、離婚による打撃・精神的ショックは大きいといえ、慰謝料額が高額になります。
最後の③は、財産分与との兼ね合いもありますが、相手の経済力が高い方が、離婚の原因を作った制裁としての意味などから、慰謝料が高くなる傾向があるといわれています。
ただ、実際の裁判では、①がこうだからいくら加算、②がこうだからいくら減額、などという内訳は明らかにされず、合計で○○円、という結論の金額しか明確にはなりません。
弁護士が慰謝料の請求を検討する際には、このあたりの事情を詳しくお聞きすることになります。
では、慰謝料は実際にはどれくらいになるでしょうか。
調停などの話し合いの場合には、最終的にはお互いの合意で決めますので、大きなばらつきがありますが、裁判となり、判決となった場合には、おおよその相場があります。
慰謝料が問題となるのは不貞行為のケースが多いですが、経験上、不貞行為が原因で離婚に至った場合、大半の事例で150万円から300万円の間におさまっています。その範囲で、さきほどの①②③の事情などによって上下しているのです。
暴力事案は、離婚の慰謝料自体は、不貞行為と同様かやや低いくらいの金額です。怪我が重大で後遺症が生じるような場合は500万円を超える場合もありますが、それは離婚の慰謝料というよりも、怪我の重さに対する慰謝料が高額となるからです。
実際に相手に請求する際には、さきほどの①②③などの事情を検討して金額を見積もることになります。
慰謝料を請求する場合、高ければ高い方が良いと考える方もいるでしょうが、余り相場から離れた金額を請求すると、相手も支払いや話し合いに応じる気持ちもなくなるでしょうし、裁判所からも不審に思われるでしょう。
相手を納得させたり、裁判所にこちらの言い分を理解してもらうには、慰謝料も適切かつ説得的な金額を計算し、根拠を示す必要があるのです。
当事者が自分で判断するのは非常に難しいため、弁護士に相談し、アドバイスをもらうことが重要です。
前回・今回と慰謝料についてみてきましたが、ひとくちに慰謝料といっても、簡単に決まるわけではないのです。
また、慰謝料が争点になるような事件では、お互いの感情の対立が激しいことが多く、その意味でも解決が容易ではありません。
どういった場合に慰謝料が請求でき、金額はどのように算定されるかを知らなければ、スムーズな解決はできないでしょう。
さて次回は、少しテーマを変えて、離婚調停・裁判は、どこでどのように行うのか、を説明したいと思います。
札幌の自宅に同居していたけど、相手が不倫相手と帯広に移り住んでしまったといった場合、どこの裁判所で行ったらよいのでしょうか。
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慰謝料が発生する離婚、発生しない離婚
札幌の弁護士による離婚解説コラム第3回です。
前回(裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(後))までは、離婚原因をテーマにしました。
離婚特集の3回目は、慰謝料を取り上げます。
離婚といえば慰謝料、慰謝料といえば離婚、というくらい、離婚の際には慰謝料が大きな問題となります。
しかし、当然ですが、離婚をすることになったからといって、慰謝料が必ず発生するわけではありません。
慰謝料が発生する離婚と発生しない離婚があるのです。では、どういう場合に慰謝料が生じるのでしょうか。
慰謝料というのは、離婚に限ったものではなく、「不法行為」を行った者が、被害者に対して支払う義務を負うとされています。
ですので、離婚の際に慰謝料が認められるのは、離婚について、一方に「不法行為」にあたる重大な落ち度、責任がある場合に限られます。
性格の不一致や、お互いの価値観の違いなどによる離婚では、一方にそのような落ち度、責任があるとはいえませんので、離婚を求めた側も慰謝料を請求できず、求められた側も慰謝料を支払う必要はありません。
反対に、慰謝料が発生するもっとも代表的な例は、不貞行為です。
前回までも触れましたが、不貞行為、つまり浮気・不倫は、離婚原因の1つです。相手が不貞行為をした場合には、相手が反対したとしても、裁判でも離婚が認められることになります。
しかも、不貞行為の場合には、あわせて慰謝料の支払義務が発生することになります。
不貞をした側は、離婚を求められたり、慰謝料の支払いを求められたら、基本的には応じなくてはならないのです。
不貞行為以外では、暴力・DVのケースが典型的です。
たとえば、夫が度重なる暴力を振るい、妻が大けがをしてしまい、正常な夫婦生活が維持できず、シェルターなどに避難して、離婚を求める場合があります。
このような場合、暴力が不法行為になることは当然ですが、それによって離婚に追い込まれたという点も不法行為にあたります。
ですので、暴力に対する慰謝料と、離婚に追い込まれたことの慰謝料を請求できるのです(実際にはこれらを区別せず、ひとつの慰謝料として請求します)。
これら以外の理由で離婚をする場合には、慰謝料が認められることは多くありません。
不貞行為や暴力に並ぶほどの落ち度が相手にないと、簡単には認められないのが実情です。
余談ですが、離婚以外の場合でも、何か被害にあったり、不快な思いをした際に「慰謝料を請求したい」という方もご相談に来られます。
しかし、実際には慰謝料が認められるというのは、よほどの精神的苦痛を負ったような場合に限られており、怪我をさせられた場合や離婚の場合以外では、あまり認められていません。
なお、離婚の場合には、慰謝料のほかに財産分与や養育費などの支払いをあわせて求めることもあります。
そういった場合には、調停などの話し合いの際には、慰謝料がいくら、財産分与がいくら、という計算をするよりも、合計でいくら、という形で話し合いをまとめる方がわかりやすいことが多いと思います。
養育費は毎月の支払いとなるので、少し別ですが、財産分与と慰謝料は、離婚の精算としていくら負担するか、という点では似た面があるので、財産分与を多く支払う分、慰謝料を下げる、などといった解決の仕方も目にします。
それでは、慰謝料が発生する場合に、金額はどのように決めるのでしょうか。
慰謝料の相場は、どのくらいでしょうか。
そのあたりは、次回のテーマとしたいと思います。
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裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(後)
札幌の弁護士による離婚解説コラム第2回です。
前回(裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(前))の続きとなります。
前回は、離婚原因として民法では5つが規定されていることと、それぞれの内容について触れてきました。
そして、よく問題となる不貞行為をめぐる事例では、2つの悩ましい問題があり、1つが証明が難しいという点だということを述べました。
もう1つの問題は、「婚姻破綻後」の不貞行為に関するものです。
弁護士が不貞行為に関する離婚裁判を扱ううえで、不貞行為をした側からよく出てくる反論が、「婚姻破綻後」に初めて不貞行為を行った、という主張です。
これは、不貞行為、浮気行為のせいで夫婦関係が破綻したのではなく、その前から事実上離婚状態にあったので、不貞行為が離婚の原因になっているわけではない、という主張です。
このような主張がなされるのは、夫婦の婚姻関係がすでに破綻していた場合には、夫婦間の義務や権利というものも消滅しており、片方が不貞行為を行ったとしても不法行為にならない(慰謝料は払う必要がない)という判例があるからでしょう。
そのためか、不貞行為を行い、慰謝料を要求された側がこの主張をよく行うのです。
しかし、実際の事例では、その不貞行為が離婚原因となっていることが明らかなケースが多く、その前に既に破綻していた、という弁解はほとんど認められません。
すでに夫婦関係が破綻していた、というのは、たとえば別居期間が長期間あり、お互い離婚することにほぼ同意していた場合など、明らかに夫婦関係が維持されていなかったような場合に限られるでしょうから、このような主張が認められるケースは少ないでしょう。
ただ、このような主張が出てくると、それまでの夫婦関係や、不貞行為を行った時期などが争点となることが多く、調停・裁判が長引く傾向にあるのが悩ましいところです。
ここまで4つの離婚原因を見てきましたが、最後の⑤は、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があることです。
これは、要するに、①から④には当てはまらないけれども、これらに匹敵するような夫婦関係を継続できないような事情がある場合、をいいます。
弁護士として関わった中では、この⑤に関する争いが大変多く、しかも対応が難しいと感じます。
この「婚姻を継続しがたい重大な事由」というのは、どのような場合であれば良いのか、法律にはこれ以上の説明は何もありません。そのため、事前に離婚が認められるかの見通しをつけるのが困難なのです。
ただ、主な目安としては、暴力・DV、不貞行為に近い行為、相手が犯罪を行って逮捕・服役されるなど、ある程度の重大な落ち度が相手にあることが必要で、さらに、すでに相当期間別居をしていること、が必要とされます。
後者の別居の点ですが、いわゆる家庭内別居などでは、まだ完全に夫婦関係が破綻しているとはいえない、という判断になることが多く、離婚が認められない可能性が高くなります(必ず認められないわけではありませんが、食事を一緒にとったり、日常会話があるような状態では家庭内別居とは認められない傾向にあります)。
また、別居と同時に離婚調停を起こしたような場合も同様です。
相手が離婚に反対しているような場合には、少なくとも数年程度の別居期間は必要と考えて良いでしょう。
前者の相手方の落ち度という点ですが、相手が反対しても一方的に離婚を認めて良いといえるだけの、大きい落ち度がなければなりません。
たとえば、性格の不一致を理由に離婚を求める場合、たとえば相手がだらしないとか、経済感覚が違うとか、生活の時間がずれている、などという場合は、一概にどちらが悪いとはいえないことも多く、また、婚姻関係を一方的に解消できるほど重大な事情があるとはいえないと判断されてしまいます。
相手が浪費を行うとか、家事を放棄する、などという事情も、家計や家事の分担などについても基本的には話し合いで解決すべき事柄だと判断されることが多く、そのことだけで離婚を認めるという判断はなされないでしょう。
そのため、実際には強い暴力が繰り返された場合などの重大な落ち度がある場合でないと、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たりづらいといえます。
以上の5つの離婚原因を確認してきましたが、それでは、これらに当たらない場合にはどうしたらいいのでしょうか。
これまでに述べてきたのは、あくまで話し合いで解決できない場合、判決でどう判断されるかという説明です。
ですので、判決で離婚が認められない見込みが高い場合には、話し合いや調停の中で相手と合意するしかありません。
実際にこれまで取り扱ってきた件でも、話し合いや調停で解決している事件の割合の方が高く、判決まで進む件は少ないです。
ただ、判決になった場合の見通しを持っておかなければ、調停の際の条件面の折り合いや、慰謝料を請求するかどうかといった点で正しい判断ができない危険があります。
離婚事件を取り扱っている弁護士であれば、過去の事例や経験から、離婚が認められるかどうか、慰謝料が認められるかどうかといった見通しを立てることができます。
ですので、離婚調停や訴訟を起こす前には、一度、弁護士に見通しについて相談することをおすすめします。
当弁護士事務所でも随時、離婚相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
次回は離婚時の慰謝料を取り上げたいと思いますので、ぜひご覧ください。
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裁判所が離婚を認めるのはどういう場合?(前)
札幌の弁護士による離婚解説コラムです。
当弁護士事務所では様々な分野を取り扱っていますが、その中でも多くの方の関心が高い離婚事件について、実際の事件で問題となる点を中心に解説をしていきます。
しばらくの間、連載という形で掲載していきます。
第1回目は、そもそも裁判所が離婚を認めるのは、どういった場合なのか。法律用語ではこれを「離婚原因」といいますが、離婚原因としてどのようなものが認められるのかを見て行きたいと思います。
夫婦のどちらかが離婚を決意した場合、相手も同じ考えであれば、離婚の成立自体に問題はありません。あとは養育費、慰謝料などの条件が問題になるだけです。
しかし、夫婦の片方が離婚を希望しているのに、もう片方は離婚に応じるつもりはない、という場合、簡単には解決しません。
当事者の話し合いで進展しない場合は、離婚調停を行い、裁判所の調停委員が仲介して話し合いを行うことになりますが、そこでも離婚の合意ができなかったり、条件で折り合いがつかないときは、最終的に裁判・訴訟となります。
裁判になった場合は、最終的には裁判官が判決という形で結論を決めます。
離婚が認められる場合には、裁判官は、「原告と被告とを離婚する」という判決を言い渡すことになりますし、認められない場合には、「原告の(離婚の)請求を棄却する」という判決を言い渡します。
このように、どうしても話し合いで解決しないときは、最後は裁判官が離婚を認めるかどうかを判断しますが、裁判官はどういった場合に離婚を認めるのでしょうか。
実は、法律で離婚が認められる場合というのは決められています。
民法770条1項では、次の5つが「離婚原因」であり、それが認められる場合に、離婚の判決ができることとなっています。
①相手が不貞行為をしたとき
②相手から悪意で遺棄されていたとき
③相手の生死が3年以上明らかでないとき
④相手が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
このうち、③や④というのはイメージしやすいと思います。
相手が生死不明だったり、重大な精神病にかかっていた場合には、正常な夫婦生活はもはや維持できませんし、話し合いによって解決することもできませんので、離婚を特に認めています(実際には④の場合に離婚が認められる事例は少ないですが)。
わかりづらいのは②で、「悪意の遺棄」という言葉は耳慣れないでしょうが、要するに、夫婦としての同居、協力などの義務を全く行わない状態のことです。ただ、実際には、単に同居しない場合や、生活費を家庭に入れないというだけでは認められません。
実際に裁判で離婚が認められた事例としては、半身不随の障害がある妻を自宅に置き去りにして別居し、生活費も一切支払わなかった事例など、よほど悪質な場合に限られています。
実際に裁判で②③④が問題になることは多くありません。弁護士として日常経験する事例は、ほぼ全てが①と⑤の離婚原因に関する事例です。
①の「不貞行為」とは、要するに浮気・不倫のことで、端的に、夫婦以外の者と性的関係を持つことです。
そのような不貞行為があった場合には、夫婦関係を裏切る重大な行為ということで、原則として離婚が認められ、相当額の慰謝料も発生します。この不貞行為は、1度切りの関係でもあたりますし、相手から誘惑された場合などでも関係ありません。
そのため、裁判で見られる離婚原因としては、不貞行為に関するものが非常に多いといえます。
しかし、不貞行為については、弁護士からみて、非常に悩ましい問題が2つあります。
1つは、不貞行為の立証が難しいという点です。
不貞行為は、通常、周囲に隠れて行われますし、密室での出来事となりやすいので、間違いなく不貞行為があった、というには、ある程度決定的な証拠が必要です。
相手が認めていれば簡単ですが、認めていない場合には、不倫現場の写真や相手とのメールのやり取りなどの強力な証拠が必要となります。
このような証拠がなく、相手が不倫していると思うけどその確信がない、という程度では、裁判所は離婚を認めません。
実際には、問い詰められるとあっさり不倫を認めることも多いですが、徹底的に否定し続ける場合もあります。
裁判で実際に経験した中では、夫が、別の女性とホテルに入っていく写真がある場合に、「女性が体調が悪くなったから看病していただけだ」という弁解をし続けていた件などもありました(さすがにこの弁解は通らず、離婚が認められました)。
少し長くなりましたので、不貞行為で問題となる点の2つ目と、離婚原因の⑤については、次回に持ち越したいと思います。
「性格の不一致」や「夫が生活費を入れない」、「妻が家事を全くしない」といった場合は、離婚が認められるのか、といった点を取り上げたいと思います。
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